非きこもり、JDを拾う。そして、育てられる。 作:なごみムナカタ
何を思ったか、初のオリキャラ視点。
だいぶ毛色が違う印象ですが、沙希視点だとここまで遊べないので書いてる側は意外と楽しかったりします。
2022.11.13 後書きに真鶴の設定を追記
『――だから無理になっちゃったの。ごめんね、真菜』
「――う、うん、そっかー。じゃ、残念だけどまた今度誘うねー」
スマホの通話終了をタッチした瞬間、あらん限りの罵詈雑言が口を衝いた。
「っ! ざっけんなよ! イケメンあり、医学部あり、会費男持ちの合コンブッチするとか正気の沙汰とは思えねえよ! お前如きの顔でこの機を逃がしたら一生男出来ねえわ! ってか、逃がさなくても出来るわけねえけどな!」
叫ぶ勢いで一頻り吐き出すと、乱れた呼吸を整えて平静に戻る。無論、周囲に人がいないことは確認済みのご乱心。
こんな直前になって欠員を出すなど、幹事としての沽券に関わる。下手をすれば信頼を失い、今後合コンを開催できなくなるのでは……?
――って、それはダメだ。
うちは専業主婦になるため、合コンで将来の伴侶と出逢わなければならないんだ。年収一千万以上、イケメン高身長、うちのお願いを何でも聞いてくれることが最低条件。出来れば両親と別居の三男坊あたり、義親の介護なしで遺産相続を貰えるのが理想。
そんな専業主婦ドリームを謳ってみたものの、焦りは隠せない。なんせ、補充人員の当てが全くないのだ。
強烈な毒を吐いたが、ドタキャンした彼女は、……井、中井? 大井? ……まぁなんでもいいか。なんとか井さんで。そのなんとか井さんはうちの主催する合コンにおいて、なくてはならない存在であった。
慣れれば隣にいるのが我慢できないこともない有り寄りの無しな顔面レベル。
明るく、ノリよく、ウザ過ぎず、置いとくだけで場が持つ反応力。
実家が金持ちで、バイトをしてないが故のフットワークの軽さ。
それらが噛み合い、合コンではどんな面子であろうとも頭数を埋められるアダプタビリティを発揮し、同時にその容姿でうちを引き立たせるハイブリッドな人材。こんなにも都合の良い女がいるだろうか。いや、いない。
そんな最強サポートカードなんとか井さんに代われる人材など、
まず、うちよりも顔面レベルの低い女であることが大前提。幸いなことに、うちは大学でもトップカーストと呼べる容姿の持ち主だと自負しているし、選択の幅は広いはずだ。だが、低すぎてもダメ。あんまりな顔面だと、相手グループに詐欺扱いされてしまうし、今後合コンをセッティングするのにも影響が出る。
過去、絶対に落とすと意気込み、周りを引き立て役で固めた合コンでは、うちまで男が辿り着けなかったという事例がある。うちだけ際立ちモテモテ作戦……だったはずなのに、ブスの穴熊囲いが絶対防御過ぎて自滅した件。
モテたいと願う余り、引き連れたブス共にうちの良さをも殺されるとは、過ぎたるは猶及ばざるが如し。
他には、あんまりやる気を出されるのもNG。うちがうちのために主催し、用意した
まぁ、アルバイト感覚で接待合コンさせるのが賢明か。報酬はタダ飯タダ酒。払いは男陣だし、うちの懐は痛まない完璧な雇用計画。
さて、そうと決まれば条件が合いそうなのを見繕ってみようかね。ちょうど今は講義中で、教室にはいくらでも人がいる。
大教室内を首の運動かと見紛うくらいぐるりと見渡し、いくつか目ぼしいのをチェックしていると、あることに気づく。
親しくない同級生に声をかけるだけならまだしも、それが複数人だった場合、その中の有り寄りの無しだけを呼び出すなど不審過ぎて、逃げられ待ったなし。つまり、勧誘するのはお一人様に限定されるということだ。
講義の時間が終わって教室を出ようとする生徒たちを目で追うと、動きからぼっちと分かる女子を見つけた。その女は講義が終わっても誰とも話さず、一人で教室を出ようとする。
たが、こいつはヤバい……。何がヤバいってこのオンナ、ひょっとすると顔面レベルがうちよりも……いやいや、確かにいいセンいってるとは思うよ? 思いますよ? でも、うちだってまぁまぁレベル高いしぃ? うちといい勝負なんじゃないかなぁと認めるのも吝かでないが、スタイルまで良いのはちょっと癪に障る。
本来なら、容姿で完全に上に立てるレベルの女にしか声を掛けないが、合コンまで時間がなく、見渡す限り他にぼっちが存在しない以上、誘わないという選択肢がないのがツライ。
くぅ……お前、なんでその顔面とスタイルでぼっちしてんだよ。大学生にもなって一匹狼気取りやがって、遅れてきた高二病かよ。さむっ!
葛藤を覚えつつ、目標との距離を徐々に縮めて行く。
……ん? コイツ見覚えあんじゃね? いくつか同じ講義取ってる気がする。講義終わりに(男から)声掛けられてるの見た記憶あるぞ? ほら、今も男が近寄ってんじゃん。シカトしてっけど。
あのさー、男に無関心決め込むならそれなりに地味な擬態とか出来ないわけ? これみよがしに超絶ロングのポニーテールって態度と容姿が真逆なんですけど? 男に興味ない素振りしといてシュシュとか、見てくださいオーラがダダ漏れなんだけどぉ? こういうの腹黒いっていうんじゃない? いやだわー、こうはなりたくないわー。
おっと、感情が顔に出るとこだった。危ない危ない。
うちは男に媚びて女を敵にするなどという稚拙な立ち回りはしない。踏み台にされたことにすら気づかせず上手く操る、まさに手塚ゾーン。それがうちのスタイル。ちょっと違うか。知らんけど。
ゆっくりと息を吐いて深呼吸。今まで抱いた負の感情を吐き出すように。
吐き切ったら、にぱっと笑顔でロックオン・ザ・ポニーテール・アンド・シュシュ。
普段よりも一オクターブ高い声音でいざ初対面の邂逅。
「あのー、ちょっといいですかー?」
振り向く女……名前まで分かんねぇな。ポニーテールとシュシュ……ポッシュでいいや。ポッシュと目が合うと、両手で軽く胸を押さえて身を縮める。怯えた小動物の構えで対峙した。
人は高圧的な態度に心を開かない。害意は全く無いとアピールすることで警戒心を解く。こうして下手に出る芝居はいつものことだが、本日のはガチだ。この女、普通に怖い。
「……なに?」
返事も強面。軽く下着の替え心配しちゃうくらいに恐怖。
何この威圧感ヤバ過ぎ。これはナンパ師共なんぞ一蹴ですわ。
「え、えぇっとぉ、よく講義被りますよね。あなたも二年生ですか?」
大学のシステム上、講義が被る=同学年と決まってはいないが、ある程度の指標にはなる。
「……そうだけど」
うわっ、メッチャ不機嫌。早く会話切り上げたいの見え見え。隠そうともしてないところがなおヤバいよね。
この人、高二病ってより、ただのコミュ障な気がしてきた。まぁ、突然見知らぬ人に声かけられたら、そうなるのも自然だけど。
とにかく、同級生という情報は手に入れた。もう少しフランクに話してみようか。謙り過ぎても不興を買う場合があるし。
「え、えぇっとぉ……この後、時間あったらでいいんだけど、お昼ご一緒しない?」
「はっ? 嫌だけど」
イラッ。
こぉんの……!
こちとら緊急事態だから下手に出てやってるってーのに、チョーシこきやがって!
――はっ⁉ やっべ、うち血管ぴくぴくしてね? 不満を漏らすとか社会人として三流以下なんですけど? 今は営業中なんだから感情殺して契約させなきゃだよね、テヘペロ♡
「え、えー、話だけでも聞いて欲しいんだけどぉ?」
「興味ない」
こんのアマぁ……。
今度は表情筋がひくついてるのが分かる。ア○ルに指突っ込んでアンアン言わせたろか⁉ って快楽を与えてどーすんだよ! それ、ご褒美じゃん! 奥歯ガタガタいわせたろか、でした。脳みそバイオレンスならぬ脳みそピンクかよ。
「じゃ、もう行くから」
もうイクからとか、うちまだ何もしてねえだろ勝手にイクんじゃねよインランビッチが! って、いつまでも脳みそピンクなのうちじゃん。
にべもなく立ち去ろうとする背中に向かって、思わず声を上げてしまう。
「ちょ、ちょっと待って、別に怪しくないから! 簡単なバイトだから!」
うっわ、こんな謳い文句じゃ怪しくないどころか怪しさしかないでしょ。ってか、もっと世間話から入って徐々に緊張を解していくもんなのに、こんな直截にとかこっちが引くわ。
焦っていたとはいえ、初歩的なミスを犯してしまい潮時かと諦念すると、情の欠片もなかった女が振り返った。
「……バイト?」
いや、聞くのかよ。うちが言えた立場じゃないけど、こんな怪しい話に聞く耳持つなって。詐欺耐性ガバガバじゃん。
実際、報酬は単なる
「あ、いや、バイトっていうか、そんな大袈裟じゃなくって、ただ皆で遊びに行くだけだし、お金の代わりにご飯代で支給っていうか……」
それを聞いたポッシュの顔からは落胆の色が見て取れた。ありゃ、割りと金に汚いタイプ? だったらうちが幹事だし、水増し請求してその分ポッシュに回してやれば説得できんじゃね?(※完全に詐取です。絶対に真似しないでください)
いや、穴埋め要員のために現金払いで報酬出してやるなんてどんな仏だよ。無理無理、そこまでお人好しじゃないわ。
「そーゆーのなら遠慮しとく。普段、バイトしてるし」
「そ、そう言わずに、明日の18時から二時間程度なんだけど、来れないかなぁ?」
聞いた瞬間、驚きつつも表情がふわりと緩んだ。さっきまでと真逆な反応に、ここしかない! と思って畳みかける。
「そーなの、個室の鉄板焼きで飲み放題付き!」
ついでに男付き! ……なんだけど、それだとまるで店側のサービスみたいに聞こえるから口にはしない。いずれは言わなきゃいけないんだけど、情報を小出しにしてポッシュがどれに食い付くか反応を見る狙いがあった。
これで誘いに乗ってきたら金より食い気となるし、
「……それって、ただ普通に食べるだけじゃないんでしょ。何させる気?」
おっ、もう乗って来た。意外にも食い気が優先か。あれ、じゃあなんで最初食い付き悪かったんだろ。それとも鉄板焼きが刺さった?
どっちにしても、ポッシュが
そんな期待を抱きながら、詳細を伝える。
「実は、ただの飲み会じゃなくて合コンなんだよね。そのアシストをして欲しいんだけど」
「はっ⁉ ご、合、コン……?」
なにその、まるで初めて聞く単語を復唱するようなたどたどしさ。いまどき中学生だってコンパくらい当たり前でしょ。浮世離れし過ぎ。修道院暮らしが長かったの?
まぁ、この感じなら男にがっつくなんて有り得ないし、顔面レベル以外は概ねうちの要求を満たしてる。顔面レベル以外は。重要なので二回言いました。ほんと、ここ重要だよねぇ……。
このポッシュ、キツそうだけど顔立ちは整ってやがるんです。うちとはタイプ違うから競合しないと思いたいが、少しでも男を逃がす憂いは摘み取っておきたいのも事実。
しかし、次の言葉でうちの警戒が杞憂だったと知る。
「……それ、コンパニオンみたく男に
「…………へ?」
想定外の質問に思わず変な声が出てしまう。
そんなんして好感度上げられたら逆効果なんですけど? アシストって言ったら彼氏ゲットのサポート役に決まってんじゃん!
……って、もしや一般的な感性だと向こうが正解なのでは?
確かに、飲みの席で報酬払ってアシストして欲しいって言われたら、真っ先に思い付くのはコンパニオンとしての労働力だよね。
認識のずれに気づき、うちの解釈する
「いや、そんなことしないでも、普通に食べて普通に飲んでくれていいから」
「は?」
ポッシュは、うちの言葉に目を白黒させてたが、我に返るとすぐに問い質してきた。
「や、だって、それじゃただで奢られてるだけじゃん。何かさせたかったんじゃないの?」
「むしろ、何もしないでいてくれれば、それでいいんだけど」
理解が追い付かず、訳が分からないといった表情のポッシュ。ならば、具体的な活動内容を示せば納得してくれるだろうと期待して、バイトに当たっての要求を並べ立てた。
「そうねぇ、強いて言うなら、同席した男共と目を合わせないで欲しいかな。あと、なるべく口も利かないでいてくれると助かるかも。あ、笑顔は禁止ね」
我ながらメチャクチャなことを言ってる自覚はある。本来、こんなことをされたら確実に場の雰囲気は悪くなるだろう。そこをうちがフォローすることにより、男共のポイントが爆上げされるまでがセット。
ただ、実際はそこまでやってくれると期待していない。そのくらい有り得ない要望なのが分かっていたから。出来ても笑顔を禁止させるくらいか。
そう思っていたんだけど、またしても想定外の答えが返って来た。
「は? そんなんでいいの?」
拍子抜けしたみたいな物言いに、こっちがびびる。
いやいやいや、うちから言い出したことだけど、あれ全部やられたらアシストというより合コンクラッシャーですけど? それが何か? みたく言うなよ。こいつ、普段どんな人付き合いしてんだよ。逆に興味湧いてきたわ。
軽く引きつつも、そこまで言うなら少し内容をマイルドにすれば、うちのアシストとして使えるんじゃね? 当然、そんな塩対応で男共が靡くはずもないため、結果ポッシュを観賞用に貶めることが出来る。これはもう、うちにとってはメリットでしかない。
今までのやり取りでポッシュの対人能力に一抹の不安を覚えたが、
「いいのいいの、そんなんが大事だから。あ、でも場の流れによっては”この人とちょっと話してて”ってお願いすることはあるかも。それくらいは平気だよね?」
「……まぁ、それくらいなら」
有り体に言うと、うちが複数の男に言い寄られた時、囮となって興味のない男の気を引いてくれよという意味。知ってか知らずか、ポッシュは不承不承に了解してくれた。
男なんぞ、にこにこ相槌を打つだけで勘違いする生き物である。人当たりに甚だしく難ありのポッシュでも、あの顔面レベルなら余裕だろう。
「やったぁ、助かる! それじゃ、連絡先教えてくれる?」
「ん」
番号交換すると穴埋めが見つかった喜びで、すぐ男側の幹事にLINEしようと踵を返す。だが、ポッシュがそれに待ったをかける。
「ちょっと。まだ名前聞いてないんだけど」
スマホを手にしたまま、批難めいた声で引き止められた。登録名で困っているのが瞭然としていた。
そういえば、お互い名前訊いてなかったっけ。ちなみにうちのスマホには”ポッシュ”で登録している。もうポッシュでいいんだけど? まぁ、そうもいかないので遅ればせながら自己紹介するんだけどね。
「ごめんごめん、わたし
「……川崎。川崎沙希」
川……崎さんね。威圧感凄すぎて皮裂きって字面のがしっくりくるなぁ。口には出さないけど。出したらボディが無事じゃ済まない予感するし。
つづく
いかがでしたでしょうか。
11話のつもりで執筆中、6300文字くらいでフィニッシュしたけど結果、最初に書いてた部分は丸まる書き貯めになったのがこの12話になりました。
本当は二週間空けようかと思っていましたが、前回二ヶ月空いてしまったので、その埋め合わせも兼ねて一週更新です。
今回はなんとオリキャラ視点です。今までの型を破る超変化球で困惑されるかもしれませんが、気楽に読めるものとしてどうかご了承くださいw
書く側も制約がなくて気楽で助かる……っていうか、沙希が合コンに誘われるまでの間、八幡視点が使えないわけで、そうすると消去法で沙希視点の展開になります。
しかし、沙希視点は正直言って書きづらい。
沙希は俺ガイルキャラの中で、戸塚などと並ぶトップクラスの常識人。なので語り手としてははっちゃけたコメディ語りをするとキャラが壊れるし、また言葉に出さず行動の端々で八幡にデレるのが最大の魅力なわけです。彼女はあくまでも外から愛でて面白く(ツンデレる)するキャラだと思っています。よって語り手には不向き。
よほど沙希だけが知る情景を読ませたい場面(たとえば薄氷シリーズ編の時のクローゼットの中の状況みたいな)があるならともかく、合コンに誘われるのは八幡以外のキャラなら出来ますしね。というわけでのオリキャラです。
真鶴真菜という名は、被らないか心配するくらい俺ガイルキャラ名作法としてはありきたりでした。
案の定、ググったらかなり上の方で出てきちゃいまして、モロ被りすぎて漢字だけ変えました。
八幡のクズ要素をイメージベースで作ったので、性格がゴミでゲスいです。
でもこの子、もうちょい腹黒く作りたかったけどわたくしの頭だとこれが限界。もっと闇を孕んでいてほしかった。以降、まだ出番あるのでもうちょっと面白く料理できればなと思います。
当初『BJD、JDの懼れを払う。』ってタイトルでしたが、真鶴が”びっち”や”ブラック”よりも、”ゴミ”とか”ゲス”のがしっくりくるので『GJD、JDの懼れを払う。』に変更しました。
13話はまた八幡視点に戻ります。こっちのが制約なく書けるから真鶴とは違う意味で気楽ですw
真鶴の設定
◆真鶴 真菜◆(まなづる まな)
国立大学二年生。高校卒業後一人暮らし。
沙希と同じ大学で同級生のオリキャラ。
外見的には折本かおりの上位互換であり、内面的には女子に敵を作らず上手くやるところから、『一色いろは以上、雪ノ下陽乃未満』という感じ。
それでは次もお楽しみに。