非きこもり、JDを拾う。そして、育てられる。 作:なごみムナカタ
筆が乗ったのか、文字数が10000文字に到達。
やっぱり八幡は、沙希よりオリキャラよりも書きやすいですね。
2024.5.2 設定変更に伴い、一部追記修正
2022.11.20 後書きに新戸部の設定を追記
2022.11.13 非戸部の呼び方を修正しました
「……格差縮小により、社会に信頼関係が回復し、犯罪やストレスによる病気が減少し、経済も安定して快適な社会が実現する……」
人間科学……それは、俺が人生で経験したことを学問として昇華させ結実した科目。初めて受講した時、大学にはこんなにも興味深い講義があったのかと瞠目したものだ。が、それほど好きな講義も今は頭に入ってこない。
原因は三日前まで遡る。
――
――――
――――――
「……格差社会の実態を明らかにするためには、科学的な理論と方法が必要です。では今日の講義はここまで。皆さん、お疲れさまでした」
90分間集中していた証なのか、講義を終えると独特の虚脱感に襲われた。脳内のブドウ糖はあらかた使い尽くされ、頭にじんわりとした靄がかかる感じがする。
それもそのはず。今日はバイトがないので、出れる講義を詰め込んだ結果だ。
よく聞く話だが、三年生になるとゼミや就活で忙しくなるので、二年生の内に出来る限り単位を修得しておかなければならない。なんせ、「浪人は認めん、受かったところへ行け」という方針だった両親だ。留年なんぞしようものなら、「留年は認めん、そのまま辞めて自立しろ」と家を追い出される未来が視える。破格の仕送りが情状酌量の余地をさらに無くしていた。
それを回避するため、単位はしっかりと修得しておく。手段は選ばない。
しかし、その代償が思わぬ形で振りかかってきた。
枯渇したブドウ糖の補給にMAXコーヒーを欲する俺のボディ。地元以外で販売している僥倖に咽び泣きながら自販機へ向かうと、見知った顔に遭遇する。
「あ、いたいた。ヒキタニくーん」
「……おう、お疲れさん」
こいつは入学してすぐ知り合った同じ学部の
それよりも、うちの大学ってそれなりに偏差値高いはずなのに俺の苗字読めないのかよ。ヒキタニって万国共通なの? 俺の認識のが間違ってんの? いや、もはや俺をヒキタニとして世界が誤解するよう何か大きな力が働いている気がする。
普段ならテキトーに相手をしてやり過ごすのだが、今日はちゃんとした用事なので邪険にはできない。むしろ、したら俺が損をする。何しろ、さっきの講義を安心して受けられたのもこいつのお陰と言えなくもないからだ。
「これ、今日の分のノートね」
「ああ、いつもすまん」
必修科目の授業内容を記したノートを手渡され、礼を言う。さっきの講義とは時間割が被っていたためだ。
いくら興味を惹かれたとはいえ、必修科目と被っていたら自由科目を犠牲にせざるを得ない。時間割を書き出した当初は愕然としたものだ。そして、苦悶の表情で時間割を睨んでいるところ、現れたのがこいつだった。
さっきのような軽薄な口調で話し掛けられ、俺も時間割に関する悩みを口にしてしまう。その日はそれで終わったが、以降ちょっとしたことで話をする関係となった。
ある日、何気なく会話(一方的に話し掛けられていたのだが)が始まると、受けたい講義と被った必修科目でノートを取ってくれると言い出したのだ。あまりにも怪しい申し出に最初は遠慮したが、一度乗ってしまうとある程度自由に講義を受けられる喜びで、いつの間にか重宝するようになっていた。
「飲み物くらい奢るわ」
「えー、いーって、そんなの」
「丁度俺も飲もうと思ってたところだ。ついでだよ」
「ますますいーわ。ナントかコーヒーとかいうコーヒーモドキの練乳っしょ? 飲めんて」
「お、千葉を愚弄するとはいい度胸だな」
「なんで千葉なん……?」
都度、こうして礼をしようとしても断られる。
謝礼も受け取らず、何が目的なのか理解できないでいると、それは唐突に訪れた。
「ところでヒキタニくん、明々後日の夕方暇?」
え、これ暇って言っちゃったらどっか誘われるパターン? 取りあえず、断るときの常套句『いやこのあとちょっとアレだから』が発動しそうになる。
しかし、ここでそれを口にしようものなら渡されたノートを返さなければならないのでは? そこまでいかなくとも、今後講義が被った時のノート取りをしてくれなくなるのは確実。それを懸念し、自己保身で発動をキャンセルする。
いや、待て。俺には仮に誘われた時のため、第二の
「明々後日の夕方は講義もバイトもないが……」
それを聞いた似戸部の口元がにぃっと歪んだ。
「じゃー、合コン行くべー」
なんの力みもない自然体で提案され、脳が理解しきれない。
は、合コン? なんで? Why? 俺がそんなパリピの社交場に参加しても内面のドレスコード足りないんですけど?
ここは予定通り、第二の
「ああ、行けたら行く」
「それはダメっしょー。予約あるし、会費いるし、女の子と頭数合わせんとー」
俺の常套句は、『予約』、『会費』、『頭数』の合コンコンボであっさりと無効化された。そりゃそうだと聞いてから気づく自分のバカさ加減を呪う。
「いやー、無理ならいーんよ無理なら。マジ全然いーからさー、だってどーしても無理なんでしょーよー?」
「お、おう……」
これほどまでに信用できない”いーから”は聞いたことがない。絶対よくない雰囲気駄々洩れだし、行かなきゃ二度とノート取ってくれないって言外に滲みまくってんじゃん。
「……………………で、ほんとに無理なん?」
明るい調子のままだが、目が笑ってない。冷え切ってる。目からダイヤモンドダスト出てる。問い質すその視線の先には、俺の手に収まる渡されたノート。来ないならノート返せの圧が凄い。
心の中の小町が俺に、「是非また今度是非是非ほんと今度絶対また!」と言わせようとしてきたが、ぐっと堪えた。これ言ったら確実にノート返品待ったなし。
「……それ、行かないとダメか?」
「……べー、無理かー、そっかー。べー……」
翻訳すると、「行かなきゃ今後ノート貰えないのか?」という意味だが、悄然と答える似戸部も理解しているようだった。現に、俺の顔と手元のノートを交互に見やる様がそれを物語っている。
「すっげー可愛い子が幹事なんだけど、ダメかー。べー……」
さも惜しませる口振りで呟いていた。普通なら食い付くのかもしれないが、そこは猜疑心が擬人化したような
幹事の女子がめっちゃ可愛いと、その友達も皆可愛いだろうと思ってしまうが、それは往々に勘違いである。
人間は比べることで対象の良し悪しを判断する。では、合コンの場で比較される対象とは何か? 芸能人? アイドル? 過去の学生時代における学校一の美少女? いや、そのどれでもなく対象は参加している他の女子である。
つまり、比較対象の参加者たちに任意の
男とは哀しい生き物で、こんな法則があると分かっていても、合コンが
しかし、俺も鬼ではない。あからさま過ぎてちょっと引くほどだが、似戸部がノートに向けた視線に込める想いは察している。その要求が合コンの頭数確保であることも。
むしろ、何ヶ月もノートを取らせておいて要求が
「……まぁ、行けなくは、ない」
絞り出すような俺の返事を聞き、顔に喜色が浮かぶ。
「まじ⁉ じーまー⁉ やっぱ、持つべきものはヒキタニくんだわぁー」
俺をことわざに組み込むほどの礼讃が妙に空々しい。強制というか、半ば脅迫ではないか。だが、これを取引と考えればすんなりと受け入れられた。
そう、世の中ギブアンドテイク。善意や信頼などという不確かなもので支え合うよりも、よほど真実がある。責任、契約、ほんと最高。是非、人間科学の一分野として以下略。
俺は人生で初めての合コン参加を決めた。
――――――
――――
――
「……格差社会の克服には人間科学的なアプローチが必要といえるでしょう。では今日の講義はここまで。皆さん、お疲れさまでした」
講義が終わると手早く荷物を片付け、一旦下宿に戻る。合コンの準備もあるが、先に帰っておかないと川崎が部屋に入れないためだ。現状、賃貸物件なので勝手に鍵を複製する訳にもいかず、頭の痛い案件である。
玄関の方から気配がした。どうやらタッチの差で川崎のご帰宅を迎えられたようだ。もし順番が入れ替わっていたら、ドアの前で仁王立ちする小悪魔セラが目に浮かぶ。なにそれ、魔界へと繋がる地獄の門かな? そんな場面に出くわしたらUターンしてそのまま千葉まで帰る未来が視える。
「あ、帰ってたんだ。……でないとあたしが困るんだけど」
「ああ。……えっと、おかえり?」
「なんで疑問形なの。……ん、ただいま」
疑問形にでもしないと『おかえり』なんて言い辛いんだよ、察しろ。
その気持ちを汲んでか、川崎はさして反応を示さず足早にロフトへと上った。カーテン越しに衣擦れの音が聞こえてくる。
ってか、高校時代ならまだしも大学生にもなって外に食べに行くのにわざわざ着替える必要とかあるのかよ。ドレスコードあるような店行くの? 俺がこれから向かう外食に必要なのは、心のドレスコードだけどな。陽キャに囲まれながら飯を喰らう二時間とかぼっちにとって修行でしかない。
やはり、今からでも「行けたら行く」のスタンスを貫いていいだろうか。これは単に合コンが嫌だからというわけではない。
『働きアリの法則』というものをご存知だろうか? 集団の中には必ず二割ほど働かないアリがいるという。彼らは他のアリが疲れて動けなくなった時、代わりに仕事をして集団を維持存続させる役割を担っている。それは自然界に組み込まれたバックアップ機能。『働かない』とは集団において救世主たる存在なのだ。
よって、
さて、あまりだらだらしてると時間なんぞすぐ経ってしまうので、こちらも身支度を急ぐ。洗面所で洗顔を済ますと次はドライヤー。こだわりの
似戸部によると、穴埋めとはいえ合コンに参加するのなら最低限の身嗜みと清潔感は必須だそうだ。これはイケメンであろうと絶対外せない要素で、むしろ女うけにおいては顔面よりも重要だという。あまつさえ無し寄りの顔面レベルでこれを外そうものなら、ノーチャンスどころか合コン会場をお通夜にする自爆テロと批難されても反論出来ないらしい。
一通り身嗜みを整えると、最後に去年の盆帰省で小町に貰った誕プレ(コロン)を取り出す。これを貰った日は、喜んだと同時に複雑な気持ちになった。
もうね、こんなんプレゼントされたら加齢臭の容疑が掛けられてるのと同義でしょ。数年前、小町が親父に上げてた誕プレと同じなんだもの。
小町からの無言のメッセージと受け止めて、その日は枕を濡らしたものだ。役に立つ日が来てしまったのが、ある意味皮肉である。
こちらの準備が整い、ロフトの方に視線を向ける。現在は洋間に布団を敷き、二人並んで寝ているが、ロフトを明け渡したことに変わりはなく、引き続き川崎のプライベートスペース兼脱衣室として使われていた。
「なあ、何時くらいに出掛ける予定だ?」
「え、ど、どうして?」
ロフトに向かって声を掛けると、何故か焦った声がカーテンの向こう側から返ってきた。予定訊いちゃう俺ってキモい? いや、キモいか。
①予定時間を教える
②じゃあ、送ってく
③目的地着く
④ストーカー
っていう未来を想像したのだろう。そんなつもりはないけど。③と④の間が唐突過ぎてキングクリムゾン発動疑惑すらあるが、概ね川崎は正しい。そんなつもりはないけど。大事なことなので二回言いました。
「あー……、そろそろ暗くなってくだろうし、俺も出るついでに途中まで送るくらいはしようかと……」
「ほ、ほんとに⁉」
キモいと思われてる相手には言い訳にしか聞こえんだろうなと、諦念混じりに答えると予想外な食い付き。今にも飛び出しそうな感情の籠った叫びとでも言おうか。驚いてロフトを見上げると、
ちょっと待て。このまま此処に居たら、同居初日の事故――――今俺たちを隔てるカーテンを買いに行こうと提案し、何故かスカート(しかも結構ミニ)に着替えた川崎がロフトを降りようとするところを見上げ、黒のレースで眼福してしまった事件(長ぇわ!)――――が再び起こってしまうのではないか?
そう気づき、ロフト下から離れようとするも間に合わなかった。
しゃっ! というカーテンレールを滑る音が鳴ると同時に、着替え終えた川崎の御尊体が濁った双眸の下に晒される。
「うぉっ⁉ ……っと?」
顔を背けようとはしたものの、そこはそれ、だってぼくおとこのこだもの(byみつを)。腐った瞳はちゃっかりと川崎を捉えていた。
結果として、再犯は未然に防がれることとなる。ロフトを降りてきた川崎の服装がパーカー&スキニージーンズだったからだ。…………残念ながら。
――って、おい、ドレスコードどこ行った。
ドレスとまではいかなくても、普段着で入れない店に行くんじゃなかったの? その恰好って大学行く時よりグレード落ちてるよね? 近所のコンビニ行くの?
ふと高二の夏休みに結婚式の二次会逃れのダシにされて、平塚先生とラーメン屋に入ったことを思い出す。ドレス姿が豪華過ぎて店内で浮いてた逆ドレスコード状態だったやつ。川崎のこれは、そうならないために敢えてのラフな格好なのかも。それなら、ちょっとだけ理解出来なくもな……いや、ないわ。やっぱないわ。
いくら考えても、本人から聞けなければ分かるはずのない難問。ここはスルーが得策だろう。
「じ、じゃあ、17:50に〇〇駅で待ち合わせだから、三十分後くらいに出るつもりだけど……」
待ち合わせ店の最寄り駅と同じだが、川崎に合わせたら俺が遅刻する。しかし、そもそも鍵が一つしかないのだから、俺が先に出るわけにもいかない。最低でも同伴でなければならない。同伴て言っちゃったよ。
「少し早めに出てくれるなら大丈夫だ」
「いいの? もう準備できたし、いつでもいいから」
そうして一緒に向かうこととなった。
電車から降りると、川崎の待ち合わせ場所へと向かう。下宿から電車で二つ先の駅。相手は大学の同級生だが、それ以外は要領を得なかった。よく知らない相手らしい。
……よく知らない相手と飯を食いに行くってどういう状況だよ。そこまで考えて、俺もこれからよく知らない奴らと合コンするという同じ状況であったのを思い出した。
俺としてはちょうど良くても、川崎にとっては早く着き過ぎたようで、待ち合わせ場所にまだ同級生はいなかった。
まぁ、こちらとて初対面の人間を何より忌避するぼっちなので、いないのは好都合だ。
「……それじゃ、俺も待ち合わせあるんで行くわ。帰る前にはLINEしと……」
「あれ、早いねー。ポッシ……川崎さん」
立ち去ろうとする直前、声が掛かった。川崎と別れる前である以上、俺も当事者の一員として巻き込まれた形になる。それとポッシってなんだよ。お前、子持ちか? さぞ、歯磨きでご苦労なさってるんでしょうね。
「あ、ああ、真鶴も早いね」
真鶴と呼ばれた女は、川崎と俺を交互に見てからほっぺに指を当てる。「んー」と考える仕草を見せ、とんでもないことを口にした。
「……彼氏?」
「ち、ちちち、違うから! 全っ然! 知らない奴だから‼」
間髪入れず、力強い否定のお言葉を賜りました。そこまで否定していただけると、俺自身が川崎を知らない人だと信じてしまいそうになるレベル。嘘だと分かっていてもメンタルに多大な影響がありそうです本当にありがとうございます。
知らない奴宣言されたことだし、何も言わず立ち去るのが正解だろう。ソースは高二の夏祭り、由比ヶ浜と二人でいるところに相模と遭遇した時の俺。そう考え、挨拶もせずその場を後にした。
……真鶴ねぇ。整った端正な顔立ちで朗らかな笑みを浮かべ、人懐っこさを演出している。魅力的な笑顔だが、雪ノ下陽乃の強化外骨格を見抜いた
一瞬の邂逅だし、断定はできないがそこはかとなく地雷臭のする女だったな。
まぁ、俺と川崎は大学が違うから、真鶴とは二度と会うこともないだろう。グッバイ真鶴。
そんなことより、こちらも早いとこ合流しなければならない。
「おー、ヒキタニくーん、こっちこっち」
迷わず店に到着すると、似戸部と他三名が既に待っており、会釈して合流する。
「初めましてヒキタニ君」
「ヒキタニくん、今日は宜しく」
「おなしゃーっす、ヒキタニくん」
「お、おう、今日はどうも……」
……このヒキタニっていつ是正しようかな。見事に浸透してるせいで、指摘する方が空気読めてないみたいな扱いになる気がしてきた。
いやいや、騙されるな。俺の名はヒキタ……って洗脳されんなよ俺!
意を決して訂正を申し出ようとすると、タイミング良く遮られる。
「ほんじゃ、会費ちょーしゅーしまーす」
似戸部は折り畳み財布をぱかぱかして会費を待ち受けていた。女子の分を含む二人分を貪ろうとする強欲なパックマンウォレットといったところか。会費は高いが、講義のノートを盾にされては聞かない訳にもいかず、契約だと思えば割り切れた。
「……おーし、会費おっけー。んじゃ、揃ったところで先にお店入ってんべー」
店内に入り、俺たち五人は個室へ案内される。そこは四人掛けの鉄板付きテーブルを三つ並べた最大12人部屋で、高級鉄板焼き屋というよりもお好み焼き屋というイメージが正しい。シェフが目の前で焼いてくれるわけではなく、セルフスタイルのようだ。
まぁ、部外者が傍にいたら個室とった意味がないしな。
穴埋めとはいえ、初の合コンに沸き立つものというか昂揚するのが分かった。顔が強張っていた俺を気遣ってか、隣のパリピが声を掛けてくる。
「なに? 緊張してるの? もしかしてヒキタニくん、合コン童貞?」
「ど、どどど、童貞ちゃうわ!」
「大学生で合コン童貞とかウケる。
お約束の空〇アワーネタを披露する余裕を見せるも、まさかのスルーでボケ殺し。
ちょっとだけイラついた俺は全力でツッコんでやることにした。
「ってかDDTってなに?
「え? DDTってそっち……?」
「ちなみに、デンジャラス・ドライバー・オブ・テン〇ューとは天龍源〇郎が作り出したバクロニムであり、本来の由来はジクロロ・ジフェニル・トリクロロエタンという殺虫剤だそうだ。これマメな」
「ぶっ! ……くく、ヒキタニくん、なんでそんなこと知ってるん? プロレスマニア? つーてかヒキペディア? なーんだ、ヒキタニくん面白い奴じゃん、俺ちょっと緊張してたんだよねー、人見知りだし」
本物の人見知りに謝れと小一時間説教したくなる自虐ネタで返してくるパリピ。お前、絶対そんなこと思ってないだろ。あとヒキペディアって呼ばれると氷の女王を連想して寒気がするので辞めてくださいお願いします。
アウェー感マックスだったが、似戸部から紹介されていたこともあって、すんなり馴染むことが出来たようだ。
ここ一年以上のバイトと大学生活で
「べー、そろそろ時間だし、女の子たち迎えに行ってくるっしょ」
そう言い残し、似戸部は部屋を出ていく。
いよいよか……。
結局、ヒキタニを訂正できなかったが、どうせ揃ったら自己紹介するだろう。ささやかなサプライズのため、俺の胸に比企谷という名を秘めておこう。
……まるで比企谷ってみだりに話しちゃいけない名前みたく思えてきた。雪ノ下に忌み名とか言われた過去を思い出す。
己の名に畏怖を覚えていると、似戸部が部屋に戻ってくる。その後ろの女子たちの声で個室内は華やかに彩られた。
「お待たせー、女のコたちのごとーちゃくよー」
「こんにちはー、初め、ま……し、て?」
「⁉」
気持ちの良い挨拶がこちらを認識するにつれてへどもどし始め、最後は疑問形で結ばれた。
似戸部の連れてきた女性陣。
その先頭に立つのは俺の知った顔であった。
確か……真鶴だよな。
グッバイ真鶴がシーユーアゲイン真鶴の間違いとなった。
これ、俺も初めましてで返していいのか?
まぁ、一瞬の顔見知りだし、このまま初めましてで問題なかろう。そう逡巡していると、重大な疑問が浮かび上がる。
……ちょっと待て。このタイミングで真鶴と再会するということは、さっきグッバイしてから飯を食う時間的猶予が一切ないということで、つまり川崎が予定していた外食とはこの合コ……
思考の帰結と同時に、真鶴の背後から覗く長身の女子と目が合う。
青みがかった髪、腰まで届くポニーテール、それを纏めるピンクのシュシュ。
それが答えとなり、全てを理解した俺は後の展開予想に悩まされるのであった。
つづく
いかがでしたでしょうか。
大方の予想通り、真鶴率いる女性陣と非戸部率いる男性陣の合コンが邂逅する運びとなりました。
真鶴はちゃんと名前まで作ったオリキャラなのに、非戸部って(笑)。
戸部でもよかったけどよくなかったので(どっちだよ)こうなりました。
これから合コンが開戦するわけですが、川崎を知る人物であってほしくなかったというのが一点。あとは八幡と同じ大学に戸部が受かるか? 答えはノー。ご都合主義を許さないくらいに戸部が勉強できるイメージがなかった……。
そして前者の場合、戸部だったら沙希とは同窓生どころかクラスメイトだったので、普通に知り合いとして接してしまう。結果、その後の展開的に困ってしまうのでパチモンの戸部にしたという経緯です。
※追記:非戸部、改め『似戸部(本名:新戸部)』に変更しました。
一応、合コン話は一、二話程度で終わらせる予定です。その後の展開も用意しています。ご期待ください。
あと今更ですが、5話で家の鍵が一つしかなくて~とか書いてあったのに、この話で普通に沙希が鍵開けて入って来てる矛盾。
どこかで修正か追加入れて辻褄合わせておきます。
新戸部の設定
◆新戸部 恩生◆(にとべ おんしょう)
私立大学二年生。
八幡と同じ大学に通うチャラい同級生男子。
戸部に似ているが列記とした非戸部。
合コンメンバー確保のため、必修科目のノートを取って恩を売る地道な努力を怠らない。八幡もその罠にかかった。
それでは次もお楽しみに。