かつて、この世界は死と灰で覆われていた。
それはこの世界に生きる
表には必ず裏があるように、科学技術の進歩は、幸福とそれを優に超える不幸をもたらした。
戦争、経済、権力、それらは時代が進むにつれて複雑にそして強力になり、人類の手には余るシロモノになった。
それでも人類の支配による世界は続いていた。
破壊と死を撒き散らしながら、ゆっくりと終末へと近づいていた。
相次ぐテロが、紛争が、戦争が、犯罪が、平和を取り繕うことすらままならなくなった世界がそこにはあった。
だがそれでも、多くの人類は終末が近づいていることに気づかなかったのだ。いや、正確に言うと気づかないフリをしていた。
そして、心の中では誰もが願っていた。
自由を、愛を、友情を、平等を、そして平和を。
一体何に?
あるものは神に、あるものは世界に、あるものは自分自身に。
ある武器商人の女がいた。
その武器商人は、若く、有能で、そして人を惹きつける不思議な魅力を持っていた。
彼女は、武器商人でありながら、武器を嫌い、戦争を嫌い、人を嫌った。
今あるこの世界に美しさや希望を見出せなかった。
世界は残酷だけど美しいなんて言葉は、ただの気休めか戯言のようにしか思えなかった。
そして、自分自身の手で、今あるこの世界を破壊することに決めた。
彼女は計画を立て、驚くべきほどの卓越した手腕をもってそれを実現させた。
結果、世界は大きく変わった。
人類は、空を失った。
そうして世界は一つの結末を迎えた。
だがそれは新しい物語の始まりでもある。
「よく集まってくれた」
額から口にかけて縦に大きく傷痕がある男が言う。
彼はシミひとつない真っ白なカッターシャツに、黒色のネクタイと、一目見ればそれが高級なものであることがわかる立派なブラックスーツを着ている。
その装いと態度は、まるで今から葬儀でも始めるかのようだ。
そして彼はゆっくりとした口調で言葉を続けた。
「本来、私たちが同じ側に立つことは中々ない。元々、今隣に座っているヤツが戦争相手や商売敵だからな」
そこで一呼吸置き、さらに言葉を続ける。
「だが今、私たちは同志であり仲間だ。なぜなら、世界がクソッタレになって、私たちの誰もが煮え湯を飲まされているからだ」
集まった内の何人かは頷き、またある者は同調を示す声を上げた。
「制空権を失った我々に残った陸と海もクソHCLIの連中がほとんど独占している状況で、ビジネスも戦争も、今まで通り私たちの意思で進めることが困難になった」
「だから、私たちは集まったのだ。この危機的状況に対応し、世界をHCLI、いや、あのクソ忌々しい武器商人、マザーファッキンビッチ、ココ・ヘクマティアルから取り戻すために」
そう彼が言い終わると、どこからともなく雄叫びのような歓声が上がった。それは波のように広がり、やがてこの場全体が熱気と興奮を交えた歓声に包まれた。
「だが、現状としては通信も、出入国管理も、昨日
傷男のすぐ近くに座っている一見温和で黒いどころか灰色の世界にも無縁そうに見える老人が尋ねた。
「安心しろ、ちゃんと
傷男は不敵な笑みを浮かべながらそう答えた。
「神様気取りのココ・ヘクマティアルは、ヤツの一族が残した亡霊によって地に堕とされることになる」