異世界降り立つワノ侍   作:ベリアロク

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また新しく書き始めたよコイツ……という方はこちらも読んでいただきありがとうございます。書きたいもの書いていこうと思います、はい。


尚1話にて転生要素は薄いです。


第1話 伝説の幕引きと幕開け

 「見事な死に様とお前は語り継がれる。精々誇ってあの世へ行け」

 

 「……」

 

 

桜舞う都の中心で熊よりも一回りも二回りも大きい身体の男は拳銃を構えて言葉をかける。

時は春、侍に忍びに民衆共々その国の人間すべてが押し寄せたかのようなその場所は和楽器の鮮やかな音と人々のざわめきが混ざり合っていた。

 

 

一見すれば国を挙げての大きな祭り。けれどその中心にあるのは皆を楽しませる太鼓台でもましてや屋台でもない。中心にあるは正に地獄の窯と形容するに相応しい巨釜。そこに茹でられるは太い柱に角帽を乗せたかのような髪型をした一人の男。

たった今、国を挙げての大きな祭り―――『光月おでん』の処刑がまさに行われていた。

 

 

 「忘れてくれ構わねェ……俺の魂は、生きて……行く!!」

 

 

血液はとうに沸騰し、今にも途轍もない苦痛から意識が途絶えそうになる。皮膚が溶けるほど熱いはずなのに身体が冷たくなっていく。

最早命も風前の灯火。それでも目の前の男―――カイドウを睨み続ける。最後の一瞬まで己を貫くために。

 

 

 

 「すでに一歩も動けねェ癖に大した奴だ。ババアの件は悪かったな。殺しておいた。」

 

 「真面目だな……精々強くなれ。ハァ……俺は……っ」

 

 

 

死に体の身体に鞭を打ち、片手を前に、片手を空へと見せる。

歌舞伎の如く正に見栄を張る様はその場にいる誰もの目に強く焼き付いていた。

 

 

 

 「一献の……酒のお伽になれば良し」

 

 

 (トキ、モモの助、日和……!! 行って参る……!!)

 

 

 「煮えてなんぼのォ~~!!!」

 

 

べんっ!!

 

 

 「「「「おでんに候!!!!!」」」」

 

 

べべんっ!!!

 

 

 

頭に銃弾をぶち込まれ、油釜の中へと身体が沈んでいく。沈みゆく中嗚咽の声が耳に届く。それと同時に命の炎が遂に燃え尽きようとするのを感じとった。

おう、カイドウ。いつもの高笑いはどうした? 笑わないってんなら俺が笑ってやる。

何せバカ殿が逝く様だ、涙なんか勿体ねェ。笑いだけで良いんだよ。

 

 

あぁ……絶景かなワの国。

後のことは頼んだぞ、赤鞘の侍たち。この国で暮らす者の為にも、そしていずれ来たる者の為にも。

どうかこの国を、俺たちが生きたこの国を……

 

 

 

20年という時を超えた先に現れるその男の姿をブクブクと茹で上がる窯の中、今にもただれ落ちそうな瞼の裏で浮かべながらおでんの意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

侍、光月おでん

ここに死す

 

 

こうして一つの伝説が幕を下ろした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うるせぇな……甲高い音やら人の声やら……あの世ってのは祭り場所なのか?

 

 

 

身体がフワフワと浮く感覚にしばらく身を委ねていたかったがあまりの不協和音な騒音がどうやらそれを許してくれないらしい。

まるで毎朝起こしに来る錦えもんの怒鳴る声みたいだ。アイツはいつも気持ちよく寝る俺のことを躊躇いもなく起こしやがる。

まぁ……もうそんな風に起こされることももう無いが。

 

 

もう俺は死んだ身だ。後のことは赤鞘の侍たちに託した。アイツらならきっとうまくやってくれるだろうよ。

それに……ロジャーや白吉っちゃんみてェな海賊だってきっといるだろうからな!

 

 

 

 あー……はいはい起きるからそう急かすな。

 

 

 

フワフワとした意識がより鮮明になっていく。あの世っていうのはどうも死人に対する扱いが悪いらしい。観念して起きるとするか……

 

 

 「っ……ここは……」

 

 

渋々ながらも瞼をゆっくり開く。背中にひんやりとした感覚を得ながらも次第にはっきりしていく視界に映ったのは建物に挟まれた狭く薄暗い道だった。寝転がった姿勢から立ち上がり、空を見るにここに日が差し込まないだけで夜ではないらしい。

 

 

 

 「これは……建物か? 天国の建物も案外普通なんだな」

 

 

 

左右の壁は明らかにワの国で作られたものじゃない。オロチがワの国に建てたものともまた違う。ただロジャーや白吉っちゃんたちと周った国の中には似たような建物はありはした。吹き抜ける風も懐かしく感じるし……本当にここは天国なのか?

 

 

 

 「ま、考えたって始まらねェよな」

 

 

 

いつまでもこんな狭いところにいても意味は無い。おでんは光が差し込む路地の先へと駆け出していく。

走る中で身体に何か違和を感じながらも路地を出たおでんを待っていたのは脳裏に焼き付いたワの国の光景とは大きく異なった場所だった。

 

 

 

 「なんだァーここは!?」

 

 

 

ワの国から抜け出してロジャーや白吉ちゃんたちと色んな国を回ったがこんな場所は初めてだ!

周りに並び立つ無数の建物、道には都のように賑わう人々と何より鉄の塊のようなものが道を走っている! 

それも馬車なんか比べ物にならないスピードでだ! 板の中の絵もまるで生き物みてェに動いてやがる! 

全部訳が分からねェが……こんなもの見てワクワクが止まるわけが無ェ!!

 

 

 

 「おい、おっさん!」 

 

 

 

見るもの全てが新しい俺は気づけば道に歩く爺さんに話しかけていた。

 

 

 

 「なんだい……って滅茶苦茶デカいね君」

 

 「あの車輪みたいなのがついたやつは何て言うんだ? それにあの板は生き物か何かか? それにあの変な服を着た奴は……」

 

 「いきなりなのに質問が多いね君……若者が元気たっぷりなのは良いことだけどさ。

  アレは車、建物についてるのは電子看板さ」

 

 「車に電子看板かぁ……! 今まで色んな国を見てきたがこんなもの見るのは初めてだ!」

 

 「? 色んな国を回ってきたのならこんなもの見てきてるだろうに。

  それに見るからに君はこの国の……」

 

 「それよりも爺さん! あの変な服着た奴は何なんだよ?」

 

 「はいはい……それは―――」

 

 「(ヴィラン)だァァァァァァ!!!」

 

 

突然の悲鳴にハッと視線を上げると道の上を通る橋のようなものから黒煙が上がっている。その中から現れたのは巨人族と同等の大きさの怪物だった。

 

 

 「アレが敵。簡単に言えば悪い奴ら……って説明しなくてもわかるよね?

  そして君が聞いていた者はそこにいる」

 

 

 

爺さんが指さす方を見てみるとさっき見た奴のような奇抜な服を着た者たちが怪物の前へと立ちふさがっていた。人々を守り悪へと立ち向かうその姿はどことなく侍のように感じられた。

 

 

 「彼らこそが……ヒーロー。この世界における要さ」

 

 「ヒーロー……ヒーロー、か」

 

 

 

おでんは不敵にニヤリと笑いながらその名を口からこぼすように復唱するのだった。

 

 

 

ワの国での光月おでんの伝説は幕を下ろした。後のことは次なる舞台の主役たちへと引き継がれる。

……が、舞台は変われどこの者留まるところを知らず。

光月おでんの伝説は世界を飛んで今新たに始まろうとしていた。

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