異世界降り立つワノ侍   作:ベリアロク

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9月28日
本来投降する話をミスってたので上げなおしました。
字数的には以前の倍以上になってます。もしかしたら分割するかもしれませんが前読んだ方ももう一度お読みいただければ幸いです。


第3話 記憶と友

時は少し経ち青かった空は茜色に変わる。外で遊ぶ子どもたちも皆家に帰り人気のなくなった住宅街をおでんと少年は歩いていた。

 

 

 「もう夕方ですね」

 

 「ああ、おでんに合いそうな綺麗な夕焼けだ。ったくアイツら緑太郎まで縛りやがって……悪かったな」

 

 「緑谷です……。まぁ取り調べですから僕は全然大丈夫ですけど……そっちこそ大丈夫ですか? 

  おでんさん取り調べ室に3時間くらい閉じ込められてましたけど」

 

 

 

隣を歩くおでんを心配するようにこの僅かな間に仲を深めた少年―――緑谷出久は声をかける。彼には

きっとおでんが疲れているように見えたんだろう。

実際のところおでんは滅茶苦茶疲れていた。

 

 

 

 「ああ、こちとら腹減ってるってのにあれはどうだ、これはどうなんだの質問攻めよ。

  俺って一応15歳なんだろ? ガキにはもうちょい優しくするのが筋ってもんだよなぁ」

 

 

 

おでんは空を見上げ大きなため息を吐く。けれど何も悪いことばかりではない。

それはおでん自身の記憶の混濁が落ち着いてきたことだった。

 

 

 

 『4歳で熊を持ち上げた⁉』

 『逃げろぉぉぉぉ!!!』

 

 

 『アーケードを占拠しただって⁉』

 『ヒーローも敵も巻き込んでてもう滅茶苦茶だァ⁉』

 

 

 『お前はもう光月の人間ではない‼』

 『この恥さらしめ‼ 消え失せろ!!』

 

 

 

……ロクな記憶が無ェな。俺っちゃ俺らしいが。

 

 

どういう理屈かはわからないが光月おでんはこの世界で二度目の誕生を迎えこれまで過ごしてきた”らしい”。

と言うのもその記憶……というより第三者の記録でありそれも断片的、かつわかるのはおでん自身と周りのことが少々でこの世界のことについてはまるで分からないのである。

 

 

常人がこの状況に陥ればパニック待ったなしだろう。

あるのは断片的な記憶とある程度の一般常識。と言ってもその常識はこの世界におけるものではなくほぼ無知かつ無力な状態だ。

だが彼は光月おでんである。敵がいようと雷が雨のように降ろうと猪突猛進し続ける男なのだ。

そんな彼が今思っていたのは……

 

 

 それはそれで俺の想像を超えていく未知なる発見があるんじゃねェか!!! 

 

 

というものだった。案の定である。

 

 

 

 

 「それでおでんさんはこれからどうするんですか? 記憶があやふやみたいな話をしてましたけど」

 

 「それなんけどよ、取り敢えず家のことは思い出したんだ。一先ず家に帰ろうと思う」

 

 「! 思い出せたんですね、良かった! あ……でもそしたら……」

 

 「ん? どうした? 言ってみろよ」

 

 「いやっ! なんでもないですホント!」

 

 

 

 

 

緑谷はおでんの言葉を受けてもなお言葉にしようとしない。

遠慮した様子であるのは明らかだ。

 

 

ここまである程度言葉を交わしたが緑太郎はかなり良い奴だ、言葉の裏に嘘が無ェ。

……がどうもこんな感じでイジイジしてやがる。

良い奴なのは間違いないがそこが何とも勿体ない男……というのがおでんの緑谷に対する認識だった。

 

 

 

 「何でも無ェことは無ェだろ! いいから言ってみろ!」

 

 「じ、実はですね……」

 

 

 

痺れを切らしたおでんの言葉で緑谷は話を始める。

緑谷の話の内容は今回の件の事情を母に連絡したという話だった。

 

 

 

 「それでお礼に家でご飯でも……ってことか?」

 

 「……はい。ようやく家の場所を思い出せたのに家に呼んで忘れでもしたらいけないなって……」

 

 「そんなんで忘れねェよ! お前さんには俺の取り調べのせいで十分に迷惑をかけちまったからな。

  誘いは嬉しいがこれ以上迷惑を掛けるわけにはいかねェよ」

 

 「そうですか……」

 

 「悪いな、お前の母様によろしく伝えておいてくれ」

 

 「わかりました。今日の夕飯はおでんだったんですけど……」

 

 「何!?」

 

 

 

完全に断る流れを決めていたおでんの耳にあるワードが届くと顔を正面からグイッと緑谷の方へ回し睨みを利かせる。

まるで悪口でも聞いたかのような異様な食いつきである。この場合は逆に近いが。

 

 

 

 「き、来ますか?」

 

 「勿論!!」

 

 

 

先ほどまでのように言葉を並べることもなく即答する。

緑谷にジリジリと寄っていくおでんの気迫は身長差も相まって凄まじいものだった。

 

 

 

 「さ、どこだお前の家は!」 

 

 「え、えーと……僕の家はそこの道を……」

 

 「こっちだな‼ 行くぞ緑太郎!!!」

 

 「待っt、あばばばばばばばばば⁉」

 

 

 

好物には目が無いのかそれとも相当腹が減っていたのか、緑谷の首根っこを掴みおでんは砂煙を起こすほどのスピードでひた走る。

その様は正に獣のソレ。その猛烈な走りは地響きを生み、そのあまりの振動は周辺住民に地震か何かかと勘違いさせたとかさせてないとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのー……」

 

 「……おでんさん?」

 

 

 

はふはふ バクバク がっ がっ!

 

 

場面は変わって緑谷宅。ごく一般的な住まいのリビングで住人である緑谷とその母は目の前の男―――おでんの食いっぷりに中々話しかけられずにいた。

 

 

 

 「出久……この人が出久を助けれくれた人で間違いないのよね? 玄関先で丁寧……かわからないけどご挨拶してくれたかと思えばすごい勢いでおでん食べるし……」

 

 「この人で間違いないよ。ただすごくお腹減ってたみたい」

 

 「それは見ればわかるけど……凄い食べっぷりね。体も大きいしヒーローの方?」

 

 「それがね、訳アリみたいなんだけど……僕と同じ15歳なんだ」

 

 「15歳⁉」

 

 

 

グビッ!! ごくごく……ごくんっ!!

 

 

 

「ふーっ!! うまかった!!」

 

 「お、お粗末様です……」

 

「いやー色々あってクソ腹が減っててなぁ。そんなタイミングでおでんを食えるとは……この世界にもおでんがあったことも嬉しく思う……が!」

 

 「⁉」

 

 

おでんは机をバンと叩き二人の顔を見る。

突然の音と衝撃に二人はビクリと肩を震わせ思わず身構えてしまうものの、おでんの表情に敵意などはなく満面の笑みが浮かんでいた。

 

 

 

「何よりほぼ初対面の俺に飯を食わせてくれたことにゃあ感謝してもしきれねェ! 

 緑助、そして母堂様! 本当にありがとう!!」

 

 

「⁉ 頭なんて下げないでください! あなたは息子の命の恩人なんですから!」

 

「そうですよ! あの時助けてもらってなかったら僕は死んでたかもしれないし……」

 

 「そうか? じゃあ頭下げるのはここらにしとこう」

 

 

 ((思ったより切り替えが早い……!))

 

 

 「……っと、そうだおでんさん」

 

 「なんだ?」

 

 

おでんの切り替えの早さに呆気に取られそうになるのをこらえ、緑谷が話を切り出す。

 

 

 

 「凄い今更かと思うかもしれないんですけど……自分おでんさんの名前くらいしか知らなくて良ければ色々と教えてもらえたらなぁ、と」

 

 「私も出久経由でしか貴方のこと知らないし……よろしければお願いできないかしら?」

 

 「俺の事ねェ……飯も貰ったし嫌とは言えねェな」

 

 

 

おでんは席に着きなおすとコップに入った水を一口飲み息を整える。

 

 

 

 「と言ってもそこまで覚えてるわけじゃねェからあんまり期待はすんな。

  名は光月おでん、年齢は……15歳らしい。コセイ?ってやつは無いだろうな、

  白吉ちゃんたちみてェな能力はなかったから」

 

 「え⁉ 無個性で敵を倒したのおでん君⁉」

 

 「あ、あぁそうだけど……」

 「そうなんだよお母さん!! おでんさんただのパンチで恐竜みたいな敵を倒しちゃってさ!! その時ヒーローは皆追いつめてたんだけど……」

 

 

 「ね、熱がすげェな……」

 

 

それから時計の長針が大きく動くぐらいまで緑谷の語りは続き、気づけば窓の向こうに見えていた夕焼けまじりだった夜空は真っ暗になっていた。

 

 

 「それで……ってもうこんな時間⁉ ごめんなさいおでんさん!! 時間大丈夫ですか⁉」

 

 「ん? あぁ、そろそろ帰らせてもらうとするかな」

 

 「ごめんなさいねおでん君。出久いつも興奮すると止まらなくて……」

 

 「いや、緑助のおかげで色々知れて良かったよ。如何せんこっちの知識が無いからなぁ」

 

 「こっちの知識?」

 

 「あ……いやこっちの話だ! 気にしないでくれ!」

 

 「あ、おでん君!!」

 

 

 

これはマズイと急いで帰り支度を済ませ玄関先へと向かうおでんを緑谷の母が引き止める。

何やら真面目な雰囲気を感じ取ったおでんは玄関を開けてもう出るだけだったが足を止め、扉から緑谷らの方へと向き直した。

 

 

 

 「一つ……お聞きしてもいいですか?」

 

 「なんだ?」

 

 「無個性でも……力が無くてもヒーローにはなれますか?」

 

 「!」

 

 

 

それは難しい問だった。おでんはこの世界に来てヒーローという存在を僅かにしか見ていない。それ故ヒーローになるために必要なものが何なのかを知らないのだ。

だがヒーローを『弱き者を守り、悪と戦う者』とするならば……おでんの答えは決まっていた。

 

 

 

「力は必要だろうな。無けりゃ何も守れねェ」

 

 

 

それはあの日の悔恨から来るものか、自分自身に言い聞かせるようキッパリとおでんは言い切った。

 

 

 

 「……そうですか」

 

 「も、もう何聞いてるんだよ母さん! 

 そうだおでんさん、見送りしますよ! もう夜遅いですからね!」

 

「お、おう」

 

「……」

 

 

緑谷に身体を押され家を後にし、緑谷の母は何も言わずに手を振っておでんを見送る。

 

 

 

 

「そうだ! ご馳走! またアンタが作ったおでんを―――」

 

 

 

笑顔で後にしようとするおでんが扉の閉まる僅かな隙間から目にしたのは目元にうっすら涙を浮かべた緑谷の母の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ緑谷」

 

 「はい?」

 

 「さっきの話の続き……いや続きでもないか? まぁ話なんだけどよ」

 

 

 

緑谷の住むマンションから少し離れた道を二人は歩いていく。二人の歩く道は路上の明かりにうっすら照らされていた。

 

 

 

 「その……個性ってのがまだよくわかってねェんだがな?」

 

 「……はい」

 

「確かに能力を持ったら強ェだろうが能力を持たずとも強かった奴らを何人も俺は知ってる。そいつらはあの世界で誰よりも強く、自由だった」

 

 

 

空を見上げおでんは思い出すように語る。道を点々と照らす灯と対応するかのように点々としかない星もあの海を旅していた夜には山のように空に浮かんでいた。

それこそ”星の数程”と形容するに相応しいほどに星とそれ程の強者があの海にはいたのだ。

 

 

 

 「個性を持たずにですか……?」

 

 「ああそうだ。戦っても戦っても能力関係無く強い奴はわんさかいやがる。本当に退屈しない毎日だった」

 

 「凄いですね……能力を持ってないのが同じでも僕とは大違いだ」

 

 「あぁ落ち込むな落ち込むな! つまり俺が言いてェのはな……その……アレだ。

 能力があろうがなかろうが強くなれるってこった!!」

 

 「おでんさん……」

 

 

 

却って逆効果だったかとおでんが焦りながらもフォローを入れる。

ワの国にいた者たちででここまでネガティブだった者はいなかったためにおでんは頭を悩ませるも必死に考える。

 

 

 

 「まぁその……力が無けりゃヒーローになるのは難しいと俺は思う。ヒーローを良く知ってるわけじゃねェがな。

 でもそこで終わりじゃねェよ、無いなら付ければ良いんだからよ」

 

 「でもそんなこと本当にできるわけがないですよ……」

 

「出来るさ‼ 

 俺の家来の奴らも最初はゴロツキだったりただのガキだったり……落ちこぼれだっていた。そいつらも今じゃ胸を張って誇れる俺の侍なんだ。だからよ、緑助」

 

 

隣を歩く緑谷の肩をポンと叩く。その手には先ほどの机をたたいた時のような荒さはなく、子どもたちに接していたように優しくそっと触れていた。

 

 

「諦めるのはまだ早いんじゃねェか? お前ならきっと強くなると俺は思ってる」

 

 「……!! おでん……さん」

 

 「人を見る目ならあるから安心しとけ! 頑張ってれば案外良いこともあるかもしれねェしよ!!」 

 

 

がッはッはッはッとおでんの笑い声が路上に響き渡る。近所迷惑などなんのその、憑き物を吹き飛ばすほどの豪快な笑いだ。

その時緑谷の顔は暗くておでんにはよく見えていなかったが、緑谷の肩が小刻みに小さな嗚咽の声と共に震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからおでんと緑谷は別れた。おでんとの連絡先を交換しようにも連絡手段となるものをおでんが持っていなかったためある約束をしたっきり二人は会うことはなかった。

 

 

数か月経った頃中学生が人質として取られたヘドロ事件で人質を助けようと無個性の少年が飛び出したと話題になり、

ヒーローからは非難が殺到したもののその少年は無個性ながら鍛えた体と知恵を使い戦ったと一部で報じられるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は更に流れ、背筋が凍るような寒さの冬に時期は移る。桜の蕾が花開く準備をするこの時期のために多くの者は必死に努力してくる。そんな彼らの多くが正に登竜門と呼ぶに相応しい門へと向かい歩いていた。

 

 

「受験会場はこちらでーす。受験生は書類を受け付けの係員に見せて案内を受けてください」

 

 「すみません、これって……」

 

「はい。これはですね……」

 

 

 

 

「大丈夫だよな俺……あぁ緊張してきた……」

 

 「何?緊張してんの? らっしくなーい!!」

 

「う、うっせー!! 流石に緊張するだろ!!」

 

 

 

 

 「頑張れよ! 父ちゃんも母ちゃんも応援してるからな!!」

 

 「うん、がんばる!!」

 

 

 

多くの受験生が緊張に身体をこわばらせながら家族や友人の激励を受け門をくぐっていく。着慣れた制服、履きなれた靴を纏い一種の戦場へと向かう受験生たち。

校内へと入るための最初の門だが、既に緊張が立ち込める場所である。

 

 

だがそんな所でなる筈もない軽い音が周囲に響く。

 

 

 

 

 

 

 

その音は周囲にいた者の視線をくぎ付けにする。勿論くぎ付けにしたワケはその音を鳴らして歩く者が受験会場にあろうことか下駄を履いてきたというだけではない。

その者は真冬に、服を三十にでも着たくなるような寒さの日に下駄を履き、半そで半ズボンよりも薄く短い和装に袖を通していたのである。

 

 

 

 「受験生の方はこちらに……って何だね君のその服装は⁉ 関係者以外は立ち入り禁止だぞ!!」

 

 「はぁ? 受験生は関係者ってのに入らねェのかよ? ほら」

 

 

その男は持っていた紙を門に立っていた男に投げ渡す。

それは紛れもなく本物の、その男をこの高校を受験する者であることを示していた。

 

 

 

 「何⁉ 貴様ここを受験するというのか⁉ 成績優秀、品行方正な者しか入れないというこの学校に⁉」

 

 「そうだ。ダメってことは……ねェだろう?」

 

 「それはそうだが……」

 

 「ならばよし。……来たぞ雄英高校! ちと漫遊しに参った!!

 

 

 

ドンっ!!

 

 

 

 

 

 

 

これにて序章は終幕。

そしてこれより始まるは新たな伝説、ワの国中が涙した光月おでんがこの世界にて何を為すのか

その伝説が語り尽くされるまで、どうかまばたきなき様お願い奉り候!!




平均文字数3000字くらいオーバーしましたね……分割した方が良いか?

結構気合い入れてつくってるのでお気に入り、評価、感想全部待ってます。マジで待ってます。


それはそれとして良いフォントとかあったら教えてください……
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