なるべく週1でやる予定。日にちは未定なのでお気に入り登録……しよう!
「えーG列、G列……ここか。悪いな、後ろ通るぜ」
場所は移って雄英高校内。
書類や衣服の確認などで入校するまでに時間はかかったが何とか入校でき、叩き込まれるかのように今何百人といるこの映画館のような受験会場に入れられたところだった。
「ふーっ……何とか入れたな。まさか服装であんな言われるとは思ってなかったが……まぁ良しとしよう」
指定された席に腰を下ろし一息つくと手元に置かれた書類を手に取る。
その書類に文字の記載は無く、何かのシルエットのみが大きく4つ描かれていた。
(こいつが試験の……)
Everybody say!!Yeah!!
「うっせぇ!!」
何の予兆もなく発せられたスピーカーも音割れするほどの特大ボイスにおでんは思わず耳を塞ぐ。
そんなおでんの反応を見てスポットライトに当てられ姿を現したDJ風の男は親指を上に立てた口角を大きく上げた。
「ナイスな反応ありがとう! 皆も彼ぐらいに盛り上がっていこうぜ!!」
「……」
「まず初めに受験生のリスナー諸君に試験の概要をサクッと説明するぜ!
内容は至ってシンプルさ、ちゃんと聞いとけよ?Are you ready? Yeah!」
「……」
(動じねェな、アイツ)
DJ風の男―――プレゼントマイクの声掛けには誰も応じない。
それどころか睨みつけている者すらいるがマイクは気にせず話を進めていった。
「―――説明はここまで。何か質問はあるかい、リスナーたち?」
(ふむ、成程な。何が来るのかと思ったがこいつは得意分野だ)
説明を終え、もう一度書類を見ておでんはうっすら笑みを浮かべる。
説明で明らかになったのは大きく分けて二つ。
一つはここが受験会場ではないということ。受験生は何グループかに分かれ対応する会場に移動し試験が行われる。
もう一つは試験の内容についてで、行われるのは戦闘形式の試験で対人戦ではない。敵の都市襲撃を想定し仮想敵を出来るだけ多く倒す。
敵によって武装が異なり倒した際に入るポイント数は変わるため、瞬時の判断が大切とのことだった。
その他諸注意もあったが大まかな話はこれで終わった。
だがおでんには腑に落ちない点が一つあった。
(説明は終わりらしいが何か抜けているような……)
「質問よろしいでしょうか!」
「誰だ誰だ……?」
額にしわを寄せ悩んでいると声が
質問も無くこれで説明が終わると考えていた他の受験生らで会場がざわめき立ち、そのざわめきが大きくなる前にその声の主にスポットライトは当てられた。
高身長に短髪メガネ、如何にも生徒の規範となるような少年だった。
「Okay!」
「プリントには4種の敵が記載されていますが、説明では3種類しか触れていませんでした」
(あ、それだそれ。それが引っかかってたんだ)
「これは一体どういうことなのでしょうか。誤載であれば最高峰の雄英として恥ずべき事態ではないですか!
我々は規範となるヒーローになるべくこの場に座しているのです!」
臆することなくキッパリと言い切る少年の姿に何人かが感心の表情を浮かべている様子が少年の周りを照らすライトから見て取れる。
「ナイスなお便りサンキューな! そいつについてだが―――」
「失礼ですがその前にそこの君ィ!!」
マイクが返答するよりも先に少年はロボットのように後ろに急回転し、ビシリと一人の少年に指を指した。
「そこのちじれ毛の君だ! さっきからぼそぼそと…気が散る!
物見遊山のつもりならここから即刻去り給え!」
「す、すみません!」
(お堅い奴もいるよなァ、あんま雄英については知らんけど)
メガネの少年を除いて静かだった会場にクスクス声が零れる。
おでんからはその少年の姿は暗かったために良く見えなかったが凄いスピードでお辞儀していることだけはわかった。
「あー……いいか?」
「質問した身でありながら言葉を遮ってしまい申し訳ございません!! 続きをお願い致します!!」
「オーケー、一先ずナイスなお便りサンキューな。最後に記載されたそいつはお邪魔虫!
倒すのは困難、仮に倒してもポイントはゼロ。うまく避けることをお勧めするぜ?」
「ご回答ありがとうございます!
失礼致しました!」
お辞儀もぴっちり綺麗に行うと少年は席に座る。
その後も幾つか質問が飛んだものの、どれも確認程度のもので少年の質問程の重要性のあるものはなかった。
「それでは最後に我が校の校訓を受験生であるリスナー諸君に送ろう。
かの英雄、ナポレオン・ボナパルトは言った!
”真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者”と!
さらに向こうへ…
Plus Ultra!!」
場所はまた変わって実技試験会場。
ジャックと豆の木に出てくる巨人でも通るのかというほど巨大な扉と壁が受験生らの目の目にそびえたち、その先には紛れもない一つの都市が待ち構えていた。
受験生らはそのスケールに圧巻されたり中々始まらない試験に飽き飽きして会話を始める者もいる。
そんな中でおでんもその扉を見る……ことはなく、そこから数十メートル離れた場所に生える木々を見ていた。
「うーん……」
「あのデカい奴何してんだ? 細っそい木の方なんか見て」
「試験を前にしてビビってんじゃね? もしかして……立ションとか!」
「HAHAHAHA!!」
「……え?」
「少々柔いが無いよりマシか」
植えてあった木、というより観葉植物に近いものを手に取りおでんは呟く。
この受験においては銃火器などそれ一つで個性の代替となってしまうような物以外の道具については持ち込みが可能となっていて、
この雄英高校を受験した生徒の多くは武器を持ち込みこの実技試験に挑んでいる。
長い歴史の中で全体の割合の1割にも満たないが無個性の者も数多く受けており、その者たちの9割9分は武器を持ち込んでいた。
何故なら武器を持たなければ競争に参加することも出来ないからだ。
それほどに個性と無個性の壁という物は大きかった。望まぬハンデを抱えた者たちが武器を持たないのは更なるハンデを負うことに外ならなかったのだ。
だがおでんは無個性にあるにも関わらずこの試験に何も持ち込まなかった。正確には用意できなかった。
何故ならおでんはこの受験の数日前まで自由の身ではなかったからである。
「せめて家から出れたら良かったんだが……あの二振りに適うものもないだろうし関係無いか」
閻魔と天羽々斬。
この二本こそおでんが人生を共にしてきた愛刀だった。
その二刀は既に息子たち……モモの助と日和に託してきた。ここはワの国ではないし、街で刀なんぞ見たことは無い。
あのような刀はこの世界には無いだろうとおでんは残念に思いながらも感じていた。
「いかんいかん……どうしてもワの国のことを思い浮かべてしまう。天がくれた二度目の生だ、俺はこの世界を楽しもう!!」
この世界に来てまだ1年と経っていないが多くの問題を起こすがためにこの世界の大半をおでんは知らない。
広がる世界は元いた世界以上に未知なるもので溢れている。きっとこの開いた大扉の向こうにも新たな発見は詰まっているのだろう。
「ワクワクが止まらねェな!! まったく!!」
先ほどまでの迷いはどこへやら、折った手ごろな木を腰に挿し扉の前へと歩みを進める。
スタートの合図は出されていないため今すぐにでも駆け出したい気持ちを抑え、駆け足気味で扉へと向かっていく。
そんな時だった。
「はい、スタートォ‼」
正に不意を突いた合図だった。スタート前にアナウンスがあると踏んでいた者たちは呆気に取られている。
けれどこの男は違った。
「行くぞぉぉぉぉぉぉぉ!!」
首輪の外れた虎のように下駄を履いているとは思えないスピードで一直線に駆け出していく。
いち早くスタートを決め他と距離を置いたおでんは真っ先に扉をくぐり、仮想都市の中へと入っていった。
『標的ハッケン……ブッコロス!!』
「お前が仮想敵の絡繰りだな? よーし、お前でコイツ試し切りだ」
走る勢いを止めずにおでんは腰から木を取り出し剣のように構える。
血管の浮き出る腕が掴んだ白く細いその木は黒い靄のようなものに包まれ、漆黒の表皮へと変貌を遂げた。
『ブッコロ……』
「おでん一刀流……
居合のように横振りで繰り出されたその一撃は装甲をえぐるかのようにへこませると同時に大きく吹き飛ばす。
仮想敵をボールのように吹き飛ばしたおでんの居合は後続を走る者の目に強く焼き付いていた。
『どォした⁉ 実戦にカウントダウンなんざ無いんだよ‼
ほら走れ走れ‼ 賽は投げられてんぞォ‼』
「⁉ やっべぇぇぇ!!」
「アカンアカン!」
「走れぇぇぇぇ!」
多くの受験生が挑むは雄英高校入学試験。
今その火蓋が切って落とされるのだった。
楽しかった時間(赤評価)も終わり、現実(オレンジ評価)に向き合わねばならない時が来てしまいました。
願わくばこれが黄色にならなければいいな…と思いますね、はい。
更なる高評価と感想、お気に入りお待ちしてます。
簡単な解説的な奴
・おでんの状態
衣服や髪型などはそのまま、刀は既に息子らに託したためにこの世界においては持ち合わせていません。
若返りに伴い、技能が軽くリセットされており武装色の強さはほぼ習得段階です。
ま、武装色あってもなくてもこの人4歳で大岩ぶん投げるくらいですからワンピースの登場人物で幼少期最強だと思います。