異世界降り立つワノ侍   作:ベリアロク

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第6話 試験の裏側、おでんの過去

 

試験が終了して後日。

雄英高校の薄暗い会議室のような場所に教員らは皆集まっていた。

今日は技能試験の最終確認、ポイントを計測し順位づけると共にその一人一人の動きを確認する場だった。

 

 

 

 「今年は豊作ね。優秀な受験生がゴロゴロいるわ。ここ数年でも中々じゃない?」

 

 

 「そうだな……特に爆豪勝己、彼は凄かった。試験開始から終了まで勢いが衰えず、それどころか勢いは増していっていた。救出Pは1Pも無く、敵Pのみでブロック内トップを取った受験生など今までいなかったのではないか?」

 

 「爆豪も確かに凄いけど特筆すべきは緑谷君じゃない? 敵Pは爆豪君と真逆の0Pだけど逃げ遅れた子を救うべく0P敵に立ち向かい正面から叩き壊した! 救出Pだけで合格した人こそ今までいないでしょ?」

 

 「いや爆豪の方が!」

 

 「いいや緑谷君の方が!」 

 

 「「むむむ……」」

 

 「まぁまぁ……二人とも素晴らしい成績を残しているのは間違いないのサ。でも僕が特筆すべきだと思うのは彼だと思うのサ」

 

 「根津校長……」

 

 

 

根津と呼ばれる校長が二人の間に割って入り目の前にあるディスプレイの画面に新たな画像を表示させる。

尚、根津と呼ばれた校長は人間ではなく人間の3歳児ほどの背丈をほこるネズミであるのだがスーツを着たネズミが二足歩行で人間の隣に立つ光景は傍から見れば異様に見えた。

 

 

 

 「光月おでん、ですか……」

 

 「僕は彼こそ色々な点で特筆すべきだと思うのだけれどどうかな?」

 

 「まぁ異論はないですけど……彼を引き合いに出すのはちょっとズルじゃないですか? 彼が活躍するのは目に見えてたし……」

 

 「ズルって何ですか香山サン。今すべきは試験の総評ですから当然彼にも触れるべきです」

 

 「……相澤先生ひど~い」

 

 「はぁ……」

 

 

 

香山と呼ばれた女性教師がシクシクと年甲斐もなくウソ泣きする姿に相澤はため息を吐くと手に持つファイルに目を向ける。

そのファイルには受験生の個性情報や経歴が全て記載されており、当然おでんの情報も載っていた。

 

 

 

 「試験会場は例年据え置きの物を使用しますが奴の試験会場のみ改造を施し、より攻撃的に設定した0P敵を配置しました。全て万が一おでんが仮想敵を刈りつくしてしまいそうな場合を想定し

  保険として作られました」

 

 「万が一の保険だからね、使うことは無いと思っていたんだけど……結局使うハメになってしまった。有望な子だよ全く」

 

 「奴のいるブロックは荒れることが目に見えてましたが大分抑えることが出来ました。あの時即座に判断しおでんをあの通りに封じ込め0P敵をぶつけた13号を褒めるべきでしょう」

 

 「はは……それでもミスしちゃって数人巻き込んでしまいました。彼らには悪いことをしたなぁ……」

 

 

 

13号と呼ばれた宇宙飛行士の着ぐるみのようなものを着た教員は申し訳なさそうに俯く。

確かに0P敵を出撃させた際にはおでん以外にも数人その場に留まっており、移動が済んではいなかった。

自身の判断で彼らを巻き込んでしまったことを心優しい13号は少し悔いていた。

 

 

 

 「あの時僕がもっと良い判断を出来ていれば……」

 

 「気にするな13号。確かに敵Pを稼ぐ時間は多少削れてしまったかもしれないが救出Pを稼ぐことが出来た時間でもあったわけだ。

  実際に巻き込まれてしまった内の二人は他を助けるために行動し、合格ラインに到達しているからな」

 

 「ヒーローとは常にピンチを覆していく者、臨機応変な対応が求められるのサ!」

 

 「校長先生や相澤先生の言う通りよ、13号。だからあんまり気にしちゃダメよ?」

 

 「……はい!」

 

 「うんうん、いいお返事! ……にしてもおでん君は凄かったわねぇ、特注した0P敵ぶった切っちゃうし」

 

 「やはり光月の家系……いやそんなもの関係無く彼はもう……凄いな。何度か彼の姿を目にしたがいつもハチャメチャだ」

 

 「ここまでの暴れっぷりを見せた受験生はまずいないでしょうね」

 

 

 

 「―――すみません、遅れました!」

 

 「あ、遅いですよオールマイト! もう始めちゃってますよ!」

 

 

 

とある男性が会議室の扉を開け駆け足気味で他の教員の下へとやってくる。

額を露わにした荒々しい金髪にスーツに袖を通した骸骨と見違えるほどやつれた姿はとても平和の象徴とは言い難いものだった。

 

 

 

 「ごめんごめん……思いのほか長電話になってしまってね。それで今どの子について話をしてるのかな?」

 

 「光月おでんです。あなたもご存じだと思いますが」

 

 「光月……おでん? 少年だよね?」

 

 「ええ、そうです」

 

 「うーむ……光月……光月という名は知っているがおでんという少年のことは知らないな……」

 

 「奴の伝説というか噂というか……そういうのも耳にしたことはないですか? これがおでんの写真です」

 

 

 

相澤が手元のファイルに載ったおでんの写真をオールマイトに見せる。

けれどオールマイトはただ唸るだけだった。

 

 

 

 「むぅ……どこかで見た……こともないな。すまない、彼の名を聞くのも姿を見るのも初めてのようだ。ニュースも最近はあまり聞けてなくてね」

 

 「オールマイトなら出くわしたことくらいあると思ってたけど……案外世間は広いってことなのかしら?」

 

 「まぁ良いサ! 

  おでんについて知らない者もいるだろうし、おさらいがてらここで一旦彼について纏めておこうか。相澤君、頼めるかい?」

 

 「はい」

 

 

 

相澤は頷くとディスプレイの映像を変更し、あらかじめ用意しておいた映像へと切り替える。

その映像は光月おでんの経歴について簡単に纏めたものとなっていた。

 

 

 

 「ではまず彼の家系についてです。日本には毎代優秀なヒーローを輩出する家が幾つかあります。光月家がそのうちの一つです」

 

 「そしておでんは光月のご子息というわけなのサ。それくらいは知っているだろう?」

 

 「ええ。光月家出身のヒーローとは何度か共闘したことがありますが皆自他に厳しく正義感に溢れた者たちでした」

 

 「少々自意識が強すぎるところもあるみたいだけどね。この社会の平和維持に大きく貢献していることは間違いないだろう」

 

 「そんな家系の中で光月おでんは生まれた。生まれた時には大きな産声を上げたそうで光月家の方々はこれは大物だと頑固な顔を思わずほころばせたそうです」

 

 

 

まぁただの噂でほころばせたかどうかなんて知ったことじゃないですが

そう相澤は付け加え説明を続ける。

 

 

 

 「まぁ……それからの話を聞く限り綻ばせた顔はすぐに歪んだことでしょう。出産から1年が経った頃、普通の子どもであれば玩具を投げたりして笑っている頃合いですが……おでんは1歳の時、乳母を投げ飛ばしています」

 

 「乳母……って人を投げたのかい⁉ 生まれて1年の子どもが⁉ まぁ個性を使ったと思えば特段不思議なことはないのか……?」

 

 「いえ、彼は個性を使っていません。常時発動型の個性でも異形型でもないです」

 

 「個性を使っていない⁉ ……ということはつまり」

 

 「ええ、おでんは乳母を素の力で投げ飛ばしたということになります。自身の何倍もある大人をです」

 

 「……」

 

 

 

オールマイトは口をあんぐり開けたままありえないことを聞いたかのようにフラフラと椅子に腰を下ろした。

子どもが大人を投げ飛ばす。それだけならよくある話だ。この世界にはそれを可能にする個性がある。

けれど個性を使用せず投げ飛ばすというのはまずありえない話だ。それは個性が人類に発現する昔から科学が発展した今も同じである。

 

 

 

 「……凄いな光月少年は。それは噂になるはずだ」

 

 

 

創作の世界である金太郎と同じことをしでかしたのだ、そりゃ噂とも言われるよう。

けれど伝説というにはいささかインパクトに欠ける。まぁそこから脚色されていったのだろう

そうオールマイトは大きく口を閉じ思う。

 

 

 

 「まだ序の口ですよオールマイト?」

 

 

 

けれど彼の伝説はこの程度ではなかった。

 

 

 

 

 「彼が2歳の時には跳ね回る兎を捕獲する瞬足を示し、4歳の頃には大岩で山のヌシとなっていた熊を撃破、6歳の頃には敵と遭遇するも無事撃破します」

 

 「へ、へぇ……」

 

 「それからしばらくは大人しくなりますが親族との関係が悪化したのかより凶暴さを増します。10歳の頃には家の金を遊びに使い込み、そこでトラブルとなった敵数人と大喧嘩。敵と共におでんは逮捕され更生施設へと収監されます」

 

  

 「施設内でもトラブルがあったようですが数年経過し無事施設を出ることが出来たおでんは敵との遭遇はあれど収監されるようなことはなく雄英高校への出願を行いました。……が」

 

 「……まだ何かあるのかい? もう結構お腹いっぱいなんだけど……」

 

 「残念ながらあります。出願から数週間後……今日からちょうど半年前のことです。燃え盛るビルの中敵が市民を人質に立てこもった事件がありました。この事件を耳にしたことは?」

 

 「勿論あるさ。私やエンデヴァーたちは別件にあたっていたからそこに向かうことは出来なかったが人質は全員無事に救出出来たと聞いている」

 

 「他にその事件について覚えていることはないですか?」

 

 「他に? ……確かその事件では敵だろうがヒーローだろうが問答無用で倒した男がいたというような話を聞いたような…………ってまさか」 

 

 

 

オールマイトが首をグインと曲げ相澤の方を見る。

相澤はその視線に静かにうなずいた。

 

 

 

 「ええ、そのまさかです。光月おでん、15歳。詳しい事情はわかりませんが燃え盛る炎の中人質の前に立ち敵もヒーロー問答無用で吹き飛ばしたとのこと。結果また収監されることとなったのですが今回は人質の方々の嘆願もあり半年で釈放、まさかまさかのその足で雄英高校を受験しに来たというわけです」

 

 「本来であれば道具の持ち込みが可能な技能試験に校内に生えた木を用いて挑み、特注0P敵も撃破……か」

 

 「ええ。これが今日までの光月おでんの大まかな経歴です」

 

 

相澤はディスプレイに表していた映像を終了し、元の画面へと戻す。

映像の光を失い部屋はまた薄暗い空間へと戻った。

 

 

 「ご苦労様だったね相澤君。纏めてくれてありがとう」

 

 「いえ、仕事ですし合理的に進めるにはまとめた方が良いと判断したまでですから」

 

 「そうかい、良い判断だね。……さてここまでおでんの伝説と呼ばれる経歴を見てきたわけだが……

  この伝説を伝説とたらしめる最大の要因は……彼が無個性であるということサ」

 

 「光月少年が無個性⁉ アレが無個性だとはとても……何かの間違いでは?」

 

 「仰ることもわかります。ですが何度検査を行っても個性因子は確認できなかったそうです」

 

 「…………マジか」

 

 「あら? 平和の象徴もこれにはびっくりかしら?」

 

 「…………ホーリシットだ、まったく。こうして話を聞いてみてもとても現実のことだとは思えないよ」

 

 

 

オールマイトは指の腹を額の前で合わせため息を吐く。

この超常社会においてありえない・到底想像できないものを聞いたというのが彼の本心だった。

 

 

 

 「長くなりましたが彼は技能試験で会場にいる仮想敵を次々と打ち倒し、他を庇うように0P敵の間に割ってはいりこれもまた打ち倒しました。

  想定していたとはいえ予め用意していた保険を使わざるをえない状況に持ち込まれたことも彼の規格外さを示しています」

 

 「当然技能試験の成績はトップ! 筆記の方も学校に行っていた期間の短さを考慮しても良く出来ていたね」

 

 「……では光月少年は雄英高校に?」

 

 

 

調子を取り戻したオールマイトが根津に問いかける。

先ほどの話についてはまだ半信半疑だが試験の映像に偽りはない。彼に個性があろうとなかろうと既に相当の実力を持っていることは知れたことだった。

そんな彼がヒーローを目指しこの雄英高校で励めば更に強く、次代の平和の象徴となりうる存在となるのではないか。

そんな思いを持って問いかけるオールマイトだったが、根津は首を横に振った。

 

 

 

 「試験の成績は素晴らしかった。けれどこのまま彼をここに迎え入れることは出来ないのサ」

 

 「えっ……何故、どうしてです? 試験の成績はトップ、筆記も悪くなかったのでしょう? なら入学に問題は無いはず……」

 

 「一つ、問題はあるのサ。確かに彼の筆記は学校に行っていないことを鑑みればすこぶる良く出来ていて、それを考慮しなくても良い出来だった

 

 

  けどね学校に行っていないぶん――――――彼の内申が足りてないのサ

 

 

 「内申⁉」

 

 

 

雄英は超難関校と言われる高校だ。筆記も実技もトップレベルを要求されるが、当然要求される内容には内申も含まれる。

学校にいた時期といなかった時期がほぼ同じくらいのおでんの内申はかなり悪いもので雄英高校が要求する内申には遠く及ばなかったのだ。

 

 

 

 「雄英高校を受験する際の内申比率は低くはない。例年ならまだしも今年ボーダーが高かったことも相まっておでんは合格ラインに達しなかったんです」

 

 「と言ってもギリギリだったけどね。筆記がもう少し取れれば合格ラインに達していただろう」

 

 「そうですか……」

 

 「でもこのまま彼を野放しにしていいのかしら? 多分他の高校は受けてないだろうし……余計に手が付けられなくなるのでは?」

 

 「勿論わかっているとも。彼は優秀な子であると同時に危険な子でもある……どうやらあの制度を使うタイミングが来たようだね!」

 

 「あの制度……とは?」

 

 「長らく使用されず形だけ残っているものだが使えるはずサ! いや……『使える』じゃない。『使うべき』だと僕の第六感が言っているのサァーー‼」

 

 

 

 

根津校長は紅茶をグイッと飲み干しキメると目をギラギラとさせ雄たけびを上げる。

その光景は雄英高校の教員であっても異様なものに変わりなく、その日から雄英高校の教員らと根津校長の間には少しだけ溝が生まれたとか何とか。

そんな状況で新年度へ向けた準備は着実に進んでいった。

 

 




滅茶苦茶長くなってしまいました……後日分割するかもしれません。
でもキリが悪いよなぁ……ムズカシイ
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