Fate/The Fatal Error   作:紅赫

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戦闘ゼロパートです。


ソラの魔術師

 

 

 阪東葛木。彼は15歳になる頃には既に己の起源を完全に理解していた。

彼はその力を自在に使いこなし、本来起源の奔流に押し潰される人格を才能だけで保ち続ける事に成功する。

 

 かつての天体科においてロードの地位を争ったとされる阪東家の中でもとびきりの魔術師であり、当然その力を抑えること無く披露した阪東は封印指定を受け、追われる立場となった。当然多数の執行者や代行者が襲いかかってくる。

 しかし『宇宙(ソラ)』を統べる彼にとってそれらは足元にも及ばず尽く全滅。

 

 彼によって執行者、代行者の大半は死んだと言っても過言では無い。

 

 かの第二魔法の使い手、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグからも『想定外の存在』と言わしめる程である。

 このように阪東は規格外の魔術師であり、その片鱗を見せれば世界すら危ういというのはこの惨状を見れば明らかである。

 

「ま、証拠隠滅にゃ丁度いいんじゃねぇかァ? あんな派手にやりゃ目撃者も多い。ぶっ殺す手間が省けたな、監督役さんよォ」

「それでもやり過ぎだと思うのだけれど。 抑止力に目をつけられても知らないって私言ったはずよ? あとここ寒いから戻してくれないかしら」

 虚空から姿を表す絡果は呆れながら寒そうに常識を問う。

 

「ハッ、ンなもん直接叩き潰しゃいい話だろ?」

「バンちゃんは脳筋過ぎだし、絡果は相変わらず急に出てくるしでもうめちゃくちゃ⋯⋯」

 地表が水星から本来のものへと戻り、色々と急激に変化する環境についていけない輝愛。

 

「あまりこういう事を言いたくないのだけれど、少し忙しくなりそうだから今日は切り上げてくれる? これ以上続けられたら追加の事後処理しないと行けなくなるの」

「アタシはいいよー、バンちゃんの魔術見れたし」

 

「ま、オレも久々にぶっぱなせたし構わねぇよ。⋯⋯バーサーカー! 帰んぞ!」

「⋯⋯了解した」

 阪東が上を向き叫ぶ。その方向には空中で佇むアルジュナがゆっくりと右腕を上げる。

 

 すると巨大な黄金の戦闘機のような飛行物体が現れる。

「あーあ、宿もぶっ飛ばしちまったし野宿一択じゃねぇか⋯⋯」

「⋯⋯」

 

 その飛行物体に飛び乗った阪東は不満げにボヤく。そしてその飛行物体は超高速でどこかへ飛び去ってしまった。

「何アレ、今度乗せてもらおっと」

「あら、随分と余裕ね」

「余裕無いけど出来るだけ仲良くしたいじゃん? バンちゃんは敵だけど楽しい人だし」

 

「⋯⋯これを見てそう言える貴女は中々に狂ってるわよ。本当に一般人?」

 更地と貸した横浜の1部を見渡す2人。

「ま、ここまで来ればもう何でもありっしょ。それに、アタシは一般人じゃないし」

 

 二ヒヒ、と笑う輝愛を見た絡果は彼女が生粋の暗殺者だということを思い出す。

「⋯⋯そうだったわ。もう既に壊れているのね、貴女」

「あはは〜」

 その笑顔の下に何が渦巻いているのか、それを読み取った絡果は珍しく人の感情に恐怖し、同時に⋯⋯。

 

「じゃ、アタシは帰ろっかな。大福が茶々入れてこないのは珍しかったけど」

『俺が喋るタイミング無かったからな。ま、でも色々課題は見つかったろ』

「だね〜、というかうっちゃん生きてるかな? ⋯⋯じゃね、絡果」

 

 輝愛は最後に手を振って瓦礫の隙間に消えて行く。角を通しての帰宅である。

「中々面白い人も居るのね。アーチャーは⋯⋯既に離脱済みかしら。警告する必要が無いのは有難いわ」

 

 現地で確認するべき事柄が残っていない絡果は次の目的地へと向かう。

「まあ、彼女が最後に残るかは分からないけれど。楽しみだわ」

 そう呟いた瞬間、絡果の景色は別ものへと変化していた。

「さてと。私も監督役の仕事をしないとね。⋯⋯千衣寓くん、いるかしら?」

 

 薄暗く少し狭い部屋には所狭しとゴミ袋が置かれており視界が悪く、床には細々としたゴミが幾つもあり衛生的にもいいとは言えない。部屋の奥からは辛うじてPCモニターの光とカタカタと鳴り響く音が聞こえるくらいで、他に何か受け取れる情報が無いくらいには不便で散らかっており、絡果的にもあまり居たくない場所なのだ。

 

「おー? 絡果ちゃん、いるおー」

 曇った低い声と喋る度にねちゃねちゃと音が聞こえてくる。

「私、そっちに行きたくないのだけれど要件だけ伝えていいかしら?」

「聖杯戦争の情報処理ならおでがやっとくから心配しないで欲しいお」

「そう、助かるわ」

 

 そう言って部屋の扉から外に出ようとした時。

「絡果ちゃん、お礼忘れなちゃダメだからね!」

 その言葉で絡果の表情が露骨に悪くなる。彼女にとってその感情は未だに理解し難いものであり、それは世のモラルに反している。

「分かっているわ。ちゃんと送る」

「デフフ、助かるぉ」

 

 嫌悪感からすぐさま扉を開け、一度部屋の外に出る。そこは千衣寓がいた場所とは違い、清潔感のある白い廊下だった。

『マスター、それはセクハラという⋯⋯』

「うるさい! 絡果ちゃんがいいって言ってるからいいんだ!」

 自動で扉が閉まる最中、奥から2人の話し声が聞こえてくる。

 

 

「優秀なのは分かっているのだけれど、あまりにも⋯⋯」

 千衣寓仁斗。彼は今回の聖杯戦争に参加するマスターの1人であり、セイバーを従えているのだが、生活習慣に問題があり、絡果もあまり関わりたくない人間の1人だ。

 すぐさま転移をすればいいのだが、嫌悪感から転移よりも部屋の外に出ることを優先してしまっている。

 

 千衣寓はインターネットの情報戦に強く、ありとあらゆるコンピューターに侵入出来るハッキング技術を使えるため現代の聖杯戦争においての情報封鎖の役割を依頼している。その報酬が⋯⋯

「何故私の写真なのかしら、理解に苦しむわ」

 

 そして手元のスマホを取り出し、メモ帳を開く。

「サーヴァントも強力な神霊だというのに⋯⋯本当に惜しいわね」

 その欄に書かれていたサーヴァントは。

 

 

『千衣寓仁斗 サーヴァント セイバー スルト』

 

 

 

ーーー

 

 

 

 翌朝。自室で目覚めた俊介は昨日の出来事を思い出していた。

俊介の自室は2階にあり、一般的な家庭と同じような思春期男子が不便無いくらいの広さである。

 

 エルキドゥと合流した俊介は一般人の避難誘導を行おうとしていた。

しかし、突如として起きた爆発により周辺一帯は一般人諸共文字通り跡形もなく消し飛んでしまった。

 俊介はエルキドゥに令呪を使用し安全圏へと運んでもらったものの、自分だけ生き残った罪悪感に胸が支配されている。

「⋯⋯」

 

 その後、輝愛に生存報告の後に爆発がサーヴァントの宝具では無く対峙していた阪東の魔術という事を知り、止めるべきだったという後悔もオマケ付きだ。

「仕方ないよ、マスターは出来ることをしていた。これは彼が規格外の力を⋯⋯」

「エルキドゥ、それは言い訳だ。僕が弱かったから守れなかった。そういう事なんだこれは」

 

 改めて時計塔に在籍している師匠に確認を取り、阪東の経歴を調べた俊介は対処法に悩んでいた。

「封印指定の魔術師、それも追手を全滅させているような化け物中の化け物⋯⋯」

 

「オレの話か?」

 と、くぐもった声が窓の外から聞こえてくる。

「!?」

 外を見るとベランダに金髪でサングラスを掛けた男、阪東葛木が立っていた。

 

「阪東⋯⋯何故ここに⋯⋯」

「オイオイ睨むなって。別にオレァ戦いに来た訳じゃねぇ。テメェに渡すもんがあって来たんだよ」

 そう言った阪東はベランダの扉開けてくれとノックする。

 

「はぁ⋯⋯で、どうして僕の場所が?」

「何、簡単な占星術だ。星読みは魔術師の嗜みだろ?」

 訝しみながらも扉を開けつつ、1枚の紙を受け取る。

「これは?」

「ァ? オレの連絡先だゼ。輝愛に渡しといてくれ」

「⋯⋯神崎さんに直接渡せばいいだろ。何故僕経由で」

 

「あー、輝愛のヤツ、占星術で見えねぇからよォ、仕方なくテメェで占ったんだ。中々外れることねェってのに」

 阪東は用事は済んだと言わんばかりにベランダから飛び降りる。

 

「夜またやり合おうぜ。今度はテメェとだ、宇都宮!」

「律儀というかなんというか⋯⋯。ああ! わかった!」

 

 そうは言ったが俊介と阪東の戦力差は圧倒的だ。戦闘経験の有無もあるが、そもそもの実力が段違いである。それを理解しているにも関わらず、彼は承諾した。

 

 

 しかし、本来の夜は来ず、この約束は無効となるという事をこの時はまだ知らなかった。

 

 

 




少し少なめですね。そろそろ全クラスのサーヴァントを出したいですが、まだまだ先になりそうですね。
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