Fate/The Fatal Error   作:紅赫

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なんかハロウィンイベントでアジ・ダハーカっぽいのが出てきてしまったので、このタイミングで少し情報開示しておきますか。まぁ、マザーハーロット説の方が大きいですが。


聖杯創造

 

 

「回避ぃぃぃぃ⋯⋯! ⋯⋯っん?」

 輝愛達はスルトの一撃をなんとか回避する準備をしていたが、ソレは寸前で止まる。

「神崎さん、あれ見て⋯⋯」

「⋯⋯いや見えないし、アレやってアレ」

 

 緊張感が無いなぁ、となんとも言えない目を向けながら俊介は以前行った視覚とアプリの同調魔術を行う。

「うっちゃんさんくす。⋯⋯ってキャスターじゃん!? やっぱアイツかー!」

「お? ンじゃあやっぱ今回のキャスターがこの空をつく⋯⋯オイ、下がれバーサーカー」

 

 阪東の背後にはいつの間にか現れていたアルジュナがアジ・ダハーカへと向かおうとしている。

「何故だマスター。私の使命は悪性を滅ぼす事。あの見るからに邪悪な存在をこのまま生かしておくことは⋯⋯」

「やめとけ。⋯⋯本音言ゃあどっちでもいい。だがな、アイツはまだやめておけ。アイツは強ぇ。今ここでまともにやり合ったとしてアンタが勝てる確率は5割がいいとこだ。まずはアイツの手札を確認しろ、ンでそっから⋯⋯」

 

 そう話している最中、街が滅びの領域に染まる。その範囲内にいるはずの輝愛達は何故かその影響は無く、景色は何も変わらない。ただ、一定の距離より外は呆れかな魔力の闇があり、出れば即座に死ぬことは周りを見れば明らかである。

 

「いや、急展開過ぎてアタシ着いてけないんだけど?」

「⋯⋯あー、なるほどコイツァ都合が良かった。テメェらこの円の外から出んじゃねぇぞ。確実に死ぬ。良かったなァ? オレが結界張ってて」

 そして阪東は即座にこの滅びの領域の本質を見抜く。そのサングラスの下にある蒼色の魔眼は捉えていた。

 

「とりあえず出りゃ死ぬ、出なきゃ問題ねぇ。コイツはそういうやつだ。だから宇都宮も出んじゃねぇぞ」

「⋯⋯どうして僕らを守るんだ、敵同士だというのに⋯⋯」

「ア? テメェとは約束したろ、殺り合うってな。だからそれまで死なれちゃ困る。オレは楽しけりゃそれでいい、即死なんざ芸がねぇ」

 

 ただの快楽主義、戦闘狂な阪東だが約束は守る。己で決着を付けると決めたら譲る気は無いのだ。

「⋯⋯でさ、どすんの? このままアレ眺めてる気?」

 

 そう言って輝愛が指を指すとアジ・ダハーカが聖剣を創り出し、光の粒子を放っているところだった。

「うお、マジカルパンチじゃなくてビーム出してるし! ちゃんとキャスターしてる!」

「剣からビームはセイバーの領分な気はするが⋯⋯」

「ビーム出してればキャスターだし!」

 

「輝愛、マジで魔術の魔の字も知らねぇのか」

「全っぜん知らないかなー? なんならマジでグレムリンの真似してたらこうなってたって感じだし。⋯⋯それより、何か対策ある?」

 そう尋ねられた俊介はえー? 、と唸り困惑する。

 

「とりあえずこれ以上被害者を出すわけにはいかない。マスターを探そう。マスターさえ倒せばサーヴァントは現界出来ない。スルトにしろアジ・ダハーカにしろあれほどの存在の魔術を発動させながら現界の維持を出来る魔術師はそう多くないからな」

 そう話す俊介に珍しく気まずそうな阪東がおずおずと口を開く。

「なァ⋯⋯ちぃと言いにくいんだがよォ⋯⋯」

「「?」」

 

 

「アジ・ダハーカってヤツ、多分マスター居ねぇわ」

 

 

「「???」」

 阪東の発言に困惑する2人だが、ここで話の腰を折ってはいけないと判断し続けて、と促す。

「アジ・ダハーカから魔力が供給される流れっつーかさ。そういうのが見えねぇンだよ。だからアイツ、多分マスターそのものがいなくて、魔力は自給自足で補ってやがる。」

「⋯⋯じゃあアレもその魔力で? 明らかに足りな⋯⋯っ!?!?」

 

 俊介の言葉が途切れた瞬間、衝撃が襲う。それは炎の剣と合成された宝具が撃ち合い、そしてスルトの身体が斬られた結果のものである。

「あ、明らかに足りない! あれ程の魔力は何人もの一般人から無理矢理魔力を吸収しなければ⋯⋯いや、その為のこの領域?」

「いい線行ってるゼ、流石宇都宮。だがコイツにその効果はねぇ。オレにはそれが視える」

 

「⋯⋯?」

「だから多分、殺るべきはスルトのマスターだ。それなら辛うじて視える」

そう宣言した阪東は下を指差す。

 

「ンでソイツァ、地下にいやがる」

「地下って言われても⋯⋯ざっくり過ぎない?」

「だから今から探ンだろうが。で、宇都宮。テメェの出番だ」

「⋯⋯言いたいことは分かった。要は周辺の監視カメラを手当り次第魔術でハッキングしろという事だろ?」

 

「分かってんじゃねぇか。どうせ電気なんざ通ってねぇ、それでも記録に直接アクセスすりゃいける。できるか?」

 それは宇都宮家の魔術の特色である現代技術に干渉する力を信じているからこそのもの。時計塔ではなし得ない別ベクトルの魔術だ。

 

「出来なくはないが問題が2つ。ひとつは範囲が広すぎて特定まで時間がかかる事。もうひとつはこの街全体の監視カメラを観て記録を遡るには時間がかかり過ぎる。同時に全てを行うには僕の容量が足りない。少なくとも30分以上は⋯⋯」

「なら、遡るのはオレがやる。魔術的情報を常時共有する事ァできるか?」

 

「やり方は知っている。ただ少し時間がか⋯⋯」

「ならいい。もう組んだ。ほら背中向けろ。ンでいつもの感覚だ」

 この魔術は基本もっと大掛かりな術式であり、短時間で行えるものではないが、阪東は実質一瞬で行えるため問題は無い。

 

「流石に便利過ぎるだろ⋯⋯ほら、早く書け」

 俊介はシャツをたくし上げ、阪東に背中を向ける。

「中々鍛えてるじゃねぇか。見直したぜ」

「お? なになにサービスシーン?」

「はやくしろ⋯⋯って神崎さんまで⋯⋯」

 

 阪東は指で魔法陣を、俊介は爪で親指の血管を小さく切り出血させる。

「アタシやる事ないから茶化す事しか出来ないんよね。まあ、マスターのとこに攻め込むならアタシが先行するけど」

 

「すぐ終わっからよ。⋯⋯ほら出来たゼ。後はテメェの血を⋯⋯っと」

そう言って阪東は俊介の親指から血を人差し指で掬い、ペロリと口にする。

「準備できたぜ、始め⋯⋯」

 

 その言葉を言い終える前に阪東は目にしてしまう。スルトが黒い腕に取り込まれていく姿を。

「分かった」

 

 目を瞑り、静かに親指から血液を地に垂らす。

 落ちた血液から波動が生まれ、その波動は徐々に大きくなる。

 それはほんの1分で終わり、同時に阪東も観測を終える。

 

「終わった。阪東、いけるか?」

「もう終わった。魔術に関しては全部一瞬で終わる。オレの宇宙で全部観測して、そこの時間を加速させりゃいいからな」

「⋯⋯本当に規格外の魔術師だ」

 

 俊介が捉えた監視カメラを阪東が自身の宇宙内で過去の記録を覗く。同調と呼ばれるこの魔術、実はあまり使い道が無いためマイナーな魔術として知られている。

「テメェも大概だけどな?」

 宇宙を極めた魔術師と、現代に生きる魔術師。即座にこれを行えるのは地球上でもこの組み合わせしかいないのだ。

 

「地下への入口はここだ。アルジュナ、ついてってやれ。宝具で一直線、この領域を斬り裂きゃ終わる」

「宝具を他のマスターに見せるのはあまりいい判断とは思えないが⋯⋯」

「お前オレのサーヴァントだろ、いいから従えってんだ」

 その言い方は乱雑だが、そこに浮かぶ笑みは間違ってないから信頼しろ、というもの。

 

「それに、テメェはこの世界のサーヴァントじゃねぇんだろ? だったらいいじゃねぇか」

「⋯⋯それもそうだな」

 自嘲する意味合いを込め、小さく笑うアルジュナは輝愛達に被害が及ばないくらいに浮遊する。

 

 

「世界の歯車は壊れた」

 

 

 アルジュナがそう呟くと、その背後にあったガーンディーヴァや惑星のような球体が巨大な黄金の剣へと変化する。

 

 

「今こそ粛清の時、今こそ壊劫の時」

 

 

 その剣に関する伝承、それはこの世に無い。ただ世の終に神が振るうという言い伝えがこの世界ではない別の世界に残っている。

 

 

「我が廻剣は悪を断つ」

 

 

 その一撃はあらゆる邪悪を滅ぼし、滅するもの。その名は⋯⋯。

 

 

帰滅を裁定せし廻剣(マハープララヤ)!!!!」

 

 

 頭上からの一振り。その力は大地を裂き、その道を示す。滅びの領域は分断され、効果が一部消滅している。

 

 アルジュナの宝具帰滅を裁定せし廻剣(マハープララヤ)は悪属性への特攻を持つ対界宝具であり、滅びの領域への攻撃は相性がいい。

 それでも威力を抑えに抑えたものであり、約13km先にある千衣寓の拠点入口までピッタリ吹き飛ばしている。

 

「⋯⋯絶対コレキャスターにぶっぱなした方が良かったじゃん!」

「ンや、これでいい。輝愛と宇都宮はあっちに迎え。⋯⋯アルジュナァ! お前はコイツらを手伝ってやれ!」

「⋯⋯!」

 

「バンちゃん、ほんっとに言うけどアタシ達一応敵なんだよ? そんなに助けちゃっていいの?」

 珍しく困惑している輝愛。

 

「いい。アイツの事も信頼してやってくれ。テメェらはもう少し必要になってくる」

「どうしてそれが分かるんだ?」

「察せよな宇都宮。単なる占星術(星占い)だ」

 

 そう言って阪東は領域外から海岸の方へと飛び出していく。

 

「行こう。私にもどういった意図かは不明だが、マスターの命令に従うのがサーヴァントの務め。それに反すれば私自身が悪になる」

 

 

 

ーーー

 

 

 

『おのれぇぇぇぇぇ!!!! この俺をぉぉぉぉ!!!! 器にするつもりかぁ!邪龍!!!!』

 そう叫ぶのは黒く伸びる腕に抵抗しているスルト。

 

「無論」

 そう小さく答えながら、アジ・ダハーカは平坦な路上に直径10mの魔法陣を展開する。

「なんの器か、オレも気になるなァ、アジ・ダハーカ?」

「⋯⋯先の一撃、貴様のサーヴァントか」

 魔法陣の外、アジ・ダハーカの背後に立っていたのはサングラスを掛けた魔術師、阪東葛木だった。

 

「テメェのソレ、何となく予想がつくぜ。聖杯作ろうとしてんだろ?」

「ほう、察しがいいな」

 そう、アジ・ダハーカが行っているのは聖杯創造の魔術。それをスルトの魔力と肉体を器にして行おうという考えなのだ。

 

「それで? 貴様はどうしたい?」

「ま、もちろん止める。ただひとつ、いや幾つか疑問に思った事がある。⋯⋯本来アヴェスターはアジ・ダハーカが持ってるもんじゃねぇ、後の世で作られた教典だ。ソレをなんで持ってやがる」

 

 即座に宝具の真名を看破、そしてサーヴァントとしての矛盾を問う。

「もう1つ。テメェの後ろにあるその光の輪っか。確か『輝く光輪』だろ。なんであんだよ。伝承じゃァソイツはお前が持ってていいもんじゃねぇ」

 

 輝く光輪とはゾロアスター教の聖なる炎の神、アータルと奪い合ったとされる光の輪だ。

「ソイツに関しての伝承は知らねぇ、だがな。テメェの存在は歴史と違ぇんだよ。それともアレか? それがテメェの『Fatal Error』か?」

 

 アルジュナという明らかに異質なサーヴァントを召喚している以上、Fatal Errorに関してある程度の予想をつけることが出来るのだ。

「ふっ、なるほどな。貴様程の魔術師と言えど、真理に辿り着くにはまだ遠いか」

 

「ア?」

「だが気に入った。相手をしてやろう、確か阪東と言ったか? 儀式の準備をしながらでも貴様の相手は可能だ」

その邪龍は顔を歪ませ、愉快そうに笑う。

 

「面白ぇ、一回殺り合ってみたかったんだよな、テメェはここで脱落だ。行くぜ、アジ・ダハーカ?」

 互いが帯びる尋常ではないレベルの魔力が辺りを支配する中、超越者たる2人は互いに最速で魔術を行使する。

 

 

 




知り合いの絵師さんに一部イラストを頼んだのですが、今年中は厳しいと言われましたので、挿絵は二章からにしますね。
次回は坂東とアジ・ダハーカの対決です。今回は坂東主人公回でしたね。
ここで少しネタバレを。二章からは一章以上にサーヴァントが登場します。誰を出すかは決めていませんが、更に戦闘が激化するというのを伝えておきます。
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