Fate/The Fatal Error   作:紅赫

14 / 32
一日で書いたってマジ?


三つ首の邪龍vsソラの魔術師

 

「さァて、こっからが本番だ」

「見せてみろ、賢者」

 魔術の発動はアジ・ダハーカの方がコンマ数秒早かった。天空から数十ものレーザーが降り注ぐ。その光は聖剣と同種のものであり、一つ一つに並の宝具以上の威力がある。

 

 それを阪東はまるで分かっていたかのように隙間を抜けて距離を取りつつ回避、その最中にアジ・ダハーカへと腕を向けてフォーカスを合わせる。

「初手からコレたァ、殺す気だなァ?」

 

 その手に魔法陣が浮かび、焔色の畝る熱線が放たれた。5000度以上にもなるその炎は瓦礫や地面を溶かしながら突き進む。

「これは⋯⋯太陽か。擬似的にレーヴァテインと同種の炎を作り出すとは中々面白い」

 

 この熱線は阪東が保有する宇宙から太陽のプロミネンスを収束し、放つというもの。阪東がよく使用する攻撃手段だ。

「展開"理の原典(アヴェスター)"模倣"日輪よ、具足となれ(カヴァーチャ・クンダーラ)"」

 

 それを防ぐべくアジ・ダハーカは黄金の鎧と耳飾りを作成。太陽と同じ輝きを放ち、光そのものが形となったインド神話の英雄カルナが保有している宝具である。

 太陽の属性を持つこの鎧と阪東の熱線は同じ太陽であるため攻撃は通らない。

 

 が、熱線を棒立ちで防ぎきった瞬間、アジ・ダハーカの腕が爆散する。

「なっ!?」

「チッ、腕だけか。身体ごとぶっぱしたかったんだがなァ」

 

 太陽の属性が付与されればそれは「太陽である」と仮定できる。

 その太陽を阪東の熱線が捉え、侵食。アジ・ダハーカそのものを太陽という惑星と認識し、擬似的な超新星爆発を引き起こそうとしたのだ。

 勿論、そんな理論にすらならないような魔術を時計塔で発表しようものなら一笑され笑いものにされるだろう。

 なぜなら阪東以外に使用は不可能なのだから。

 

 阪東は相手の実力を認め、自身の礼装を展開。一件単なる茶色のロングコートだが、魔術的防御や魔力の循環のアシストといった効果が複数備わっている。

 

 アジ・ダハーカの腕は一瞬で再生。ボトボトと落ちる血溜まりからはアジ・ダハーカと似たような爬虫類が生み出される。一回り小柄で、首もひとつ。しかしながらアジ・ダハーカと同レベルの神性を保有している。

「面白い。貴様はあのデカいだけの雑魚とは違うようだ」

 

「再生はえぇよ、まァそっちの方が手応えあるしいいけど、なァ!」

 阪東が叫んだ瞬間、辺り一帯に赤い落雷が天上から飛来する。これは超高層紅色型雷放電(レッドスプライト)と呼ばれる雷雲上で起こる放電現象だ。

 

 アジ・ダハーカはその放電に対抗するべく、ひとつひとつをレーザーで相殺していく。

「児戯!」

「うるせェ! アニマ・アニムスフィア!」

 

 一瞬の落雷。それを阪東が縫うように飛び、天空で腕を掲げる。その宙に浮かぶのは星を象る回路。そこから放たれるのは幾つもの隕石。

 アニムスフィア家の秘術のひとつ。一度目にしただけで完全にコピーし、神代では無い為理想魔術とはならないが、自身の宇宙から引き出せる膨大な魔力と宇宙という起源の神秘性が合わさり、一度でもその身に受ければサーヴァントですら無事では済まない程の威力がある。

 

「まだまだ終わんねぇぞ!」

 更にその上、全く同じものを2つ創り出し、数を重ねる。

「⋯⋯"理の原典(アヴェスター)"魔力供給完了」

 

「模倣"最果てに輝ける槍(ロンゴミニアド)"」

 星が落ちる光景を一瞥し、アジ・ダハーカは冷静に魔術を行使する。現実と幻想を繋ぎ止めるこの槍は神秘に満ちた聖槍。本来使うことが出来ないその槍をアジ・ダハーカは『原点を書き換える』ことで可能としている。

 

「複製"最果てに輝ける千槍(ヘザーロンゴミニアド)"」

 そしてたった一節。千を意味する詠唱を付け加えるだけでその神秘の聖槍は千にまで数を増やす。ただ浮遊する聖槍はかのギルガメッシュが使用するする宝具のように浮遊している。

 

「なんでこうなっかなァ⋯⋯?」

 勿論阪東自身、ロンゴミニアドに関する伝承を知っている。それ故に宇宙を内包する彼であっても千もの聖槍にドン引きしてしまった。

 

「石礫を撃ち落とすには些か綺麗過ぎたか?」

 その文言を口にした瞬間、全ての聖槍が光を放ち、余波で地上を抉りながらアジ・ダハーカに落ちてくる隕石を全て粉砕する。

 

「オイアニムスフィアァ! もっといい術作れやァ! 何が秘術だ! ちっとも効きやしねぇぞ!」

 アニムスフィア家に毒を吐きつつ、阪東は小規模の臨界寸前のストレンジ物質を放つ。

 

 それをアジ・ダハーカの前で臨界させ、周辺の崩壊を引き起こす。

 ストレンジ物質とはあらゆる物質、空間の法則すらねじ曲げ、崩壊させる宇宙物質だ。

 

 宇宙の誕生に関わるとされる物質であり、触れれば消滅は免れない超危険なものである。

 それをアジ・ダハーカはその物質の時間を停止させることで食い止め、即座に別の次元へと追放する。

 

 直接阪東の時間を止めようとしないのは阪東の抵抗力が高いと分析しているからである。抵抗力が高ければこういった直接干渉する魔術は効かない。ならば無駄な手順を踏む必要は無いという思考である。

 

 魔術的な強度とも言えるそれは阪東の使用する魔術にも言えること。但し、ストレンジ物質は宇宙から直接取り出したものであり、それらは魔術では無い為強度は無い。

 

「貴様が我を見下ろしているというのはあまり気分がいい光景ではないな」

「させっかよ、テメェは一生オレの下だ」

 アジ・ダハーカは阪東にかかる重力を操作。上空に位置する阪東を突き落とそうとしたものの、少しふらついた程度に収まる。彼が同じく重力で相殺しているのだ。

 

「その両方からの圧力、長くは持つまい? 死に急ぐ気か?」

「俺は平気なんだよなァ」

 地球では異常をきたすほどの重力が拮抗しており、更にその中心に阪東がいる。普通の人間であればペシャンコなのだ。

 

「テメェ、重力での遊びが好きなのか? ンだったらちょったァ付き合ってやるよ」

 阪東がアジ・ダハーカへと手を向ける。するとアジ・ダハーカの背後には黒く染まった重力の渦が発生する。

 

「これは⋯⋯」

「知ってるよなァ? お馴染みのブラックホールってヤツだ」

 星の終わり、巨大な惑星が消滅する時に重力の畝りによって発生する光さえ飲み込む強大な渦。ブラックホールである。

 

「その程度」

 あらゆるものを星ごと吸い込みかけた時、それは同じ出力の重力によって相殺され、自然消滅。

 そしてこの時、アジ・ダハーカは感じた。

 

「ここまで楽しませてくれるのは久々だ!貴様には我が宝具を食らう価値がある!」

 パラパラと捲れるアヴェスター、それをパン、と音を立てながら閉じる。

 

 

「我が悪神の主よ」

 

 

 周囲の空気が冷えるような錯覚。それはアジ・ダハーカの言葉によって引き起こされたもの。背には光輪が現れ、音もなく光の速さで回転する。

 

 

「その威光をもって全てを混沌で埋め尽くし、聖なる原典すらも塗り替えよ」

 

 

 景色は何も変わらない、しかしアジ・ダハーカが纏う魔力と負のエネルギーがあらゆる概念を殺し、その重圧で辺り一帯の瓦礫や地面は潰れ、アジ・ダハーカが立つ地のみが相対的に浮き上がる。

 

 

「そして我が一撃をもって常世の一切を灰燼と化せ」

 

 

 世界そのものに滅びの概念を。そしてかつての世界の滅びと同じ現象、同じ世界を。原典に示された通りそのまま現世に写し出す。

 

 

「全ては邪な原典が示す導きのままに」

 

 

 その災厄を齎す宝具の名は⋯⋯

 

 

災禍満ちる原典の導 (アンラ・マンユ・アヴェスター)

 

 

 アジ・ダハーカから漆黒の光が放たれる。ソレは物質を滅ぼし、空間を滅ぼし、時を滅ぼす破滅の光。あらゆる概念を滅ぼす災禍の渦。あらゆる生命は死に絶える事を予兆させる滅亡の凶星。

 

 

 その直線上に居た阪東は回避行動を取り、射程外へと退避。しかしその結果⋯⋯。

 

 その上に存在していた月が死滅し爆散する。

 

 

 余波は地球まで届き、叩きつける風は大地を揺らす。

 その光景に唖然とした阪東はアジ・ダハーカを眼下に捉える。

 

「アイツ、マジかよ」

 

 消費した魔力は既に全回復しており、傷一つ無い。

 

 対大陸宝具災禍満ちる原典の導 (アンラ・マンユ・アヴェスター)は『かつて滅びた地球』が書かれた原典の光景を再現するもの。対大陸と言えどその力は対界宝具にも匹敵する程の威力を誇る。

 

「なんだ? 怖気付いたか? 」

 挑発するような声色で阪東に尋ねる。

「ま、ここまでやるって分かりゃ十分だろ。やっぱ今ここで殺すにゃチィと時間が足りねぇなァ」

 

 しかし、戦いを楽しみながら冷静に分析し、自身の役目を果たそうとする阪東にその安い挑発は通じない。

「何を言っている?」

「ンでもねぇよ。しっかし、結構手札晒したつもりなんだがなァ。しぶてぇのはお互い様か」

 

「何を言っている? 貴様が死なない程度に遊んでいるだけの事。この程度で死なれては宝具を使った意味が無い。そういう意味では、宝具を避けずに防いで欲しかったのだが」

「アレを? 何勘違いしてんだ。オレァ人間だ。サーヴァントじゃねぇ。そういう撃ち合いはサーヴァント同士でやれ」

 

 今更ではあるが、阪東は魔術師である。本来前線に出るはずが無く、サーヴァントへの攻撃は神秘によって阻まれるはずの単なる人間。

 それが千の魔術を行使し、あらゆる宝具を模倣し複製、合成する魔術の王とも言えるアジ・ダハーカと互角の魔術戦を繰り広げることが出来るというのは異常である。

 

「並のサーヴァント1匹2匹なら簡単に潰せる。そういう手を使ってきた魔術師はよく居たからな。だが、アンタは違ぇ。あらゆる宝具とその経験をその身に宿せる。⋯⋯言わば、武器主体の全サーヴァントを相手にしているのとそう変わんねぇ」

「⋯⋯貴様、本当に何者だ? 我が魔術の一端とは言え視ただけで理解出来るなど⋯⋯」

 

「ま、俺の眼が特別なんだよ」

 阪東の眼で捉えた魔術は占星術的観点、そしてありとあらゆる歴史の可能性からその魔術の効果を予測し確定に近いレベルで言い当てることが出来るのだ。

 

 勿論そんな眼が魔眼ではないはずが無く、本人は"星読みの魔眼"と読んでいる。他にもある程度の未来予測や視た人間の行動や発言、性格等から過去の出来事や思考を高い精度で予測することも可能。

 

 起源である宇宙(ソラ)だけでも人類最高峰の魔術師であるにも関わらず、あらゆる魔術、あらゆる行動、思考を予測出来る"星読みの魔眼"も保有している。この2つが合わさっている時点で阪東を倒すという事が不可能なレベルにまで達している。

 

 そんな存在と同格、あるいはそれ以上の力を持つアジ・ダハーカ。

「だからか。まあ、いい。時間は幾らでもある。もう暫く遊んでいてもバチは当たるまい」

「チッ、まだまだ余裕かよ」

 

 そもそもアジ・ダハーカと阪東には神秘としての差がある。本来通常の魔術師からサーヴァントへの攻撃は通じない。これはそもそもサーヴァントの召喚は「奇跡」であり、現代科学では到底再現不能な現象である。

 

 神秘の壁がサーヴァントを守っていると言っても過言では無い。

 それを阪東は無理矢理「宇宙の再現」という神秘をもって自身の格を上げているのだ。それでも現代の魔術師である、というだけである程度阻まれるのだが。

 

「ま、こんだけ喋りゃ十分か」

 不敵な笑みを浮かべ、アジ・ダハーカの目の前に降り立つ阪東。

「⋯⋯どういう意味だ?」

「知ってるか? 輝愛は生粋の暗殺者なんだってよ。ンで、アイツのサーヴァントはアサシン。そらァ相性がいいわな。そんなら魔術工房なんざ簡単に突破できそうだよな」

 

「⋯⋯何を言って⋯⋯まさか!?」

 アジ・ダハーカは明らかな動揺を見せ、今までにないくらい焦っていた。

 

『グァァァァァ!!!!』

 その瞬間、スルトが悲鳴を上げる。

「かんっぜんに忘れてたろ? ま、仕方ねぇよなァ? 遊んでたとは言えオレとの戦いだ。油断なんかすりゃテメェは死ぬ。ンで、マスターからの魔力供給さえ断てばサーヴァントは現界出来ない。そうだろ?」

 

「貴様ァ⋯⋯!」

 怨嗟の声を上げその場を離れようとするアジ・ダハーカ。だが、それを逃す阪東では無い。即座に足を凍らせ、動きを封じる。

 

「どこ行くんだァ? 第2ラウンドも遊ばせろよ、邪龍」

 今すぐにでもその場から離れたいアジ・ダハーカとは対照的に、阪東はまだまだ戦い足りないようだった。

 

 

 

 




いやまぁ、二人とも強いなぁ。ちゃんとキャスターはキャスターしてたしいいのでは?なんかサーヴァントを倒せる魔術師増えてきましたが、普通は無理なんですよ?ちゃんと本編で説明があった気がしますが……。これ理解している人少なそう。まあその辺の説明は逐一やっていきます。Fateしらない人でもなんだかんだ読めるような感じになっているはず。

二章になったら少し更新ペース下げる予定です。週一くらいですが。挿絵の関係と、本業の執筆をしたいので()
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。