Fate/The Fatal Error   作:紅赫

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週一です。お久しぶりです。


ウェイバーの帰還

 

 

 

 少し時は遡る。

 輝愛の転移でアルジュナが斬り裂いた先に向かうと、丁度建物が消し飛んでおり、地下への階段を見つけることが出来た。

「先に行くから。うっちゃんとランサー、ええっと⋯⋯アルジュナは細かく確認しながら追ってきて」

「神崎さん!? ⋯⋯1人は危険だ、特にスルトなんて神霊を維持できるような魔術師相手に⋯⋯」

 

「だからでしょ、大福のクラスはアサシン。そしてアタシは暗殺者。それにこれくらい出来なきゃ暗殺者じゃないっしょ!」

 気合いを入れる輝愛だが、俊介はどこか反対気味。

「私は構わない。と言うより、2人の指示に従えというのがマスターの指示だ」

「よっし、じゃあおなしゃー、っと。じゃあ先行ってるー」

 

 そう言うと輝愛は階段の角を通して内部へ侵入。

「ちょっ!? ⋯⋯はぁ、こっちはどうする?」

「僕はマスターの指示次第。まずは彼女の意図を考えよう。彼女はバーサーカー、アルジュナを置いていった。つまり僕らに求めているのは⋯⋯」

 

 エルキドゥは冷静に輝愛が先行した理由を分析し、作戦を組み立てていく。

「突破はもちろんの事、入口付近での陽動も含まれているんだと思う」

「ひとついいだろうか」

 

 指示に従うと言ったアルジュナだが、彼なりに提案があるようだ。

「正直な話、ここは私の宝具で地下ごと吹き飛ばしてしまえばいいと思うのだが?」

 

 なんともバーサーカーらしい発言にあまり表情を変えない俊介も苦笑い。

「ははっ、それだと地上ごと壊れかねないから。大規模な破壊は無し。それにさっき宝具を使ってて、あっちでは今も阪東が戦闘中。流石に魔力を無駄に使わせるのは⋯⋯今の無し。阪東の事だからその辺の問題は解決してそう」

 

 一々魔術師としての格の違いを理解させられる現状に嫌気がさしながらも階段の下へと向き直る。

「行くぞ。モタモタしてたら神崎さんが終わらせてしまうからな」

 

 俊介は階段の下にある扉へと足を進め、乱暴に開く。鍵は既に壊れており、問題無く進むことが出来た。

「神崎さんか。あの能力なら多分ロックとか関係無いだろうしな」

 

「敵は⋯⋯いなさそうだね。5層より下は曖昧だけど、結構深そう。あと所々異界化しているかな。どうする、マスター?」

「魔術的な罠に気を付けて駆け抜けるぞ。神崎さんが敵の寝首を搔くならこっちはある程度物色したい。この雰囲気、僕と似たような魔術系統な気がする」

 何時でも向上心は忘れない魔術師の鏡である。

 エルキドゥの気配感知による索敵と、現代魔術を使用して足を進める俊介とエルキドゥ。

 

 純白の真っ白な景色が広がり、扉や廊下には最低限の装飾品しかない簡素な場所。ほぼ一方通行であり、それ自体が罠なのではないかと思えてしまうほど。

「⋯⋯俊介、私はここで待っている」

「アルジュナ?」

「どうやら私達にとって良くない存在が近付いている。ここは任せて欲しい」

 

「分かった、これを」

「⋯⋯?」

 アルジュナに渡されたのは輝愛と同じ宝石の連絡端末だ。

「何かあったら使ってくれ。すぐに向かう」

「ありがとう」

 

 そう言ってアルジュナはその場に残るという判断をし、数分後。

「やはり来たか。眷属とはいえ、その溢れ出る悪性。見過ごす訳にはいかないな」

「⋯⋯」

 

 それはアジ・ダハーカの傷から産み落とされた爬虫類のような顔の眷属。アジ・ダハーカとは色やビジュアルの差はほとんど無いが、アジ・ダハーカの首が3つなのに対して眷属は1つしかない。

「言葉を交わすことは出来ないか。しかしやる事は変わらない。この場で粛清する」

 

 一方俊介。ある程度進んだ先でエルキドゥが俊介の前に立ち、静止を促す。

「⋯⋯何かが来る」

 エルキドゥは俊介の死角から襲いかかる流動体を感知。床に手を付き、壁で防ぐ。

 

「サーヴァント、では無いようだね」

『ご明察。私はマスターを守るプログラムですので』

 機械的な女性の声、身長は2メートル近くある高身長で、銀色の皮膚や身体とメイド服。千衣寓が保有する水銀の使い魔である。

 

「やはりそういう類の魔術か」

『そちらのマスターも察しがよろしいようで。でしたらここで死んで貰いましょう』

 使い魔の一言で天井や床が開き、俊介の前方後方それぞれ12もの人影が現れる。

 真っ白な顔に4本の刃状の腕、細身の胴体は明らかに人間のものではない。

 これも千衣寓が保有する人形であり、思考機能は水銀の人形と同じでひとつの意思に統一されている。

 

「ただでは通さないという訳か。なるほど、アルジュナがいてくれたら突破は簡単だったんだけどな」

「肩慣らしとしては丁度いいと思うよ、マスター。本格的な戦闘は初めてだしね」

「それもそうか。神崎さんとは軽くだし、あの時は救助優先だったから⋯⋯」

 

 エルキドゥは俊介と話しながらも2体の人形を『天の鎖』で串刺しにし、破壊。そして俊介も電撃の魔術で後方の1体を停止させる。

「悪いけど、僕も一応マスターだ。力ずくでも通させてもらう」

 

 

 

ーーー

 

 

 

「横浜の広範囲で戦火が広がり、昨晩だけでも死者数は推定三万から四万、現在行われている戦闘を合わせれば死者数は十五万近い状況ね」

 

 同時刻。今回の聖杯戦争における中立地、横浜の魔術協会では遠見の魔術を映し出すモニターを使用し、荒島絡果は魔術協会のお偉い様方に現状を報告していた。

 協会と言っても小さな古屋倉や神聖な教会では無く、今回の聖杯戦争を行うに当たって絡果が買い取った高層ビルであり、その最上階のオフィスルーム。そこに名だたる魔術15名程が円になって座っており、その中心にモニターがある。

 

 本来であればここまでの体制をとる必要は無い。しかし、これまでに前例のない聖杯戦争とあってか複数人の魔術師が各方面から派遣された。

 

「最初に召喚されたキャスターの一方的なゲームを警戒して態々宣言を行ったのが仇となったか⋯⋯」

「いや、あの阪東が易々と落ちるはずが無いだろう。遅かれ早かれこうなることは予想出来ていた」

「これでは神秘が外部に⋯⋯」

 

 各々好き勝手に話しているところ、パンパンと手を叩いて静粛を促す絡果。

「それで、今後の方針を決めるために皆様に集まってもらったのだけれど⋯⋯。まず、被害がこれ以上出ると神秘の秘匿に影響が出る。だから被害の拡大を抑える方向で行きたいの。誰かいい案のある方はいるかしら?」

 絡果はどこまでも楽しそうに。観察するように問いかける。そして当たり前のような意見が飛んでくるのだった。

 

「聖杯戦争そのものを中止にするべきだと思う。それが手っ取り早いのではないか?」

 東洋の思想魔術を中心として活動している魔術組織、螺旋館の重鎮がさも当然と言うように発言する。各方面に話を伝えた絡果だったが、集まった外部の魔術組織はここと夜劫のみ。この場の半分以上が魔術協会の者だ。

「⋯⋯無理。それは聖杯が許さない」

 

 そこに割り込むのは壁の端に立っていたルーラー、モーセ。

「そうね。常識的に考えれば現実的だけど、流石に聖杯から脅されれば話は別。聖杯にも意思があるのは少し意外だったのだけれど」

 そう。今回の聖杯戦争は「誰がなんと言おうと続けなければならない」という制約がある。本来、望みがなければマスターには慣れないため起こりうるはずのない「放棄」がこの聖杯戦争では不可能なのだ。

 

「ま、それは俺たちルーラーに言われた時点で何となく想像ついてたろ?」

「ブラフマー。貴方に発言権を与えた覚えは無いわよ」

「へいへい」

 

 ブラフマーと呼ばれたルーラーはため息を吐きながら口を閉じる。

 全身が青い皮膚、3つに並んだ頭には鬼のような仮面が付けられており、4本の腕でサラサラと何か書いている。2メートルを超える身長で、その場の誰よりも圧が強い。

 インド神話。そしてヒンドゥー教に存在する創造神であるブラフマーだ。

 

「貴方は話が長いもの。ベラベラと話す人はモテないわよ。⋯⋯他に意見は⋯⋯無さそうね。まあ、仕方ないわよ。だって召喚されたサーヴァントがサーヴァントだもの」

「だからと言ってこれ以上続けられる訳が無いだろう! 監督役としての責務を果たせ!」

 その発言を皮切りに1部から絡果に対してのバッシングが飛び交う。

 

「あのね、動物みたいにわーきゃーわーきゃー騒がないで欲しいわ。ちゃんと対策を⋯⋯」

「失礼する」

 絡果が話しているのを割り込みながらひとりの男が入ってくる。

 

「あら? これはまた。名高い時計塔のロードの一柱である貴方が何故ここに?」

「貴様、何故だと? 態々呼び出しておいてその物言い⋯⋯。それと今の私は元ロードだ。既にライネスに席を譲っている」

 

 絡果を見ると予期せぬ来客に驚く仕草をしながらも、予定調和だという表情が見え透いているような雰囲気だった。

 センター分けの直毛黒色の長髪、身長はスラリと高く全体的に筋肉質な体躯。

 眉間に皺をよせた不機嫌そうな顔をしており、今回も明らかに不機嫌。

 服装は黒いロングコートに赤いマフラーのようなものを肩にかけている。

 

 時計塔現代魔術科の元ロード。エルメロイⅡ世ことウェイバー・ヴェルベットだ。

「元々来ていたクセに何を今更。⋯⋯あ、葉巻は無しでお願い。私煙いの苦手なの」

「こっのっ⋯⋯ゴホン。で? 本題はなんだ?」

「この聖杯戦争の現状を貴方に見てもらいたくて」

 

「私に意見など求められても答える義理は⋯⋯」

「はぁ⋯⋯今は演じなくていいわよ。一応同じエルメロイ教室の同期じゃない?」

「誰が同期だ、若作りめ」

 ウェイバーと絡果はもう20近く年前ではあるが、前々現代魔術科のロード、ケイネス・エルメロイ教室で講義を受けていた経歴がある。

 

「流石にその見た目では無理が無いか? 私以外に言っても通じないぞ?」

「いいじゃない。私、見た目の歳は取らないのを知っているでしょう」

「あのなぁ⋯⋯」

「その辺は置いといて。何故貴方がいち早く日本に来ているのか、何故イスカンダルの聖遺物を持ち込んでるのか。それらに関しては今は言及しないでおくわ」

 

「うっ⋯⋯」

 彼も彼なりに考えを持って来日しているのだ。

「このままだと神秘の秘匿どころか世界そのものが危ういの。まあそれは⋯⋯見てもらえば分かるでしょう?」

「ああ。阪東や炎の巨人、そしてアジ・ダハーカ。魔術師の質も然る事乍らサーヴァントに関しても本来召喚されるはずのない神霊級の存在が複数召喚されているな」

 

「そう、だからとりあえず私の独断で自衛隊と協力を結ばせて貰ったわ」

「なっ! 自衛隊だと! それこそ⋯⋯」

 自衛隊。日本における国防を担う国家機関であり、明らかに神秘とはかけ離れた組織だ。

 

「ここからは彼に話してもらった方が良さそうね。入って」

 絡果がそう言うと、隣の部屋から入って来たのは迷彩服のような黒と緑が混ざった作業服を着た大柄の男。強面で、屈強な肉体と紋章はいかにもという雰囲気がある。

 

「失礼する。陸上自衛隊陸相の呉島貴梟だ。以後よろしく頼む。そちらの事情についてはあまり詳しくないため貴殿に対しては対等と判断させてもらう」

 そしてもう1人。銀髪で奇妙な色のアイマスクを付けた白衣の女性。

「ロードエルメロイ、ねぇ? そっちの界隈の魔術師の総本山、時計塔のトップ12人のウチのひとりだったみてぇだぜ。他にもそれなりに地位のある奴らがゴロゴロと。あ、自己紹介すっか。アタシはグリムロック・クイン・グラフ。グリムとかその辺で呼べんでくれよ」

 

「グリムロックだと?」

「お、アタシのこと知ってるのは中々感慨深いなぁ?」

 おっとりと撫でるような低い声で反応するグリムロック。

 

「確か裏社会における兵器改造の心臓⋯⋯グラフ印の付いた武器が世に出回れば希少性も相まってピストルですら2000万はくだらないという⋯⋯」

「説明ごくろうさん。こっちじゃ技術顧問を担当してるぜ」

「もういいだろう。話が進まない」

 

 余計な方向に話が進もうとしていたため、呉島がそれを抑止する。

「まず、我々が出来ることは三日のうちに全横浜市民をこの横浜外に避難させること。こちらとしても有難い。民間人に被害が出るのは我々も良しとしないからな」

 何を今更しゃしゃり出てきて、と鼻で笑う魔術師が数名。しかし、その態度は次の発言で打ち砕かれる。

 

 

「もう1つ。『結界の魔術による外部からの認識阻害、及び横浜の封鎖』について。これに関しても同意する」

 

 

「なっ!?」

「自衛隊が魔術だと⋯⋯?」

 周囲の驚きを他所に続ける呉島。

「但し、この儀式が終わり次第維持費と復興支援の何割かをそちら側から頂きたい。流石に爪痕が多すぎるからな」

 

「どういうことだ、荒島絡果!」

「あらあら? 珍しく怒っているのね、ウェイバーくん?」

 混沌とする室内の中、何故かその声は綺麗に響いていた。

 

「当たり前だ!国家権力に魔術の一端が漏れていたなど由々しき事態だ! それを黙認していた貴様も⋯⋯」

「待ってほしい、ロードエルメロイⅡ世殿。我々も異なる魔術体系がここまで大規模な組織だということは 先日、私の部下がマスターとして選抜されたことで初めて知ったのだ」

 

「何⋯⋯?」

 時計塔や螺旋館といった魔術組織とは別の組織、という訳では無い何か引っかかる言い方に戸惑うウェイバー。

「以前より多少なりと夜劫の方々とは縁はあったが、あくまで少数であり、それなりに事情は分かる方だから協力関係にあった。何かしら魔術的な被害の建前や改竄のためにな。しかし、世界的に魔術が広まっているというのは先日荒島から聞いたばかり。我々が研究いていたのは独自の魔術だ」

 

「そうそう、アタシらのは『対人類の脅威』用の単一魔術兵器だ。それにアンタらの魔術は一切使用してねぇからな⋯⋯設計図とか見りゃ分かるか」

 グリムロックはスカしたように腕時計を操作し、中央のモニターに設計図を映し出す。

 

 銃身が少し長く、スコープの無い近未来的なデザインのライフル、サイズ的に入らないが、座標操作による魔術での装着を目的とした多機能な小手。更には初見では絶対に理解出来ないような理論、原理、法則で動く飛行ユニット等。明らかに現代では不可能な科学的な代物、そして現在の地球上の魔術に無い魔術を使用した兵器が多数並んでいた。

 

 この場には数多くの魔術師が集まり、全員が何らかの地位に着いている実力者。彼らは理解した、これは人が使用する魔術では無いと。そして科学的な応用を施せる国家機関が存在していたのだと。

「アタシの自信作⋯⋯って訳でもないけどなぁ。殆どが協力者の受け売り、それを現代の科学技術と融合させただけの話だ」

 

「その協力者というのは⋯⋯人間か⋯⋯?」

「あー、企業秘密だな。これ以上手の内見せるのもアレだろ。こっちの隊員にはマスターがいるんだ。横流しされたくないぜ」

 そう言って締めくくる。

「理解して貰えただろうか。今回に関してはこちら側が巻き込まれた側だ。しかし、出来ることはしたいと思っている」

 

「そういう事で。これ以上の案が無ければこのまま進めるわ。何か質問はあるかしら?」

 その後、絡果のその発言に反応して手が上がることは無かった。

 

 

 




いかがでしたか。中々きな臭くなってきましたね。
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