Fate/The Fatal Error   作:紅赫

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一連の流れを解説します。新情報もあるかもしれませんね。


第二章 封鎖崩落都市横浜
ウェイバーくんはこの聖杯戦争の成り行きを知らないそうなので、監督役に教えてもらうそうです。


 呉島がその場を去り、この会議室に残ったのは横浜聖杯戦争の監督役、荒島絡果と元ロード、ロードエルメロイⅡ世ことウェイバー・ヴェルベットだけであった。

「僕はこの聖杯戦争のせの字も知らないんだけどな!」

「あらあら。呉島陸将が帰った途端素に戻っちゃって。まあ、それでいいと言ったのは私なのだけれど」

 

 唐突に時計塔からこの横浜に呼ばれたウェイバーは言っての通り状況をまるで理解していないのだ。

 ちなみにこの瞬間だけ素に戻ったが、元ロードの威厳は保ちたいと考えているため普段は元ロードの口調だ。

「仕方ないわね、元エルメロイ教室の同期のよしみ。1から説明してあげる」

 黒髪をふさりとかきあげながら少し冷たく、上からの物言いでウェイバーの要望に答えると宣言する。

 

「事の始まりは二週間前、この地に聖杯が現れた。識別名称不明、魔術協会の管理下に無く、アインツベルンも知らないと口を揃えて言っている未知の物。その聖杯は二騎のルーラー、モーセとブラフマーを召喚して、日本の魔術協会に宣言したの『聖杯戦争を開始する、目的が果たされるまで殺し合いを続けよ』って」

 

「じゃあこの聖杯戦争は誰かが始めたって訳じゃなくて⋯⋯」

「ホントの意味で聖杯の意思。聖杯はルーラーを通してルールを伝えてくるの」

「頭痛くなってきた」

 

 既に頭を抱えているウェイバーだが、絡果の話は止まらない。

「だからこれは既に顕現している聖杯を取り合うもの⋯⋯なんだけど、まあいいわ。流れとしてはその次の日にキャスター、問題のアジ・ダハーカが召喚され、即座にマスターが死亡。でも彼は魔力をスキルで自給出来るから消えないのよ」

「アジ・ダハーカって⋯⋯アンリ・マユが生み出した悪神だろ? この時点で嫌な予感しかしないが⋯⋯」

「そして次に召喚されたのはライダー⋯⋯なのだけれど⋯⋯今横浜には居ないのよね」

「居ない?」

 

 何をしているんだ監督役、という目線が送られるもそれを意に介さない絡果。

「今は⋯⋯東京で遊んでるわね、ネズミの国」

「それ千葉県じゃないのか?」

「東京ネズミの国って書いてあるから東京よ。⋯⋯彼はまだ聖杯戦争に干渉して来ないからまだ楽ね。後で呼戻すつもりだけど。その後は呉島陸将の部下、天音雄也が召喚したアーチャー、ルー」

 

「ああ、自衛隊に所属しているマスターか」

複雑な表情のウェイバー。彼は国家機関が魔術を運用している現状をあまりよく思っていない。

「陸上自衛隊特殊作戦群盤外遊撃部隊。対人類の脅威を想定した貴方達とは違う魔術を使用、いえ利用する機密部隊よ」

「機密部隊なのによく知っているんだな」

 

「もちろん。彼らとは何度か関わってきたし、協力もしてきた。それになにより⋯⋯私の敵だもの」

 これまで薄ら笑いを浮かべていた絡果だが、その瞬間だけは感情が消えていた。

 

「そして次は問題児、阪東葛木のバーサーカーチーム。彼、有名だもの貴方なら知っているでしょう?」

「ああ、執行者、代行者の八割を駆逐した地上最強の魔術師だ」

 

 阪東葛木は魔術協会に関わるものであれば大体が知っている有名人である。起源覚醒者であり、その魔術はこの聖杯戦争最強格であるアジ・ダハーカと撃ち合えるレベル。

 並のサーヴァントであれば彼一人で事足りる、と言わしめる絶大な力を保有している。

 

「そして彼のサーヴァント、アルジュナも彼に見合って色々改造されているのよね。ifの世界のサーヴァントである彼はインドの神々を統一しているわ。神たるアルジュナ、だったかしら?」

「そんなこと⋯⋯可能なのか?」

「可能、不可能じゃない。聖杯そのものがイカれてバグっているこの状況なら、何が起きてもおかしくないのよ」

 

 聖杯にはある程度自我があるとされている。が、ここまで細かなルールや聖杯大戦でもないのに自らルーラーのサーヴァントや別世界のサーヴァントを召喚する等という行いをする聖杯は一種の『バグ』なのだ。

 

「そして1週間くらい前かしら。彼女、神崎輝愛が魔術師グレムリンを暗殺し、そのままアサシンのマスターとして参戦したのは」

 その事の顛末を絡果は直接見ていたため、彼女の記憶に強く残っている。

 

「アサシンの⋯⋯大福ちゃん。まだ真名は分からないけど⋯⋯性能面で言えばあのアルジュナやアジ・ダハーカに匹敵するレベルね」

「流石のお前もアサシンの真名は分からなかったか」

「だって彼、召喚した時に名乗らなかったのよ? 盗み見しようにも無理がある。でもまあ、予想はついているけど」

 ウェイバーも彼女の情報収集能力は認めており、エルメロイ教室では何故かなんでも知っている彼女をよく頼っていた。

 

「でも輝愛は魔術師では無いから彼を維持出来なかった。だから彼は輝愛の身体と一体化して聖杯戦争に挑んでいるわ」

「擬似サーヴァント、とはまた少し違うのか」

「ええ。互いの意識が推し潰れる事無く、声帯も違うみたいで彼女のからだから別の声が聞こえてくるの。なんだか面白いわね」

「⋯⋯」

 明らかに面白がっている絡果を気味悪げに見つめるウェイバー。

 

「その後、彼女は学校で7人目のマスター、宇都宮俊介の召喚を確認、同時にアジ・ダハーカも加わったサーヴァント戦が行われ、なんだかんだで私とモーセで仲裁。翌日にに宇都宮くんと輝愛は同盟を結んだわね」

「7人目⋯⋯あと一人、忘れてないか?」

「えぇ⋯⋯私彼のこと解説したくないもの。もう死んでるし」

 

 誰の目から見ても嫌そうな表情の絡果。

「まあそれでもまだ始まりも始まり。役者が揃ったところで私が聖杯戦争の開始を宣言。⋯⋯よーいドン形式なのはサーヴァントの質を考えてのこと。管理出来ないような時間に暴れられたら止めるまでに時間がかかるもの」

「それは一理ある」

 

「で、そしたら早速ルーとアルジュナの交戦が開始、ほぼ同時に輝愛と阪東くんも。サーヴァントと同化しているとはいえ、彼女もまだ人間。流石に阪東には勝てなかったわ」

「当たり前だ。そもそも勝てる魔術師なぞ存在するのか怪しいところだぞ」

 

「阪東くんの魔術によって横浜の1部は半壊。ここも私が仲裁して終わったはいいものの、外側を見れば街が吹き飛んだだけで何も変わってないのよ」

 はぁ、絡果はため息を吐く。彼女にとってローペースな展開は望ましくないのだ。

 

「二日目、真昼間からセイバー、ああ紹介を省いたけど、スルトのマスターを追っていたアジ・ダハーカの力で時間が加速、夜になった瞬間に二日目の戦闘開始。まあこっちはほぼ一瞬で方が着いたのだけど、アジ・ダハーカの圧勝。そのまま阪東くんとアジ・ダハーカの遭遇戦に移ったわ」

「いかに阪東であろうとアジ・ダハーカクラスのサーヴァントに勝てる訳が無いだろう⋯⋯?」

「ええ、もちろんよ。輝愛と宇都宮くんがスルトのマスターの工房に乗り込み、マスターを暗殺した所で彼は撤退。時間稼ぎが役目だったみたい。これで今までの出来事は粗方話せたかしら」

 

 どう? という目線を送るもののイマイチ掴めていないウェイバー。

「流れは把握した。それで、何故アジ・ダハーカを討伐する必要がある?」

「もちろん、彼がスルトの霊基と肉体で聖杯を構築したからよ。それにこれ以上バランスを壊されると些か支障が出そうなの」

「お前個人の目的に、か?」

「あらあら、目的なんて無いわ。でも、過去の存在に現在の人の生き様を邪魔されるのは少し面白くないってだけ」

 

 ふふん、と機嫌の良さそうな絡果は缶コーヒーを空け、1口。

「意外と美味しいのね、これ。後で映像化して纏めるけど、一応今の状況はこんな所。貴方の意見はどうかしら? 誰が聖杯を手に入れると思う?」

「⋯⋯」

 

 難しい顔をしているウェイバー。

「まだ何とも言えない。ただ現状キャスター、アジ・ダハーカと阪東だけ突出しているように見えるが?」

「外面だけ見れば大正解。現状、セイバーのマスターは地上におらず、ライダーも参戦していない。となると有利なのはその2つね」

 絡果は淡々と当たり前のことを告げると、飲み干した缶を空中に放り、魔術でくしゃくしゃに潰す。

 

 

「少し面白くなってくるのはここからよ。第二局面、まさか彼らが来るなんて思いもしてなかったのだけれど、これはこれでアリかもしれないわね」

 

 

 

ーーー

 

 

 

「さて、今回のミッションは普段の特異点解決とは違う。君たちはこれまでオリュンポス、平安京、妖精國ブリテンを乗り越えてきたけど、これは全くの別物さ」

 それは溌剌とした幼い少女の声。まるで美術品、名のある絵画から飛び出てきたかのような美しさと神秘性を兼ね備えたような少女。

 

 彼女はレオナルド・ダ・ヴィンチ。ここでは「ダ・ヴィンチちゃん」と呼ばれているナビゲーターである。

「は、はい!」

 緊張気味でこれと言って特徴の無い、見た目は高校生くらいな普通の男の子。

 

 その後ろにある扉が開き、1人の少女が走ってくる。

「お待たせしました、マシュ・キリエライト、到着しました」

 少しおっとりしたような、それでいて冷静さもある雰囲気を持つ彼女、マシュ・キリエライトはマスターである男の子、藤丸立香をちらりと覗く。

 

「おはよう、マシュ」

「はい! おはようございます、先輩」

 人理継続保障機関フィニス・カルデアの彷徨海での新たな姿、ノウム・カルデア。彼らは世界の白紙化という課題に立ち向かう機関であり、異星の神から世界を守るべく行動している人類最後の希望なのだ。

 

 コホン、というダ・ヴィンチちゃんの咳払いが挟まり、続きを話し始める。

 

「特異点の場所は横浜。2人にはこれまで通り特異点を修復して聖杯を持って帰ってきて欲しい⋯⋯。ただ⋯⋯」

「何か問題でもありましたか?」

 珍しく歯切れの悪いダ・ヴィンチに戸惑うマシュ。

 

「とりあえずこれを見てほしい」

 そう言って白紙化された世界のマップを見せるダ・ヴィンチ。残る異聞帯である南米には大きな白い円で潰れている他、日本の横浜に小さく黒い点が置かれていた。

 

「この黒い点の場所から世界が歪んでいるんだ。このままだと1ヶ月で世界は崩れるらしい」

「またかね!?」

 その声は何も聞かされていなかったカルデアの現所長、ゴルドルフ・ムジークのものである。

 

「ブリテンでも似たような事は起きたけど、あれは崩落であって崩壊じゃない。今回は横浜を中心に崩壊するそうなんだ」

「原因は⋯⋯?」

「分からない。ただ、地球上には存在しない超高エネルギーの塊であること、そして発生した特異点がこの黒い点の真下である横浜であることから今回の調査に乗り出すことになった⋯⋯んだけど⋯⋯」

 

「まだ⋯⋯何かあるんですか?」

 

 

「うん、実はこの特異点⋯⋯2025年にあるんだよね⋯⋯」

 

 

 




さて、何故白紙化された未来のないこの世界で未来の特異点があるのか。本格的にカルデア参戦なるか?注目ですね。
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