サブタイトル長すぎ。いや、そういう名前ので仕方ないじゃないですか。あとこの辺りFate感無いかもしれません。ごめんなさい。
マジで界隈各所から『これFateじゃねーだろ! 別でやれ別で!』と言われそうですが私は止まりません。何故なら土台は既に出来上がってしまっていたからです。
ちなみに皆様の予想通り新キャラがめちゃくちゃ出てきます。
自衛隊横浜基地の地下の地下。約20畳の大きな部屋で複数の自衛官が集まっていた。
中心にはホログラムで出来た巨大な擬似天球が置かれ、その下には世界地図が映し出された巨大な液晶モニター。いくつものオペレーションデスクと、正面には「呉島」という名前が書かれた板が置かれている机。
陸上自衛隊特殊作戦群盤外遊撃部隊の本拠地である。
「現在、荒島絡果から応援要請が届いている。天音三佐が参加している聖杯戦争という魔術儀式の中で、この星に向けての大規模な魔力攻撃が行われる可能性が高いとの事だ」
この場を仕切っているのは白髪の青年。身長は162とその歳にしては若干低く、少し痩せ型。蒼い瞳と少し女性っぽい流麗な顔つきであり、少し大きめな白衣の下は学生服とこの場に合わぬ風貌の持ち主である。
「そしてもうひとつ。天音三佐には敵サーヴァントとの交戦命令が出ている。俺達はそのアシストに当たれというものだ」
まだ高校生の彼だが電子系技能は超人級。以前作戦時に単身で中国の全ネットサーバーをダウンさせ、政府中枢のコンピュータハッキングとクラッキングまでをわずか3分で行ったにも関わらず、足のひとつ付けないという離れ業を行える程。
彼の名は
「ごめんね折遠ー。こっちのいざこざに巻き込んじゃって」
申し訳なさそうに頭を下げる天音雄也と、周囲を興味深そうに眺めている天音のサーヴァントであるルー。
「いや構わない。俺も報告書は読んでいたが、こちらの案件で少しトラブルがあってな。こっちこそ手助け出来ず申し訳ない」
「あー、なんかそっちも今プロジェクト進めてるんだっけか」
「そうだ。⋯⋯それは置いておいて。まずこの要請だが、あの荒島から頼ってくるような案件だ。こちらとしても出来る限りの事はしたい」
折遠は下のモニターを操作し現在の横浜を複数のモニターに映し出す。
「正直『ナーク=ティト』だけでもかなりの強度だが、それを知らない荒島では無いはず」
「ま、アタシらの作品の一つだ。そう簡単に突破されちまうと悲しくなっちまうわ」
オペレーションデスクの椅子にどっかりと座っていたグリムロックが振り返る。
「先生は
「武装に落とし込む過程で出来たもんだ。アタシの自由研究くらいに思っとけ」
コンビニで買ってきた炊立てのコーヒーLサイズを飲みながら再び背を向けるグリムロック。
「ところで⋯⋯今日集まったのは6人だが⋯⋯。非番のはずの4人はどうした?」
「えー? 透流と礼賀、育太は紛争地域で遊んでた気がする。狂華は知らない。サバゲーにでも行ってるんじゃない?」
「全く⋯⋯どうしてここまで⋯⋯『門の創造』試作型アーティファクトだって個数に限りが⋯⋯」
この部隊では最年少の隊員である折遠だが、色々と苦悩は多い。
そもそも真面目なのが折遠ともう1人くらいしかおらず、戦闘員の半分以上が戦闘狂であり、研究部所属もこういった役職上大半がイカレであるためまだまともな彼が階級に関わらずこうして仕切っているのだ。
「全く⋯⋯もう子供じゃないんだぞ。あの子達にはきちんと私から言っておくよ」
「真紅ちゃんの見た目で言われてもな〜」
「何か言ったか天音。生憎私の耳は都合の悪いことは聞こえない耳なのさ」
パソコンに向き合いながら三段重ねのホットケーキをパクパク食べているのは身長150程度の小柄な少女。
「そんなことありませんよ、宝鐘先生。俺達も先生に癒しを貰っています」
「癒⋯⋯し⋯⋯?」
金髪のツーサイドアップに、燃えるような名前の通り真紅の瞳。小柄で少し幼げな顔つきに、青色のセーラー服っぽい服の上から肩を出しながら白衣を着ているその少女の名は宝鐘真紅。世界的にも有名な研究者であり、その異名は『万能の天才』『現世のダ・ヴィンチ』であり、あらゆる事をそつ無くこなしてしまうような少女だが、現在23歳。そろそろ今着ている服のジャンルから卒業したいと考えていたりするが、とある隊員に「宝鐘様はこの服が一番可愛いですわ」と言われてしまったため、愛着があるのだ。
「癒しかは分からないが、私も少しは問題児を纏められるように努力はしているさ。中々難しい限りだけど⋯⋯」
耳に優しく、小柄な少女らしい声色で落ち込む真紅。
万能の天才敗れたり。という訳では決して無く、単純にこの部隊のメンバーが濃すぎるというのが主な理由なのだ。万能で天才であったとしても、天災を操ることは出来ないということである。
ちなみに真紅の階級は見た目によらず陸将補であり、この部隊での発言力は4番目に当たる。
ふわふわとした彼女の雰囲気は部隊の癒しであり、オペレーターを務めた時は天音に「戦場ASMRですか?」と言われてしまう程。しかしながら能力としては申し分無く、更には既婚者と人生勝ち組なのだ。
そしてもう1人。真面目と言えば真面目なのだが、そもそもの倫理観が通用しない相手もいる。
「できれば外の技術の乱用は控えて欲しいのだが⋯⋯」
そう小さく呟いたのは眼鏡をかけた茶色髪のマッシュ男。身長は平均的であり、本来は特筆すべき能力もない。かと言って年齢は24であり普通。一見どこにでもいる成人男性だが、その性質上この部隊の中でも重要な人物だと言えるかもしれない。
「これも実験の一つだぜ交換留学生。アーティファクトの魔術を一般的な技術にまで落とし込めればこの世界の科学技術は飛躍的な進化を遂げる。特に『門』なんざそうだ。輸送関係のほぼあらゆる問題が解決するんだよ」
「⋯⋯なるほど。それは一理あるな。やはり人間は我々とは違うベクトルの貪欲さを兼ね備えている。興味深い⋯⋯」
交換留学生、と呼ばれたようにこの男は地球上の存在ではない。この
「じゃ、アタシはとりあえず絡果のところに行ってくる。依頼受けんだろ?」
「お願いします、先生」
グリムロックはそう言って『門』を機動させ、その場を後にする。
「で、フィッツァー陸将補はどうする?」
「⋯⋯寝かせてあげよ。多分疲れてるんだって」
残りの1人。折遠の視界の端で背にもたれながら豪快に寝ているのは、この部隊の中でも2番目に発言力のあるズヴォルス・フィッツァーである。
「まあ、今回は一応緊急で形式的に来てもらっただけだしな⋯⋯。呉島陸将は?」
「あー、今夜劫のところに行ってるみたい。僕としては今度その夜劫の人達とも戦ってみたいなぁ⋯⋯」
「⋯⋯」
まぁたこの先輩は⋯⋯と、呆れているとグリムロックが帰ってくる。
「一応アイツには伝えておいた。じゃ、天音の作戦会議と行こうか」
「わかりました。⋯⋯まずは状況の確認を」
そうしてモニターに出てきたのは横浜上空からの座標。それぞれのマスターとサーヴァントの魔力量から算出されたほぼ正確な位置である。
「魔力反応で言えば敵サーヴァント一騎撃墜。三騎交戦中。問題のアジ・ダハーカを除けばフリーが三騎と言ったところだな」
「フリーのサーヴァントに関して言えば、どこかと合流される前に撃破しておきたいなぁ? 天音ぇ?」
「分かってますよぉー。先生のアレ、準備出来てますか?」
天音の言うアレ、とは
「勿論。サーヴァントと直接やり合うなら多分必要になってくるだろうってな。そういや、今回の
「まあそうっす。旧型でも充分でしたが、新型となると⋯⋯。まあ敵のサーヴァントに期待かな。そろそろ手応えがある奴と戦いたいッスね」
天音雄也は輝愛と同じ『秘匿の御三家』であり、大学生ながら剣術の腕は文字通り人類最強と言われている。
「現地では招待状が無い俺達は直接のアシスト出来ない。だが送り届けるだけなら問題は無いだろう。よって目的の場所へは『ドルイド』による直接投下を行う」
「オイオイ、アタシらのおもちゃ箱を使ってことは⋯⋯」
「それ程重要な作戦だと考えてもらっていい。座標さえ指定出来れば例え異空間や結界で侵入が不可能であっても問題無く飛行可能なアレはおいそれと出せるようなものでは⋯⋯」
「あれ、今瑠楓さん使用中じゃなかった⋯⋯?」
天音の不意の一言でその場の空気が凍る。
「はぁぁぁぁ!? あの女何してるんだ!? 機密事項だらけの超級戦略兵器をなんだと思って⋯⋯」
「コラコラ折遠、誰があの女よ。私ならここにいる」
はぁ、と溜息を吐きながら部屋に入ってくるのは自然なサンディブロンドの髪の女性。
「し、室長!」
「あの女呼ばわりだったのに私が来てから呼び方変えられるの、なんか嫌ね。でもドルイドは悪かったわ。私も少し遊びすぎたと思ってる」
「本当に心臓に悪いですよ! アレは構成材質や燃料に至るまでの全てが特級の機密兵器! 今米軍のデルタグリーンにバレでもしたら間違いなく戦争になります!」
そう捲し立てる折遠。
「分かってる。別に少し乗り回すくらい⋯⋯って言っても許してくれなそう。一応パパの指令もあったから命令違反じゃないっていうのは覚えておいて欲しい」
「まあそれなら⋯⋯じゃなくて! 一言声をかけてください!」
「はぁい⋯⋯」
少ししんみりとしているのは呉島瑠楓。名前の通りこの部隊のトップである呉島貴梟の娘であり、研究チームのトップに当たる。雰囲気的には荒島絡果と近いものがあるのだが、彼女よりも少し精神年齢が若干幼く、子供っぽいところも多い。
「みんな揃ってい⋯⋯って雄也くん? アナタこれから任務でしょ? もしかしてそのまま行く気? 大学行く気分で戦いに行かないで」
「えぇー、いいじゃん別に! なんでさ!」
瑠楓の指摘に納得のいかない天音雄也。それもそのはず。黒いモッズコートに少し暖かそうな生地のVネック白Tシャツ、そして黒いスキニーパンツと少しオシャレなシューズと今からデート行きます、というコーデである。
「まあ、研究員は全員白衣着ているから服装に関してだけはなんとも言えないが⋯⋯流石にそれは違くないか?」
「げっ、折遠まで⋯⋯はぁー! 世知辛いなぁ世の中はぁ!」
「まあ、アナタがそれでいいなら構わないけど。私死んでも責任取らないわ」
はぁ、と呆れたように大きく息を吐く折遠と瑠楓。
「⋯⋯話を戻すぞ。敵の正確な座標はアジ・ダハーカの結界内に侵入してからになるが、侵入後は迅速な対応が求められる。下手な場所に飛ばされては作戦の意味が無いからな。憎きアジ・ダハーカを討伐するには取り巻きを倒してからの方が効率がいい」
「あれ? 折遠ってアジに恨みあったっけ?」
素朴な疑問を抱く天音に向けて淡々と折遠が答える。
「後から分かったことだが、先日アジ・ダハーカが破壊した月は我々の実験場である
「⋯⋯あぁー!? ざっけんなあの野郎! アタシらの可愛いムンビ達がぁ! まだ実験中だったのによぉ⋯⋯」
「どの道あの実験は元々失敗の可能性が高かったものでしょ。でも、せっかく向こうから拉致して繁殖まで成功させたのに⋯⋯。内蔵や皮膚に至るまで他にも色々使い道はあったと思うけど⋯⋯本当にもったいない」
グリムロックが怒声を上げ、瑠楓は少し悲しげにため息を吐く。
ここで言う実験というのは『幼体
月と同じ形、そして約半分の大きさで作成した大規模戦略基地実験場『
「鹵獲した『人類の脅威』を収容するのにうってつけの場所だったのになぁ⋯⋯」
「既に月を隠していた魔術は解いているが⋯⋯後で言い訳を考えておくとしよう。それで、先程の作戦だが何か質問は?」
「なら⋯⋯儂からよいか?」
そうおずおずと手を挙げたのは天音のサーヴァントであるルー。
「構いませんよ。作戦の要でもあるルー老師の意見はなるべく聞いておきたいですし」
「なら遠慮なく。マスターの直接投下というのは具体的にどのようなものなのじゃ?」
「ふむ。ルー老師は初見ですから分からないのも無理は無いでしょう」
そう言って折遠はカタカタと機材を操作しモニターに映像を映し出す。
「まずドルイドによる座標指定の空間転移を行い敵結界内へと侵入。即座に詳細な情報を取得し、敵サーヴァントを補足します」
立体的に作られた都市の図面の上に、戦闘機らしき物体が姿を現す。その後、ビルの中心が赤く光る。そこが敵サーヴァントと仮定されているのだ。
「そして天音三佐を⋯⋯直接撃ち出す」
「⋯⋯ほう? ⋯⋯ぬ?」
モニターには戦闘機から人が撃ち出されている映像が流れる。
「ま、待つんじゃ。それではマスターが死⋯⋯」
「舐めんなじっさん。撃ち出されるヤツには直径3mの防殻が張られてんだよ。そんで、内部は外の空間と隔離してあるから一切の影響は無ぇ」
「な、なるほど⋯⋯」
グリムロックからの補足説明に半分は納得するルー。
「ドルイド内部からの転移は? って思ってるでしょ。残念だけど不可能。ドルイド内部は同じように外部から隔離されていて擬似的に転移を遮断してるの。まあ、防犯上の問題ね」
科学と魔術が無限に交差しているこの現状に、ルーの頭は今にもパンクしそうである。
「最高速度はマッハ7。奇襲性ならこれが一番丸く収まるという訳だが⋯⋯。天音三佐は何度もやっているから問題無いな? 今回はサーヴァントであるルー老師も行ってもらいたい」
「なんと⋯⋯」
目をぱちぱちと瞬きし、サーヴァントながら現実逃避したくなるような気持ちが溢れ出てきてしまったのだが。
「よっしゃ! サーヴァントのデータ収集だ! じっさんの身体を弄ることは許可出なかったが、他なら問題ねぇよなぁ? 天音ぇ!一騎くらい鹵獲出来ねぇの?」
「まあ、余裕があったら持ち帰りますよ」
「なら私も一騎欲しい。体内構造や肉体の構成物質とか色々調べたいし。霊体化なんてものもあるみたいだし、記憶情報をどう保管しているかも気になるわ」
「頭はアタシにくれよ」
「嫌。アナタは身体で充分でしょ?」
「は? 頭ン中弄りてぇのはお前だけじゃねぇんだけどなぁ?」
ビリビリと火花を散らす瑠楓とグリムロックだが、それを聞いていたルーはドン引きである。
「のうマスター⋯⋯この2人はいつもこうなのかの?」
と、小さな声で恐る恐る天音に聞くルーに、ちょっと可愛い、と思ってしまった天音。
「えー? そうだよ。『人類の脅威』を持ち帰った時とかどう使うかで揉めてたりするね」
「⋯⋯」
「特に瑠楓さんは酷いよー。人間もあの扱い。スラムで任意同行させた子供や犯罪者を実験で文字通り身体を余す所なく使ったりしてて。でもさ⋯⋯」
天音は呆れたように、そして悟ったように呟く。
「人間の本質ってこういうものなんじゃない? 未知のものを既知に変えるためにはどんな事だってしてきた。それはもう人の歴史から滲み出てまくってるししゃーないっしょ」
「ぬぅ⋯⋯人類の記録から生まれたサーヴァントとしては⋯⋯複雑じゃなぁ⋯⋯」
ルーも同じような感情を抱きながら暫く研究者2人の会話を聞いていた。
この組織は外なる神や神話的脅威を崇めず、ただの『人類の敵』であり『越えるべき課題』であり『新たなる未知』であると断定し、あらゆる恐怖や深淵の底すらも様々な知的感情で押し潰すような者達と、一部の歴史上類を見ない天才のみが集められたもので構成されている。
端的に言えば異常者の集まりなのだ。
ーーー
天音はルーと共に作戦準備へと移っていた。
「これが⋯⋯」
「そ、じっちゃんは初めてか。研究チームの技術力の結晶だね」
二人が訪れているのは体育館くらいの大きさがある地下深くの格納庫。そして正面に見えているのが通常の戦闘機よりも一回り大きな戦闘機。横浜上空で瑠楓が操縦していたドルイドである。
黒が基調のデザインながらも、所々蛍光色の人工的な光が彩る様は近未来的な趣きを感じさせ、所々露出している各武装にロマンを感じる者も少なくはないだろう。そして現在は各部のメンテナンスを数人で行っていた。
「む。天音か。あと数分待ってて欲しい」
そう声を発したのは操縦席で作業を行っていた宝鐘真紅である。真紅はスタリと操縦席から飛び降り、ふう、と小さく息を吐く。
「あれ? 今回は真紅ちゃんがパイロットやるの?」
「一応な。実力不足の私だが精一杯やらせて欲しい」
「いやいや、このドルイドをクレアちゃん無しで操縦出来る真紅ちゃんが実力不足とか。ギャグじゃんもう」
いかにも「www」と後に付くような笑い方をする天音を他所に、詳細を知らされていないルーはぽかんとしている。
「ああ、ルー老師はドルイドについて知らないんだったな。仕方ない、私が少し教えてあげよう」
ポン、とない胸を叩く真紅。
「小型高速機動司令室ドルイド。またの名を⋯⋯
そこでルーの目が変わる。外神、という意味を彼は理解しているのだ。
「永久機関の『BFK』が生み出す電気エネルギーで稼動する前線司令室兼兵器であり、この地球上のあらゆる事柄を数値化し、あらゆる情報を即座に叩き出すスーパーコンピュータが内蔵されているんだ。それらを元に作戦を立案、指令、実行に移すためのアシストをしてくれる高度人工知能。更には『門』や『電撃武装』といった異星の技術や魔術を多様に使用しており、金属部はとある生命体の身体から抽出された物質をアレンジした『S20』をふんだんに使った⋯⋯」
と、語り過ぎたと我に返る真紅は、少しは恥ずかしくなり、頬を赤く染めて硬直する。
「真紅ちゃんのオタクな所出てるねー」
「い、いいじゃないか少しくらい。本当に機密情報なんだ。あまり話す機会が無くてな⋯⋯。って撫でるな! 私はこれでも一応君より歳上なんだぞ!」
幼げな少女(現23歳)らしく可愛らしい仕草で恥じらいを見せている真紅の頭を撫でる天音。
「基本武装は見る機会があれば是非とも見て欲しい。今回使用する射出砲は電子加速と燃焼を合わせて着弾位置の300m先で格納外殻が燃え尽きるように⋯⋯」
「真紅ちゃん?」
ハッ、とまた解説してしまっていたと我に返る。
「のう。何故お主はそこまでこの研究に熱を入れるんじゃ?」
ふと、ルーは真紅に問いかける。
「お主がこのような機械が好きなのは分かる。しかしながら自ら戦場に出て、それでいてこうして研究も行って。それに先程の女史二人とは違ってその⋯⋯。とにかくじゃ。こんな研究をしなくてもお主なら食うには困らんだろう。それなのに何故⋯⋯」
そこで言葉を濁すルーだったが、その意図はしっかりと真紅には伝わっていた。
「ああ、そうか。サーヴァント、英霊とはそういうものだったな。人の生きた記録を物体化したもの、私達の先輩。君達は私達がなぜ生きているのか、この先何を成したいのか。そういうのが大切なんだろう」
真紅は近くにある自販機でコーヒーを購入しながら話を続ける。
「私は⋯⋯家族の為にここにいるのさ。私と、夫。それと娘がいる世界が幸せであって欲しい。だからそれを仇なす人類の敵を倒すために手を貸している」
「そっか、真紅ちゃんもうお子さんいるんだっけ」
「ああ。まだ小さな命でも、私にとってはかけがえのない大切なものだからな。それさえ残っていてくれれば私はそれでいい」
「⋯⋯あの女史達とは随分と違うんじゃな」
それがルーの素直な感想である。ルーはこの部隊についてあまりいい印象は無かった。
それもそのはず。人や生命を物として扱うような連中が複数人所属している、というのはサーヴァントとしてもあまり気持ちのいいものでは無い。
「そうだな⋯⋯瑠楓やグラフにだって正義がある。少なからず人類を思ってのものさ。だから私はみんなが毎日幸せでいて欲しいって祈っているよ。家族だけじゃなくて、部隊のみんなや研究チームだって例外じゃない」
誰もが幸せでいて欲しい。ただそれだけ。だからこそ星の外の生命体を許さない、というのが彼女がこの組織に身を置く理由である。
「宝鐘先生! こちらは準備完了です!」
「分かった! お前達は下がっていいぞ!」
機体調整を終えた真紅の部下から声がかかる。
「という訳だから二人は案内に従って所定の位置に着いてくれ」
真紅は振り返り、操縦席へと向かう。
「天音、頼むから死なないでくれよ。任務が難しいと判断したら自分の意思で引いたっていい。お前が死ねば大勢の人を悲しませることになるからな」
彼が死ねば真紅自身や彼の関係者だけでなく、これから現れる異星の脅威から守れる命が減り、その結果多くの人が悲しむ事になる。その二つの意味を込めた言葉を彼女は残していった。
「真紅ちゃんはさ。『人類の脅威』を資料でしか見た事ないんだ」
「ほう。それはまたどうして」
「奴らは冒涜的な生き物だ。僕ら人間からは形容し難い邪悪な存在。そんなのを見れば精神や人間性が削れていくのは必然さ。だから真紅ちゃんには見せられない。理性や精神が削れた真紅ちゃんを家族に送り届けるのは、それこそ胸糞悪いって事なんよ」
天音の目には真紅が輝いて見えていた。何か守る物がある。そのために戦うというのは彼にとっても憧れるもののひとつなのだ。
「マスターやあの女史達の精神は⋯⋯どうなんじゃ?」
「僕は⋯⋯そうだなぁ。そこまで影響無いんじゃない?どんな見た目だろうと、僕よりは弱いからね。弱者に削られるほど精神は弱くないし」
と、一息吐いた天音は少し苦い顔をする。
「他の研究部の人達は⋯⋯ちょっと別だわ。絶対人間の感性してないよマジで⋯⋯。天才と常人は相容れないのかな。でも推定IQ260超えの真紅ちゃんは優しいし⋯⋯」
元々狂っている人達の考えは分からないね。と歩き出す天音。
「ほらほらじっちゃん行くよ。作戦開始だってさ」
「⋯⋯了解じゃ。あまり老骨を酷使せんといてくれ」
ーーー
「久々に乗るな」
『お久しぶりです、宝鐘様』
「ああ。元気か⋯⋯と聞くのはおかしいか。よろしく、クレア」
真紅が操縦席に座ると頭上から声が降りかかった。
横浜上空でも瑠楓と会話していた声だが、正体は『自立型高度人工知能クレア』と呼ばれるAIである。
このドルイドには地球上の観測できる範囲のあらゆる情報を取得し、演算するスーパーコンピュータ『KR』が搭載されているのだが、全てのデータを処理するには常人の脳ではキャパシティが圧倒的に足りないのだ。
そこでこのクレアである。超高度なAIである彼女が『KR』の効率的運用と情報精査を行ってくれるのだ。
先程天音も言っていた通り、現状クレアを使わずに運用できるのが天才が揃う盤外遊撃部隊の中でも真紅と瑠楓の2人のみであり、同じことが出来るのは世界でも、というより歴史上でも指で数えられるほどだけと言われている。
『命令は既に聞いてます。異空間内の座標指定でも問題無いと思われますが⋯⋯多少の危険はありますので、今回は私が行いますね。空の一人旅を奪ってしまった罪悪感に涙が止まりません』
「私は別に⋯⋯1人で操縦したい訳じゃないからな⋯⋯? 楽出来るなら楽はしたいぞ⋯⋯?」
『あ、いえその年頃でしたら少し背伸びしておひとりでやりたいと仰るかと⋯⋯』
「私はもう大人だよ!」
AIにすら身長弄りされる真紅。ちなみに言うと、23歳女性の平均身長は157cmである。
『コホン。⋯⋯座標演算完了。門の創造、起動します』
その瞬間、操縦席から見える外の景色が一変。紫色の夜空の異空間へと変化する。
「⋯⋯空間情報取得。⋯⋯マッピングは終ったよ」
『助かります。魔力反応と地形を照合』
クレアは『門の創造』でドルイドをアジ・ダハーカの魔界上空へと転移させたのだ。
そして真紅が即座に『KR』で地上の構造を演算し、立体的な地図を作り上げる。
その後、クレアが地上にいるサーヴァントを照らし合わせ、それを地図上に映し出し、天音とルーを『撃ち出す』場所を設定。
この間僅か1秒と0.93。常人には理解し難い圧倒的な速度であり、超高度なAIと同じ速度でこの作業を行える真紅は紛れも無い天才なのだ。
そしてその他様々な手順をものの数秒で終えた真紅は次のプロセスへと移る。
ドルイドの下腹部から少し大きめの大砲が露出し、横浜ランドマークタワーの中腹を指した。
「射角、よし。天音、発射まで3、2、1」
そして音もなく滑り落ちるような振動と、機体が少し軽くなったような感覚が操縦している真紅を包む。
「ルー老師。射出まで3、2、1」
そして同じような感覚をもう1度。
「⋯⋯さてと、私はこのまま領域外へと撤退し、そこから天音のオペレーションだったかな」
真紅は先程購入したコーヒーを開け、小さな口で1口飲む。そして⋯⋯。
「行くか」
小さく胸の前で両手を握り締め、可愛く気合いを入れた。
そしてところ変わって現在天音がいる空中。
ドルイドから撃ち出されたのは直径3mの金属球。電磁加速によってマッハ7という速度を叩き出したソレは真っ直ぐ目的の場所、横浜ランドマークタワーの48階へと向かっていく。
「観光地で戦闘とか洒落てるわ。まるでテーマパークに来たみたいだね。テンション上がるなぁ〜」
金属球の中は空間が隔離されており、加速による衝撃や諸々の問題を受けることは無い。
そして真紅が言っていた通りランドマークタワーから約300m離れた所で金属球が燃え尽きる。
それでも尚天音の『防殻』は機能しており、同じように隔離されているため影響は無い。
そしてそのまま突撃。衝撃波と爆発したかのような爆音を巻き起こし、窓ガラスを吹き飛ばしながら天音は中へと侵入する。
「よっと、毎度毎度思うけどさ。相変わらず奇襲にしては派手だし他に方法なかったの⋯⋯?」
呆れながらも『防殻』を解除し、真紅と連絡を取る。
「もしもし真紅ちゃん? こっちは無事入れたけど⋯⋯敵サーヴァントは?」
天音が周辺を見渡すとそこはホテルの一角。いや、ホテルだったフロアがそこにはあった。
アジ・ダハーカに再建されたものだが内部の殆どはそのまま。高級ホテルだったものは無惨に衝撃で吹き飛んでいる。強いて言うならまだ階段が残っているため上へと上がるための道はあるのだが、それ以外はホテルの面影だったものしかない。
『聞こえているか? ⋯⋯よし。敵サーヴァントは近いぞ。注意し⋯⋯』
その言葉の最中。天音は背中に嫌な気配を感じる。
が、奇襲という訳では無くただ視線のみだった。
「なぁんか、ねちっこい如何にも『邪』なカンジするなって思ったらそれっぽいサーヴァントいるじゃん」
「⋯⋯我の姿に気付くとはな」
天音が振り返ると、そこには赤と黒を基調とした鎧を着ている女性の武士が立っていた。目元を黒い布で隠した その立ち姿からは並々ならぬ怨念を放っている。
そう、アジ・ダハーカが召喚したアヴェンジャーのサーヴァント、平景清である。
「うおっ、すっげー。でっかい鎧に刀⋯⋯ってなると武士か。それに女の子かぁ〜、女の子の武士とかレア過ぎでしょやったね」
この場においても全く緊張感の無い天音の耳に真紅の声が届く。
『おい、それは相手の女性に失礼じゃないか? レディの扱い方がなってないぞ』
無線による通信が使える以上、オペレーションは可能。
真紅は天音の目を共有し、更にそこを起点に仮想感覚と呼ばれる魔術を起動し、天音を起点に周辺に感覚器官を作りだす。これによって第三者の目線から戦場を俯瞰して見ることが出来るのだ。
「⋯⋯景清に怯えぬのか?」
「えっ? なんで? だって侍でしょ?」
はぁ、とため息を吐いて天音はモッズコートのポケットに入れていた手を取り出し、自身の右手で虚空を掴む。
「秘匿の御三家。武家最強の遺伝子を持つ僕が、剣技で負ける訳ないでしょ。当たり前の事だよ当たり前」
余裕綽々で幼さが残る生意気なニヤケ顔を景清に向けて、更にもう一言。
「
その瞬間、天音を囲うように空間の歪みが複数現れる。
「
その門を開く鍵となる言葉はこの星の知らない別のもの。冒涜的、或いは神秘的な一言でその歪みが扉へと変わる。
その扉から不気味な黒い流出する。それが少しずつ天音を包み込み、彼の篭手となり、臑当となり、刀となる。
その姿はドルイドと同じ真っ黒な金属に蛍光色の科学的な光のラインが刻まれたその装備。明らかに現代の科学技術からは逸脱した近未来的なもの。
これこそが特殊作戦群盤外遊撃部隊が持ちうる奥の手。
「それじゃ、サーヴァントと異星の魔術で異文化交流と洒落こみますか」
名を
マジでFate感が1ミリもない!
凄いぞ! 今までの2話分くらい文字数あるぞ!
11話で言及されていた魔術兵装、そして魔術協会とは異なる魔術。色々明らかになりましたね。こんな物騒でイカレた組織は多分うちだから出れるんだよきっと⋯。「IQ260なんてそんな人物いる訳www」と思われがちですが実は歴史上存在していたそうな。みなさん、真紅ちゃんはそのぐらいですよ。可愛いですねぇ(l)
自衛隊の魔術関係は全てクトゥルフ神話のお話ですので、分からない方は調べればある程度出てきますので是非。
ちなみに彼らは元々身内で行われたクトゥルフ神話TRPGセッションのキャラクターや設定をそのまま使用しておりますので、多分元ネタとかあったりするのかな?