Fate/The Fatal Error   作:紅赫

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詠唱間違えてました。とても恥ずかしい……。


プロローグ 依代

「ちょっ、どうすればいいの!? とりあえず状況説明してし!」

「⋯⋯あいよ。まず落ち着いて聞け? サーヴァントの身体は霊核っつー心臓みてぇなのに魔力で作った肉体を纏わせて現界すんだよ。その魔力の肉体はマスターからの魔力供給があって初めて作り出せる訳だ」

 

 そう言った大福はその場から姿を消す。それでもただ見えなくなるだけであり大福がその場からいなくなった訳では無い。

「消えた」

「これがいわゆる霊体化。四六時中サーヴァントがマスターの身を守る為にこうして息を潜めたり、マスターやサーヴァントの魔力の消費を抑えるためだ。それでも俺の場合、霊体化していようが消費に供給が追い付かねぇ」

 

「マジ? さっきの言葉撤回。コスパ悪過ぎっしょ」

「本来ならマスターの魔力に合わせてサーヴァントも格落ちしたり強くなったりすんだけどよ、俺の場合そのまんま召喚されちまったらしい」

 はあ、とため息をつく大福。

「あと魔力とかそういう話は分かるんだな」

「まあね。アタシその手のゲームはよくやるからさ。大福を召喚したはいいけどアタシの実力が足りないから維持出来ないって認識でおけ?」

「⋯⋯おけだおけ。ったく、言葉が分かりにくいんだよ」

「そう言えばめっちゃ日本語流暢だよね。大福とかも知ってるし中々博識じゃん見直したかも」

 

「召喚される時に聖杯から魔力と現代の知識は粗方詰め込まれてるからな」

「なるほど、聖杯すご」

「なんて話してる場合じゃねぇんだよ!? どうするこれ!?」

「でもアタシに聞かれてもなーってカンジ。そういう知識無いからどうすればいいのかわかんない。魔力ってそんな数時間じゃ増えないよね?」

 

 不満そうな顔で皿を洗いながら大福に質問する輝愛。

「そりゃそうだ。増やそうと思って増やせるもんでもねぇ」

それに、と付け加える大福。

「単独行動っつースキルがありゃしばらくは何とかなるはずなんだが生憎俺は持ってねぇ」

 

「そういう便利スキルは取得してから召喚されろし。⋯⋯難しっ」

うーん、と悩む輝愛は食洗機のボタンを押した瞬間に「あ」と小さく呟く。

「今って大福に肉体が作れないから困ってるんだよね?」

「ああ。別にマスターが悪い訳じゃねぇ。これは召喚した陣や聖杯が悪い」

 

 

「ならさ、アタシの身体を使えばいいじゃん」

 

 

「⋯⋯!?」

「そうすればアタシが魔力を供給する必要無いし。名案じゃん?」

  大福に目は無いが明らかに困惑、と言うよりもキョトンとしている表情が見える。

「中々ぶっ飛んでんな、マスター。俺がマスターの身体を乗っ取る可能性もあるんだぜ」

「それはまあ、でもアタシ意思は強い方だし? それで出来そう?」

「なるほどな。結論から言えば不可能じゃねぇ。マスター、お前を依代にして俺は現界し続ける。だがな、一つ聞かせろ」

 

「ん? 何?」

「マスターの願いって何だ。まだ俺は聞いてねぇ。本当に俺の意思を預けていいかってのを決めてぇんだよ」

「⋯⋯? あー、そゆこと」

 面食らってキョトンとした輝愛だったが、それは一瞬の出来事。すぐにその顔は笑顔で、思い出を共有しようとするように、楽しそうな表情で語り始める。

 

「アタシは悪人になりたい」

くるくると手元にあるナイフを遊ばせながらそう宣言した。

「この世界には悪が足りてない。全人類が団結して協力して滅ぼすべき悪が。だからアタシがそれを成すの。それで世界を統一する。その後この世の悪になったアタシを倒した時、世界は平和になる。朧気なシナリオはこんな感じ。だからアタシが聖杯に叶えてもらう願いは⋯⋯」

 

 

「アタシが世界を支配すること」

 

 

「⋯⋯」

「そしたら他の人たちがアタシを殺して平和になる。まあ、現実にはそう簡単に行かないけど? これはアタシの理想論だから」

「直接平和を望めばいいじゃねぇか」

「みんなが知らなくても強制された平和ってなんか嫌じゃない? ま、本来アタシがやる過程がスキップされるなら楽でいいし」

この考え方が破綻していることは輝愛自身分かっている。それでも輝愛はそれしかないと考えている。

争いが無かった時代は無い。人々が知性を得るずっと前からそれは変わらない。

 それでも、彼女は世界から本当に争いが無い時代を作りたい。刹那の時間だけでもいい。その前例を作ることが大切なのだと。

 

「⋯⋯分かったよ。お前の身体を依代にさせてもらう」

「なーんかはっずいこと無駄に語った気がするんだけどー。これで実戦出て秒殺されたら承知しないからね?」

「それだけはねぇ。いいから改めて命令しろよ」

「はいはい」

 輝愛は持っていたナイフを向けて宣言する。

 

 

「大福、アタシの身体を依代っていうの? にしなさい!」

 

 

「しっまらねぇ⋯⋯。ホントにこんなんでマスターが務まるのかね」

 そして大福の身体が黒い粒子となって崩れ落ち、輝愛の身体を包み込む。そして数秒後、黒い粒子は輝愛に吸収された。

「一言二言余計ですー! ってアレ、これだけ?」

 呆気に取られた輝愛だったがどこか全身に違和感を感じている。

『一応言っておくとこのままでも俺は喋れるからな』

 と、輝愛の中から大福の声が聞こえてきた。

 

「マジ? ⋯⋯マジじゃん!」

『俺と一体化したからにはマスターを絶対に勝たせてやる。あと俺の権能の一部が使えるようになってるぜ。とりあえず登校の支度してこい』

「おけー」

 スタスタと自室に戻った輝愛は制服に着替え、身支度を整えると部屋の角を指さした。

 

「それじゃあ昨日のアレやってみよ。あそこから行けたりする?」

『余裕。転移してぇって気持ちと転移先の場所を思い浮かべりゃその付近のどっかに出るぜ』

「へー、よっ」

 その一言で輝愛が見ていた景色が自室から学校の鶏小屋前に変化する。その場で靴を履きながら目を見開いて驚く。

 

「えっ、凄!エモエモのエモでしょ!」

『エモってなんだよ』

「なんかこう、気持ちが昂った時に使う言葉。もう死語かもしれないけど使う機会があったら使いなよ。これエモいねって」

 輝愛が転移したのは神奈川県立横浜湊高校。通称ハミ高である。輝愛の入学時に改修工事が終わり完全新築で倍率も高く神奈川県でもトップクラスの偏差値を誇る高校だ。

 

『てかなんで学校なんて通ってんだお前。お前暗殺だけしてりゃ食うに困らねぇだろ』

 素朴な疑問を呟く大福に対して分かってないなぁとドヤ顔する輝愛。

「殺しはこの先の人生イヤってほどするけど、青春って学生しか味わえない貴重な体験じゃん? じゃあ今優先するのはどっちかって言われたらこっちでしょ」

『⋯⋯そもそも俺は青春なんて概念しか知らねぇからわからねぇ。楽しいか?』

 

「もちろん。それにこの高校はバイトOKだし? 稼ぐのも必要って事」

『暗殺稼業をバイト扱いしてんじゃねーよ』

 輝愛が自身の教室に入るといつもガヤガヤと騒がしい話し声が聞こえてくる。教室は半分以上の生徒が既に登校しており、その中にいる一段と声の大きい2人組の女子生徒が輝愛を見て近寄ってくる。

 

「おはよー輝愛、今日早くない?」

「おはよめぐち、ちょっと早く目覚めたからね。パッチリよパッチリ」

「ねぇきあ聞いてー、ウチの彼氏がさぁー」

 茶色に染まった肩まで伸びたウェーブの髪、ギラギラのネイルに少し甘めな香りの香水を付けているのが涼宮恵、通称めぐち。

 もう一方は黒髪のボブカットだが化粧やネイル、少し冷たい香りがする女子生徒、彼氏持ちの如月澪、通称みゃお。

 

「みゃおの彼氏自慢は後でゆっくり聞いたげる」

「自慢じゃないしー。どーせ2人はいるんだから関係ないじゃん。てかきあが彼氏居ないとかいちばん無い」

「いや居ないから、一緒にすんなし」

「はー。絶対ウソ」

 などとギャン騒ぎしていると輝愛の隣に座っている男子生徒が登校してくる。

 

「あっ、ごめ」

 輝愛の荷物が隣の男子生徒の机に侵食していたため慌てて戻す。

「大丈夫」

 黒い短髪と真面目そうな横顔、どこをとっても普通の少年は宇都宮俊介。輝愛とは隣だがあまり会話は無く、輝愛としてもあまり印象に残らない人物だ。

 

「アタシ飲み物買ってくるけどなんか欲しいのある?」

「あ、ウチカフェオレ!」

「めぐちはー?」

「んー、今はいらないや」

「りょー、後で徴収するからお金出しといてー」

 そう言って輝愛は振り返り校内の自販機に向かおうとすると⋯⋯。

 

「わっ」

「あっ」

 鞄から教科書の類を出している途中だった宇都宮とぶつかってしまう。

「ごっめーん!」

 ぶつかった拍子に落としてしまった宇都宮のノートを拾うと1枚の紙切れが隙間から現れる。

「あちゃ」

「⋯⋯!」

 そのまま宇都宮のメモを拾い、ノートと共に返却する。

 

「マジごめん」

「気にしてない、まあ少しビックリしたけど」

「⋯⋯お詫びに1本買ってくるけど何かいる?」

「お構いなく。こっちも不注意だった」

 輝愛は「じゃあお茶買ってくる!」と言って教室から出る。

 

「ねえ大福」

『あ?』

「大福と話してるアタシって周りから独り言喋ってるヤバいやつに見られてたりする?」

『そうだな。俺の声はお前にしか聞こえねぇしそう見られるかもな。周りに聞こえるように出来るけど別に今必要ねぇし』

 うわぁ、と嫌な顔をする輝愛。

 

「頭の中だけで会話したりとかは?」

『お前次第だな』

「じゃあ授業中練習しよっかなー。ああ、それとそうだ」

 真剣な面持ちでつぶやく。

 

「大福って使い魔とか出せたりする?」

 財布からクレジットカードを取り出し手元で遊ぶ輝愛はふとそう呟いた。

『出来る。俺の権能のひとつに『猟犬の招来』っつースキルがあるからな。召喚してぇーって気持ちと角からぴょこって出るイメージがありゃどこでもいい』

 そう聞いた輝愛は物は試しだと自販機がある部屋の角を凝視する。

 すると角からテラテラと黒く光る針のようなものがうねって出てくる。

 

「あ、大福の舌みたいなのが出てきた」

『アレが使い魔というか、眷属だ。俺みてぇに角を通じて移動するが、普段は別空間にいる。それでもちゃんと命令には従うから安心しろよ』

「これ何匹まで出せる?」

『無限に出るぞ』

「マジ?」

『マジマジ』

 

 輝愛は買った飲み物を持って教室に戻る。その後それなりに長い時間恵と澪と雑談し朝のホームルーム中。ペンを回しながら大福との脳内会話を練習していると宇都宮がメモを見ながら悪戦苦闘していた。

「なになに、勉強のシート?」

 

 唐突に話しかけられてビックリしている宇都宮。

「勉強じゃない。コレをちょっと暗記しないといけなくて」

 そう言ってメモを指を指す。

「暗記かー、まあ大変だよね。そういうのはイメージでしょイメージ。出来る自分をイメージすれば大体なんとかなる」

 

『それってアドバイスになってんのか?』

『なってるっしょ。だってアタシがイメージ基本だし』

「神崎さんが言うと説得力があるな⋯⋯」

 なんとも微妙な表情である。

『ほらね』

『褒めてんのかそれ⋯⋯?』

 

 実際、輝愛の成績は高い。文武両道で人となりが良く、友達も多いとかなりのハイスペックだ。

『ま、今のうちに楽しめるだけ楽しもうよって話。これから先どんな未来が待ってるか分からないじゃん?』

 

 

ーーー

 

 

 

 深夜零時。

 普段の学校であれば絶対に人がいない時間。屋上には1人の男が立っていた。その男は姿が分からないようにフード付きのパーカーで顔を隠しているため正面以外では顔を見ることは出来ないだろう。既にその場所には秘匿された結界が張られており、何人も外部から侵入する事は出来ない。そしてその場所は今即席の魔術工房と化していた。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 男の前には青白く光る魔法陣。その光は男の詠唱と共に強まっていく。

 

「満たせ。満たせ。満たせ。満たせ。満たせ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

 ひとつひとつ丁寧に言葉を紡ぐ。

 

「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 男の頬に汗が垂れる。緊張からか、恐怖からか、重圧からか。それは本人のみぞ知る。

 

「誓いを此処ここに。我は常世総すべての善と成る者、我は常世総ての悪を敷しく者」

 

 青白く輝く魔法陣は光を強め、そしてそこから何層にもなる魔法陣が展開された。

 

「汝 三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!!」

 

 そして何層もの魔法陣が男の目の前で収束し、強い光を放つ。

 

「やった⋯⋯!」

 男は声を漏らした。

 魔法陣の光が収まるとその中心には人影があった。

 身長はあまり高くはなく、16歳前後で男とさほど変わり無い。淡い萌黄色の長髪と白い肌、少し幼さを見せる顔立ちのそれは人間離れした美しさを放っている。

 

 服装はシンプルな貫頭衣のみ。しかしそれが彼の神秘性を際立たせていた。

「サーヴァント、ランサー。エルキドゥ。君の呼び声で起動した。今回の聖杯戦争では僕を上手に使うといい、マスター」

 その声に男は歓喜した。

「エルキドゥ⋯⋯神が作ったとされる兵器⋯⋯! 大当たりだ! よろしく、エルキドゥ。僕の名前は⋯⋯」

 

 とフードを外し名乗ろうと男に対してエルキドゥは待って、と手で制す。

「マスター、少し結界の張りが甘かったんじゃないのかな? 」

「えっ?」

 男がエルキドゥの目線を追うとそこには一匹の穢らわしい狼のようなケモノが立っていた。

「魔獣!? ど、どこから!?」

 

 そのケモノの身体は黒と紫色の粒子で出来ているが眼球は赤いノイズ画面のように光っており、口に当たる部分からは鋭い針のような舌が伸びている。

 大きさは5m以上あり、その場にいるだけで吐き気を催す程の威圧と湧き上がる恐怖を感じるだろう。

 

「いいや、視覚だけに囚われてはいけないよ。アレは人間だ」

それはエルキドゥのスキル『気配探知A++』による看破である。大地を通じて気配を探知するこの力はケモノが視覚のみを騙すものであり、本来の姿が人間であると理解したのだ。

 男が睨み付けると気の抜けた掛け声が聞こえてきた。

「ねー大福! バレてんじゃん! せっかく大福の権能使ったのにさー!」

『仕方ねぇだろうがぁ! 俺の力は姿を騙すって感じだから本格的に変身してる訳じゃねぇってさっきも言ったよな!』

 

気の強そうな女の声と少し低い男の声が辺りに響く。

 男はその声に聞き覚えがあった。

「⋯⋯もしかして、神崎さん?」

 そう言ってフードを外す男。

 そして男の声に反応してケモノの黒と紫色の粒子が崩れ落ち、中から制服姿の神崎輝愛の姿が現れた。

 

 

「ま、声聞いたらバレちゃうよねー。一応言っておこっか。こんな時間に何してんの? 補導される前に帰った方がいいんじゃないかな、宇都宮くん?」

 

 

 ニヤリと笑う輝愛とは対照的に、宇都宮の表情は緊張に満ちていた。

 

 




ランサーっていっぱいいますからね。誰を出すか迷います。ちなみに既存のサーヴァントはあと一体出てきます。
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