Fate/The Fatal Error   作:紅赫

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先日二度目のワクチン接種を終え、本日最後の親知らずを抜きました。地獄かな?


善性を求める者と悪辣を尽くす者

 

 それは輝愛が大福を召喚する1週間前。アメリカから横浜に降りた阪東葛木は即席の工房をホテルの麓の林に造り、その日の夜にマスターとして英霊を召喚した。

 

 初めはアルジュナという強大な力を持つサーヴァントを召喚出来た事に対して歓喜の声を上げていたが、アルジュナは魔力で阪東を拘束してしまう。

「ンだよアルジュナ! テメ、サーヴァントだろ! なんかオレに文句でもあんのか! アァ?」

 

「⋯⋯ある。私は全ての悪を滅ぼす者。例えそれがマスターであったとしても悪であるのならば滅ぼさなければならない」

「⋯⋯はァ!? 待て待て落ち着け、というか何でそうなった!? オレの知ってるアルジュナじゃねぇぞコイツァ! 1回座れ、てか一回部屋戻んぞ、話はそれから聞いてやる!」

 

「⋯⋯」

 アルジュナは無言で魔力の放出を止めると、霊体化し阪東をじっと見つめる。

 

「で、あと何だよFatal Errorって」

 そう、阪東がアルジュナを召喚する時に現れたFatal Errorという文字。それは輝愛と同じく真っ赤な光に包まれたイレギュラーな召喚を意味していた。

「⋯⋯知らない。それと、話は後だと言ったのは貴方では?」

 

「あーそうかよ、ったく、何だってんだ⋯⋯」

 と、毒づきながら部屋へと戻った2人は改めて話す事に。

 

「で? オレをいきなり殺そうとした訳を聞かせて貰おうじゃねぇか」

「⋯⋯」

 ホテルは58階のスイートルームで、外の景色は素晴らしいもの。その夜景を眺めながらアルジュナはぽつりぽつりと話し始める。

 

「私の世界は⋯⋯。私のせいで滅んだ」

「ン⋯⋯あ⋯⋯?」

 想像とは違った語りから始まったため若干困惑する阪東を他所にアルジュナは話を続ける。

 

「創世と滅亡を繰り返し、全ての悪性を滅ぼす為に何度もユガを廻した。その結果世界が切れてしまった」

「ユガってアレだよな。季節みてぇに移り変わる滅びの暦」

 阪東はそれなりに博識である。

 

 そう、このアルジュナはこの世界の歴史に存在するアルジュナでは無い。インドの神格を全て取り込み、世界の神となったアルジュナ。完全な世界を目指しその果てに捻れて切れた世界のアルジュナなのだ。

 

「故に私は完璧な世界をここで創る。その為に邪悪で不完全なものを滅ぼす」

「⋯⋯あー、なんとなくだが納得したぜ。だから如何にも悪なオレを殺そうとしたと。そういう事か」

 そう頷く阪東は少し寂しそうだった。

 

「悪ぃけどさ。そいつァ無理な話だぜ。アルジュナさんよォ?」

「⋯⋯何?」

 

「聞く限りアンタは別の世界のサーヴァント、それも飛びっきりの神様みてぇだ。でもよ、この世界は不完全な物しかねぇし誰もが悪ってのを心に持ってる。そもそも人がいる時点で星そのものが劣化する。なァどうするよ? ソレってつまり例え人が完全になったとしても不完全なものがねぇと生きてけねぇってこったろ?」

 

「⋯⋯」

「あと、オレが居ねぇとアンタは現界出来ねぇだろ。別にオレは聖杯に叶えて欲しい願いなんてねぇからオレが居ればお前の願いを2つ叶えられる。どうだ? オレを殺すのは最後って事で」

 阪東の願い。それは闘争。ただ只管に強者を探し、互いに殺し合う。それだけが阪東葛木が聖杯戦争に求める事だ。

 

「アンタはこの世の不完全なものを全て完全にする、ンでオレはアンタをこの世界の神にする。どうよ? 最高じゃねぇか?」

 アルジュナはこの世界の神ではない。故にこの世界を管理することは出来ないが、阪東が聖杯に願い、神になればアルジュナは完成された完全なる世界を統治することが出来る。

 

 そしてアルジュナは自分だけでは完全なる世界を創り出す事が出来ないという事を知っている。

「分かった。貴方の力を貸してくれ、マスター」

 それ故に結論は決まっていた。

 

「っしゃ! よく言った! どうせアンタに強制の令呪は効かねぇからな、意見が合致してくれて助かったぜ」

「私の矢は貴方にも向けられているという事を忘れないように。約束を違えれば私は貴方を討つ」

 アルジュナは高過ぎる神性を保有しており、令呪による強制程度であれば簡単に弾いてしまうのだ。

 

「ンだよまだ納得してねぇのか? 信用して欲しいも⋯⋯ん⋯⋯」

 ニヤニヤと嬉しそうに笑っていた阪東は次第に強い頭痛に襲われる。

 

「⋯⋯あー、アルジュナ。魔力食い過ぎだろ、流石に⋯⋯」

「⋯⋯すまない」

「初手からコイツを使う羽目になるたぁ思ってなかったぜ」

 そう言った直後、身体中の魔術回路が活性化する。

 

「ま、これ維持しっぱなしでも問題ねぇな」

 余裕のニヤケ顔に戻る頃には身体中の光は収まっていた。

「⋯⋯マスター、今何を?」

 

「あ? オレがアメリカに設置した術式を遠隔で発動させたんだよ。予備の魔力タンクのつもりだったけどな」

 

 阪東が遠隔発動させた結界。それは「内部にいる魔術回路を持たない人間から毎分0.1%分の魔力を吸収する」というもの。

 たかが0.1%ではあるが、その規模は。

「範囲はアメリカ全土、つまり約3億の人間から魔力を徴収出来る結界だ。コイツがありゃお前の維持も楽勝だろ?」

 

「3億⋯⋯!」

 魔術師を除くため実際にはもう少し下になると考えられるが、十分な量である。

「ま、コイツを隠すのには苦労したぜ。星の並びってのは妙にシビアからよォ」

 

 阪東葛木は元々時計塔天体科の元々魔術師であり、阪東家は過去にロードの位をアニムスフィア家と争った事もあるが、その後に破れ今は独自の道を進んでいる。

「星々の行く末はオレたちが決める、とか吐かすぐらいには才能ある家系なんだぜ? オレにその才能が無かったらアルジュナはもう消えてんな」

 

「その行為は褒められたものでは無いが、今は見逃すとしよう。⋯⋯それで、彼女は客人か?」

「⋯⋯ノックも無しに入ってくるたァ、中々礼儀知らずなガキだなぁオイ?」

 

 阪東はため息を吐きながら部屋の入口に目を向ける。するとそこには荒島絡果が本を読みながら壁に寄りかかっていた。

「あら、ノックはしたつもりなのだけれど。私は監督役の荒島絡果。今回はただの挨拶よ」

 

「してねぇだろ、空間転移してきたくせに何言ってやがる。で? 挨拶は済んだんなら帰れよ」

 阪東はどうせ後で戦えるから問題ないと踏んで絡果に部屋から出るように促す。

 

「つれないわね、まあいいわ。サーヴァントとマスターの顔を見れたのだから私が来た理由はもう無い。でも1ついい事を教えてあげる」

 絡果は本を虚空へと投げ入れると部屋の出口へと歩いて行く。

 

「この戦い、世界の敵が多すぎるのよ。くれぐれも抑止力には注意する事ね」

 そう言ってその場から姿を消す。

 

「チッ、余計なお世話だっての。アルジュナァ、メシ行くぞメシ。その仰々しいモン消せるか?」

「問題無い」

 音もなく消えたガーンディーヴァや球体。そして頭から生えている耳のようなものは阪東が幻術で不可視化する。

 

 そしてもう1着の浴衣を渡されたところでアルジュナが反論。

「私は食事が不要。霊体化すればいいのでは?」

「うるせぇ、せっかく現界してんだ食っとけ。あと完全な世界になったらメシが食えねぇだろ。今のうちだ」

 

「理解不能。しかしマスターの命令とあらば実行しよう」

 こうして何食わぬ顔で浴衣に着替えたアルジュナの姿は神秘的で氷のように冷たい一人の青年だった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 時は戻り輝愛と阪東が対峙するビルの屋上。俊介は情報を手に入れるとすぐさまエルキドゥの所へと向かった。

「もう手ェ組んでんのか。はえぇじゃねぇか」

「そ、なーんか偶然知り合いだったし殺し合うのが気乗りしないなって」

 

「⋯⋯それ以外にも理由があるよなァ?」

「あのさ⋯⋯勝手にアタシの中身覗くのやめて欲しいんだけど、なんで分かっちゃうかなぁ」

 

 いかなる魔術か、阪東は輝愛の心の中を覗き、言い当てる。

「バンちゃんは関係無いってのは言っとく。後々面倒だし」

「勝手にあだ名付けんじゃねぇよ、調子狂うぜクソが⋯⋯」

 

「アタシはこのまま話してるだけでもいいけど。元々情報収集が目的だし」

「よくもまあ敵の前でペラペラと喋れんなァ。でもよォ、ちょっくら遊んでくれたっていいんじゃねぇか? 情報収集にマスターの戦闘力ってのを付け加えとけよ」

「バンちゃん自信満々だね〜。ならじゃあ、少し遊ぼっか」

 

 輝愛は即座に角から阪東の死角を突きナイフを向ける。

 が、それは一本の氷の柱によって防がれてしまった。

「不意打ちたァ度胸あるじゃねぇか」

「ウソっ!?」

 完全な不意打ちに成功していたと確信していた輝愛は驚きの声を上げる。

 そしてニヤニヤと楽しそうな笑みで振り返る阪東は手に赫灼色の火球があった。

「コイツァ少しアチィぜ、輝愛ァ!」

 

 それを輝愛に向けて放つが、輝愛は転移で避け事なきを得る、はずだった。

 火球は隣のビルにぶつかるとそこから一気に巨大化。直径200メートルはあるであろう大きさになった瞬間に爆発する。

 

「ったっはぁ〜!?」

 身の危険を感じた輝愛は安全圏まで退避。

 全てを赫灼に染めた一撃。その閃光が消える頃には中心から約4キロ先まで建物や人、川を根こそぎ消え去っていた。

 

「何コレ!?」

 元も場所に戻ってきた輝愛は爆発の影響をモロに受けたであろう阪東を見る。

「コイツがオレの魔術だ。まだまだこんなんじゃねぇからなァ?」

 

 阪東はニヤケ顔を絶やさないまま指を鳴らし、天空から何十もの光のレーザーを放つ。

 一つ一つが半径十数メートルもあり、離れていても触れれば焼き殺されると分かる熱量を帯びていることが分かる。

 が、それを輝愛は全て転移を使わず肉体のみで回避し、1歩を踏み込む。

 

 が、その場で発生した圧力により転んでしまう。

「ってっ、立てないし!?」

「星によって重力ってのは変わるからなァ。まあ大人しく見とけ、よッ!」

 

 その場で足踏みを一回。

 その瞬間、消し飛んだ場所の上に新たな土地が出現。無機質で白い石が一面を埋めつくす。

 まるで世界そのものが塗り変わったかのような光景に輝愛が口を開いた瞬間、異変に気付く。

 

「んぐっ!? ざむ⋯⋯ぐぅぎ⋯⋯」

 そこに立ち、喘ぐように声を漏らす輝愛。空気が存在せず、地獄のような寒さが襲い掛かってくるのだ。

「どうだ? -180度、水星そのものの感想はよォ? あ、喋れねぇか?」

 阪東が指を鳴らすと空気が出現する。

 その空気をめいっぱい吸い込んだ輝愛は息を荒くして問いかけた。

 

「⋯⋯いまのって⋯⋯魔術⋯⋯?」

「おうよ、オレの魔術だぜ」

 そう言って親指を己の胸に向ける。

 

「オレの起源たる『宇宙(ソラ)』の魔術はオレの中にある『宇宙』からありとあらゆる現象を現世に取り出すっつーもんだ。だから水星の一部を繋がりを絶たないまま顕現させた」

 阪東が内包しているのは独立した宇宙そのもの。始まりから終わりまで存在するその宇宙を操り、時にこの世界へと映し出す。

 

「これあるなら絶対拳銃いらないでしょ、なんでもってるし。あとこんなに話していいわけ?」

「拳銃は目に見えっからな。コイツァ普通にしてりゃ見る機会なんざねぇだろ?」

 クルクルと拳銃を回した後に引き金を引くが、そこからはおもちゃの紙吹雪が飛び出すだけだった。

「教えて対策取ってくれねぇと初見殺しで終わっちまうからな。つまんねぇんだよ」

 坂東はあくまで戦いを遊びだと考え、それを第一に優先する。それが例え死に際だろうと楽しむ事を忘れることは無いのだ。

 

「まァでも面白ぇだろ? さっきの魔術もオレの宇宙で使って何日もかけて発動させたんだぜ」

「いやでも⋯⋯えっ?」

「オレの中には宇宙そのものがある。ならその宇宙の時間を加速させるってのも簡単に出来るってこった」

 

 これは内包する宇宙で魔術を使用しその魔術のみを現世に置換するという過程において、宇宙そのものの時間を加速させることで、その魔術を発動するまでにかかる時間をゼロにするという荒業である。

「魔術って最高だよなァ? ここまで暴れられる機会をくれた聖杯に感謝だぜ」

 

 

 阪東葛木。彼は天賦の才と神をも凌ぐ程の魔術を振るう正真正銘のバケモノであった。

 

 

 




いや、坂東くん強すぎでは? まともにキャラ作っていただけなのですがどうしてこうなった? 封印指定待ったなしな気がしますね。
ちなみにお気付きかもしれませんが、このアルジュナ・オルタはカルデアの介入無く異聞帯がそのまま崩壊した世界のアルジュナ・オルタです。
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