「パチの方、どうだ?」
俺の親でもある東城会池田組、親でもある組長の池田が黒のスーツに映えるバッジを身につけて問いかけてきたので、頭の中で売上を計算する
「先月より上々ですが、去年に比べたらイマイチです」
「ふぅん、そうか。近々、URAに進出するから」
それだけを言い残して去っていった
(URA……つったらウマ娘がレースしてアイドルやる奴か……収益は良さそうだが、簡単に行かねぇぞ
)
関東の他の組織でもURAは手出しが出来ていない
関西は手を出したようだが、近江の連中が何組か、トカゲの尻尾みてぇに切り落とした噂を聞いた
確実な噂だろうが、目で見ねぇと信用しきれない
「若頭」
「鮫か、どうした?」
鮫と呼ばれる男は若頭の俺の舎弟で若頭補佐をしており、肥えた身体付きに潜む強靭な肉体が鉄砲玉としては有能だ
事実、先週起きた川島組合の襲撃では鮫の刺青が入った腹の脂肪のおかげで致命傷を避け、得物である金槌で血祭りにあげたとか
「ふざけた客が店に」
「……俺が行くほどか?血の気多い馬鹿どもは?」
「手ェ煩わせてます、血の気も覚めてますよ」
「……流れてんのか」
「多少」
「車」
「アクセル踏むだけです」
俺はズボンの腹にオートマチック銃をしまうと、事務所を出て車に乗り込む
「行け」
「うっす」
取り締まる店の裏手に回ってみたら、悲惨なものだった
「やってくれるな」
血の気多い馬鹿どもってのは構成員の一番下の連中だが、東城会というでけえ看板に憧れてビッグになろうつって、入ってくるやつは後を絶たない
簡単に言えば、腐るほどバカがいるってことだ
もちろん俺の目利きで、力強いバカを見定めて配置したのだが……
今、そいつらが、裏手で伸されてる
そんでもって、どこぞの小便臭いガキが帽子かぶって突っ立ってるって言うんだからどんなクソみてぇなラノベだと思ったよ
「おい、ガキ」
「……貴方も、”悪い人”ですか」
なるほど、このガキは正義感ぶって俺たちを殴り殺そうとしてたのか
「てめぇの目ん玉が腐ってなけりゃ、見たまんまだな」
「っ、バカにして!」
地面にヒビが入る程なの踏み込みから繰り出された正拳は、俺の腹に打ち込まれる
「ぐ、おぇっ……!」
「かった……ぃ!」
ちょうど腹にあったオートマチック銃に拳が入ったので、倍の痛みが俺の腹に襲う
「もう1ぱ────」
「悪い、その速度には慣れた」
また構え直し、打ち込む拳を俺は脇に挟み、腕ごと持ち上げた
太い枝がバキリと折れる音を確認した俺は、折れた腕を見て絶望的な顔をするガキの顔を見て、呆れた
「正義感ぶって乗り込んで来たんだろうが!
……腕の1本ごときで泣き言抜かすなよ?」
「いっ、ぐ、ぅぅ……っ!」
腕を離さずに俺の体に引き寄せると、膝をガキの鳩尾に入れた
「おごっ!」
「とりあえず、そこで伸びてる馬鹿どもの分だ」
2発、3発と蹴りを入れると違和感を覚えた
胸に膨らみがあったのだ
「てめぇ、女かよ」
「ケホッ、ゴホッ!」
「どっかの組の刺客かと思ったが、この様子じゃ単独か。いやわかってたがよ」
とりあえず女だということが分かり、俺は何度も膝蹴りをした
運悪く子宮に当たったところで妊娠できなくなりゃ、夜の店に花売らせればいい
運良ければ夜の店に働かせりゃいい、ガキの頃から全部覚えさせときゃ、大人んなりゃ礼儀くれぇは覚えんだろ
「あと何発だ?」
「ヒュー……ヒュー……」
「あと何発だって言ってんだろうが!!」
「たお、れてるのは……10人……」
「で?」
「5回、蹴られました……」
「あと5回だな……っと、起きたかバカども」
俺が振り向くと2人ほどの大男が立ち上がっていた
「っす、すいやせん……」
「こいつの腕折ってる、何もできやしねぇよ」
「ならどうしやすか?」
「あと5回お前らが殴れ、ガキ好きな奴がいりゃ慰めてもらいな」
「っす、……俺持ってるわ」
「じゃあ俺、殴るぜ」
バカどもが意識を取り戻して、数人が店に戻っていくと、俺は裏手にある瓶ケースを椅子にしてタバコを咥える
「火」
「す、すいやせん」
パチリとライターに火がつくと、タバコに煙が上がる
「ふぅー……、聞きてえことがある。ガキ」
汚ぇコンクリに寝ているガキは、上着の腹周りに拳跡を付け、口からヨダレを垂らしていた
目は既に死んでいた
「どこの組だ?」
「……ち、中等部1年3組」
「あん?何の話だ?」
「さ、さぁ?」
俺の疑問にバカは答えれなかった
「チッ……じゃあ何しに来た」
「わ、悪い人がここにいるって……」
「誰から聞いた」
「……」
ガキの後ろにいたバカの大男が折れた腕を持ち上げる
「ぃっ、アアアァァァア!!」
「……うるせえな、次やる時は口塞げ」
「っ!はい!すいやせん!!」
「ガキ、誰からだ?」
「ハー……ハー……友達」
俺は顎を動かすと、大男はタオルをガキの口に突っ込み、腕を持ち上げる
「ン”ン”ン”────ッ!!」
「いいやり方だ、親に口利かせてやるよ」
「アザっす!!」
「ガキ、隠し事して逃げ切れると思うなよ?
元の生活に、戻れると思うなよ?」
「……」
「誰からだ?」
「キタサン……ブラック」
「へぇ……へぇへぇへぇ!!はっは!!掘り当てちまったようだな!!」
キタサンブラック、組長がURAに進出すると同時にこんなウマ娘の友達が居るとは
俺の中で計画が組み立てられる
「おい」
「へい」
「帽子取れ」
ガキはビクリと、身体を震わせる
「まぁ分かってたがよ……バカどもを伸す力、俺の銃を壊す拳……」
腹の上にあるオートマチック銃は、もう使い物にならない
帽子は勢いよく脱がされ、ぴょこりとウマ娘特有の耳が生える
「ウマ娘、名前は?」
帽子の中によく入っていたなと思えるほどの茶の髪が溢れ出た
「サトノ、ダイヤモンド」