ダイヤは、里に   作:黒煙草

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盃、交わして。³

━━━━━━━

 

「────……きろ、起きろ若頭」

 

聞き覚えのある声は鮫だ

 

ということは蘇生薬が効果を出したのだろう

 

「わり、起きる。何時だ?」

 

「8時だ」

 

「そっちの要件は?」

 

「終わらせた、渡の親分から指と200万貰った」

 

「ハッ、少ねぇな」

 

「元が100万だからな、2倍しか計算できなかったんだろ」

 

「言えてるな。車は?」

 

「回してるが、同業者を見た」

 

2人きりということもあってか、鮫の言葉に敬語がない

だが、それが俺を安心させる

 

「そら北島一家だ」

 

「何?」

 

「トレセン学園にキタサンブラックがいた。俺はそいつに殺されたんだよ」

 

「生きてんじゃねぇか」

 

「そうだな、借りは返さねぇとな」

 

複数のヒトの足音が近づき、ドアが開く

手に何も持たないスーツの男どもは、銃を抜いている俺たちの姿を見て叫ぶ

 

「おい!誰だおまえ!」

「どこの組のもんじゃい!」

「死んでたんじゃねぇのかよコラ!死に晒したろか!」

 

「うるせぇ!!ぶっ殺す!!」

「死に晒すのはてめぇらの方だボケカス共!!」

 

俺は弾丸を1人につき2発、胸を撃ち抜き、鮫は金槌でボコボコに仕立てあげた

 

 

 

血の海が出来上がる頃には鮫が返り血まみれになっていた

 

俺と鮫は廃病院から出る

 

俺は北島一家の車の運転手を撃ち抜く

 

そして、2人して車に乗り込んだ

 

「若頭、明日からは?」

 

「トレーナーに戻る、一旦事務所に寄ってくれ」

 

「っす」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事務所でシマの売上を確認してから、サトノダイヤモンドの回収に向かった俺

 

しかし背後から来る白のバンに苛立ち、飛ばす

 

向こうもスピードを上げるので、上を電車が通るトンネルを潜り、角を曲がり、止まる

 

白のバンが見えたところでバックで急発進し、車をぶつけた

 

(北島一家にしちゃ早すぎる、あとほかに喧嘩売ったのはどこだったかな?)

 

そんなことを考えながら、黒煙を吐き出す白のバンに近付くと知った顔があった

 

「呪田ァ!降りろゴラァ!!」

 

助手席のドアをこじ開け、運転手を撃ち殺す

 

助手席から雪崩落ちてきたのは白のジャージを着た、渡組の呪田だった

 

「ハーッ!ハーッ!て、てめぇ池田組の奴だろ!!」

 

「だからなんだってんだこの野郎!!」

 

「その赤い眼ェ!池田の特攻若頭だろぅが!!」

 

「いい加減しねぇと殺すぞボケェ!」

 

「はー……はー……鮫の野郎に関わるやつなら殺してやる!」

 

呪田は俺の懐に入ると2度、3度とボールペンで突き刺してきた

 

「ぐっ、巫山戯んなよォ!!」

 

俺は銃床で背中を思いっきり殴り、地面に叩き付けた

 

「恨んだやつ殺しに行きゃ良いだろうが!!てめぇの匙で殺しに来るなボケ!!」

 

「お、ごぉ……」

 

俺は耳横を撃ち、地面に銃弾を抉らせる

 

「消えろ!!渡には今度詫び入れてやらァ!!」

 

脇腹に蹴りを入れ、呪田は立ち上がるとフラフラと逃げていく

 

「カッ、ゴホッ……」

 

「チッ!走れボケカス!!」

 

狙いをあえてトンネルの壁に定め、2発撃ってやると足取りも早くなった気がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……遅い」

 

「あ?」

 

学園前に車を停めると、乗り込んできたサトノダイヤモンドに愚痴をこぼされた

 

「話したいことあるのに、もう9時回ってるんだよ?」

 

「勝手にしろ、今機嫌悪ぃんだ」

 

ジクジクと脇腹が痛みだすが、慣れているのかバックミラーに映る自分の顔色は変わっていない

 

「ウマホでウマッターしてたんだけどね」

 

「ウマウマうるせぇな……それで?」

 

「学園の屋上から、飛び降りがあったってウマートしてる学生がいたの」

 

「ウマついてりゃどうでも良くなってねぇか?」

 

「その時偶然、写メ撮れたんだって」

 

「写メはウマ付かねえのか……いやまて、何を撮っただと?」

 

後部座席から身を乗り出すサトノダイヤモンドは、ウマッターを見せてきた

 

そこには燕尾服にサングラスの横から片目だけ赤色の男が飛び降りていた瞬間だった

 

「この服装、若頭さんですよね?」

 

「カタギが若頭呼びすんなや殺すぞ」

 

「じゃあなんて呼べばいいんですか!」

 

「トレーナーでいいだろ……情報戦はうちの組弱ぇからなぁ……」

 

「あなた達極道って、脳筋しかいなさそうですもんね」

 

「減らず口叩けるなら降りろ」

 

「いーえ、降りません。私なら何とかできると言っているんですよ?」

 

「言ってねぇだろ今の発言の中じゃ」

 

「裏を読むとか出来ません?」

 

「運転中なのと頭に血が巡ってねぇんだよ」

 

さっきからもう座席が血で染っている

迎えに来る前にセロハンテープで穴を塞いだだけなので、止血の意味が無い

 

ガムテープにしておけば良かったと後悔している

 

「脳筋にも血が巡らないのですね!」

 

「大きな声出すな……あぁくそ……あとちょっとか」

 

「飛び降りた理由は聞きませんが、不味いなら頼ってもいいんですよ?」

 

確かに不味いのは不味い

俺の名は広がらずとも、目の色で判断する糞共なんてザラだ

 

学園でもそうだ

今後はカラコンで変装しようと思ったものの、落ちたヒトを見たヤツがいるなら俺だとバレる

 

そして他の組にバレる

 

学園が巻き込まれる

 

警戒される

 

「分かった、何とかしろサト」

 

「分かればいいんですよ分かれば」

 

「やっぱ降りろ、車からも」

 

「冗談!冗談ですから!」

 

「分かりゃいいんだよ分かりゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、おやすみなさい」

 

サトノダイヤモンドはそう告げると自室に入り、寝た

 

それを見計らって闇医者に電話する

 

「起きてるな?俺だ」

 

”誰だ夜中に、娘が起きちまうだろうが”

 

「着信音くらい切れ馬鹿野郎、赤目だ」

 

”お前さんか、着信音をマキシマムザホルモンの『F』にしておるからうるさくて敵わんわい”

 

「変えろや馬鹿野郎」

 

”要件”

 

「処置の仕方」

 

”道具は?”

 

「台所に調理器具1式ある」

 

”傷”

 

「ボールペンの先、穴みっつ」

 

”深さ”

 

「1センチ」

 

”なら寝てろ、痛いなら薬渡しておるはずじゃろ”

 

「てめぇのは薬物じゃねぇか」

 

”なら包丁に火を当てて傷口に当てろ。それで塞がるはずじゃ”

 

俺は急ぎ包丁をコンロの火で熱す

 

「先に言え馬鹿野郎」

 

”大した傷でもない、お前さんなら一眠りで塞がるわい”

 

「俺はヒトだ」

 

”ん、ウマ娘ではなかったか?”

 

「ボケんのはえーな馬鹿野郎、歳食うとボケも早くなるんだな」

 

”今度から腕1本失っても、そのまま眠らせてやるわい”

 

「そんときゃてめえを呪ってやる──……グゥゥ!!」

 

ジュウ……と腹に当てた熱せられた包丁が音を立てる

 

”ほっほ〜、焼けた肉の匂いがこちらまで漂ってくるぞぃ”

 

「娘さんにも嗅がせてやりてぇなぁ」

”相も変わらず極道な考え方だの、消毒したらガーゼ、包帯巻いて寝ろ”

 

その言葉を皮切りに、無造作に電話を切られた

 

「あのジジイ、長生きするぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよ!」

 

「おはよー、サトちゃん元気だねー」

「おはおはー」

「おはやー」

 

数週間たち、トレセン学園校門前で仁王立ちする俺の今はトレーナー業にも性が出てきている感じだろうか

 

俺の評価が改まったのか、緑の女はこちらを疑問視することがなくなったし、本職のシマにある店の売上も伸びていき、池田組も上々の評価を貰っている

 

が、問題が起きた

 

今、ここで

 

「あ、キタちゃん!」

 

一瞬耳を疑った

 

もし本人であれば死人と対面することになるのだ

 

まぁ面白くなりそうだからいいや

 

「おはよう、サトちゃん」

 

「久しぶりなのに元気ない……?」

 

「ごめんね……家族がさ……死んじゃって……」

 

家族と言えば聞こえはいいが、極道となれば北島一家の家族とは部下をも含む

 

俺が殺した連中のことだろう

 

「そんな!犯人は捕まえてもらったの!?警察は?!」

 

「当てになんないよ……」

 

ご尤もだ

マル暴は表向きでは暴力団殲滅を掲げてはいるが、裏ではガッシリ握手しているのだから

 

池田組が握手しているのに、北島一家が握手しているわけが無い

 

「でも目星は着いてる!」

 

「教えて!私も協力するから!」

 

「片目が赤い人でね……うちのオジキ……パパが目くじら立てて探し回ってるところだよ!」

 

「あ……」

 

サトノダイヤモンドの顔が面白いくらい歪んだ

 

「き、気の所為だよね……?キタちゃんの見間違いじゃ?」

 

「見たのは死んでった家族のひとりだよ……死に際にパパから連絡受けたって……でも家族を、私は信じてるから!」

 

鮫の野郎、ボコボコに殴り殺しておいて、生きてんじゃねぇか

 

わざとか?お?わざとかあいつ?

 

「そんな、でも……」

 

「サトちゃんにも協力してもらいたいのはあるけどね……危険だから、私一人でも大丈夫だよ!」

 

その危険な沼に下半身浴してんだよなぁ、サトノダイヤモンド

 

「う、うん……分かった」

 

「だから犯人探しにまた学園から離れるから……これで最後」

 

「え……」

 

「またサトちゃんの元気な姿見れてよかった!執事の人にもよろしくね!!」

 

その言葉で、サトノダイヤモンドの眉間が狭まったのを俺は見た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで殺したんですか!!」

 

「あぁ!?極道なめんなよ小娘が!!」

 

体育館裏でサトノダイヤモンドに呼び出されたと思えば、激烈な叱咤を受けた

 

「あなたの目的は知りませんけど!極道って本当にロクでもないですね!!」

 

「ガキが語るな!!てめぇに何がわかんだよ!!」

 

「分かりませんよ!えぇ!分かりませんとも!!」

 

「じゃあ黙って演じろ!黙って見てろ!今度つまんねぇ事で呼んだら殺すぞ!!」

 

俺は背を向けて歩き出すと、背後でボヤキが聞こえる

 

「──……ずに、────……のに」

 

「あ〜〜〜??聞こえねぇなぁ!!」

 

「殺さずに!!解決できたはずなのに!!」

 

「ハッ!…………殺しが!!金が!!悪が!!極道だろうが!!」

 

「そんなの────!!」

 

「ならてめぇならどうすんだ!!応えろ!!」

 

「そ、それは……手と手を取り合って……」

 

「ボケがァ……!!極道ってのは手と手を取り合うんじゃねぇんだよ!!片方の手を切り落として、下でこき使うんだよ!!」

 

「そんな……の……」

 

「いい、もういい!!俺のやることだけを教えてやる!!」

 

サトノダイヤモンドは顔を上げる

 

「まずてめぇ!本来ならキタサンブラックの囮にして攫い、拉致監禁して北島一家に喧嘩売るつもりだった!!なのに、あのガキ!覚悟決めた目ん玉して俺を探し出してやがる!家族総出で!!」

 

「お、囮って……じ、自業自得です!」

 

「だから予定変更だ!!てめぇは池田組の若頭のオンナになれ!なるんだ!これは決定だ!拒否権はねぇ!!」

 

サトノダイヤモンドは何故か顔を赤面する

 

「ふ、ふざけないでください!!なんであなたが勝手に!!」

 

「強引強欲、なんとでも言え!!オレの嫁として走り回って成り上がんだ!上位に喰い込んで偉いやつの席に座りゃ、組もURAに噛みつけんだろ!!」

 

「そ、それが……本当の狙いですか!」

 

「俺の親も手段ちげぇが目的は同じだ……あー、くそ!後になって後悔してきた!」

 

「それなら、キタちゃん……キタサンブラックはなぜ狙われてるんです?」

 

「トレセン学園のバックに付いてんだよ、北島一家がよぉ」

 

「北島……一家?」

 

「前に見たろ、キタサンブラックが黒のセダン5台連なって朝来てたの」

 

「あれは、でも、お金持ちの家なら当然だと……」

 

「キタサンブラックも当時はただの送迎だと思ってただろうよ、だが覚悟決めたってことは────」

 

「北島一家だから、誰かを、殺した?」

 

「家の事情を知りながらも、あのガキは足を踏み入れなかった。踏み入れたってことは殺したんだ」

 

「そんな……でも誰を……」

 

「俺だ」

 

サトノダイヤモンドは目を見開く

 

「え、でも……あなた……トレーナーさんは生きて」

 

「ちょっとした遊びだったんだな、焚き付けるとは思わなかった。最悪、キタサンブラックにゃ死んでもらうしかねぇな」

 

「ま、待ってよ!!遊びが殺しに発展なんて!!」

 

「池田の親父には戦争の準備してもらってる。後にゃ引けねぇ!」

 

「ねぇ!待ってってば!!今からでも遅くないでしょ!!」

 

「うるせぇ!!あちらさんも本気なんだ!!片目が赤い奴なんざ、小さな島国探しゃ俺しか見つかんねぇよ!!」

 

「か、カラーコンタクトとか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

しょげ始めたサトノダイヤモンドをみて、俺は声を落ち着かせる

 

「もう黙れよ。生きて帰りゃテメェはオレの嫁だ」

 

「カラーコンタクト……」

 

「もう既に組までバレてるだろうよ」

 

「カラー……」

 

「サトノダイヤモンド」

 

初めて呼んだ、ウマ娘の名前

 

「またあの店に来い、悪いやつが待ってるぜ」

 

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