——拝啓、自分、モンスターになりました。
『……何だコレ?』
黒煙吹き荒ぶ火山地帯の一角。其処に奴は鎮座していた。全身を包む重厚な外殻は鈍い金色の光沢を放ちしゃくれた大顎を持ち、背中から尻尾上部に聳える突起物の群。
——腕が小さい、後、常に前傾姿勢。後、溶岩が赤い上に眩しい、慣れたけど。つーか、此処は何処?俺は誰?じゃなかった……本当に此処は何処だ?つーか、溶岩に浸かってんじゃん。
溶岩に浸かって平然としている生物は数える程しか居ない。そう考えた奴は溶岩の海から這い上がる。歩く度に震動が鳴り響く。金属質な音を響かせながら向かった先は水辺であった。其処に映ったのは——。
——コレ、ウラガンキンじゃん。モンスターハンターシリーズに登場する、主任って良く言われる爆弾魔。いや、嫌いじゃないよ?火薬岩をばら撒き捲るわ大車輪で爆走するわで……と言うか、俺……ウラガンキンになっちまったって話か?
水辺に映る顔、と言うか顔面以上に巨大な大顎で殆ど顔らしい顔は上部しか見えない。
——モンハンシリーズ。良くやってたなぁ……女性ハンターでミツネ装備や天眼、後、テンタクル装備で良くやってた。武器や防具の装備よりも素材を本当に良く溜め込んでたな。そりゃもう、分類別に並べ替えて眺めるだけでも楽しかった記憶がある。マルチプレイすれば他のプレイヤーそっちのけで自分の報酬に天鱗やら天殻と言った希少素材が矢鱈と出た記憶ばかりある。そして何より炭鉱夫。鉱石やら石炭やら護石やらを集めてた。ハッ、もしや、炭鉱夫を続けていたらウラガンキンになると言う都市伝説は真実だったのか⁉︎
その時、ウラガンキンの頭に『!』が浮かび上がる幻覚が見えた気がした。気がしただけである。
『むぅ……経緯はどうあれ、ウラガンキンになった以上、どうするか』
——開き直るか。と言うかモンスターハンターの世界に来た以上、此処は弱肉強食の世界。生きるか死ぬか喰らうか喰われるかの何方か。ならば、好きな様に生きよう。前世とは唐突な別れではあるが今更、悔いた所で元に戻る可能性は限りなく低い。ウラガンキンの生として後悔の無い様に生きよう。
逆に考えよう、この世界ではハンターと言うモンスターからすれば脅威の存在がいる。今迄の認識だとそれは自分達のプレイヤーの分身だった……だが、今はコレが現実であってハンターも各々がそう言う理由で生きる実在の人間だ。無論、狩るか狩られるかの2択でしか無ぇ……。
前世の現実の様にすぐ隣に生死の境目がある訳では無い。朝起きて仕事に行き夜になれば家に帰って家族と食を囲む……それが普通であった。だが、この世界ではそんな日常風景なぞありゃしない。例え比較的安全だと言われる町や村であってもモンスターの襲来で壊滅に瀕する事は珍しい光景では無い。古龍種など最もたる例であり一夜で全てが失われた記録も残されている。
『それを差し置いてもこの世界には実に様々なモノが蔓延っている。そう、この世界には『素材』や『鉱石』‼︎ 『護石』が大量に存在する‼︎』
——何を隠そう、俺はモンハンでは鉱石類を集めまくっていた蒐集家だ。お守り集めも良くやっていた。その為に面接を幾多にも潜り抜けた。 お守り以外にも素材のコレクションでBOXはパンパンだった。え?ハンター業?そんなもん副業だよ副業。
『鱗、甲殻、骨、他色々。生で見られるチャンスは今回を除いて無きに等しい‼︎ この生、悔いの無い様に生きるだけだ‼︎』
——と言うか『護石』って
『ゴガァァァァァ‼︎』と咆哮を上げるウラガンキン。その背後で火山が激しく噴火し黒煙と共に溶岩を噴出させた。
——取り敢えず最初の内は『水耐性』と『毒無効』と『鈍器』の護石が欲しいな。火山だし、其処ら辺を砕けば鉱石と一緒に原石見つかるかね?やべ、ちょっと楽しくなって来た……‼︎ そう言や、素材が有れば強化……って、俺、顎を叩き付けるしかねぇから、どうやって強化すんだ……意味が無いならコレクションにしよう。
かのウラガンキンは生前のモンハンプレイヤーのハンターの様に護石や鉱石を只管に集めまくった。そして数年後にはその身体が以上発達しハンター達から『護石王ウラガンキン』と二つ名である宝纏とは別な二つ名特異個体として呼ばれる事となる。
『コレは……⁉︎ チッ、攻撃マイナスの癖に体術マイナスだとぉ⁉︎ 巫山戯んな、このゴミおま‼︎ あ、装飾品も考えねぇと……出るよね?Worldだと出たから出るよな⁉︎ と言う訳でスロット付きでカモン‼︎』
やっている事は前世と対して変わらない気がしなくも無い……。