『護石王ウラガンキン』
それは数年前に突如として現れたウラガンキンの特異個体である。ウラガンキンには亜種として『鋼鎚竜』、そして二つ名個体として『宝纏』なる個体が存在しており、他にも断裂群島で目撃された特殊な個体を含めると多種多様の個体が存在しているがソレらを凌ぐ特異な生態を有する個体である。
元来、ガンキン科は獣竜種の中でもドボルベルク科、バフバロ等に比類する程の恵まれた体格を持つが、その巨大さは凌ぐ程の巨体を有しており全長は3,600m相当と、獣竜種最大級の大きさを持つ事が多いドボルベルク亜種を上回る。その特徴と生態からウラガンキンとは異なる近縁種なのでは無いかと提唱する者も居るが、類似点が多い事から『二つ名+特異』と言う異例な形で分類された。判明している事項は以下の通り。尚、比較対象は通常種とする。
まず通常種は鈍い金色の甲殻を纏うが、この個体は目撃された環境で体色や行動が異なっていた事から全くの別々の個体だと認知されて情報が錯綜していた。青色や銀色、赤色、金色、黒色と様々な体色に変色する。元々、ウラガンキンは摂取した鉱物により体色が変わる特徴があるのだがこの個体の場合はその変貌ぶりが著しい事がその特定にまで時間が掛かった。後述する一環する特徴が同一個体であると言う証明となった。
頭部の特徴的な大顎は一貫してより黒ずんだ漆黒かつ重厚と化しており、叩き付けた時の衝撃は宝纏の破壊力を軽く凌駕している。目撃者の報告によれば大地に広い範囲で亀裂を入れたと言われる。
前脚は基本的に変化らしい部位は見られないがやや伸びて成長している様にも受け取れたが、依然として攻撃に用いる事は無いようだ。
尻尾付近にも鉱石が塗り固まり頑強と化すガンキン科であるのだが、この個体の場合はディノバルド科の如く巨大な『大剣』の様な形状に変化している。ただ、ディノバルド科と違いディノバルド科は縦に対して此方は横に向いている。ディノバルドの様に高熱化した報告は寄せられていない。
そして、種として大顎と同じく特徴となる頭部上部から背中、尻尾上部に掛けて連なる突起物。ガンキン科は身体を丸めて転がる様に移動する為に自然と削られる事が多いのたが、この個体の場合生えているのは新大陸で初めて確認された古龍種の特異個体『悉くを殲ぼすネルギガンテ』に生える頑強な金剛棘と同等と思わしき棘と化して生えている。コレは体色が変異してもこの部位のみは依然と然程変わらない(若干の体色の色味を宿すが)事から同一個体と認識されるに至る。
以上が外見上の特徴である。通常種、亜種、二つ名、特殊な個体と似た寄った外見ではあるがその戦闘能力、行動ルーチンが大きく異なり、厳しい制限処置を施される二つ名を上回る程の戦闘能力を有しているが、その行動方針には疑問符を持たざるを得ない。
元来、ガンキン科は鉱物食で油性の高い地域、多数の鉱石が分布する火山地帯を中心に活動する種であるのだがこの個体は何処の地域にでも出没する。雪山や天空山、遺群嶺、砂漠、果ては孤島にまで姿を見せたと言う(上述の体色の変化は地域によって異なっていた)。これは恐暴竜イビルジョーに見られる傾向でもある。どんな状況下どんな厳しい環境下に置いても気にも留めない適応能力を有している事の査証でもあった。
ガンキン科は体表に爆弾岩や溶岩塊や希少鉱石が多数、付着しているがこの個体は鉱石に加えて『護石』が多数、付着している事が多い。護石とはハンターが誰しもが身に付ける願掛けに近いお守り……そのお守りに助けられたと言うハンターは数知れず、クエスト事に多種多様のお守りを持ち変えるハンターも多い。その効果は学者からは眉唾物ではあるが、その結果、生還出来た者達も居る事から狩猟、採取クエストの傍らでハンターが高い効果を有するお守りを求めて採掘する光景が良く見られると言う。
また、巷では炭鉱員の成れの果てがウラガンキンと言う話もあるが眉唾物の話である。
この個体は火山地帯以外の場所で何をしているのかと言うと通常種と同じように良質な鉱脈を見つけては自慢の顎で砕いて鉱石を採取している光景が見られると言う、専ら目的は護石の原石だそうである。ソレらをまるで職人の如く選別して気に入ったモノを付着させて移動する。その光景はさながら、炭鉱夫や鉱石目当てにピッケルを振るうハンターを彷彿させると言われている。
この個体は見た目こそ通常種を上回る巨体に加えて威圧感を醸し出しているがハンターや行商人一行と仮に出会しても基本的に威嚇咆哮すらせずに目も暮れずに鉱石探しに勤しんでいる。時には長いキャラバン隊が眼前を通り過ぎるまでその場で腰を下ろして眺めている様子も見られたと言う。ただひたすらに護石を求めて各地を渡り歩く姿から『護石王』と言う二つ名(或いはウラガンキン希少種)で呼称する事になった。
コレらの事から短気で知られるガンキン科の中では比較的温厚な性格なのでは無いかと言われているが、この特異個体の素材を求め戦闘を仕掛け辛うじて生還したハンター達の事後報告からその説は見事に覆された。
まず第一に短気。否、激昂と言って差し支えない程に怒りやすいと言う事である。売られた喧嘩は買うと言わんばかりの怒りやすい。かの砕竜ブラキディオスや黒角竜ディアブロス亜種の比では無いレベルの怒りやすさである。ハンターが武器を構えた直後に恐暴竜イビルジョーと同じ様な姿勢で咆哮を上げる。その声量は超咆哮と言って差し支えなく倒れ込む程の悶絶した所をディノバルドの持つ大技である
他にもこの個体はかなり人の動きに慣れているらしく、軽快な動きでハンターの動きに対応して回避をして見せ攻撃を食らわせて来る。『防具が一瞬で破壊された』『属性武器が全く効かなかった』『閃光玉が効かなかった』『落とし穴、痺れ罠を見抜いて、破壊されたり効かなかった』『毒、麻痺、睡眠の武器や弾が効かない』
と、ハンターの使用する狩猟道具の特性を完全に理解して対応する程に知能が高く見られている。
通常種には見られない行動として雷狼竜ジンオウガに酷似した動きでかの重量級の巨大でありながら飛び上がり金剛棘が並ぶ背面によるプレスを叩き込む攻撃が確認されている。その際にも強烈な震動が発生させ地震を引き起こした。
ガンキン科は鉱物食故に体内バクテリアを繁殖させて消化を行いその際にガスが溜まる。この個体はガスを体外に放出する際にイビルジョーの様にガス状のブレスで攻撃する姿も見られている。強烈な攻撃が多いこの個体での遠距離ブレスによる睡眠ガスは極めて危険だと言われ、睡眠ガスにより昏睡した直後に叩き潰されて命を落としたハンターは数多い。
属性武器が効かなかったと言う報告から龍属性エネルギーを体内に蓄えているのではないかと言う説も浮上している。
また、転がる際に飛散する背中に並ぶ金剛棘の残片も極めて危険。悉くを殲ぼすネルギガンテと同等の性質を帯びているのか極めて鋭利かつ頑強であり、転がる度に衝撃で折れ飛ばし凡ゆるモノを裂傷させて行く。そして転がり終わる頃には折れた棘は再生していると言うネルギガンテを彷彿させる再生能力を有している。
極め付けは本科の特徴的なローリングによる移動に関する行動。この個体は基本的に走って移動する事が多い(背中の棘が邪魔なのかも知れない)が、無論、攻撃に使わないと言う訳では無い。その場で丸まり、猛烈な勢いによる高速回転を行うと言うモノ。その際には強烈な吸い込み気流が発生して接触した物を金剛棘で容赦なく引き裂き磨り潰す。如何に強固な防具であっても容易く粉砕し生身の人間を引き千切り尽くす。暫くした後に、凄まじい勢いで転がるローリングを行い轢いた物を悉く滅ぼす。
この攻撃に巻き込まれた者で生還者は例外として無く、犠牲者はバラバラの肉片と化してこの個体が走り去った周辺にその残骸が散乱すると言われている。この時の個体は周辺のモノに関して全く気にも留めない(確認出来ないと言う意味)。飛竜種のブレスや俊足で知られるキリンを上回る速度で爆走し、凡ゆる物を粉砕し通り過ぎた後には破壊された痕跡と孔だらけとなった大地が残るのみ。また、その勢いのままに海面を爆走して海を渡ったり、坂道を利用して上空を砲弾の如く吹っ飛んで行ったりと獣竜種としては驚愕の移動方法を見せ付ける。
通常種を遥かに上回る圧倒的な戦闘力を持つ『宝纏』を遥かに凌駕する戦闘能力からハンターズギルド及び龍歴院により特例中の特例とも言える極めて厳しい狩猟制限を設けている。コレは生半可な腕前のハンターが何度も挑み惨敗を期している事が理由であった。挑んだハンターのその過半数が還らぬ人となっている事からその危険度は極めて危険な大型古龍種に匹敵し、かの恐暴竜イビルジョーと同等レベルである。
だが、イビルジョーと違い敵対行為を見せなければ護石王は基本的にハンターや通行人に手出しはして来ない。また本個体が鉱脈から取り溢したお守りの原石を目の前でも掠め取っても気にしない性格だと言われている。この気質は新大陸調査団による新大陸での一部の古龍種に良く見られる反応だと言われている。王者の風格なのだろうか。
尚、目撃例こそ多いが護石を何故集めるのかに関しては謎のままであり引き続き調査及び、報告が待たれる。尚、本個体に関しては『二つ名特異個体』と言う新らたな区分に分類するとする。
『龍歴院・首席研究員による報告書より一部抜粋』