『護石王』の情報が龍暦院とギルドから各拠点へと通達されてから数ヶ月後。とある海域にて大型の交易船が大海原を征く。
「そう言えばこの海域にゃ、ウラガンキンの特殊個体が目撃されたって聞いたぞ」
「ウラガンキン?ウラガンキンって火山とかに居るんじゃねぇんですかい?」
「そういやお前ェ、新入りだから知らなかったのか……そのウラガンキンってのは」
「『護石王』とギルドや龍暦院から呼ばれている個体ゼヨ」
「「船長‼︎」」
「何でも数年前に現れた……」
「せ、船長‼︎ あ、アレ⁉︎」
船員の1人が望遠鏡であるモノを見てしまう。それは強烈な波を引き起こしながら海面を爆走する巨大で鋭利かつ美しい金剛棘の剣山が生え揃う車輪。そう、海面を猛烈な勢いで転がり爆走する『護石王』ウラガンキンであった。
「ま、マズいゼヨ‼︎ 方向転換して躱すゼヨ‼︎」
「無理です‼︎ 間に合いません‼︎」
大型の交易船故に急な方向転換は不可能であり、それより前に海面を猛烈な勢いで突撃して来るウラガンキンが激突する方が早い。どうする事も叶わぬまま、交易船の横腹に激突した。この世界の船は大型モンスターの激突も考慮される為に見た目以上の耐久性を誇るのだが、我らが護石王ウラガンキンはそんな事、知った事では無いと言わんばかりに其の儘、貫通。
哀れ、交易船は縦に派手に割れた。
「ゼヨォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ‼︎‼︎⁉︎」
交易船の船長はそんな叫びを上げながら派手に轟沈する交易船と共に海中に没して行くのであった……まぁ、轟竜に齧られても生きていられるのだから多分、無問題であろう。
かく言う護石王本人(敢えて言うならば本竜か?)はと言うと……。
『フハハハハッ‼︎‼︎ 今日は気分が良いぞォォォォォ‼︎‼︎』
猛烈な勢いで転がり続ける護石王ウラガンキン。途中で交易船を貫いて轟沈させたが本人は全く気にする素振りは見られない。普段は基本的に他者に攻撃する素振りは見せないが長距離移動する時のローリング時にはその限りでは無かった。
——今日は【ボマー】と【耐状態異常】の護石を見つけたぜ‼︎ 他にも【連撃の心得】と【無慈悲】の護石も見つかったのは大きいぞ‼︎ レアな装飾珠は悲しい事に見つからなかったが、それを差し引いても大きい見返りだ‼︎
今日も今日とて各地を放浪して鉱脈を漁り鉱石共々、護石の原石を採掘していた護石王ウラガンキン。今日は神おまに相当する護石を見つかった所為か、かなりご機嫌な様子で爆走する。
——そうだ。帰りにナルガフェに寄って行こう。何か面白い話が聞けるかも知れねぇし‼︎
爆走する護石王ウラガンキンは途中でカーブする形で方向転換してある方向へと爆走して行く。
『え?ちょ、おい、ボゴアァア‼︎⁉︎』
『ん?何か、踏んだ』
その途中で丁度タイミング悪いのか良いのか分からないが呼吸の為に海面に顔を出したラギアクルスの顔面に無事に正面衝突。明らかに鳴ってはならない音がなってしまった気がするが気の所為であろう。その時の衝撃かつラギアクルスの顔面を踏み台にして護石王ウラガンキンは跳ねて海面の上を砲弾の如く飛んで行く。そして、そのまま『魔境』と名高いギルドからは孤島と呼ばれる島の海岸線に着地した。そして踏み台にされたラギアクルスは仰向けの状態で海中に没して行った……。
『何か、良く分からんが到着‼︎』
『孤島』には多種多様のモンスターが一堂に会する事が多い人外魔境の地であり、ギルドも長らくどうしてこの地に生態系的に見て不釣り合いな面々が現れるのか分からない土地であるて見られている。その地に護石王ウラガンキンは立ち寄った。
『さぁてと、今日はどんな面子が集まってんのかね〜』
水辺をバシャバシャと音を立てながら奥へと歩き始める。孤島自体、彼方此方に大型モンスターが跋扈している環境ではあるのだが、その奥地の一角にとあるモンスターが座す場所がある。そのモンスターの名を取って『ナルガフェ』と呼ばれているのであった。
『ちわ〜、ナルガさん。何時もの頼むよ〜』
『おや、ウラさん。ええ、ココナッツジュースですね。少々、お待ちを』
孤島の奥地にある鬱蒼と生い茂る密林の何処か、少し開けた場所にソレはあった。其処はナルガクルガが経営するカフェ、通称『ナルガフェ』であった。
『hey‼︎ ダンナ、アンタも相変わらずだな‼︎』
『む、ウラガンキンでは無いか。息災であるな』
本日の先客はライゼクスとリオレウスの2頭であった。お互い仲悪いんじゃ?と言う疑問はあるのだが此処では大人しく、頼んでいたポポの肉を食べていた。
『今日は良い護石を見つけた帰りに寄ったんだよ』
『オレからしたら、何が違うんだ?って話だけどよ、効果はバリバリだったぜ‼︎ あの虫ケラ共が持ち合わせる理由、何となく分かるゼ‼︎』
『ふむ、機会が有ればまた売ってくれぬか?あるのと無いのでは変わって来よう。近頃の不届き者共が異様な強さも納得よ。我々も相応の力を付けねば成らぬからな。無論、胡座を掻くのは愚者故ではあるがな』
『今日は持ち合わせは無ぇから、出張店はしてねぇ。つーか、今日もやってたのか?』
『hey‼︎ 当然じゃねぇか‼︎』
『うむ。主の発想は我々だけでは思い付かぬ故に中々、悪くは無い』
ライゼクスとリオレウス。数年前は複数人のハンター相手に苦戦を強いられていた。何せ、此処最近に於いてかなり強化され(大量のスキルやら、強力な武器の有無)、立ち回りも良くなっていたのだ。苦戦し退却をしたその先にて、採掘に勤しんでいる護石王と出会ったのである。
『電力を固めて投げて爆散なんて、最高にイカすじゃん‼︎ 爆殺の殿堂は伊達じゃねぇよな‼︎』
『翼を炎上させて範囲を拡大とは、私だけでは思い付かぬ案であった。翼を良く破壊される同士が居る上で他人事ではならぬ故に』
そんな時、護石王ウラガンキンは『こうした方が良くね?』と言う提案を投げた。提案するだけならタダである。結果、ライゼクスは何処ぞの爆殺魔宜しく、雷撃爆破を習得し、リオレウスは空の王者を磐石なモノにした。
『ウラさーん。お待たせっスよ〜』
『お、来た来た』
と其処に注文してたモノを翼で持ってきたゲリョスが現れる。光物好きなゲリョスとは鉱石絡みで付き合いがある。かく言うゲリョスは人間で言うとバイトみたいな立ち位置である。
『ウラさん〜、今日は何か持って来てくれたんスか〜?』
『悪い、今日は鉱石は余り見つかって無いんだわ。また今度な〜』
『hey‼︎ そう言や、ダンナ。変な噂を知ってっか?』
『噂?何の?』
『うむ、最近。不届き者共……ハンターが道端で絶命している光景を見かけるのだ。アイルーに運ばれている矢先に、屠られたのだろう』
『オレらが殺った……と言うには綺麗過ぎんだぜ』
——俺らがハンターを屠るとほぼ原型残って無いからな〜。何ソレ、仲間割れ?
『私も聞いた事がありますよ。首筋を鋭利なモノで切断されて殺害され身包みを剥がされた挙句、野原に放置されたハンターが時折発見されるそうです』
モンスターの中にはハンターの所持品を強奪する者も居る。その最もたる例がゲリョスであるが、彼は光物にしか興味が無いので論外。他にはガノトトス等が挙げられるのだが、身に纏っている防具をも盗むとなると、ちょっと異質な話と思える。
『追剥……って奴か?』
『うむ……ハンター同士の潰し合い、と言えば聞こえは良いのだが……何分、不自然な所が多くてな』
『殆ど朝型に見かけんだゼ? 然も、町や村からは結構距離がある場所で、良く見かけるぜ』
『ふぅむ……朧隠じゃね?』
『失敬な、私ではありませんわよ』
その時、虚空の中から声が聞こえた。その直後、5頭の前に突然、青黒い体色を持つ梟の姿をしたモンスター、『朧隠』ホロロホルルが現れた。朧隠は透過鱗粉を纏い姿を欺瞞させて透明化の様に姿を隠す事が出来る。その為、突然現れたり消えたり出来るのである。
『あ、居たの?』
『つい先程。着けばいきなり冤罪も甚だしいですわよ』
『となればハンター同士の闇討ちじゃねぇの?』
『いやでも、ダンナ。アイツらって其処までするのか?』
『中には居るんじゃね?共喰いって奴が』
——プレイヤー同士でも仲間割れして攻撃し合う(システム上、ダメージは無いけど)事なんて良くある話だし、其処まで気にかける理由無いんだけどなぁ。つーか、今迄無かった方が驚きだよ。
『んまぁ、気には留めとくわ』