護石王と追剥少女   作:夢現図書館

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追剥少女

 

 

 

——聞いてねぇ‼︎ 聞いて居ねぇぞ‼︎

 

 ハンターは眼前の光景に驚愕していた。此処は砂原、大型モンスターが跋扈しハンターズギルドからも狩猟地として認められている。その為、対象の大型モンスター以外にも想定外のモンスターが現れる事は日常茶飯事だ。寧ろ来ない方が幸運であり、殆どの場合は乱入されると言って良い。だが、それを差し引いても目の前の光景は想定外過ぎた。

 

——ディアブロスは分かる。砂漠地帯を縄張りにするから現れる可能性があった事にはまだ理解は出来る。乱入と言う形で遭遇はしたくは無ぇけど……問題はディノバルドだ‼︎ アイツは古代林か火山に居る筈だろ⁉︎ どうして、こんな所に居るんだよ‼︎ と言うかアレ、二つ名燼滅刃とか言われる超ヤバい奴じゃねぇか‼︎

 

 角竜ディアボロスは兎も角、ディノバルド……然も燼滅刃と言う二つ名を有する特異個体。その2体が立て続けに現れたのである。そして何方も、相応の巨体でありハンターが護石王相手に用意した罠や爆弾を粉砕して台無しにしてしまった。そして、両者共にこの場で縄張り争いを始めてしまっている。その奥の方で護石王が呆れているのか遠目に見ている様子が見えた。

 

「クソ……せめて土砂竜やドスジャギイとかにしてくれよ……」

 

——護石王だけでもキツい事が予想出来るのに其処にディアボロスやディノバルドなんて相手出来る余裕は無ぇよ‼︎ 第一、弾薬とか間違いなく足りなくなる。現地調達でも限界ってモンがあんだよ‼︎ チッ、一旦、この場を離れて体勢を立て直す‼︎ 護石王を見失う訳には行かねぇけど、崖が崩れて生き埋めになるよりマシだ‼︎

 

 眼前で暴れ始める2頭。巻き込まれれば確実にネコタク送りは間違いない。と言うかこの断崖付近で暴れられると崖が崩れてしまいかねない。そう言う意味でもハンターの選択は間違いでは無い。フリーハントはある程度、認められるが余裕が無い時に手を出すのは無謀である。

 その為、速やかに移動を開始しようとした時、肩付近に痛烈な痛みが伝わる。

 

「なん……⁉︎ こ、コイツは投げナイフ……ち、違……麻痺毒のナイフ……⁉︎」

 

 麻痺毒を付着させた投げナイフがハンターの防具の関節部分の隙間を正確に狙う様に突き刺さっていた。その神経性の麻痺毒が瞬く間に全身に行き渡り、ハンターの身体能力を奪い麻痺させて硬直させた。

 

——く、だ、誰だ⁉︎ は、ま、まさか……‼︎

 

 投げナイフは基本的にハンターか野良の獣人族が使用する。となれば基本的に悪戯好きの獣人族が犯人と思われるがハンターの予想は違った。巷で話題になっていた『追剥』の存在……。

 そして、砂利を踏み締める音が鼓膜を叩いた。痺れてマトモに動かない身体の状態でも眼球の筋肉の動きは辛うじて動く……故に視界だけでも必死に動かす。

 

「…………」

 

——こ、コイツが……お、『追剥』⁉︎

 

 麻痺により痺れて動けないハンターの近くに現れたのは白を基調とし赤と桃色の裾のあるタマミツネの防具を纏った人物。だが、ハンターと言うには小さ過ぎる(事実、サイズがあって居ないのかブカブカの状態)。人物の特定を防ぐ為か狐の『面』を顔全体に覆う形で被っている為、分からない。だが、体付き、防具の構造造形から『女性』である事だけは分かった。

 

「て、テメェ……⁉︎」

 

——こ、コイツがやったのか……‼︎ ハンターと言うには小さ過ぎる。竜人族か⁉︎ クソ、動け……動きやがれ、俺の体ァ‼︎

 

 そして、その追剥はその手に持っていた半ばからへし折られた大剣を振り上げる。大剣と雖も、半分未満であるのならば、持ち上げる事は出来るかも知れない。最も、目の前の体躯で持ち上げられるのならば相当な怪力と言えるが、ハンターにそんな思考を割ける余裕は無い。

 

 

「ま、待て……‼︎ 止、め……⁉︎」

 

 

 無情にも折れた大剣の折れ刃がハンターの身体に深々と突き刺さされた。

 

「ぎゃあぁああぁぁあああぁぁ‼︎ ぃぃいいぃぃぃ……っ‼︎」

 

 追剥は何度も抜いては突き刺す、そして突き刺す、突き刺す、突き刺しては抜いて、突き刺す事を繰り返す。その度に、周辺に血飛沫が舞い散り岩盤を紅く濡らして行く。

 

「ぐ、があ……ごぼ、ごぼぼごぼ……がふ……‼︎」

 

 嗚咽に近い悲鳴をあげるも追剥は手を止めない。只管に全身に向かって更に刃を突き立てて行く。無心にそして無情に。

 

「$@゛♯%$&€#=☆ーーーーーーーっ‼︎」

 

 言葉にならない断末魔が周辺に響き渡る。だが、この場に居るのは大型モンスターのみで誰1人として現場に駆け付ける事は無い。不幸にもハンターズギルドや龍歴院の気球も飛行船も上空には漂っていない。そもそも、ハンターとは命懸けの職種、悲鳴を上げる事も日常茶飯事であった。

 

「ぐ………ぐぐ……ごぼ………っ‼︎」

 

「げぽ!……ひゅッ………ごぼごぼごぼ……た…………ず………ゲッ!ぐぐぐぐぐ……あ゛……ッ……あ゛………が、は……あ……ッ‼︎」

 

 八つ裂きとも言える程に滅多打ちにした追剥は虫の息となったハンターを見下ろして最後、大剣の刃をその首に叩き付け、骨が砕ける音と共にその首を刎ね落とした。叩き斬られた首は崖下に落ちて行き、転がった。その目は苦悶に満ち溢れ目を飛ばさん限りに見開いた悶絶の表情であった。

 

「…………」

 

 追剥は死亡したハンターの所持品を貴重品を優先して持てるだけ奪いその死体を崖下に大型モンスターが暴れ狂う付近近くに蹴り落とした。場合によっては大型モンスターの争いで死体が判別不可能なレベルにグチャグチャになり隠滅される事だろう。

 

「…………」

 

 追剥は眼下にて争う大型モンスターや遠目に見ているモンスターを一瞥した後、逃げる様にこの場を去って行った……。

 

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