護石王と追剥少女   作:夢現図書館

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不吉な予感

 

『あーそーぼー‼︎』

 

『ぬォォォ‼︎⁉︎』

 

——えー……現在進行形で眼前の馬鹿2名が周りの被害を全く考慮せずに暴れ回っています。あー、氷結晶、美味え……。

 

 燼滅刃ディノバルドとディアボロスが岩壁を破壊しながら殴り合っている。と言うかディアボロスが燼滅刃に構って欲しそうに暴れている様にしか見えない。その様子を護石王は採掘していた氷結晶を噛み砕きながら眺めている。完全に寛ぎモードで眼前の世紀末一歩手前の殴り合いを眺めていた。

 

——あー、ハンターの事を忘れてた。其の儘、眼前の馬鹿共を沈黙させてくんねぇかな……と、ん?

 

 2頭共、五月蝿いので其の儘、討伐されてしまえと思いながら崖付近にて待ち構えているハンターに視線を向ける為に見上げると、其処では今、正にハンターが見知らぬ人間に殺される直前であった。

 

——ありゃ、タマミツネのガンナー装備じゃねぇか。狐のお面を斜めに被るから人気あるデザインだったな。体格からしてかなり小さい……少女レベルの身長だな。ガンナー装備で持ってんのは圧し折れた大剣か?

 

 そして次の瞬間、折れた大剣がハンターの胴体に突き刺し引き抜き、また突き刺す行動を繰り返した。明らかに殺意を以って攻撃を繰り返している。

 

『おいおい……ツー事はアレか?ナルガフェで聞いた『追剥』って奴か?』

 

 血飛沫をあげるハンター。それでも追剥は攻撃の手を止めない。そして、最後に首を刎ねた。刎ねられた首は崖下の、丁度、馬鹿2頭が暴れている場所に落ちる。その後、追剥はハンターの死骸を弄った後にその遺体も崖下に蹴り落とした。

 

「…………」

 

『…………』

 

 そして、最後にその追剥……いや、体格的に少女と言える。彼女と護石王の目が合った。気がしたが、その少女は何の反応を見せずにその場を立ち去って行った。

 

——今、目が合った気がしたな。いや、気の所為か……しっかしまぁ、噂していたら件の追剥と遠目で見掛けるとはなぁ……まぁ、ハンターを始末してくれたって言えば感謝するべきかね。取り敢えず、帰るとするか。

 

 護石王は未だに暴れ回る燼滅刃と角竜を放置して歩いてその場を立ち去り、現在寝床にしているとある火山へと帰投するのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、聞いたか?また、だぞ?」

 

「ああ、聞いたさ。『追剥』だろ?」

 

 とあるギルド内の酒場。其処には複数人のハンターが屯しており、酒や食事に勤しんでいた。その一角にて、とある話に興ずるハンター達が居た。

 

「今迄はネコタクで帰還途中で襲われるケースが多かったらしいが……狩猟の戦闘中に襲われて殺されたらしい」

 

「……ああ、最悪級の横槍だな」

 

「身体をズタズタにされた挙句に首を切り落とされ、捨てられたらしい。その死体は小型モンスターのスカベンジャー達に食い尽くされる直前に発見されたそうだ」

 

「おっかない話だ。大型のモンスターとやり合っている最中に襲われるのか……」

 

「手口が段々、大胆になって来ているのに、正体が全く分からない。ギルドからも注意喚起が来ている」

 

「……コレじゃあ、おちおちクエストに行けね……」

 

 その時、ギルドの玄関口から鈍い音が聞こえた。何かが、倒れる音だ。視線を向ければ其処には流血して血塗れの状態のハンターが居た。ラギア装備のハンターだ。

 

「お、おい‼︎ 大丈夫か、お前⁉︎」

 

「医療班‼︎ 直ぐに用意を‼︎」

 

 何事かと思ったハンターやギルド職員達が這う這う体で戻ってきたハンターに近寄る。

 

「おい、何があったんだ⁉︎」

 

「や、奴だ……‼︎ 追剥だ……‼︎ 追剥にやられた……‼︎」

 

 追剥。その言葉に一同はどよめく。一部のハンターがその追剥の話題をしていたのだから尚更である。

 

「お、追剥って、あの追剥か⁉︎」

 

 追剥に襲われたハンターは悉く死亡している。追剥に襲われ、そして殺されたのだから。

 

「あ、ああ。あ、危うく死ぬ所だった……。だが、何とか反撃はした……が、このザマだ。引退は確実だな……」

 

 反撃。ハンターを悉く葬った追剥に襲われて反撃出来ただけでも凄いと言わざるを得ない。

 

「じゃ、じゃあ……追剥の正体を見たのか⁉︎」

 

「ああ……だが、記憶は朧げだ。何せ必死だったからな……記憶違いもある上に確証はできないぞ」

 

「今は少しでも情報が欲しい……今が無理なら後日にするが」

 

 ギルド職員の1人が血塗れのハンターに尋ねる。本人の容体は危険域の可能性もある為に猶予を待つとも告げた。

 

「ごふ……いや、今……言っておいた方が良いだろうな……。追剥の正体は……少女だ。タマミツネのガンナー装備を身に付けた少女だった……サイズなんて合ってねぇ、追剥で恐らく奪った奴を其の儘、着てんだろって言う有様。で、俺が襲われた時、つい反射で双剣の片方で斬り払ったんだ。その時、仮面の一部が割れてな……その仮面の裏にあったのは幼い少女だったさ……俺の娘もあんな歳だったろうなって言う……」

 

 タマミツネ装備、少女。それがハンターズギルドを悩ませる追剥の正体。

 

「……子供が追剥……どう言う事なんだ?」

 

「俺が知るかよ……追剥せにゃならん位、貧困なんじゃねぇのかよ」

 

「事情があるのか?しかし、殺人が認められる筈がない……野盗の類ならば、兎も角……よもや、子供とは……‼︎」

 

 どの町も村も裕福とは限らない。貧困に喘ぐ人間も居ない訳では無い。貧しい村も存在するし、大型モンスターの襲来で壊滅した村も数知れない。その生き残りがどうなったのか……其処までもハンターズギルドは把握し切っている訳では無い。

 

「……貴重な情報、感謝する。君は今は休んでくれ。後は我々が調査を進める。連絡の着くギルドに情報共有を‼︎」

 

「へっ。そうかい……悪ぃな、お前ら……俺は此処らで退散だ。後は任せたぜ」

 

「大変な事が起きた‼︎」

 

「おい、今度は何だって言うだよ?」

 

 追剥生還者の次には何が起ころうとしているのか。更に現れたギルドの連絡要員の男性に視線が向かう。

 

「何があった⁉︎ また、追剥か?」

 

「違う……『獄彩蝶』が、バルバレに現れたんだ‼︎」

 

 その言葉は『追剥』の少女以上の凶報であった。

 

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