走れトレーナー   作:ゴールデンウィーク

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弥生賞に向けて

遂にこの日がやってきた。

弥生賞。

一年前トレーナーとしてみた景色とは違う景色。今俺はゲートの中にいる。人間がこんなところに立つなんて本当ならありえないけど…準備は万端だ!やって見せる!

 

出走2時間前。会場に入った俺はまず出走者リストを見渡す。

「ラストウルフ」

「ノビタジャイアン」

「ベイス」

など、将来を期待されたウマ娘たちがわんさかいる。

さすがG2。ラインナップは豪華だ。特にノビタジャイアンはG2勝利経験が複数あるウマ娘だ。格が違う。

こいつは特に要注意だな…そう思いながら廊下を歩いていると目の前をウマ娘が横切った。

 

背中のゼッケンには「キングヘイロー」という文字が書いてある。そういえばこいつも出走するのか。懐かしい名前だ。ここまで落ちぶれるとは当時は全く思わなかっただろう。

 

キングヘイロー。入学前からその脚力は高く評価されほとんどのトレーナーから絶賛されていた。母は当時最強だったウマ娘。父はG1計7勝の名トレーナー。スカウト日解禁と共にみんな彼女とトレーナー契約を交わすために毎日毎日円を囲んで話しかけた。ある日は行列が、ある日は円が彼女の周りにはできていた。まぁそうだろう、素質的には彼女が世代の中ではダントツで一番人気。彼女と契約さえできればあとは何もしなくても勝ってくれると本気で思われていたんだから。当時の俺はスズカに手一杯だったのでスカウトはしなかったが。

 

まぁしかし落ちぶれたもんだな。あいつは校内では嫌な奴として有名だった。終始上から目線で他人を見下している嫌な奴で俺も半年前段ボールを抱えながら校内を歩いていた時にあいつとぶつかってしまったことがあった。

 

「す、すまん…大丈夫か?」

 

倒れた彼女に手を差し伸べるとあいつは俺の手を甲で跳ね除けた上に頬を引っ叩いてきた。

「誰にぶつかったと思ってるの!?口の聞き方には気をつけなさいよ!よくも私の顔に傷をつけたわね!」

 

そう言って彼女は悪びれもせずに去っていった。その時にこいつが世間知らずのクソみたいな箱入りお嬢様であると確信した。

最初はその素質に惹かれて彼女の周りに集まっていたファンも彼女がレースで負けるたびにその性格の悪さからどんどん離れていった。たしかG1今9連敗中だったか?同期のウマ娘たちはもうG1で勝利を収めていると言うのに…

契約したトレーナーはとんだ災難だったな、結果も出せないうえに性格も最悪なお嬢様と契約することになって。そういえばこの前トレーナーと契約を打ち切られたって噂を耳にしたっけな。

 

……

おっといけない、冷静になれ俺。こんなやつのことはどうでもいい。今大事なのはノビタジャイアンだ。こいつに勝たなければいけないんだ。

 

さて、どうしようかなぁ…

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