今日の勝利の女神は、横っ面を引っ叩く(更新停止中)   作:R主任

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序章:「王」と「女王」と「騎士」のクライマックス

ワアァァァァァ……

 

晴天のレース場。

 

満員の観衆。

 

その一人ひとりが、そのレースから目を離さない。

いや、離せない。

 

響くのは無意識に喉から湧き出る、応援の叫び。

その目で、その耳で、「頂点」の一瞬をを永遠に焼き付ける。

本能が、そうしろと訴える。

 

 

 

 

ー天才はいる。悔しいがー

 

 

 

 

「最強は…… ボクだ!」

 

 

 

 

ー絶対の強さは、時に人を退屈させるー

 

 

 

 

「わたくしは…… 負けません!」

 

 

 

 

『最終コーナーを回り、遂にトウカイテイオーとメジロマックイーンが集団から抜け出した!  共にスパートをかける!一歩も両者譲る気配は無さそうだ!

 

そして更にその先を走るもう一人!』

 

 

 

 

ー魂には、肉体以上の強さを与える力があるー

 

 

 

 

「……私は決して、最後まで手を緩めない……!」

 

 

 

 

『ナイトシグマ!ナイトシグマも最後のスパートに入った!!

 

三人が走る!走る!並ぶ!走る!誰も引かない!誰も譲らない!

残り200メートル!最後に笑うのは誰だ!最後に頂点に立つのは誰だ!

 

最高の栄冠を、夢を、掴み取るのは誰だ!』

 

 

ワアアアアア!

 

ワアアアアア!

 

………

 

『い、一着に入ったのは……』

 

 

 

 

ーーー

 

「トレセン学園に入学……ですか?」

「ええ。わたくしは輝かしきメジロ家の一員として、天皇賞を制覇することで更なる栄誉と栄光をもたらすつもりですわ。

あなたはどうなのです?シグマさん。」

 

メジロ家の庭園でティータイムを嗜みながら、ふとマックイーンが訪ねる。

紫がかった長髪の美少女と向かい合うのは、透き通るような銀髪と機械を思わせる鋭く整った容姿の美少女。

来年から中学生とは思えないような、優雅な空間が展開されていた。

 

「私は……正直どうすべきか迷っている。確かに君たちメジロ家の皆と競い、己を高めることに興味が無いわけではない。

ただ、我が『キサラギ家』にはそのような前例は無いのでな……私が一族における初めてのウマ娘ということで、中央のトレセン学園に挑戦しても大丈夫なのか……という懸念がある。」

「……本当に、あなたの慎重な性格は昔から変わりませんのね。」

 

マックイーンがスコーンを口にしながら、呆れたような口調で言葉を続ける。

 

「あなた程の実力があれば、わたくしやライアン達とも十分に競うことができますわよ。むしろあなたが来てくれなければ、メジロ家の皆もガッカリしますわ。」

「そう言ってくれるのは大変光栄なことだ。……しかし、母上はまだしも、弟の『火丸(ひまる)』と離れるのが……」

「……ああ、『ヒムちゃん』でしたら、既に来年からトレセン学園の近くにある学校に通うというお話を聞いてますけれど?」

「何?」

 

双子の弟の進路が、自分の知らないところで決まっていたことに驚くシグマ。

 

「……誰から聞いたのです?」

「シグマさんは知らなかったのですね。先日パーマー達が『なんかヒムちゃんがメジロの経営するマンションに下宿して学校行くんだってー。春になったら皆で遊びに行っちゃおっか!』と騒いでましたけど?」

「……母上……火丸……」

 

弟のメジロ家での人気っぷりを内心微笑ましく思いつつも、自分に内緒にされていたこと、そしてメジロ家のあっさりとした情報漏洩に軽く頭痛を覚え、眉間を指で抑えつつ軽く頭を左右に振った。

銀髪が美しいカーテンのようになびく一方で、ウマ耳が見事にぺたーんと垂れており、マックイーンは表情を綻ばせる。

 

「まあ、あなたのお母様のご意向でしょうから、悪いことにはならないと思いますわよ?といいますか、ひょっとしたらあなたの進路についても既にお考えがあるのではなくて?」

「……そうかもしれない。母上には改めて相談してみることにする。」

「それがよろしいでしょうね。トレセン学園ご一緒できること、今から楽しみにしていますわよ。」

「感謝する。」

 

マックイーンが無意識に口にしていたスコーンの多さに苦笑しつつ、小学生に似つかわしくない優雅なティータイムは終わりを告げた。

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