今日の勝利の女神は、横っ面を引っ叩く(更新停止中) 作:R主任
ってゴルシに説教される夢を見ました(超実話)
『……以上で、トレセン学園入学式を終わります。
入学生の皆さんは順番に退出をお願いいたします。なお、保護者の皆様は、スタッフの指示があるまでその場を動かないよう……』
入学式は会場内に荘厳な雰囲気が漂いつつも、要所で登場する秋川理事長のどこかコミカルで可愛らしい仕草が、良い具合に堅さをほぐす、何ともほのぼのとした式典であった。
睡魔に襲われていたと思われる入学生が、うーん、と伸びの仕草をしたり、あるいは退場に置いていかれかけて慌てる様子を見せては、会場内で待機する保護者達にちょっとした笑いを届けていた。
……その一角で、近くに座った保護者が恐怖で震え続け、あるいは耐えられず気を失うほどのプレッシャーを発し続ける存在がいた。
「……終わったか。」
整ってはいるものの、厳つい表情と綺麗な銀の長髪。何より男性としても非常に恵まれた体格の男性が、更に一回り大きな男性と並んで座っている。
愛娘の勇姿を見届けに来たような保護者の方々からすれば、このような威圧感を会場で味わう羽目になるとは、夢にも思わなかっただろう。
……その鋭いプレッシャーと視線は、自分達と反対側の、同じく来賓席の一角に向けられていた。
お疲れ様でしたー、と、対照的に穏やかな様子で周囲の人々に挨拶を行うのは、カール学園・阿万(アバン)校長である。
まだ少数の入学生が会場に残る中、おもむろに銀髪の男性は席を立ち、壇上へと向かう。
会場内の保護者がざわめきを始める中、慌てて横から飛び出したスタッフよりマイクを受け取る。
「……アバンよ。」
「ハドラーですか。お元気そうですね。」
名前を呼ばれ、同じくスタッフからマイクを受け取った阿万校長が答える。
「今日の式典、俺にはどうしても我慢ができなかったことがある。」
「私に関係することでしょうか?」
「ああ。……来賓紹介の時、何故俺の名前が、お前の名前よりも後に紹介されたのか、について……だ。」
外野では、『単純ッ!学園から近いから!』と反射的に叫ぶ秋川理事長の口を塞ぐ駿川秘書の姿や、『オイ親父!そんなこと気にして……!』と叫びかけた息子に対して針を投げつけ、失神させる保護者の姿もあった。
「どんな理由であれ、俺がお前に後れをとるという事実が、俺には我慢がならんのだ……
この後、学園のテニスコートに来い。勝負だ。」
「ええ、分かりました。久し振りに手合わせといきましょう。」
「決定ッ!保護者や報道関係者は、この後テニスコートに集合っ!」
……実のところ、一連の下りは全てが、関係者達の事前に示し合わせたものである。
「……しかし、『入学生達に初日から競技場を走る時間を設けてやってはどうか』、とは……
今年の入学生にはあなたの娘さんがいるんでしょ?『魔王』がとんだ親バカですねえ。」
会場がざわめく中、マイクのスイッチを切って阿万が苦笑混じりに話す。
「俺がお前と戦いたいというのは事実だぞ?相応の準備はしてきたのだろうな?」
「あ、その辺りは、ちゃーんと練習してきたのでご安心を。」
ーーー
「本当に、広いな……」
「今日は寮の門限までは自由に走っても良い……とのことですわ。」
「ならば、心行くまで走るとしようか。」
「ええ、勿論。」
式場を出た後、皆と一緒に流されるままに着いたのが、広大な大小様々の競技場であった。
既にコースに出ては準備運動を始める者や、走り出す者の姿も見られていた。
……これは、不味いな。
ウマ娘としての本能が、土やターフの臭いを嗅ぐだけでも『早く走ろう。早く走ろう』と急かすのだ。
「今日は勝ち負けなどは気にせず、思う存分走ろうか。」
「これだけコース内に他の皆様がいらっしゃる状況では、競走するのは難しいですものね。」
体操着と蹄鉄付きの運動靴を身に付けーーー入学式の案内に持ち物として書かれていたのはこの為だったのか、と理解するーーー準備運動の後、シグマとマックイーンは併走を始めた。
あくまで今日は試運転の機会であって、競走を行うようなことは……
「ーーーキミ、メジロマックイーンさんだよね?
早速だけど、ボクと勝負しようよ。にししっ」
……ウマ娘達の本能が、競走を、勝負を求めない筈がない。
タキオンで全目標達成……そりゃ人気出るわこの娘、と今更ながら納得