今日の勝利の女神は、横っ面を引っ叩く(更新停止中) 作:R主任
というかグレイやゲームの固有発動スキルを見ていたら、トップの皆がゾーン入ってからの鍔迫り合いってこんな感じじゃね?と。
あと各種固有スキルの発動状況がゲームと違いますが、予めご了承くだされ。
(マックイーンだけならば、このペースを維持しつつスパートをかければかわしきれる筈。
だが、今回はもう一人……)
コーナーを曲がった直後に今回のゴールを定めている。
その為、この勝負は最終コーナーでの駆け引きが非常に大事であった。
コーナリングの無駄を無くし、且つ相手の進路を意識した位置取りをどのように行うか……
最後のカーブに差し掛かりつつ、シグマが後ろの様子を見る。
テイオーが外、マックイーンが内の位置取りで並走してきていた。
(……不気味だ……何を仕掛けてくる?)
一瞬だけ見えた表情にも、苦しそうな様子は共に見られない。
シグマは考える。
相手の一手を待って仕掛けるべきか。あるいはこちらから動くべきか。
この場合はーーー
ーーーボウッーーー
「!!!」
結論を出すよりも先に、後ろから感じたのは強烈な『炎のように揺らめく強烈な感覚』。
同時に目の前の競技場の景色とは異なる、『異質な世界』に意識を一瞬もっていかれる。
そこに浮かんだものは……
ーーー澄み渡る青空に浮かぶ雲。
その雲を軽やかに跳ね回る、テイオーの姿ーーー
「一番はこのボク!テイオー様がいっただっくよー!!」
(……な、なんですの!そのスプリントは……!!)
真横でスパートを仕掛けられたマックイーンには、テイオーの走りの『異質さ』が手に取るように伝わった。
走っているというよりも、まるで『跳ね回っている』としか思えないような足捌き。
コーナーでの走りも、芝の様子を知り尽くしたかのような無駄のないフットワークで、みるみるシグマとの差を詰めていく。
(……よし!このまま追い付いて……『……甘い』……っ!?)
シグマを捉えた……と思った瞬間、背筋の凍るような恐怖に襲われる。
彼女の目に一瞬、炎のようなものが宿った次の瞬間……
(……!危ない!)
『意識』の中、右肩を何かが掠めたような感覚を覚えていた。
テイオーは驚愕する。
競争で集中するといつも入り込んでいた、自分だけの世界に……
近衛兵を思わせる格好で銀の『騎士』が現れ、目の前に立ちはだかっていた。
……え、それじゃあ、今投げつけられたのって……
『……ほう、あれをかわすとは。』
『な、何するんだよもー!ボクじゃなかったら【キョーアクハンザイホー】に引っ掛かって死刑だよ!死刑!』
『そんな法律は存在しないが。』
シグマの天賦ともいえる能力。
相手の仕掛けるタイミングを読み切り、自らがスパートをかけて一気に勝負を決めにかかるもの。
テイオーは上手く回避したが、並みの競争相手はその『槍』をまともに受け、まともにそのレースを走ることができなくなる。
『仮に当たっていても、生命に影響が出ることはないから安心ししてほしい。勝負はいただくがね。』
『もー!それが嫌なんだってば!』
『全く、わがままなお嬢さんだ。』
『キミだって同い年じゃないか!』
集中する意識の中、挙動を通じて相手の意思を理解する二人。
互いの一手が微妙に不発に終わったことで、少しばかり緊張感に綻びが生じる。
……そして、それを、それこそを狙っていたステイヤーがもう一人。
『……お二人とも、そろそろ無駄話はよろしいかしら?』
『……あっ』『!……しまっ……!!』
お互いへの牽制を続けていたテイオーとシグマ。
そのせいで、『もう一人の相手』が仕掛けることを無警戒で許してしまった。
ーーー二人は、目に炎を宿したマックイーンが悠々と通り過ぎていく様子を、呆然と見つめることしかできなかったーーー
「あー、負けちゃったよー。」
「今回は完全に不覚をとった……完敗だ。」
「いえ、お二人が勝っていてもおかしくなかったですわ……むしろ私の仕掛けるタイミングが早ければ、勝っていたのはあなた方のどちらかだったでしょうね。」
最初にゴールの目印を駆け抜けたマックイーンを先頭に、クールダウンを図りながらレースを振り返る。
「それにしても物騒だねー、シグマのあれ。」
「メジロの皆も、いつもあれには最大限の警戒をしながら走っていますので。テイオーさんが先に仕掛けてくれて本当に助かりましたわ。」
「ああ……正直マックイーンに注意を払えば良いと思っていたが……テイオー、君があれほど手強いとは。本当にしてやられたよ。」
「こっちこそ、二人ともスゴかったよ!でも、次に勝つのはボクだけどね!」
「次も勝つのは私ですわよ?」
「二人とも冗談を……私に何度も同じ手が通じると思わないでくれよ。」
レースの余韻も冷めやらぬ内に、そのまま再戦へと意識を高め始める三人。
「それならば少し休んで、もう一度……」
「私も混ぜて欲しい、その勝負。」
背後から、凛とした声と共に沸き上がる、凄まじいプレッシャー。
三人の様子を見ていたウマ娘達も、その存在に目を奪われる。
「新入生の様子を監視する……というのが今日の仕事だが、あれだけの勝負を見せられては流石におとなしくしてられん。
構わないな?」
長いポニーテールに鼻腔テープ、枝を咥えた『シャドーロールの怪物』。
ナリタブライアンが、そのポーカーフェイスに抑えきれない闘志を漲らせていた。
マックイーンの発動スキルの様子を「バイクに乗って有刺鉄線や木材を軽々と乗り越えていく」とか描写しようかと思うも、流石にイメージに合わんので却下。