今日の勝利の女神は、横っ面を引っ叩く(更新停止中) 作:R主任
ーーーパー、パラパーパーパーパーパー、パラパーパーパーパーパー、パラパーパーパーパーパーパー……
「オイ!早まろうとすんな!お前には守ると決めたものが……」
『すまねえ。そいつはおめえに任せるよ。』
「ふざけんな!お前以外に誰があいつを支えてやれると思ってんだ!」
『いや、アレもすくすく成長して今や反抗期さ……いよいよおいらの手を離れようとしてんだよ。』
「反抗期にこそお前がそばにいてやらなきゃ駄目なんじゃねえのかよ!ええ?」
……ザッバーン…… ザザーン……
(……わたしは一体、何を見せられているの?)
入学式の後、目の前で芦毛のウマ娘が繰り広げる謎の寸劇を、呆然と見続けるウマ娘がいた。
ーーー
(……あれ?この人……)
(マックイーンさんと一緒にいた人にそっくり……)
(なんで1人なんだろう)
入学式の後、1人の新入生が俯き気味に運動場に向かっているのを、同じ新入生達が見かける。
その姿を見て『あれっ?』と感じるのは、マックイーンと共にいた筈のシグマと顔立ちがそっくりだからであろう。
髪の色が若干ブロンドがかっている点を除けば、ほぼ瓜二つである。
但し、声を掛けようとした新入生が思わずひっ、と小さく声を上げて素通りを許したのは、その表情が……
……あまりにも暗く、負の感情に満ちていたからである。
(必ずここで、わたしはトップの座を得る。そして、キサラギを倒し、コマゴメこそが正しい存在だと見せつけてやる……!)
父親から常に聞かされ続けてきた、自分の使命。
『王』としての責務を果たそうとするも、『女王』が『魔王』を呼び込んだキサラギに、コマゴメはその立場を追いやられた。
こんなことが許されて良い筈はないのだ。
才有るものが世の上に立つことは摂理。すなわちウマ娘として生を受けたお前が、その才を遺憾なく発揮してコマゴメの名を世に轟かせることは義務なのだ……
父は常に鬼気迫る様子で、幼少期から自分に使命を説き続けた。
それを疑うことはコマゴメの在り方を汚すことになると、努力を続けてきた。
母は物心付いた時にはいなかった。祖父の代にキサラギに仕えていた…という者が、自分を常に支えてくれた。
……褒められる度に劣等感を感じた。私はキサラギではない。コマゴメなのに……
努力を重ねて掴んだ、中央への挑戦権。
入学式の場で、堂々とする『魔王』ハドラー、そして、『メジロ』の令嬢と談笑する『キサラギ』のウマ娘。
改めて、強い決意が宿る。
……お前達の首は、必ずわたしが獲る。
……なーに物騒なこと考えてんだよ、お前。
……え?
「確保ー!」
「きゃっ!……って、何よこれ!何なのよ一体!」
不意に頭から何かを被せられ、視界が真っ暗になった。
ーーー
「着いたぜー!」
「着いたぜ、って……というかあなた誰よ!いきなり何すんのよ!」
「おう、アタシはゴールドシップ。ゴルシちゃん、で良いぜー。」
「そんなことはどうでも良いわ!いったい……」
「あ?」
ずい、と真顔を近付けられ、たじろぐ。
「あなた誰?って質問に答えたのに、『そんなことどうでも良い』って何だよ、オイ?」
「う…ぁ……」
チンピラどころか反社会的勢力を思わせる睨みと、ドスの聞いた声で詰め寄られ、思わず恐怖で泣きそうになる。
『ゴルシ!貴様あ!』
「!」
突然別のところから上がった怒鳴り声。
その発生源を見ると……
「……何あれ」
「見りゃわかんだろ、あれはな……」
声の元はすぐに分かった。ラジカセが置いてあり、いつの間にかそれが再生されていたのだ。
一方で目についたのは、ラジカセの側に置かれた『人のようなもの』。あれは……
「アタシの『等身大POP』だ!」
「……」
一瞬でPOPの真横に立ったゴールドシップが、謎の決めポーズと共に宣言した。
……いや、確かに目の前のこいつ『そのもの』が置かれているのは分かった。
だが、何でそんなものが『こんな場所』にあるのか。
それに……
『こんな無人島に右も左も上も下もAもBも分からぬようなウマ娘ちゃんを連れてくるとは!どういうつもりだ!』
「はぁ!?」
疑問口にする前に、ラジカセが喋った。
いや、え……『無人島』?
さっきまでわたし、トレセン学園にいた筈よね?何で無人島に?
「サー!今年の入学者に、迷子が混じっていたもので連れてきた次第であります!」
POPにビシッと敬礼をしながらゴールドシップが答える。
『迷子?違うな。その娘は……迷い子だ!』
「おお!その通りでありますな!」
『正解者として、ニンジン味の飴を進呈だ!』
「おっしゃー!」
両手を掲げて派手なガッツポーズをとった後、ゴールドシップが近づいて手渡す。
「ほらよ、食え。」
「え……うん。」
正解者が商品を渡す側って、普通逆じゃないの……?という疑問よりも先に、思わず飴を口にしてしまう。
これ……駄菓子とかじゃなくて、結構良いお店の飴じゃない。
甘すぎず、美味しくて……
カチッ、という音が響く。
ゴールドシップがラジカセの停止ボタンを押し、近づいてきた。
「ほれ、ハンカチだ。」
「え?」
「顔を拭け。気づいてねーのか?泣いてんぞ、お前。」
「え……あ、あれ……?」
「一旦『中断』だ。落ち着くまで待ってやる、全部吐き出せ。」
頭を撫でられる。
ますます涙が止まらなくなった。
優しく頭を撫でてあげながら、『さて、どうやって再開すっかな……』と悩むゴールドシップ。
オミクロンが泣き止むまで、暫くそんな光景が続いていた。
オミクロンが泣き出すタイミングが想定以上に早まって、ゴルシ以上に書いてる俺がビビった
マキシマムは正気失ってたけど、その駒として忠実であるべきという本質や使命感が疑問を持たせなかった、ってところ。