今日の勝利の女神は、横っ面を引っ叩く(更新停止中) 作:R主任
マジで『書けば出る』は真実なのかもしれない
ーーー
「……一つ、質問させて貰いたい。」
「何でしょう?」
「君は、本当に……いや、これ以上私の口から語るのは止めておこう。」
「……そうしていただけるかしら。」
お昼時のカフェテリア。
シグマは驚愕していた。
先日も会ったばかりの友人が、明らかに……
もちもちしていた。
ほっぺとか、凄く触ってみたい……そう、思ってしまった。
ただ、そこは潜在的な紳士としての意識がそれを押し留める。
「……併走であれば、午後にでも付き合おうか?」
「そうですわね。一応本日の放課後は『スピカ』で希望者のトレーニングがありますので、そちらに響かない程度で……」
「ほう、『スピカ』を選んだのか、君は。正直、ドーベル殿も所属する『リギル』に入ると思っていたのだが……」
「……ええ、まあ……」
『スイーツ食べ放題に釣られた』と白状するのは避けたい、そう思い、マックイーンは理由をはぐらかす。
何となく、今回の『もちもち』が何かあるのでは……と思いつつ、シグマも話を続ける。
「……『リギル』には、どうやらテイオーと同室になったという娘が入団したらしい。」
「テイオーと同室……ああ!あの時の……」
「そう、私達とブライアン先輩の勝負を裁定した、『マヤノトップガン』だ。」
「あの小さな娘が……」
名門『リギル』に入るには、厳しい入団テストが存在する。ドーベルからも、その辺りの話は二人とも詳しく聞かされていた。
「あの時は疲れていたからレースには参加しない、と言っていたが……」
「実はあの時、既に私達の能力を見ようと……」
「いや、流石にそれは無いだろう。ただ、どことなく気紛れな印象はあったな……そうすると、あの様子で『リギル』に入れるだけの実力となると……」
ーーー『天才肌』。
二人の脳裏に、この言葉がよぎる。
「……本当に、ライバルばかりが多くて困ってしまいますわね。」
「…フフ、嬉しそうな表情で言う言葉では無いだろうに。」
「あなたこそ、私と似たような表情をされているのではなくて?」
「そうかもしれないな。……そういえば、君が入った『スピカ』には確か、あの『コマゴメ』の……」
「ああ……」
先日のことを振り返り、シグマに伝えるマックイーン。
「……個人的な印象になりますが、やはりあなたに因縁を感じていらっしゃるのは間違いないようですが、あくまで『打倒』であって、『憎しみ』のようなものは持ち合わせていなかったようでしたわね。」
「……ふむ。」
マックイーンとは普通にコミュニケーションがとれているのか、と、シグマは考える。
「いずれにせよ、この世界においてはレースの結果が全てだろう。……ただ、私が『スピカ』に入るのは……」
「ええ……正直お薦めしませんわね。そもそも私だって、あなたとの勝負を待ち望んでいますのよ?」
「ふーむ……」
「まだメイクデビューには時間もありますし、折角であれば色々なチームを回られたり、あるいはトレーナーからのスカウトを受けてみては?」
「……検討してみよう。
……ところで、先ほど話に挙がったテイオーは?『カイチョー』に固執しているならば、『リギル』に入るのが成り行きではないかな?」
「……いえ、私がお聞きしたところによれば……」
ーーー
「大丈夫か?」
「う、うん。ありがとう……(な……な……なにこの人!チョーかっこいい!)」
……テイオーは、たまたま転びそうになったところをとっさに助けてくれた、一人のトレーナーにあっさり心を奪われていた。
ーーー
「……そのトレーナーって、確か……」
「ええ……」
まあ、テイオーの明るさがあれば呪いのような噂も平気だろう(でしょう)……たぶん。
二人の考えは一致していた。
「音坂さん……?ああ!カイチョーのチームのライバルのトレーナーさんじゃん!ボク、カイチョーに近づきたいんだ!力を貸してほしいな!」と、一切の物怖じもなくその場でチーム入りを表明したテイオー。
流石の音坂も面食らうが、実際の競技場でのパフォーマンスを目にしたこと、また最初に聞かされた理由を鑑み、チーム入りを承諾。
(……『チームの一員』の自覚を持つところから、かもしれんな。こういう奴は。)
そう音坂が考えた矢先、いきなり『ボクと音坂トレーナーはドラマチックな出会いをしたんだよ!これは運命かもねー、にししっ』と『ポルックス』のメンバーの前でテイオーが宣い、その日の内に所属メンバー達から歓迎の『かわいがり』を受けたことは、想像に難くないだろう。
ーーー
「久しぶりだね、大円。」
「……つっても数日ぶりだろ?子岸。」
トレードマークのバンダナを付けた大円と、競技場周辺のスペースで挨拶を交わすのは、大円と同じく今年からカール学園より新人トレーナーとして赴任してきた、『子岸 中(ねぎし あたる)』。
……知らない人が子岸の風貌を見れば、少なくともこの者をトレーナーとは認識せず、彼のことを『大円が学園内に連れてきた子ども』か、あるいは『理事長の関係者か?』と思っただろう。
「こっちでの調子はどうだい?」
「まあな、黒沼さんは厳しいけれど、ぼちぼちやってるよ。」
「そうかそうか、それは感心。」
「お前なあ……」
うんうんと頷き、子岸が続ける。
彼の特徴とも言える、その小さな身体から発せられる不適なリアクションに、『こいつ、本当に大丈夫なんだろうなあ……?』と、苦笑を浮かべる大円。
「僕も早速、いちトレーナーとして活動を本格的に始めていかなくてはね。」
「そりゃそうだな。で、お前はどのトレーナーの下で研修するんだっけ?」
「研修?ちっちっち、僕が今日からトレーナーとして成すべきことはただ一つさ。」
「?」
要領を得ないといった様子の大円を尻目に、子岸が競技場へと近づいていき……
「ウマ娘やトレーナーの諸君!
この僕、子岸は今日、この場より『チームレグルス』として大いなる一歩を踏み出す!
まずは、全てのレースに負けることなく勝利し、最強の存在としてトレセン学園に君臨させてもらう!
この僕を、チームを、しっかり覚えておくように!」
……大声で、最後まで言い切った。
ネズミ→子年→子岸(子津と迷った)
チウ→チュウ→中
次話はチウと某ウマ娘との掛け合いに難儀中。
ちょっと間が空くかもしれませんサーセン