今日の勝利の女神は、横っ面を引っ叩く(更新停止中) 作:R主任
あと、今後のレース関連において、史実の戦績と作中の戦績には結構なズレが生じそう。
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子岸が競技場で大啖呵を切っていた頃、『リギル』の部室では、トレーナーの東条が書類の整理を行っていた。
「……今年の新入生……できればもっと見てみたいわね。」
入団テストに合格したマヤノトップガンは勿論のこと、ブライアンの話を元にしたシンボリルドルフからの報告に、チームの責任者としてよりも、トレーナーとしての魂をくすぐられていた。
「マヤノと一緒に競い合ってくれそうな娘がいてくれると助かるんだけど……」
そう呟きながら、今年のトゥインクル・シリーズについて青写真を描く。
ジュニア級は、間違いなく波乱溢れるシリーズになる。
シニア級も、昨年クラシック級やシニア級で死闘を繰り広げた者達が、今年も凌ぎを削ることになるだろう。
一方で……
「……クラシック級、か……」
上位の盛り上がりの傍ら、昨年度のジュニア級には『スター』と呼べそうな存在が、東条の目線ではどうにも不足していた。
実力のある者達がいるのは確かであるが、気が弱く自己主張に欠ける『カノープス』のメイショウドトウや、ストイックな性格故にイマイチ世論へのアピールが下手な『アンタレス』のアドマイヤベガなど、世代を引っ張っていけそうな者が見当たらない。
……1人、『リギル』のテストに合格するも、そのあまりにも自由奔放な振る舞いから結局入団には至らなかった者のことを思い出す。
「あの娘がウチに入って正しく鍛え上げられていれば、今頃どうなっっていたかしらね……」
ーーー『ある時気づいたのさ……ボクは世界を導く覇王であると……その務めを果たさねばならないと!』
「皇帝や女帝達を、覇王は果たして越えられるのかしら……」
……答えるものは、その場にはいなかった。
ーーー
「この僕を、チームを、しっかり覚えておくように!」
……答えるものは、その場にはいなかった。
他のトレーナー達も、競技場で練習中のウマ娘達も、その名乗りっぷりや内容に、呆気にとられていた。
「……えーと、今『レグルス』ってチームは学園に……あ、無いのか。」
学園の組織図を取り出し、確認する大円。
「……いや、そうじゃなくて!オイ子岸!お前いきなり何言い出してんだよ!」
「驚いたかい?」「当たり前だ!お前新人なんだぞ!?幾らなんでも無理がありすぎるだろうが!」
「新人が負けないことが無理だなんて、誰が決めたんだ?」
「そりゃあ……」
……不味い。
こういう理屈が通じないレベルになると、こいつには勝てねえ……と、大円は過去の経験から悟る。
「だったらボクが無敗を達成して、無理なんかじゃないことを証明してやるまでだ!」
「……幾らなんでも夢見すぎだと思うけどなー。」
「夢は見るものじゃない!叶え、与えるものだ!」
「いや、夢を叶えるっつったって、お前そもそも担当するウマ娘ちゃんがいねーじゃんか。」
「それを探す為にボクはここに来たんじゃないか!」
「あー、はいはい。」
程々に話の内容を流すことに努める大円。
……と、
「……そこのキミ、1つ聞かせてほしい。
何故『レグルス』を選んだんだい?」
1人のウマ娘が子岸に話しかける。
「そんなことは決まっているじゃないか!最強を目指すにふさわしい一等星、それは『獅子座』のそれであるべきだからだ!」
「なるほど、つまり君は最強の獅子であることを、己に望むというのだね?」
「当たり前じゃないか!」
「無敗という、無謀にも思えるような目標を、本気で達成できると思っているのかい?」
「今、君が達成をより現実的なものにしてくれたじゃないか!」
「何だって?」
「『夢』から『目標』へと、ね!」
「……素晴らしい。素晴らしいじゃないか!」
突然声を張り上げたウマ娘を周囲の者達が見て……凍り付いた。
「トレーナーとしては叱責も経験も持たず、まるで生まれたばかりの子羊のようなか弱き存在でありながら、その内に秘めし闘志と熱意……嗚呼、それは正に降りかかる多くの困難に立ち向かう『獅子王』の崇高なるハートに他ならないじゃないか!」
うっとりとした表情、そして主張の激しいポーズを決めながら、ウマ娘ーーー『テイエムオペラオー』は語るのを止めようとしない。
「その熱きパトス、試しにボクの前で存分に披露してみたまえ!このようにだ!はーーーっはっはっはっは!!」
「その位はお安い御用さ!はーーーっはっはっはっは!」
オペラオーと子岸の高笑いが、突如として競技場内に木霊する。
あまりのテンションの高さ、そして理解を越えた展開に、誰も言葉を発することができずにいた。
「これは……なんという素晴らしき情熱のアンサンブルだろう!君の持つ燃え上がるような魂の鼓動、確かにボクにも伝わったよ!」
「そうか!それは光栄だ!」
2人はガッチリと握手を交わしていた。
大円を含めた多くのトレーナーが、子岸以上にオペラオーへ、驚愕の念を持たずにはいられなかった。
その素質と実力は間違いなく本物、だが、自らを『覇王』と名乗り、独特の言い回しや行動を普段から繰り返す。
前年度のトゥインクル・シリーズでは、あるトレーナーと共にデビューを果たし、出走したレースでは常時入賞。そして、『ホープフルステークス』では見事勝利し、クラシック級では更なる飛躍を……という状況であった。
しかし、その振る舞いにトレーナーが付いていけず、現状はシリーズに出場し続ける為に契約関係だけが残り、トレーニング等はオペラオー本人が独自で行っている……というのが、世間からの認識であった。
普段の彼女を知るトレーナーであれば、どれだけ今後活躍が期待されたとしても、自分がトレーナーとなることについては二の足を踏んでいたところである。
……だからこそ、目の前で意気投合する二人の様子が信じられないという者ばかりであった。
「そうとも、キミの言う通りだよ!非現実や非常識を打ち破るには、何よりもボク達が常識に縛られないことだよ!嗚呼、今この瞬間から……ボク達のビクトリーロードに向けたプレリュードが、幕を開けたんだ!」
「そうとも!ボクも君とならば、なんだか大きなことをやれそうな気がするんだ!君、名前は?」
「『世紀末覇王』ことテイエムオペラオーとはボクのことさ!小さな戦士よ、今この時からキミの英雄譚は始まりを告げたんだよ!」
「「はーーーっはっはっはっは!」」
「……いろんな意味でこの先、大丈夫か?こいつら……」
知人の壮大な船出の様子に、呆れ顔の大円であった。
「「「はーーーっはっはっはっは!」」」
「……なんか早速1人増えてるし……」
いや、和田騎手のエピソードを知ってるとチウがオペラオーのトレーナー役としてあまりにガッチリハマるわけで……
オペラオーをきちんと書きたいからゲーム始めたと言って間違いないです。ただオペラを引用しての例えは流石に無理かも。
あと、これで一通りダイ側のゲストキャラとウマ娘側のメインキャラが出揃ったので、一度設定やキャラの解説回を入れる予定。