今日の勝利の女神は、横っ面を引っ叩く(更新停止中) 作:R主任
『ダイの大冒険』のキャラについては、名前を現代風にアレンジしています。
今回の該当者はこちら。
・音坂 蹴←ヒュンケル
・大円 世良←ポップ
・子岸 中←チウ
・黒子台先生←クロコダイン
・如月 火丸←ヒム
初の5000字超え……レース描写は書いてて楽しいけど大変やねこりゃ。
ーーー
「げっ……来てたんすか。」
「随分な挨拶だな。」
ウマ娘達のゲートインが始まる中、1人で中山を訪れていた大円は、『ポルックス』と遭遇していた。
「お前一人か?アドマイヤベガが出走するようだが……」
「あー……まあ、色々あるんすよ。」
「……まあいい。折角の縁だ、一緒に観戦しないか?」
「俺は別に構いませんよ。ですが、一緒にいる娘達は……」
「そんな配慮は要らん。……良いだろう?」
「はい。」「う、うん……」「ふむ。」
音坂がチームのメンバーに確認をとり、それにサイレンススズカ、ライスシャワー、アグネスタキオンが同意する。
「こいつは大円。俺の後輩だ。」
「ども、よろしくっす。」
「あ……あの!」
挨拶した大円に、ライスシャワーが声をかける。
一見おどおどした様子の少女だが、尋常じゃない迫力を灯した目に威圧される大円。
「お兄様について、色々教えてほし「おーっと手が滑った!(プスリ)」……きゅう~」
「……へ?」
突然素っ頓狂なことを言い出しかけたライスに、タキオンが華麗なステップで近づいて背後から首元にチクリと一刺し。
目を回してタキオンにもたれかかる。
その光景に呆気にとられながらも、大円には瞬時に理解したことがあった。
「……えーと、皆さんも大変っすねえ……元々こういう人なんですよ、この人。」
「どういう意味だい?」
「仕事も能力も文句の付けようが無いほど本当に優秀なんすよね。ただ、ある部分だけが異常に『鈍い』んですよ、ええ。」
「……興味深い内容があるようだ。
キミ、その『鈍さ』は昔からなのかい?」
「ええ、俺もずっと遠目に見ていて、嫉妬が止まりませんでしたからね。」
「なるほどなるほど。……キミはどうやら私にとって心強い存在になってくれるかもしれないようだ。では早速「タキオンさん?」ぴっ!?」「ひえっ……」
タキオンの肩に手を置くスズカ。
顔は穏やかな笑顔を浮かべていたが、大円が思わず悲鳴をあげる程の『迫力』が滲み出ていた。
「……抜け駆けはしない。そう皆で約束したのを忘れたのかしら?」
「い、いやあ……ライスくんを止めた勢いで、つい……」
「どうした?さっきから。」
「いや、そういうところも本当に相変わらずだなー、と。」
「?」
余計な事に首突っ込んじまったなあ……と内心後悔しながらも、共にレースの開始を待つ。
「今日は誰が勝つと思う?」
音坂が大円に訪ねる。
「そりゃウチのアヤベさん!……と言いたいところですが、正直どうなるかなんて分かりませんよ。」
「……聞き方を変えるか。誰が上位にくると思う?」
「うわ、そうくるか…… 実績からいけばアヤベさんかスペースミリオン、あるいはテイエムオペラオーでしょう。」
「『シリウス』のホットスフィアとクレイジーロデオは?」
「来るならロデオっすね。スフィアの方はなんか、走る目的が勝つというよりも別の方を向いているような……」
「案外、そういう奴の方がこういう一発勝負の大舞台では強いかもしれんぞ?」
「うーん……そういうもんすか。」
「お前は練習での走りしか見ていないんだろう?本番になれば、色々なものが一気にひっくり返ったりすることが多々あるのが、この世界だ。」
「……ちぇっ。」
いちいち説得力があるのが無駄に腹立つわー。
そんな様子が滲み出ている大円を見て、スズカとタキオンは『この男も、大概素直じゃないのね(のだね)』と、密かに笑みを浮かべていた。
ーーー
『さあ、一斉にスタート!全員綺麗なスタートをきった!注目のウマ娘は……先頭集団には予想通りホットスフィア!そこから数バ身離れてスペースミリオン、更にそこからクレイジーロデオ、そしてアドマイヤベガとテイエムオペラオー!そこから……』
「オペラオーは後方集団か……出遅れたわけでも無さそうだが。」
「過去のレースでは先行の作戦だった筈ですけどね。」
「今のところは作戦通りか。……ちょっとスフィアの奴が後ろを気にしすぎか?」
「あからさまに顔にも出てますね……あの調子だと、」
「チッ……逃げ切るのは難しいかもしれねえな。」
ーーー
『な、なんか変なんだよ!?後ろからの【圧】が!こんなの、私知らない!』
先頭集団の中で彼女だけがそれを感じてしまったのは、なまじ彼女に実力があり、そういうものを『感じられるレベルに到達してしまっていた』為である。
一方、明らかに【掛かった】様子のホットスフィアを見て、後ろの面子は『何かがある』と冷静になり、気を引き締める。
また、そのプレッシャーは見ている者達にも伝わり……
「……これは……」
「オペラオーさん……だけど、オペラオーさんじゃ、ない……?」
「分かりますか、ターボさん。ええ、プレッシャーを放っているのは確かにオペラオーさん。……なのに、何か妙な感じが……」
「妙だね。あんな真似をしなくても、彼女の実力であれば問題なく走りきれる筈なのに……」
「作戦、でしょうか……」
「……アイツ、ああいうタイプじゃねーだろ。」
「そうですよねえ……もっと、皆に『ボクはここにいるぞ!』という感じの存在感を出すものかと……」
「そういうのを『捨てて走ってる』んじゃない?」
「あ……そうかも。だけど、それなら余計に分からないよ!そうまでして……」
ーーー
『残りは1000メートル!ここにきて先頭集団が大きく崩れ始めた!変わって先頭に躍り出たのはスペースミリオン!その後ろにクレイジーロデオが続き、徐々にアドマイヤベガとテイエムオペラオーが上がってきた!さあここから最終コーナーを曲がって……』
『よし、絶好の仕掛け所!』
先行の位置からトップに躍り出たところで、スペースミリオンが集中力を高め、一気に力を解放する。
ーーー
「ミリっち、仕掛けるかー。」
「いつ見ても綺麗ですわね、あの方の創り出す『空間』は。」
「凄いよね!まるで宇宙空間を…… えっ?」
ーーー
『おーっと!ここで一気に上がってきたのはアドマイヤベガ!集団を抜け出し、スペースミリオンに迫る勢いだ!』
『私だって……負けられない!絶対に……!』
「アヤベさん!」
「これは……凄いね。ミリオン君の空間に干渉するほどの……」
「ええ、綺麗……まるで、流れ星のような……」
ーーー
『さあここから最終直線!中山の直線は短いぞ!スペースミリオンとアドマイヤベガの……
え!?』
ーーー
「これが、ボクの……全力だ!」
その瞬間。
最終コーナーから、明るい色をした『何か』が、一瞬……としか形容できない速さと力強さで、全てを抜き去った。
『私の、宇宙が……』
『私の、一等星……』
それら全てを『飲み込んだ』、テイエムオペラオーの『太陽』。
その巨大さ、そして眩しさに、見る者達、そして見える者達は、言葉を失っていた。
ーーー
「テ、テイエムオペラオー先頭!あっという間に先頭に躍り出た!その差は更に開いていく!これは既にセーフティリードか!脚色は衰えない!400……200……そのままゴールを駆け抜けたー!
……ああ!そして、2番手争いはアドマイヤベガ!スペースミリオン……いや、クレイジーロデオか!?」
オペラオーのゴールから少しの間の後、我に返った実況が2着争いを告げる。
観客席は、オペラオーがゴールした後……静まり返っていた。
そこに、
「はーーーっはっはっはっは!!!」
オペラオーが2000メートルを走りきった直後とは思えない高笑いを披露した後、
「ボクこそが……最強!!!」
笑顔で天に指を突き立てた。
ーーーワアアアアアア!!!
それを見て、観客席がようやく万雷の歓声に包まれたのだった。
ーーー
「……子岸さん。」「何だい?」
シグマが子岸に話し掛ける。
「あれ、『何です?』」
「……」
「……いや、違うか。私が聞きたいのはもっと別のことだ。
……あなたは何故、『オペラオーが圧勝したのに、そんなに嬉しそうではない』のですか?」
「……はは。分かっちゃうか。」
子岸の表情は……笑顔に混じって、辛そうな感情が明らかに混じっていた。
「ごめんね。でも……うん。言えないや。」
「言えない?」
「うん。……みんな、これだけは理解してほしい。『このレースは、全てがボクの責任』だ。」
「何を言って……」「『テイエムオペラオー』のトレーナーさんですよね!ぜひ今日の勝利についてお聞かせくださいますか!」
報道陣が、トレーナーである子岸の姿を見つけて殺到してきた。
「黒子台先生、みんなの引率を頼みます。」
「あ、ああ……だが、お前……」「お願いします。」
「……分かった。」「ありがとうございます。」
黒子台が、レグルスのメンバーとシグマ、火丸を集め、観客が引き上げ始めて空いている空間に移動した。
「……姉貴。」「何だ?」
「確かに『世紀末覇王』にふさわしい走りなのは分かった。分かったんだが……あれじゃあよ……」
「……ああ。……今は、子岸トレーナーを信じよう。」
「そっか……」「うむ。」
黒子台先生が割って入る。
「オレも正直、あんな顔をした子岸は初めて見たかもしれん……だが、シグマ君の言う通り、今はあいつを信じてやろう。」
「……ターボ、あれじゃあダメだと思う。世紀末に王様があんなんじゃ、誰も王様についてきてくれないよ……」
「……そうだな。まあ、まずはあいつが解放されるのを待とう!この後はウイニングライブもあるし、ご飯でも食べてゆっくりしようではないか!」「「「賛成!」」」
……と、急にテンションを上げて両手を突き上げたターボの手が、黒子台先生の目元を襲い……
「ぐわああああ!」「く、黒子台先生ー!?」
直撃の末、悶絶する大男の姿があった。
ーーー
「……皆の者!良く聞いてくれたまえ!」
レース後、興奮よりも動揺の収まらないレース場に、オペラオーの声が響き渡る。
「今日の勝利……本当に申し訳ない!ボクとしたことが、まさか自分自身に負けてしまうとは!」
ざわ……と、観衆がどよめく。
まさか開口一番、勝者の口から謝罪が飛び出すとは誰もが思っていなかっただろう。
「そう……今日という大舞台!レース場の至るところで、ボクを狙う『影』たち!それに勝たなければ……と、ボクはこの手に持った杖で道を切り開いていった!そしてようやく最後の曲線、この手で切り開いた道を迷いなく突き進み、この手に栄光を掴んだ……筈だったのに!」
そこまで告げた後、オペラオーが身を掴み、震え出す。
「振り返った先にあったものは……敵ではなく、仲間達であり、そしてボク自身だった!
今のボクは1人ぼっちだ!たった1人の王に何ができるというのだ!」
うっすらと目に涙を浮かべながら叫ぶオペラオー。
そこへ。
「ボクの責任です!」
「トレーナーくん……」
「今回のレース、全てはボクの作戦が招いたものです!彼女は悪くない!」
「作戦と仰いましたが、それはどのような?」
質問の声が飛ぶ。
「詳しいことはチームや関係者だけの話になるので言えませんが……一つだけここで宣言させてください!」
「宣言ですか?」
「次の『ダービー』、こちらでは必ず、皆を笑顔にするようなレースを約束します!」
「おお!それは、ダービーも勝利するという予告とみて間違いないでしょうか?」
「勿論です!ボク達の目標は年間無敗の完全制覇ですので!」
「年間無敗の完全制覇ですって!?」
トレセン学園のグラウンドではない、中山レース場で超満員の観客と全国放送を前にした、完全制覇宣言。
これには一気に場内がヒートアップしていた。
「トレーナーくん……」
「本当にすまなかった。今度はキミ自身も誇れるような勝利を目指そう。」
「ああ……そうだね!」
ーーー
「……こいつはすげえ言葉が出たな。」
「今日の走りをみる限り、決して冗談じゃないでしょうね。」
「ああ……しかし、どうする?お互い。」
「うーん……正直困りましたね。」
北原と沖野が、互いに頭をかきつつ語り合う。
入賞こそ果たしたものの、その圧倒的な実力差を目の当たりにしたのは、トレーナー以上にウマ娘達である。
「ロデオは割とピンピンしてそうだが……スフィアの奴が心配だな。」
「ウチのミリオンも、そこまで柔じゃないですから……ただ、この先オペラオーに勝つには……」
「……どうしても出てきちまうからな。怪物は勿論だが、怪物と同世代になっちまう連中ってのが。
まあ、とりあえず今日はライブ後に大枚はたくしかねえだろうな。」
「良かったらウチと合同でやりませんか?それ。」
「きちんと割り勘にしろよ?」
「……ええ……北原さんの方が稼いでますよね?」
「そういう問題じゃねえだろ。お前まさか最初から……」
「いやいや!流石にそれは無いですって!」
会場どうするよ?今から大人数でいけるような場所って……
それでしたら……
ーーー
「……惜しかった、とみるか?それとも、残念だった、とみるか?」
「当事者にきっつい言葉浴びせますねえ……」
「お前のことだ、既に考えてるんだろう?」
「何をです?」
「オペラオーに、アドマイヤベガがダービーで勝利する方法を、だ。」
「……ったく、何でそこまでお見通しなんすか。」
「……え?え?お兄様……」
二人のやり取りに困惑を隠せないライスシャワー。
その様子に思わず反応する大円。
「あはは、正にご自身がそれを成し遂げているじゃないですか、ライスさん!」
「あ……」
「一度の負けで諦めていたら、トレーナーなんてできやしませんよ。」
「ククッ、あのアドマイヤベガは、確か黒沼さんが指導したんだろう?まだスタート前じゃないか、お前。」
「あー!いらんこと言わんでくださいよ!」
うがー!と頭を抱えて叫んだ後、こうなりゃやけだ!と、音坂に指を突きつける大円。
「こうなりゃ絶対にアヤベさんにダービー獲らせてやる!ポルックスの皆さんが証人だ!」
「……良いだろう、聞き届けたぞ。」
「もし達成できなかったら、どうする気だい?キミ。」
「……ああ、それなら良い案があるよ?」
タキオンの言葉にライスが提案を行う。
「お二人の学生時代のお話とか、聞かせてほしいかな?」
「……はっ?」
「……いいねぇ!実に興味深い!」
「ちょ、ちょっと待ってください!そもそも勝っても負けても俺に何か得になることって……」
「無いですね。ふふっ」
「何だか知らんが俺もそういう立場だ。これはお前に頑張ってもらわなければな。」
「あああああちくしょー!」
頭を抱えながら再度絶叫する大円であった。
ベガの星と、本来の固有とは違いますがオペラオーの太陽を対比させるのに「宇宙空間」がマッチしまくってたので、モブではありますがちょっとスペースミリオンは目立たせた感じっすわ。