今日の勝利の女神は、横っ面を引っ叩く(更新停止中) 作:R主任
『ダイの大冒険』のキャラについては、名前を現代風にアレンジしています。
今回の該当者はこちら。
・子岸 中←チウ
・大円 世良←ポップ
・音坂 蹴←ヒュンケル
ーーー
「『言えない』ときたか。」
「はい。確かに子岸が言ってたそうです。」
「……これで1つ分かったな。」
『アンタレス』の控え室。
大円の報告を受け、黒沼が応える。
「『誰かの為にあれをやった』ってことだな。言うと不味い相手がいるから『言えない』って言い訳は出るもんだ。」
「じゃあ、あの時の走りは……」
「あれを披露して喜ぶ奴がいたんだろう。ベーブルースが難病に苦しみながら手術を怖がってる子どもに『必ずポストシーズンでホームランを打つから手術を受けてくれ』と約束して、本当にホームラン打った……って類のな。」
「なるほど……でも師匠、あいつらにそんな約束をするような相手なんて……」
「……1人いる。」
黒沼が厳しい表情で告げる。
「……今から話すことは絶対に外に漏らすな。下手すりゃ俺らのクビが飛ぶからな。……しかし、それならあの子岸とかいうチビも、随分と甘い野郎だな……無理もないが。」
「え……」
ーーー
「……そんなことが。」
「表向きは一切公表されていない情報だ。俺も治療や定期検診の頻度が増えなきゃ知らなかったからな。
繰り返すが、こういうデリケートな話は絶対に外に漏らすなよ。不用意に話したら、誰が出所なのか分かるようになっているからな。」
「了解っす。
確かに、その人……『オペラオーの前トレーナー』の為にどうしても勝利を届けたかった……ということであれば、色々と納得できますね。」
「あいつらの『次からはもうやりません』って宣言も、『こんなことしなくても勝てるのが分かったんで次のレースからは盛り上げていきまーす』ってところか?チッ……舐められたもんだな。」
「流石にそういうつもりで言ったわけじゃ……」
「無意識で言ってる分、余計に性質が悪いじゃねえか。……しかし、その辺が分かった以上、次のダービーは絶対に落とせねえぞ。」
「師匠……」
「『誰かの為に頑張る』だ?んなモン誰だってそうだろうが。
気に入らねえのは、あいつらが自分を殺していやがった点だ!そんな奴らにトップなんざ取られたままでたまるか!」
「……」
感情を露にする黒沼。
「……俺の身体も、そろそろガタがきてやがるからな。やっぱ自分が一番分かっちまうもんなんだよな……病ってのは。」
「!」
本当は明日にも、入院しちまった方が良いんだろうけどな……と呟き、黒沼が続ける。
「だが、その前にベガをダービーで勝たせるところまでは、きっちり仕事させて貰うぞ。
お前の協力は勿論だが、あのシグマって奴にもトレーニングに付き合わせろ。まだまだブルボンなんかにゃ及ばないが、中々見所ありそうな奴じゃねえか。」
「……あの娘、ウチのトレーニングに付いてこられますかね?正式な入団テストしてからの方が……」
「やる気は感じたんだろ?だったらつべこべ言わず走らせりゃ良いじゃねえか。」
今はそうするべきだし、それにな……と黒沼は笑う。
「ああいう上品そうに見えて、それでいてトップを狙おうとしている奴ってのは、総じて根性据わってるモンだ。」
ーーー
「……先程まで、競技場では『アンタレス』のトレーニングが行われていたようだが?」
「ええ。それでもこれだけは絶対に欠かさないって決めてるんで。」
「辛くはないのか?」
「ないですね。」
ウマ娘からの質問に、大円が応える。
「何より今の俺には、大きな目標がありますんで。不思議と『辛い』とか『キツい』って気持ちにはならないんですよねえ。」
「気持ちの充実か。……だがな……(トンッ)」
「え……あ、あれ?」
不意に軽く押され、よろける大円。
「気持ちによるカバーにも限界がある。キミ達トレーナーがウマ娘達をしっかり見ているのと同じくらい、ウマ娘達の方でもトレーナーを見ているぞ?」
「あら……こいつは一本とられちゃいましたか。」
「少し横になれ。……膝位なら貸してやる。」
「え!?」
「トレーニング直後のジャージで汚れた膝では不満か?」
「いやいやいや!そういう問題じゃ……うわっ!?」
強引に『膝枕』の体勢をとらされ、完全に抵抗の意思を放棄してされるがままになる大円。
「私も姉という立場がそれなりに長くてね……キミのような者を見ると、どうしてもお節介の気持ちが湧いてきてしまってね。」
「あはは……多分俺の方が年上なんすけどね。」
「フフ、強がる体力も残っていないようだな。目が据わってるぞ?」
「……そっすね……
……ダービー、アヤベさんを勝たせたい……まだ、足りない
……まだ、あるはず……何かが…… 探さなきゃ……」
「……頑張っているようだな。」
「え?……って、どういう状況よ、アイツら……」
控え室に戻る途中、トレーニングを終えた音坂とナリタタイシンが、ウマ娘に膝枕されて眠っている大円を見て、一方は納得の表情を、もう一方は怪訝な表情を浮かべるのだった。
次の次位でレースかな