今日の勝利の女神は、横っ面を引っ叩く(更新停止中)   作:R主任

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【作品を読むにあたって】
『ダイの大冒険』のキャラについては、名前を現代風にアレンジしています。
今回の該当者はこちら。
・子岸 中←チウ
・大円 世良←ポップ
・音坂 蹴←ヒュンケル


第40話:一等星の輝き~東京優駿③

ーーー

 

「『言えない』ときたか。」

「はい。確かに子岸が言ってたそうです。」

「……これで1つ分かったな。」

 

『アンタレス』の控え室。

大円の報告を受け、黒沼が応える。

 

 

 

 

「『誰かの為にあれをやった』ってことだな。言うと不味い相手がいるから『言えない』って言い訳は出るもんだ。」

「じゃあ、あの時の走りは……」

「あれを披露して喜ぶ奴がいたんだろう。ベーブルースが難病に苦しみながら手術を怖がってる子どもに『必ずポストシーズンでホームランを打つから手術を受けてくれ』と約束して、本当にホームラン打った……って類のな。」

「なるほど……でも師匠、あいつらにそんな約束をするような相手なんて……」

 

 

 

 

「……1人いる。」

 

黒沼が厳しい表情で告げる。

 

 

 

 

「……今から話すことは絶対に外に漏らすな。下手すりゃ俺らのクビが飛ぶからな。……しかし、それならあの子岸とかいうチビも、随分と甘い野郎だな……無理もないが。」

「え……」

 

ーーー

 

「……そんなことが。」

「表向きは一切公表されていない情報だ。俺も治療や定期検診の頻度が増えなきゃ知らなかったからな。

繰り返すが、こういうデリケートな話は絶対に外に漏らすなよ。不用意に話したら、誰が出所なのか分かるようになっているからな。」

「了解っす。

確かに、その人……『オペラオーの前トレーナー』の為にどうしても勝利を届けたかった……ということであれば、色々と納得できますね。」

「あいつらの『次からはもうやりません』って宣言も、『こんなことしなくても勝てるのが分かったんで次のレースからは盛り上げていきまーす』ってところか?チッ……舐められたもんだな。」

「流石にそういうつもりで言ったわけじゃ……」

「無意識で言ってる分、余計に性質が悪いじゃねえか。……しかし、その辺が分かった以上、次のダービーは絶対に落とせねえぞ。」

「師匠……」

「『誰かの為に頑張る』だ?んなモン誰だってそうだろうが。

気に入らねえのは、あいつらが自分を殺していやがった点だ!そんな奴らにトップなんざ取られたままでたまるか!」

「……」

 

感情を露にする黒沼。

 

「……俺の身体も、そろそろガタがきてやがるからな。やっぱ自分が一番分かっちまうもんなんだよな……病ってのは。」

「!」

 

本当は明日にも、入院しちまった方が良いんだろうけどな……と呟き、黒沼が続ける。

 

「だが、その前にベガをダービーで勝たせるところまでは、きっちり仕事させて貰うぞ。

お前の協力は勿論だが、あのシグマって奴にもトレーニングに付き合わせろ。まだまだブルボンなんかにゃ及ばないが、中々見所ありそうな奴じゃねえか。」

「……あの娘、ウチのトレーニングに付いてこられますかね?正式な入団テストしてからの方が……」

「やる気は感じたんだろ?だったらつべこべ言わず走らせりゃ良いじゃねえか。」

 

今はそうするべきだし、それにな……と黒沼は笑う。

 

「ああいう上品そうに見えて、それでいてトップを狙おうとしている奴ってのは、総じて根性据わってるモンだ。」

 

ーーー

 

「……先程まで、競技場では『アンタレス』のトレーニングが行われていたようだが?」

「ええ。それでもこれだけは絶対に欠かさないって決めてるんで。」

「辛くはないのか?」

「ないですね。」

 

ウマ娘からの質問に、大円が応える。

 

「何より今の俺には、大きな目標がありますんで。不思議と『辛い』とか『キツい』って気持ちにはならないんですよねえ。」

「気持ちの充実か。……だがな……(トンッ)」

「え……あ、あれ?」

 

不意に軽く押され、よろける大円。

 

「気持ちによるカバーにも限界がある。キミ達トレーナーがウマ娘達をしっかり見ているのと同じくらい、ウマ娘達の方でもトレーナーを見ているぞ?」

「あら……こいつは一本とられちゃいましたか。」

「少し横になれ。……膝位なら貸してやる。」

「え!?」

「トレーニング直後のジャージで汚れた膝では不満か?」

「いやいやいや!そういう問題じゃ……うわっ!?」

 

強引に『膝枕』の体勢をとらされ、完全に抵抗の意思を放棄してされるがままになる大円。

 

「私も姉という立場がそれなりに長くてね……キミのような者を見ると、どうしてもお節介の気持ちが湧いてきてしまってね。」

「あはは……多分俺の方が年上なんすけどね。」

「フフ、強がる体力も残っていないようだな。目が据わってるぞ?」

「……そっすね……

 

……ダービー、アヤベさんを勝たせたい……まだ、足りない

……まだ、あるはず……何かが…… 探さなきゃ……」

 

 

 

 

「……頑張っているようだな。」

「え?……って、どういう状況よ、アイツら……」

 

控え室に戻る途中、トレーニングを終えた音坂とナリタタイシンが、ウマ娘に膝枕されて眠っている大円を見て、一方は納得の表情を、もう一方は怪訝な表情を浮かべるのだった。




次の次位でレースかな
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