今日の勝利の女神は、横っ面を引っ叩く(更新停止中)   作:R主任

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【作品を読むにあたって】
『ダイの大冒険』のキャラについては、名前を現代風にアレンジしています。
今回の該当者はこちら。
・大円 世良←ポップ


第41話:一等星の輝き~東京優駿④

ーーー

 

「メディカルチェックはどっちも大丈夫のようだな。」

 

練習を終えたチーム『シリウス』。

北原が、皐月賞を走った二人ークレイジーロデオとホットスフィアーに告げる。

 

「ロデオは……まあ、向こうからも言ってくるだろうが、ダービーに出走で決まりだな。」

「はい。」

 

「さて、スフィアだが……」

 

皐月賞では入着を果たしたロデオに対し、9着と沈んだスフィア。

順当にいけば、共にダービー挑戦……という流れだったが、こういう結果では話が変わってくる。

 

北原の方でも、彼女にどうやってこの先のあり方を受け入れさせるべきか……慎重に告げるべき言葉を考える。

 

 

 

 

「……そもそも、無理に走る必要もないんだがな……」

 

弥生賞、皐月賞ときて、更にダービー。

1ヶ月程度のインターバルで、3度も本気で走るレースに出場を続けることは、想像以上にウマ娘達に負担を強いることになる。

 

「……走るなと言ってるわけじゃねえ。だが、やはり今の段階から無闇にレースに参加する必要は無い、ってことだ。」

「ですが……」

 

ホットスフィアの納得しきれていない様子に、現状における一番の懸念を投げかける。

 

「何より……お前の場合、『心へのダメージ』が残ってるだろ?」

「……っ」

 

 

 

 

先の皐月賞。

彼女は背後からのプレッシャーを意識するあまり、走りを大きく崩した。本番の舞台で得意の逃げを披露できず、実力を発揮しきれずに負けたのだ。

この事実、そしてダメージを、どのようにして払拭するか……

北原は考える。

 

と、スフィアが口を開く。

 

「……目黒杯に出たいです。」

「何……?」

「今回の借り……ダービーでは無理だけど、菊花賞で絶対に返したいから……」

「……なるほど。」

 

自分の走りを取り戻し、且つ長距離に挑んで、先に菊花賞への足掛かりを掴んでおきたい、ってわけか。

あまり『これ』は言いたくないんだがな……北原が口を開く。

 

 

 

 

「……ハッキリ言っておく。オペラオーは、怪物だ。オグリのような、な。」

「!」

「多分、ジュニア級の内は、あいつに勝つのは難しいだろう。」

 

 

 

 

オグリキャップと共に歩んだ、北原本人からの言葉。

『残酷な事実』となって、重くウマ娘にのし掛かる。

 

少しの沈黙の後、だがな……と北原は語り出す。

 

「俺としては、『怪物?そんな連中ウチの奴らがやっつけてやるぜ!』って方が本音でもあるわけよ。」

「チーフトレーナー……」

 

「まずは、お前の言う通り目黒杯で結果を出してみろ。但し、決して侮るんじゃねえぞ?

まずは相手だ、ダービーに出ない奴らにも実力のある連中は幾らでもいる。

何より目黒杯の『2500メートル』を舐めるなよ。」

「はい。」

 

「確かに距離そのものは、ダービーと比べたら100メートルしか違わねえ。だが、その100メートルが全然違うんだ。

G2とはいえ、長距離で本番を走れる機会は中々無いんだ。G1の気持ちでしっかり走って、勉強してこい。」

「はい!」

 

「……そうだな、折角なら『有馬記念』のつもりで走ってみろ。」

「良いですね……何だか燃えてきました。ロデオ!」

「何だ?」

「ダービーは任せた!私の分も、よろしくな!」

「ワタシはワタシの走りをするだけ……だが、その気持ち、確かに受け取ったぞ。」

「……」

 

 

 

 

(メイクデビューでさえ、9名のうち8名が負けるんだ。勝つ奴よりも負ける連中の方が圧倒的に多い世界。

だからこそ、レースに勝ったときよりも負けたときの方が大事なんだよ。その点、こいつらは大丈夫そうだな……)

 

さて、俺もできることをやらねえとな……と、気合いを入れ直し、北原は立ち上がった。

 

ーーー

 

「……何?そこに吊るされている物体は。」

「暫くそっとしておいてくださいな。」

 

 

 

 

チーム『スピカ』控え室の隅っこ。

ロープで縛られて『反省中』の張り紙を貼られた逆さ吊りの物体に、沖野が疑問を呈したところ、紅茶を飲みながらマックイーンが答えた。

 

「先日のレース、最終コーナーからの様子に関して、オミクロンさんにも『領域』が見えていた、とのことでしたので……」

 

ーーー

 

「『見えていた』ということは、あなたにも何らかのものが備わっている。そう考えて間違いないですわね。」

「うん……正直、あそこまで凄いものを見るとは思わなかったけど。」

「ご自身の『領域』がどのようなものかは、まだご存知ないということでよろしいかしら?」

「そう。

できれば私も、自分にどんな力があるのか知りたいんだよね……競技場で走っていても、全然そういう感覚に入れそうにないから。」

「ただ走るだけでは難しいでしょう。あれは競走の中、自らの気持ちを高めることで入ることのできるものでしょうから。」

 

何か良い方法は……と考える二人。

 

そこへ、

 

 

 

 

「おっ、何々?『ゾーンプレス』のやり方か?そりゃおめえ、まずは5人に分身してだなー!」

「……折角ですし、協力してもらおうかしら……」

「うん……」

 

ーーー

 

「オラオラァ!これがゴルシ様の必殺技だ!おそれおののけどよめけ6万の大観衆共!」

「それ実物のロープと錨じゃない!」

 

芦毛のウマ娘が鈍器をぶん回しながら、前を走るマックイーンとオミクロンをハイテンションで追いかけ回していた。

 

「逃げますわよ!」

「どこまで!?」

「そんなもん、アレですわ!」

「アレって何よ!」

「そらそうですわよ!」

「何言ってるのか全然分からないんだけど!」

「いっそのこと、ラッキーゾーンの向こう側でもよろしくてよ!」

「マックイーン!あなたもゴールドシップに隠れてるけれど大概よねえええ!」

 

ーーー

 

「……それ、何の成果があったの?」

「速さと根性を鍛えられた……のではないでしょうか。」

「あとは……反省文を考える賢さ?……どうして私達まで……」

 

沖野の問いに、ペンを動かしながら答えるマックイーンとオミクロン。

 

 

 

 

……競技場内で錨をぶん回しながら走り回るゴールドシップの様子は、早々に警備担当者へと通報の連絡がなされ、当事者の3人はエアグルーヴから説教の上、反省文の宿題を課せられることになった。

 

 

 

 

「アタシ、この状態だと反省文書けないからさー、沖野ー、代わりに書いてくれよー。」

「それじゃ反省文の意味無いだろうが……」

「じゃあ、今から信号送るからその通りに頼むぜー。ツーツーツー、トントントン、ツーツーツー、」

「SOSとか送る前にきちんと反省しろ。」

「そんなー。この神様仏様ゴルシ様ともあろうものが、こんな罠にハマって……」

「「「自業自得だ。」」」

 

 

 

 

「……次も頑張ろう。」

「どうしたの?ミリオン、入り口で。」

「チケゾー先輩……いえ、ウチのチームはどんな時もウチのチームだな、と。」

「なんだそりゃ?」

 

ーーー

 

「……あ、あの……アヤベさんのチームのトレーナーさん……ですよね?」

「……えーと、君は確か……『カノープス』の、メイショウドトウさん、で合ってる?」

「は、はいぃ~。知ってていただいて光栄ですぅ~」

 

 

 

 

競技場。

訪れていた大円に、間延びした口調で話し掛けたウマ娘がいた。

 

「アヤベさん……ってことは、彼女の友達?」

「え、えーと、アヤベさんはそうは思っていないかもしれませんが、私はそう思ってくれていると嬉しいな、なんて……」

「あはは。」

 

気弱そうな娘だな……と思いつつ、そんな娘がどうして自分に話し掛けてきたのか。大円はドトウからの次の言葉を待つ。

 

「あの、私が本日、あなたにお伝えしたいことは……」

「?」

 

「わ……」

「わ?」

 

 

 

 

「私もオペラオーさんに挑みますううう!!!」

「……へ?」

 

突然の宣言、それもベガではなく、オペラオーに対する。

呆気にとられる大円。

 

「……えーと、確認させてもらえるかな?」

「ふぇ?は、はいぃ!」

「次のダービー、ドトウさんは出走するの?」

「出ません!」

 

 

 

 

ずっこけそうになるのを我慢する。

 

「そ、それじゃあ、君がオペラオーに挑戦するのは……」

「今はまだ無理かもしれませんが、きっと一緒に走れるよう、頑張ってます!」

「あー、なるほど。つまり君が言いたいのは、『私もオペラオーさんに挑めるように頑張るから、アヤベさんも頑張って』ってことで合ってるかな?」

「その通りです!」

「……」

 

何だよそのドヤ顔は……と思いつつ、大円は続ける。

 

「あ、でもでも、頑張ってほしいのはアヤベさんだけじゃなくて、今度のダービーでオペラオーさんと走る皆さんと、そのトレーナーさんやチームの皆さんにも、ですので!」

「ああ、了解。ありがとう。」

「あ、それだけじゃなくて!」

 

……この娘、一度走り出したら止まらないタイプか。

当初とのテンションの違いに圧倒される大円。

 

「オペラオーさんの友達として、次のダービーではこの前みたいなことにはなってほしくなくて!」

「この前……皐月賞のこと?」

「はい!走り終えた時のオペラオーさんの顔、結果に満足していない時の顔でした!」

「……友達だから分かったのかな?」

「はい!……あ、でも、友達というのはひょっとしたら私の一方的な思い込みで、オペラオーさんの方は確かに友達と言ってくれたことはあっても、もしかしたらそう思っていないかもしれなくて……」

「大丈夫。」

「え?」

「俺達もオペラオーのことは知ってるから。彼女が君のことを友達と言ってくれたのであれば、間違いなく君は彼女の友達だ。」

「ほ、本当ですかぁ!?」

「うん、間違いないよ。」

「す、救いは……救いはあるんですね……!」

 

そんな大袈裟な……と大円は思うも、ドトウの満たされた顔があまりに純粋すぎた為、彼女がトリップから戻ってくるのを待つことにした。

 

 

 

 

「……ハッ!?あ、アヤベさんのトレーナーさん……」

「はい、アヤベさんのトレーナーっすよー。」

「あ、ええと、つまり私が言いたいことは!オペラオーさんの為にも!今度のダービーは最高の勝負になってほしくて!私も絶対にみんなに追い付いてみせますので!」

「……ありがとう。」

「す、すいません!何だか出過ぎた真似を!」

「大丈夫大丈夫。」

 

ーーー

 

(……友達にとっても、あのレースの様子はおかしいと心配に見えた……ってことだよな。)

 

ドトウが去った後。先程までの会話を思い返す大円。

 

 

 

 

(あれだけ親身になってくれるような友達を持つような娘が、悪人である筈がない。そんな者が、周囲に心配されるようなことをしでかしてしまったら……)

 

大円の頭の中で、『手がかりの欠片』が徐々に集まってくる。

 

(……見えてきたぞ!『勝ち筋』が!)




もうすぐ10万字に迫るというのに、主人公がメイクデビューすらしていないってどういうことなの……
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