今日の勝利の女神は、横っ面を引っ叩く(更新停止中)   作:R主任

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【作品を読むにあたって】
『ダイの大冒険』のキャラについては、名前を現代風にアレンジしています。
今回の該当者はこちら。
・大円 世良←ポップ
・子岸 中←チウ
・音坂 蹴←ヒュンケル

レース前に5000字オーバー。
レースは前後に分けましょうかね、こりゃ。


第43話:一等星の輝き~東京優駿⑥

ーーー

 

チーム『アンタレス』では、『ポルックス』のアグネスタキオンとライスシャワーによる協力の下、アドマイヤベガは特訓に励んでいた。

既にトゥインクル・シリーズからドリームトロフィーカップに進んでいる2名の走りは、やはり並のウマ娘達の比ではない。

 

「相手のペースに乗せられるんじゃねえぞ!あくまで自分のペースと仕掛けどころを見誤るな!」

「分かってる!分かってる……けど……!」

 

 

 

 

「おいてく……おいてく……!」

「さて、前のペースはライス君に任せて、私はアヤベ君の走りをじっくりと観察させてもらおうかな?」

「併走しながら言うことじゃないでしょ!」

「おおっと失礼。では、ライス君に追い付くとしようか!」

「なっ……!」

 

ライスシャワーのペースに追い付いたアグネスタキオン。それを見て、怪訝そうにライスが話しかける。

 

「あれ?タキオンさん……前で良いの?じゃあ、ライスがアヤベさんの方まで下がる?」

「キミに差す走り方は難しいだろう。オペラオー君が先行と差し、どちらの作戦をとるか分からない以上、私がオペラオー君の役割を担わせてもらう!ライス君は今の感じで続けてくれたまえ!」

「う、うん、わかった!おいてく……おいてく!」

 

前を行く二名の圧が増すのを、アドマイヤベガが感じとる。

 

「くっ……負けない!」

 

 

 

 

「……本気ではないようですが、あのアグネスタキオンのペース……乗せられると非常に危険です。私もこれまで、レースでテンポを乱されることがありました。」

「単純な『仮想オペラオー』を模倣するならば、アヤベさんへの『ささやき』といい、あそこまでやる必要は無いようにも思えるが……」

「……まあな。ただ、あれはあれで意味がある。……というか、愉快犯的にやって引っ掻き回してるなら、俺が首根っこ掴んでポルックスに怒鳴り込んでるところだ。」

 

黒沼と共に、練習を見守るミホノブルボンとナイトシグマ。

彼女らの感想や疑問に、黒沼が答える。

 

「ダービーで相手をするのはオペラオーだけじゃねえ。それこそ最高峰まで仕上げてきた18名が、しのぎを削るレースだ。何が起こってもおかしくないからな。」

「ダービーを『最も運の良いウマ娘が勝つレース』と言うのは……」

「どいつも実力があるのは分かりきってる。

その中で実力を正しく出し切る奴がどれだけいるのか……そこで、ふるいがかけられるわけだ。

更に、そいつらの中で1着を決めるならば……まあ、勝利の女神が微笑んだ奴か、もしくは『運』としか例えようがねえよな、そりゃ。」

 

んで、何の話だったか……と、黒沼が続ける。

 

「アグネスタキオンがさっきから披露している走り、ありゃオペラオーの動きだけじゃねえ。『オペラオーと共に生じうる動き』まで一緒に演じてやがるぞ、ありゃ。」

「あれだけの走りをしながら、そんな余裕まで……」

「……大円の野郎、ポルックスに変な貸しとか作っていなきゃ良いんだがな。」

 

想像以上の助っ人を連れてこられたことに、猜疑心さえ生まれてしまう黒沼。

 

「では、ライスさんの役割は……」

「スピカのスペースミリオン達も、皐月賞以上に仕上げて参加してくる筈だ。オペラオーに執着するあまり、他の奴に勝ちをかっさらわれても困るからな。」

「様々なレースの状況を想定、更にその上での『平常心』の強化……」

「ああ。運を掴んだところで、浮き足だってそれをみすみす手放しちゃ意味がねえ。とにかく潰せる要素は全て潰すまでだ。

……おら、どのタイミングでスパートに入るのかをしっかり体に叩き込め!

お前の末脚ならばオペラオーにも必ず勝てる筈だ!」

 

黒沼のチェックの下、ライスシャワーが先行、アグネスタキオンが先行もしくは差しの走りで、アドマイヤベガの特訓は繰り返し行われていった。

 

ーーー

 

「お疲れ様です。」

「おや、気が利くじゃないか。」

 

「どうぞ。」

「ありがとう、ブルボンさん。……えへへ、何だかこういうのも久し振りだね。」

 

「アヤベ、今日はここまでだ。」

「いえ、私は……」

「本番までは極力オーバーワークは避ける。お前……いや、俺らには『前科』があるからな。」

「……分かりました。」

 

特訓後の休憩時間。

メンバーが思い思いにクールダウンを行う。

 

「あ、そういえば……大円さんは?」

「あいつはお前達のトレーナーの所に行かせた。ちゃんと礼を言うまで戻ってくるな、ってな。」

「……なるほど。彼が中々こちらに姿を見せないのは……」

「ああ。あいつなら最後にゃきちんとやることやるだろうが、踏ん切りつけるまでにどれだけかかるか……だな。」

「……お話、聞くチャンスだったのにな……」

「お話?」

「あ、いえ。何でもないです!」

 

含みを持たせるライスに怪訝な顔を見せる黒沼。

 

「まあいい。折角の機会だ、ブルボン達と走っていくか?」

「え!ブルボンさん、もう走って大丈夫なんですか!?」

「治ったばかりなんだから、怪我だけはさせんなよ。」

「マスターの承認を確認、共同ミッションを開始します。

シグマ、あなたも来ますか?」

「私では力不足かもしれないが、偉大な先輩方の申し出ならば断る理由は無い。」

「面白そうだ、私も混ぜてくれるかい?……ウチのテイオー君も、ああ見えて素晴らしい素質を持っているのでね。」

「……簡単に私のデータがとれるとでも?」

「そう言われると、俄然興味が沸いてくるよねえ。」

 

 

 

 

(……あの優男の力を借りると言うのは少し癪だが……俺の花道としては、上々の結果になるかもしれねえな。)

 

ダービーでの最高の結果を夢想しつつ、黒沼は笑みを浮かべた。

 

ーーー

 

「不審者がいたよ!ツーホーしちゃおうか!ツーホー!」

「……勘弁してください。」

 

ポルックスの控え室。

入り口の付近で踏ん切りがつかずに挙動不審になっていたところ、大円はトウカイテイオーに捕獲されていた。

 

「……何時間位迷ってたんだ?」

「……流石に30分くらい……って何言わせるんすか……」

「黒沼さんにはちゃんと謝っておけよ。」

「トウカイテイオー……さん?」

「テイオーで良いよ!で、どうしたの?」

「手、離して貰って良いっすか?」「どうして?」

「何処か遠くへ行きます……」

「ダメだよー!ボクのトレーナーに用事があるなら、それをきちんと済まさなきゃ、本当に不審者としてツーホーしちゃうよ!」

 

『こういう娘なんすか?』

『そうだな。だとすれば、分かるだろう?』

『……っす。』

 

アイコンタクトをとる大円と音坂。

 

「じゃあ……テイオーちゃんに免じて。この度はチームへのご協力、ありがとうございます!」

「……俺も黒沼トレーナーに免じて、どういたしまして、と言っておこうか。」

「トレーナー!本当にこのヒト、不審者じゃないの?」

「ああ。『アンタレス』のサブトレーナーだ。」

「『アンタレス』……あー!!!」

 

テイオーが大円を掴んでいた手を離し、指を突き付ける。

突然の大声に、大円は思わずテイオーの方を向いた。

 

「『アンタレス』って、この前シグマが入ったチームじゃん!」

「シグマのこと、知ってるのか?」

「当たり前だよ!入学式の日にワガハイに挑んできたミノホドシラズめ!

絶対に今度のレースでギャフンと言わせてやるから覚悟しておくのだー!」

「お、おう……。」

 

テイオーの突然の宣言に狼狽えつつも、そのリアクションに和んでしまい表情を緩めてしまう大円。

 

「何だよー!この無敵のテイオー様に対して失礼ではないのかコイツメー!」

「ああ、ごめんごめん。」

「……あまり俺の後輩を困らせないでくれるか。」

 

「トレーナー……え?『後輩』?」

 

音坂の口から放たれた『後輩』という単語。

 

 

 

 

「『アンタレス』のトレーナー殿!このボクに……ぴえっ!?」

 

『音坂トレーナーの話を聞かせる権利を与える』……と、言おうとして……テイオーが凍りつく。

大円も、『どうしたの?』と聞こうとして、テイオーの表情を見て発言を中断する。

 

 

 

 

……背後から、凄まじい視線とプレッシャーを感じた。

今、振り向いてはいけない……大円の本能が警告を鳴らしていた。

 

 

 

 

「どうした?二人とも。」

「いえ、何でもありません。」「別に。」

 

音坂の声と、それに答える2つの声に、大円は振り返った。

穏やかそうな表情のサイレンススズカと、仏頂面のナリタタイシンを見て、『さっきのは気のせい』と頭を切り替える。

テイオーはまだ固まったままであったが、一旦忘れることにした。

 

 

 

 

「お前、今から他に予定はあるか?」

 

音坂が訪ねてきた。

 

「いや、あとは戻るだけっすけど……」

「じゃあ、見に行くぞ。」

「へ、どこへっすか?」

「決まってるだろう。」

 

大円の疑問に音坂が答える。

 

 

 

 

「『レグルス』だ。」

「……はぁ!?」

 

ーーー

 

『レグルス』を訪ねた音坂と大円。

 

控え室には不在で、心当たりのある場所を回った結果、思わぬ場所でチームは活動を行っていた。

 

「おおっ!あなた方は確か『ポルックス』と『アンタレス』の!」

「俺はともかく、良くこいつのことを知っていたな。」

「当然です!何たって私、学級委員長ですから!」

 

商店街で清掃ボランティアを行いながら、サクラバクシンオーが音坂の問いに答える。

『地域の皆さんのお役に立つことも、また勝利に繋がるバクシン的近道です!』という、冷静に考えると意味が通っているのか疑問ではあるが、そんな鶴の一声が採用され、定期的にレグルスは商店街で清掃活動を行っていた。

 

 

 

 

「……俺ら、何で手伝ってるんですかね?」

「やらない理由も無いからな。」

「そりゃそうっすけど……」

「おお、大円、と……お前は!?」

 

 

 

 

成り行きでボランティアに参加する音坂と大円。

そこに、子岸が気づいて話しかける。

 

「久し振りだな、子岸。」

「音坂……大円!お前はともかく、何故こいつがここに!?」

「後輩の様子を見に来た……では、駄目か?」

「フン!何か他にも理由があるのだろう?」

 

音坂に対し、警戒心を持って対応続ける子岸。

そこへ。

 

「わー!カッコいい人だ!」

「ターボくん!この男に近づいては駄目だ!近づいたら最後、心を奪われてしまうぞ!」

「ええー!」

「……全く。」

(……あながち間違っちゃいないんだけどな、それ。)

 

音坂に近づこうとするツインターボに注意をする子岸。何を言っているのだ、という呆れ気味のリアクションの音坂に、内心突っ込みを入れる大円。

 

 

 

 

「……覇王たるこのボクの輝きに勝るとも劣らない、円卓に選ばれし者達が、今日はどういった用件かな?」

 

ジャージ姿でゴミ袋とトングを持ちながらも、普段の口調でテイエムオペラオーが二人に話しかけた。

 

「いやあ、これは成り行きと言いますか……」

「否!例え成り行きであっても真剣に無償の奉仕活動に取り組めるその姿!決してボクら『覇王華激団』のメンバーにも負けることのない光を放っているぞ!もっと胸を張りたまえ!」

「その点に関しては心から同意するぞ!二人とも感謝する!」

「あはは……」

 

オペラオーと子岸の思わぬ賛辞に押される大円。

一方で、

 

「感謝はそのまま受け取らせてもらおう。では、こちらからも君達に伝えておきたいことがある。」

「何かな?」

 

音坂がオペラオーと子岸に告げる。

 

 

 

 

「今度のダービー、『ポルックス』と『アンタレス』は、共同で君達『レグルス』に挑ませて貰う。」

「「!!!」」

「『宣戦布告』、という奴だ。」

 

 

 

 

音坂の宣言に対し、大円さえもが一瞬言葉を失う。

 

 

 

 

「1つ確認なのだが。」

「何だ?」

「君達の代表は、アヤベさんということで合っているかな?」

「ああ、そうなるな。」

「そうか……クックック……ハッハッハ……」

 

オペラオーがこらえきれないといった様子で笑い出す。

 

 

 

 

「ハーッハッハッハッハ!!!

聞いたかトレーナー君!学園でも最高峰の実力を備える一等星達が、このボクに対して全力で試練となって立ち塞がろうとするとは!」

「ああ!まさかボクらの遥か先を進んでいる筈の先輩が、早速大きな壁になるとは思わなかったさ!」

「ならばトレーナー君!ここまで強固な壁、どのようにして乗り越えよう?トロイの木バは生憎持ち合わせていないぞ!?」

「当然だ!正面から乗り越えるまで!」

「その通り!正面突破こそが最短にして最良の在り方だ!勝利の報告も『来た!見た!勝った!』位が丁度良い!全てを蹴散らし、覇王として君臨するぞ!」

 

ここまで言ったところで、素のテンションに戻るオペラオー。

 

「……だが、まずはその前に、今日すべきことを協力してやりきろうか!

二人とも最後まで清掃を手伝ってくれるね!」

「当然だ。」「りょーかい。」

 

 

 

 

大声でのやり取りは、商店街中に響き渡っていた。

そして、きっちり最後までボランティア活動をやり遂げる皆の様子を、多くの暖かい目が見守っていたのだった。

 

ーーー

 

「これで、『もやもや』は晴れただろう?」

「そりゃ、まあ……」

 

『今日は協力してくれてありがとう!』と、とても敵対の立場をとったとは思えない様子でレグルスと別れた後、音坂が大円に語る。

 

「お互いに遠慮は要らん。最後まで全力でぶつかっていけ。」

「……本当、お節介っすね、あんたって。」

「そりゃあな。」

 

少なくとも立場の面において、隠し事無しで正面からレグルスにぶつかることができる。

その事実に安堵する一方で、それを先導したのが音坂というのが、大円の感情的にはもやもやとして残るのも無理はなかった。

 

 

 

 

「……今日お前が会った、トウカイテイオー。

あいつはこの先、必ずトップに名乗りを上げることになる存在だ。」

「!」

「お前も、必死でついてこい。学園の看板を背負ってやっていくならば、な。」

「……」

 

まだまだ追いかける立場であって、並び立てるような立場ではない。

それを理解した上で、大円は言わずにはいられなかった。

 

 

 

 

「上等っすよ……」

「ほう?」

「いずれ、必ずあんたを越えてやるからな!見ててくださいよ!」

「……楽しみにしているぞ。」

 

5月の末日。

一生に一度の栄光を賭け、ウマ娘達が東京優駿に挑もうとしていた。




ライスのおいてくおいてくを思い付く俺は今日も元気に根性因子⭐1をゲットする

そして日本ダービーで東京優駿……改めてややこしくね?とか思わずにいられなかった
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