今日の勝利の女神は、横っ面を引っ叩く(更新停止中)   作:R主任

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【作品を読むにあたって】
『ダイの大冒険』のキャラについては、名前を現代風にアレンジしています。
今回の該当者はこちら。
・音坂 蹴←ヒュンケル
・大円 世良←ポップ
・子岸 中←チウ

全く想定していなかったキャラを参戦させることになろうとは


第46話:一等星の輝き~東京優駿⑧

ーーー

 

「……い、いきなり何を……」

「オペラオーさん、さ、さすがに初対面の方をヘッドハンティングというのは……」

「……ふむ。」

 

オペラオーの『引き抜き』宣言に、狼狽えるベガとドトウ。

その様子を尻目に、シグマが答える。

 

「良いだろう。」「!あなた、何を……」「問題ない。その約束、受けようじゃないか。」

 

余裕ありげなシグマに、笑みを浮かべるオペラオー。

 

「キミ、それだけ信頼しているのかい。アヤベさんのことを。」

「……貴殿の方こそ、私の考えをきちんと理解しているじゃないか。」

「え、えー……?」「……シグマ、あなたも意外とクールじゃないところがあるのね。」「はえ~……?」

 

ひとり、状況を飲み込めていないドトウに、オペラオーが説明する。

 

「……このシグマ君、どうやらレースでアヤベさんの勝利を、心の底から信じているようだ。」

「!……あ、そうか。アヤベさんが勝てばそのままですもんね!」

「……私が勝っても見返りが無いんだけど?」

「そうだな……確かに不公平かもしれない。」

 

ベガの指摘に、シグマが考える素振りを見せる。

 

「アヤベ先輩が勝利した場合……そうだな、レース後に伝えさせて貰うとしようか。」

「すまないね。……だが、勝つのはボクだ。キミに金槌を振るうような真似は似合わないんじゃないかな?」

「何、時にはそういった時間の浪費というのも、必要なものだ。もしあなたが勝っても、その責任はシャンパンの泡にでも取らせるとしよう。」

「ははは!キミも言うじゃないか!その姿、こうもりとは全くもって程遠いというのに!」

 

オペラの一節を用いて会話のキャッチボールを行うオペラオーとシグマの様子を見て、完全に目が点になっているドトウ。

一方で、『この娘、やるわね……』とシグマに妙な感心をするベガ。

 

「シグマ……あなた、あのノリに良くついていけるわね……。」

「我が『キサラギ』の教育の賜物、とでも思っていただければ幸いだ。」

「ふうん……オペラって、私達でも楽しめるものなのかしら?」

「歌劇に興味があるならば、まずはオペラよりもミュージカルから見てみると良いだろう。『サウンド・オブ・ミュージック』や『メリー・ポピンズ』などは誰にでも楽しめる筈だ。」

「あ、メリー・ポピンズって、傘を持って空を飛ぶ人ですよね!私、小さい時に真似してみたんですけど、結局そのまま飛べずに落っこちちゃいました!」

「ドトウ……」「……まあ、気持ちは分かるが……」

 

「それにしても……クックック、とてもレース前の空気とは思えないな、これは!」

 

オペラオーの言葉に、我に返る一同。

 

「まあ、良いわ。今日のレース、私が勝たせてもらうわ。シグマの為にも……」

「……言わずとも分かるさ。『キミが勝利を報告したい全てのもの』に誓って、全力で来ると良い。

そして、それでも……勝つのはボクだ。」

 

一瞬で、空気が真剣なものへと変化する。

 

これ以上は誰も言葉を告げぬまま、ベガとオペラオーはパドックへ。シグマとドトウは地下バ道から、レースが始まるのを見守るのだった。

 

ーーー

 

『晴れわたる空の下、ここ東京レース場に今年も18名のウマ娘達が終結しました!栄光のダービーウマ娘となるのは、果たして誰でしょうか!』

 

 

 

 

 

「東京レース場ってすぐ近くなんだし、今からでもゲンチシューゴーしない?ねーねー。」

 

前回の皐月賞の時と同様、『ポルックス』の控室にあるテレビの前でくつろぎつつもぶーたれている、トウカイテイオー。

 

「大体、タキオンさんやライスさんは、この前までアンタレスのキョーリョクスケットだったんでしょ?一緒にレース場で応援すればいーじゃん!」

「え、えっと、テイオーちゃん……そのことなんだけど。」

 

ライスシャワーが、今回テレビ観戦の理由について口を開く。

 

「お兄様が『本番で余計なプレッシャーをあいつらに与えることもない』って……」

「何じゃそら。」

「ライスさん、そのことなんですが……」

 

テイオーのリアクションを横に、サイレンススズカが口を挟む。

 

「『あいつら』ってトレーナーさんは言ったのよね?」

「は、はい。ライスの勘違いだったらごめんなさい……」

「私も一緒だったし、大丈夫。」

「アイツの言葉に、何か変なところでもあるの?」

 

ナリタタイシンの言葉に答えるスズカ。

 

「ライスさんとタキオンさんは一緒だったから覚えていると思うけれど……トレーナーさんが言ってるのはきっと皐月賞の時の、アンタレスの大円さんのことだと思うの。」

「『日本ダービーでは絶対に1着をとってやる!』って言ってたっけねえ……負けたら彼に、トレーナー君の過去を余すことなく語ってもらうんだったっけ?クックック……」

「え、何それ!」

「……まあ、そんな約束してるんじゃ、確かにプレッシャーになるのは間違いないかもね。」

「ええ。それで、『あいつ』なら分かるんだけれど……」

 

スズカの引っ掛かりにライスが意見を伝える。

 

「ええと、お兄様が言ってるのは、『アンタレス』のみんなのことじゃないかな……?」

「最初は私もそう思ったのだけれど……アヤベさんやチームのみんなにとって、トレーナーさんの応援って果たしてプレッシャーになるかしら?」

「ふむ。言われてみれば……確かに妙ではあるね。」

 

アグネスタキオンがスズカの意見に同調し、続ける。

 

「トレーナー君をプレッシャーに感じるような相手が、あのアンタレスのサブトレーナー君以外にもいるんじゃないか。キミはそう言いたいわけだ。」

「ええ。」

「と、なると……なるほどなるほど。これは何とも彼らしい配慮かもしれないねえ。」

「え、タキオンさんには誰か分かったの?」

「推測の域だがね……」

 

タキオンが『ら』の正体について解説する

 

「おそらく、『レグルス』のトレーナーのことだろう。彼も、トレーナー君の後輩との話だからねえ。」

「そういえば、一度お兄様直々に、レグルスさんには宣戦布告に言ったって……」

「バクシンオーが騒いでいたね、そういえば。……自分で原因作っておいて、いざ本番でプレッシャーをかけたくないとか、本当何考えてんだか、アイツは。」

「でも、トレーナーさんらしいです……」

「我々としては、アンタレスのサブトレーナー君にはプレッシャーをかけてもらった方が有り難いんだけれどねえ……ククク。」

 

そこへ、遅れて音坂が入室する。

 

「すまない、溜まっていた仕事を片付けていてな……」

「今、丁度レースが始まる直前です。」

「そうか。」

「トレーナー!やっぱりボク達もレース場に……」

「ほら、昼食だ。今日レース場に連れていってやれなかった詫びも込めて、普段よりも少し豪勢にしておいたぞ。」

「「「「「わーい!」」」」」

 

お弁当を通じて、ポルックスのメンバーの心が1つになった瞬間であった。

 

ーーー

 

『さあ、全員がゲートインしました!

今日の主役は何といってもこの娘!皐月賞を制しクラシック二冠に挑む、テイエムオペラオー!

それを阻止し、ダービーウマ娘となるウマ娘は果たして現れるのか!いよいよ、出走です!

 

……スタート!さあ、全員がキレイなスタートをきりました。注目のテイエムオペラオーは……おっと、今日は皐月賞の時とは違い、前方の集団だ!』

 

 

 

 

『先行ですって!?』

『皐月賞では後方からのレースだったはずじゃ……!?』

『不味い、作戦が……!』

 

 

 

 

「……まあ、こうなるよなあ。」

「フン、想定内ってか?」

 

レース開始直後から、オペラオーの走りの様子に明らかにペースを乱したとみられるウマ娘が、早々に見てとれていた。

それを見ながら、北原と黒沼が言葉を交わす。

 

「良く言う……お前のところのアドマイヤベガも、全く動じてないようじゃねえか。」

「そりゃそうだろ。むしろ、アレに動じてる奴は……」

 

 

 

 

「……おハナさんの言った通りだな。」

「え、あれってトレーナーが考えた作戦じゃないの!?」

「いや、作戦は勿論、俺がミリオンやみんなと一緒に考えた通りだ。」

 

ウイニングチケットの問いかけに、沖野が答える。

 

「ただ、きっかけを教えてくれたのはおハナさん。『皐月賞のオペラオーは撒き餌、今日はホープフルの時のような、オペラオー本来の走りに戻してくる』ってね。」

「それを鵜呑みにしたんですの!?」

「はは、流石に考えなしに鵜呑みにしたわけじゃないさ。俺も色々考えてみたんだけど、結果としては間違いなさそうだ、とね。」

 

ーーー

 

『さあ、集団が第1コーナーから第2コーナーを抜けていく!……おっと、早速集団が大きく開いていくぞ!?4番、少し前に出過ぎか!?後方の集団も、ペースを掴めていない様子のウマ娘がなんにんもいるようだ!』

 

『アヤベさんに、ミリオン君…あとは、ロデオ君かな?

流石にキミ達は、ボクの【仮面】を見抜いていたようだね!』

 

明らかに皐月賞の時とは異なる走りをオペラオーが見せたことで、『皐月賞のオペラオー』を見据えていたウマ娘や陣営は、この時点で『脱落』したも同然であった。

その一方で、今回の走りを想定していた者達は、大きく動じることなく序盤から自分の走りに徹していた。

 

『皐月賞の時から【変わっている】……んじゃない。【戻っている】んだ!』

『顔付きも、雰囲気も、明らかに前回と違う……これが、本来のオペラオーというわけですね。』

『トレーナー、みんな……ありがとう。これなら、いけるかもしれない……!』

 

ライバル達の様子に内心で敬意を表しつつ、オペラオーは更に集中力を高めていく。

 

『キミ達ならば、きっと革命下であろうと正しい道を進めるだろう。

だが……銃士として、その手で本物の王を救い出し、平和をもたらすにふさわしい力が果たしてあるのか……

ここからが、本番だよ!』

 

ーーー

 

「……オペラオーもクラシック級。それ以上に、あの子岸ってトレーナーだな。あいつ、ルーキーなんだよな?」

「ああ。……皐月賞の後の言葉も、ありゃリップサービスやパフォーマンスなんかじゃねえ。紛れもない、奴の本心だ。」

「腹芸できないような真っ直ぐな奴だから、ルーキーにも関わらずあんなにウマ娘達に慕われてる、ってことだからな。

……あ、それじゃあ俺ってやっぱり……」「知るか。」「えー。」

 

北原に対し、まあ実際こんなんでも確かに凄い奴だからな……とは口にしない黒沼。

 

「……まあいい、だが、ここまではあくまで第一関門を突破したに過ぎん。あとは、あいつらがどれだけ力を発揮できるか……」

 

第2コーナーを抜け、長い直線からの高低差のある坂道を集団が駆けていく。

既にペースの乱れたウマ娘数名が、集団から大きく取り残され、ひとり、またひとりと脱落していく。

その一方で、前を走る集団は引き続き、非常に速いペースを保っていた。

 

ーーー

 

「……すげえ……」

 

レースも中盤に差し掛かろうかという状況。

大円が思わず呟いていた。

 

「こんなの、誰が勝つかなんて分かるわけねえじゃん……」

「そうですね。みんな、本当に強い……」「あの黒い格好の娘……下手すりゃこのままいっちまうぞ。」「え?」

 

想定外の大円の言葉に戸惑う葵。

 

既に脱落した者達も見受けられる中、先頭集団とそれを追うグループには、この日の有力候補達が健在であった。

一方で、その流れに食らいついている者達も……

 

 

 

 

「『キンイロリョテイ』だと?」

「……アイツ、そういやクラシック級か、今。」

「知っているのかしらゴールドシップさん?」

 

『スピカ』陣営でも、集団の一角にいるノーマークのウマ娘に皆が注目していた。

 

「ああ。アタシが『埋め損ねた』奴だな。」

「埋め損ねた、って……」

「何つーの?あれ、このままだときっと1着でゴールしちまうぜ?」

「!」

 

ゴールドシップのあっけらかんとした一言に、皆が驚く。

 

「ミリオンさんやオペラオー達ではなく、彼女が1着を獲る……ってこと?」

「まあなー。ただ……」

「……あれ?でも、あの娘って確か……」

 

ウイニングチケットがふと考え出し、ハッとする。

 

「そうだ!あの娘、いつもはもっと後ろにいなきゃおかしいんだ!」

「後ろ……つまり、差しや追込ってことか?」

「うん!アタシも何度か一緒に走ったことがあるから!でも、何で今日はあんなに前にいるんだろ?」

「……どうしても、譲れないものがあるんだろ。勝敗の枠を越えて。」

「え?」

 

ゴールドシップの言葉に、皆がきょとんとする。

 

「アイツ……ダービーの大舞台で、とんでもないことをしようと考えてやがるんだ。アタシには分かるぜ……そう、勝ちを捨ててでもすんげーことをしようとしてやがる……」

「……」

 

 

 

 

(いや、仮にもG1のレースで、勝つこと以上に大事なことって何……)

 

スピカの皆がそう思った。

 

ーーー

 

「……『世紀末覇王』だと?笑わせてくれる……!」

「(え……?)」「何……?」

 

先頭集団の前方から、キンイロリョテイが、振り返って大声で叫ぶ。

前代未聞の行為に戸惑うミリオンと、流石に反応せざるを得ないオペラオー。

 

 

 

 

「『世紀末』は……『ウマトラダムス』の予言こそが絶対に決まっているだろうが!」

「 」

 

オペラオーさえも、リョテイから続けて放たれた言葉に、相手をすることを放棄した。

 

「世界は混沌に包まれる!だが、それは世紀末覇王の手によるものではない!恐ろしい者が突如として降臨し、この世を終わらせてしまうのだ!そして、そこから新たなる世界が生まれていく……これこそが正に世紀末!」

「……」

「どうした!?このままでは世紀末覇王の時代は来ないぞ?何故なら、今日勝つのはわた……」

 

 

 

 

『レースも中盤!ここで快走を続けてきたキンイロリョテイが下がっていく!』

 

 

 

 

「……そりゃ、レース中にあれだけ全力疾走しながら喋り続けたら……」

「一方的に喋ってただけで他の皆は相手してなかったみたいだし、あっても彼女へのペナルティ位かしら?」

「確かにゴールドシップの言った通り、真面目に走ってれば勝ってたかもしれないね……」

 

『喋りすぎ』という理由で息を切らせて失速するリョテイに、スピカの一同が呆れた様子でリアクションをとる。

 

「……ただ、あんなんが斜め上の効果を生んじゃったりするんだなー、これが。」

「何を言って……え?」

 

先頭集団の空気が、目に見えて明らかに変わっていた。

 

「『勝ちたい』って気持ちだけは、皆に置いてっちゃったみたいだからなー。こういうのを力に変えちゃう奴が、今日は案外勝っちゃったりして。」

 

 

 

 

『残り1000メートルを通過!さあ、大ケヤキを越えていよいよ第3コーナーへと差し掛かる!

これは早いペースだ!レコードが生まれるか!おっと!ここで仕掛けたのは……クレイジーロデオか!さあ、誰がコーナーを回って前に躍り出るでしょうか!』

 

『勝つのはワタシだ!』

『自分の走りを貫く……!』

『最後まで……そう、最後まで……!』

『負けない……みんなにも、ボク自身にも……!』

 

コーナーを抜け、立ちはだかる525メートルの直線と、2メートルの坂道。

最初に乗り越え、ゴールを駆け抜けるのは誰だ。




『ウマトラダムス』というワードをホーム画面で見てしまった結果、こんな流れに。
大ケヤキを超えてからの展開は次回に持ち越し。
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