今日の勝利の女神は、横っ面を引っ叩く(更新停止中) 作:R主任
『ダイの大冒険』のキャラについては、名前を現代風にアレンジしています。
今回の該当者はこちら。
・音坂 蹴←ヒュンケル
・大円 世良←ポップ
・子岸 中←チウ
キンイロリョテイさん、カノープス入り決定。
ーーー
『残り1000メートルを通過!さあ、大ケヤキを越えていよいよ第3コーナーへと差し掛かる!
これは早いペースだ!レコードが生まれるか!おっと!ここで仕掛けたのは……クレイジーロデオか!さあ、誰がコーナーを回って前に躍り出るでしょうか!』
レースは、類を見ない程のハイペースで終盤にもつれ込んでいた。
但し、それを形成する集団の中には、既に限界を越えている者もいて……
『第3コーナーを回って……おっと!前を行く12番が大きく外へ投げ出される格好になった!集団の方も、これは随分と横に膨らんだ様子を形成しているぞ!』
「……良く頑張った……と、言いたいところだけれど……」
「う、うん。きっと、走っているみんなの中には……」
「……気力だけで走ってますね。コーナーの曲がりに体が付いていかなくなって、外へと自ら投げ出されている……」
チーム『ポルックス』の控室。
ダービーの厳しさを知る『経験者』達が、ここに来て脱落していくウマ娘達への思いを口にする。
「ここまで来たのに、最後のスパートにも加われないまま終わってしまう……フフ。無念に見えて、むしろ彼女らにはその方が幸運かもしれないけれどねえ。」
「ちょっ……どういうこと!?」
アグネスタキオンの発した『幸運』という表現に、驚くトウカイテイオー。
その一方で、
「……タキオンの言う通りかもな。」「トレーナー!?」
まさか同調するとは思わなかった音坂の言葉に、更に驚くテイオーだが、
「実際、東京レース場の最終直線……本気でキツいから。」
「2メートルの登り坂込みの、500メートル……極限状態で走ったら、いつ怪我してもおかしくはないでしょうね……」
「スズカの言うように、『極限状態で』というのが問題だな。……先に限界を迎えておけば、これ以上の無理はしなくても済む。」
「勝ちへの道筋を諦めて、最後まで走りきることを優先するか。それとも、勝ちへの道筋を諦めずに、破滅への扉を開くか……」
『破滅』。遠慮の無い表現に、部屋の空気が重くなる。
「そんな悲運やら運命やらを、乗り越えていくのがダービーウマ娘達だ。……そうだろう?テイオー。」
「……!あ、当たり前じゃん!来年は、ボクがきっと……!」
テイオーの返事に、口元に笑みを浮かべる音坂。
「……まずは画面の前の奴らを相手に、『この最終直線で勝つイメージ』を作ってみろ。」
「リョーカイ!絶対に勝ってみせるよ!」
画面に集中し出すテイオーを横目に、音坂は考える。
(……勝つのはオペラオーか、アドマイヤベガか、それとも……)
一方で、ライスシャワーは……
「……でもでも、みんな、ここまで来れただけで、本当に凄いんだよ?だからみんな、最後まで頑張ってほしいし、どんな結果になっても、胸を張ってほしい……よね?」
彼女のそんな思いを、レース後に受け止められる、あるいは伝えられる者が、画面の向こうのレース場には、果たしてどれだけいるだろうか。
集団は、第4コーナーから、いよいよ最後の直線へと差し掛かる。
ーーー
「……ちょっと仕掛けが早すぎないか?ロデオさん。」
大円が葵に、ロデオのスパートについて問いかける。
「え、でも、チーフトレーナーはオペラオーの仕掛けを見越して、このタイミングで仕掛けるべきだ、ってレース前に……」
「……あー。」
葵の言葉に大円が理解する。
同じタイミング、
「……お前、この後の展開とかきちんとアドマイヤベガに考えて教えたんだろ?それについても……」
「何の話だ?」
北原が黒沼に訪ねる。
「だから、今の状況から、更にオペラオーの仕掛けてくる作戦が……」
「は?」
「ん?」
と、北原の意図を理解した黒沼。
「……そういうことか。だとしたら、スピカのミリオンも……」
「オイオイ、どういうことだよ?」
「……先に言っておく。お前ら……『考えすぎ』だ。」
「何?」
北原の言葉に、黒沼が一言告げた。
ーーー
「仕掛けが無いのが仕掛け……か。」
「どうしたんだい?突然。」
「いや……つくづく『トリック』がハマると、凄いなあ、とね。」
「?」
子岸の隣でフジキセキが呟く。
(歴戦のトレーナー達も、私達のトレーナーの『性格』までは読めていたようだけど、同時に彼の『実力』を、かえって大きく見誤ってしまったようだね……
このままいけば、最終直線に差し掛かるタイミングで……)
ーーー
『仕掛けるのは今!勝つのはワタシだ!』
第4コーナー手前。
誰よりも早く【領域】に入ったロデオが、領域の中で縦横無尽に暴れ回るイメージを作り出す。
前から垂れて下がってきたウマ娘をものともせず、自らの加速力を高めていく。
『……まだだ!まだ耐えて、自分の走りを貫くんだ!』
ロデオの仕掛けに意識を向けながらも、オペラオーのやや前方で仕掛け所を見極めながら走るスペースミリオン。
逆に、オペラオーの後方では引き続きベガが様子を伺いながら一定のペースを保っている。
『さあ、第4コーナー!クレイジーロデオが前に出る!ここで前を行くスペースミリオン、そしてテイエムオペラオーが競り合う格好となったぞ!前から下がってきた娘達も含め、大勢での熾烈な競り合いが続く!この中から抜け出すのは誰か!』
……刹那、
『巨大な【光】』が、炸裂した。
ーーー
奇しくも、第4コーナーでは何にんものウマ娘が、一度に競り合う格好となった。
『これだ……これこそが、ボクの求めていたもの!』
後ろから上がってきた者、前から垂れつつも勝負を諦めていない者、彼女達の思いは一つ。
『このレースに勝つこと』。
そして、その中には『打倒オペラオー』という思いも含まれている。それらを感じ取って……
『キミ達の思い……何て純粋で、そして尊い物だろうか!素晴らしい、素晴らしいよ!』
極限の集中力の中、正面から全ての思いを受け止め、自分のエネルギーへと昇華していく。
それはまるで、周囲を囲んだ邪なるエネルギーを、その手に持った杖で振り払い、吸い込み、掲げた先端から爆発させてーーー
『感謝するよ……みんなの気持ち、全てを背負ってボクは更なる頂へ進む!』
覇王が、高々と杖を掲げ、勝利に向かって行進する。
我こそ絶対。皆も我に続け、遅れるな……と。
ーーー
『こ、ここで完全に抜け出したのはテイエムオペラオー!テイエムオペラオーだ!集団から飛び出してハナを進む!なんという豪脚だ!このまま最終直線へスパートをかける!先頭集団は付いていけないか!後ろの娘達は果たして……』
「……まあ、こうなるよな。」
「分かってたのか?」
黒沼の言葉に北原が問いかける。
「スパートそのものはオペラオーの実力だろうが、あの状況はあいつらが想定していたものでは無いだろう。」
「つまり……」
「『何も考えちゃいねえ』ってことだ。勝手に周りや俺らが、あいつが本気になる状況を作り出した、ってことだな。」
「……そうか……さっきの『考えすぎ』ってのも……」
「お前のところのロデオ、『終盤にオペラオーが何か仕掛ける』って想定してのスパートだったろ。あれが逆に、『終盤にオペラオーが仕掛けられる状況を周りが勝手に作り出す』って結果になっちまったわけだな。」
「マジか……」
北原に対し、黒沼が続ける。
「スピカの奴も、明らかに仕掛けが遅い……お前と同じく、オペラオーやレグルスの若僧を『過大評価』しちまったな。」
「……ん?」
ふと、北原が気付く。
「お前はどうなのよ?何か随分余裕じゃね?」
「……そりゃ、余裕があるんだから当然だろ。」
「オイオイ、それじゃお前のところのアドマイヤベガは……」
「ああ、ここまで『作戦通り』だからな。」
「なんで?」「あいつ。」
北原の疑問に、指を指す黒沼。
そこには、葵に対して似たようなやり取りを続けていた大円の姿。
「……それって、何かずるくね?」
「お前の所にも、あの葵って娘やその兄貴だっているじゃねえか。」
「む……」
同世代の奴らの目線が武器になるなら……という意見を封じられて、表情を険しくする北原。
「……まあ、実際俺だけだったら多分お前らと同じことになっていたのは事実だ。それらも含めて、今回俺たちは『運』に恵まれたんだろうな。だが……」
「だが?」
「実際に勝てるかは別の話だ。オペラオーのスパート……ありゃちょっとヤバいか?」
「いえ、あの方が好都合です。」「「うお!?」」
突然会話に割り込んでくるミホノブルボンに、驚く黒沼と北原。
「好都合、って……どういうこと?」
「そのままの意味です。」「……あー、俺が話す。」
解答になっているか疑わしいブルボンの回答に、黒沼がフォローを入れる。
「いや、このままだとオペラオーがぶっちぎりで勝つだけじゃないか?」
「お前でもそう思うだろ?」
だから……と、黒沼が続ける。
「必ずオペラオーも考える筈だ。『勝利の確信』って奴を……な。」
ーーー
『さあ最終直線!完全にテイエムオペラオーが独走状態に入った!このまま後続を突き放して……』
『……どうやら、今回もボクの圧倒的勝利に終わりそうだね。』
後続との距離を離しながら、オペラオーはふと考える。
『今回も、皐月賞の時のように……』
勝利後に待っていたものを、ふと思い出す。
あの時……子岸が横で年間無敗を宣言するまで、観客達はどのように自分を出迎えた?
圧倒的な勝利を果たした自分を待っていたのは、大歓声ではなく……沈黙と静寂。
……もし、このまま勝利しても、果たして自分を待ち受けるものは……
「!……オ、オペラオーさんから、光が……」
メイショウドトウがオペラオーの異変に気付き、戸惑いの声を上げる。
スパートの足が、あるいはその走りが、『緩んで』いた。
「……彼女の優しさだな。」
横で、ナイトシグマが答える。
「そして……甘さだ。」
「ええ!?」
「そう、これをこそ……待っていた。千載一遇のタイミングを……アヤベさん。」
状況が分からない様子のドトウの横で、シグマが告げる。
「行け。」
ーーー
『ああっと、どうしたことだ!このままならレコード確実というペースのテイエムオペラオー、脚色が鈍っているようだが大丈夫か!そして集団の中から物凄い勢いで上がってきたウマ娘がひとり!アドマイヤベガ!アドマイヤベガが驚異的な末脚で上がってきた!先頭との距離がグングン詰まっていくぞ!』
『アヤベさん……!』
『私だけじゃない、ここまで一緒に頑張ってきた皆や、あの娘……そして、オペラオー、あなたの為にも!』
『何……!?』
正に『光速』という表現がふさわしい、そんなアドマイヤベガのスパートに、狼狽えるオペラオー。
『あなたを、決してひとりにはさせない!【ライバル】のひとりとして!』
『……!!』
『さあいよいよ残り400メートル!テイエムオペラオーにアドマイヤベガが迫ってきた!これは分からなくなってきたぞ!3着争いはスペースミリオンか!まだ勝負を諦めていない様子!どの娘が最初にゴールを駆け抜けるのか!』
創作なのでこんな会話している間にレース終わってるやろとかいう突っ込みは無しでオナシャス。
書いてる俺もめっちゃ思ってるから。
……次回でようやくダービー決着してシグマ達がデビューするターンかしら。
ドーベルのシナリオがめっちゃ黒沼と大円にさせようとしているパターンとリンクしていておったまげた