どんなにチートでも僕は南雲ハジメ   作:排他的

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香織は魔法使いに

先手は光輝──ではなく香織だった。光輝が飛び上がると同時に飛び上がって攻撃を光輝より早くベヒモスに与える。

 

戦いの歌(カントゥス・べラークス)──来れ雷精(ケノテートス)虚空の雷(アストラプサトー)薙ぎ払え(デ・テメトー)雷の斧(ディオス・テュコス)!!」

 

香織は自らの身体の能力を上昇させ、ベヒモスの背中まで飛び上がり、雷の斧を背中に浴びせる。

 

いきなりの攻撃、しかも上級魔法に驚いたのか感電しながら暴れるベヒモス。そこに光輝の天翔閃が当たり吹き飛ばされる。

 

ベヒモスには切り傷が残り、赤黒い血が溢れ出ていた。

 

「あれって南雲くんのよね?」

 

「ハジメくんが使っていたのを見た時、あ、これ魔法先生ネギま!の魔法だ!って思って私も使えるようになったの。まぁハジメくんの使った魔法しかまだ使えないけどね」

 

その言葉に雫はポカーンとなる。ハジメのオリジナル魔法をハジメの教えなくして理解し、それを実用できるようにしていたのだ。驚かない方がおかしい。

 

まぁこれも愛がなせる技だろう。

 

「いける! 俺達は確実に強くなってる! 永山達は左側から、檜山達は背後を、メルド団長達は右側から! 後衛は魔法準備! 上級を頼む!」

 

そんなことを話しているうちに光輝は全員に指示を出す。メルド団長直々の指揮官訓練の賜物だ。

 

メルド団長が叫び騎士団員を引き連れベヒモスの右サイドに回り込むべく走り出した。それを機に一斉に動き出し、ベヒモスを包囲する。

 

前衛組が暴れるベヒモスを後衛には行かすまいと必死の防衛線を張る。

 

「グルゥアアア!!」

 

ベヒモスが踏み込みで地面を粉砕しながら突進を始める。

 

「させるかっ!」

 

「行かせん!」

 

クラスの二大巨漢、坂上龍太郎と永山重吾がスクラムを組むようにベヒモスに組み付いた。

 

「「猛り地を割る力をここに!『剛力』!」」

 

身体能力、特に膂力を強化する魔法を使い、地を滑りながらベヒモスの突進を受け止める。

 

「ガァアア!!」

 

「らぁあああ!!」

 

「おぉおおお!!」

 

三者三様に雄叫びをあげ力を振り絞る。ベヒモスは矮小な人間ごときに完全には止められないまでも勢いを殺され苛立つように地を踏み鳴らした。

 

その隙を他のメンバーが逃さない。

 

「全てを切り裂く至上の一閃『絶斬』!」

 

雫の抜刀術がベヒモスの角に直撃する。魔法によって切れ味を増したアーティファクトの剣が半ばまで食い込むが切断するには至らない。

 

「ぐっ、相変わらず堅い!」

 

「任せろ! 粉砕せよ、破砕せよ、爆砕せよ『豪撃』!」

 

メルド団長が飛び込み、半ばまで刺さった雫の剣の上から自らの騎士剣を叩きつけた。魔法で剣速を上げると同時に腕力をも強化した鋭く重い一撃が雫の剣を押し込むように衝撃を与える。

 

そして、遂にベヒモスの角の一本が半ばから断ち切られた。

 

「ガァアアアア!?」

 

角を切り落とされた衝撃にベヒモスが渾身の力で大暴れし、永山、龍太郎、雫、メルド団長の四人を吹き飛ばす。

 

「優しき光は全てを抱く『光輪』!」

 

衝撃に息を詰まらせ地面に叩きつけられそうになった四人を光の輪が無数に合わさって出来た網が優しく包み込んだ。香織が行使した、形を変化させることで衝撃を殺す光の防御魔法だ。

 

香織は間髪入れず、回復系呪文を唱える。

 

「天恵よ 遍く子らに癒しを『回天』」

 

香織の詠唱完了と同時に触れてもいないのに四人が同時に癒されていく。遠隔の、それも複数人を同時に癒せる中級光系回復魔法だ。

 

さらに香織は呪文を唱える。

 

魔法の射手(サギタ・マギカ)光の八矢(セリエス・ルーキス)!!」

 

光の矢が8本現れ、ベヒモスに投擲され刺さり、爆発する。

 

そこに光輝がベヒモスを聖剣で刺し、光輝の『光爆』が発動してベヒモスが爆発する。

 

「ガァアアア!!」

 

傷口を抉られ大量の出血をしながら、技後硬直中の僅かな隙を逃さずベヒモスが鋭い爪を光輝に振るった。

 

「ぐぅうう!!」

 

呻き声を上げ吹き飛ばされる光輝。爪自体はアーティファクトの聖鎧が弾いてくれたが、衝撃が内部に通り激しく咳き込む。しかし、その苦しみも一瞬だ。すかさず、香織の回復魔法がかけられる。

 

「天恵よ 彼の者に今一度力を『焦天』!」

 

先ほどの回復魔法が複数人を対象に同時回復できる代わりに効果が下がるものとすれば、これは個人を対象に回復効果を高めた魔法だ。光輝は光に包まれ一瞬で全快する。

 

ベヒモスが、光輝が飛ばされた間奮闘していた他のメンバーを咆哮と跳躍による衝撃波で吹き飛ばし、折れた角にもお構いなく赤熱化させていく。

 

「……角が折れても出来るのね。あれが来るわよ!」

 

雫の警告とベヒモスの跳躍は同時だった。ベヒモスの固有魔法は経験済みなので皆一斉に身構える。しかし、今回のベヒモスの跳躍距離は予想外だった。何と、光輝達前衛組を置き去りにし、その頭上を軽々と超えて後衛組にまで跳んだのだ。大橋での戦いでは直近にしか跳躍しなかったし、あの巨体でここまで跳躍できるとは夢にも思わず、前衛組が焦りの表情を見せる。

 

だが、後衛組の一人が呪文詠唱を中断して、一歩前に出た。谷口鈴だ。

 

「ここは聖域なりて 神敵を通さず『聖絶』!!」

 

呪文の詠唱により光のドームができるのとベヒモスが隕石のごとく着弾するのは同時だった。凄まじい衝撃音と衝撃波が辺りに撒き散らされ、周囲の石畳を蜘蛛の巣状に粉砕する。

 

しかし、鈴の発動した絶対の防御はしっかりとベヒモスの必殺を受け止めた。だが、本来の四節からなる詠唱ではなく、二節で無理やり展開した詠唱省略の〝聖絶〟では本来の力は発揮できない。

 

実際、既に障壁にはヒビが入り始めている。天職『結界師』を持つ鈴でなければ、ここまで持たせるどころか、発動すら出来なかっただろう。

 

鈴は歯を食いしばり、二節分しか注げない魔力を注ぎ込みながら、必死に両手を掲げてそこに絶対の障壁をイメージする。ヒビ割れた障壁など存在しない。自分の守りは絶対だと。

 

「ぅううう! 負けるもんかぁー!」

 

障壁越しにベヒモスの殺意に満ちた眼光が鈴を貫き、全身を襲う恐怖と不安に、掲げた両手が震える。弱気を払って必死に叫ぶが限界はもうそこだ。ベヒモスの攻撃は未だ続いており、もう十秒も持たない。

 

破られる!鈴がそう心の内で叫んだ瞬間、

 

「天恵よ 神秘をここに『譲天』」

 

 鈴の体が光に包まれ、『聖絶』に注がれる魔力量が跳ね上がった。香織の回復系魔法だ。本来は、他者の魔力を回復させる魔法だが、魔法陣に注ぐ魔力に合わせて発動することで、流入量を本来の量まで増幅させることができる。『譲天』の応用技だ。天職『治癒術師』である香織だからこそできる魔法である。

 

「これなら! カオリン愛してる!」

 

鈴は、一気に本来の四節分の魔力が流れ込むと同時に完璧な『聖絶』を張り直す。パシンッと乾いた音を響かせ障壁のヒビが一瞬で修復された。ベヒモスは、障壁を突破できないことに苛立ち、怒りも表に生意気な術者を睨みつけるが、鈴も気丈に睨み返し一歩も引かない。

 

そして遂に、ベヒモスの角の赤熱化が効果を失い始めた。ベヒモスが突進力を失って地に落ちる。同時に、鈴の『聖絶』も消滅した。

 

肩で息をする鈴にベヒモスが狙いを定めるが、既に前衛組がベヒモスに肉薄している。

 

「後衛は後退しろ!」

 

光輝の指示に後衛組が一気に下がり、前衛組が再び取り囲んだ。ヒット&アウェイでベヒモスを翻弄し続け、遂に待ちに待った後衛の詠唱が完了する。

 

「下がって!」

 

後衛代表の恵里から合図がでる。光輝達は、渾身の一撃をベヒモスに放ちつつ、その反動も利用して一気に距離をとった。

 

その直後、炎系上級攻撃魔法のトリガーが引かれた。

 

「「「「「『炎天』」」」」」

 

術者五人による上級魔法。超高温の炎が球体となり、さながら太陽のように周囲一帯を焼き尽くす。ベヒモスの直上に創られた『炎天』は一瞬で直径八メートルに膨らみ、直後、ベヒモスへと落下した。

 

絶大な熱量がベヒモスを襲う。あまりの威力の大きさに味方までダメージを負いそうになり、慌てて結界を張っていく。『炎天』は、ベヒモスに逃げる暇すら与えずに、その堅固な外殻を融解していった。

 

「グゥルァガァアアアア!!!!」

 

だが──ベヒモスは消滅しなかった。悲鳴を上げながら、体中から熱を発しながら、弱々しくも光輝達を睨みながら立っていた。

 

「まだ立つの!?もう魔力切れてるよ!」

 

恵里が悲鳴を上げるも、ベヒモスは残って折れている角を赤熱化させていく。

 

「───雷の斧(ディオス・テュコス)!!!」

 

ベヒモスが足を踏み出したその瞬間、雷の斧が外殻がなくなって切りやすくなったベヒモスを切り裂いた。

 

「グゥルァガァアアアア!!!!」

 

2度目の悲鳴──ではなく断末魔。その叫びは徐々に小さくなり、ベヒモスはそのまま消滅した。

 

「か、勝ったのか?」

 

「勝ったんだろ……」

 

「勝っちまったよ……」

 

「マジか?」

 

「マジで?」

 

皆が皆、呆然とベヒモスがいた場所を眺め、ポツリポツリと勝利を確認するように呟く。同じく、呆然としていた光輝が、我を取り戻したのかスっと背筋を伸ばし聖剣を頭上へ真っ直ぐに掲げた。

 

「そうだ! 俺達の勝ちだ!」

 

キラリと輝く聖剣を掲げながら勝鬨を上げる光輝。その声にようやく勝利を実感したのか、一斉に歓声が沸きあがった。男子連中は肩を叩き合い、女子達はお互いに抱き合って喜びを表にしている。メルド団長達も感慨深そうだ。

 

そんな中雫は香織の方を叩いて話しかけていた。

 

「魔力、残しておいたんだ」

 

「うん、奥の手は残しておくべきだと思って……ハジメくんに会うために、こんなところで躓く訳には行かないしね」

 

「……そうね。頑張って最終階層まで行きましょ!」

 

「うん!」

 

2人で気合いを入れていると光輝がやってきた。

 

「二人共、無事か? 香織、最高の治癒魔法と雷魔法だったよ。香織がいれば何も怖くないな!」

 

爽やかな笑みを浮かべながら香織と雫を労う光輝。

 

「ええ、大丈夫よ。光輝は……まぁ、大丈夫よね」

 

「うん、平気だよ、光輝くん。皆の役に立ててよかったよ」

 

同じく微笑をもって返す二人。しかし、次ぐ光輝の言葉に少し心に影が差した。

 

「これで、南雲も浮かばれるな。自分を突き落とした魔物を自分が守ったクラスメイトが討伐したんだから」

 

「「……」」

 

光輝のその言葉はハジメを落とした原因を忘れているように見える。檜山の悪意も善意も全て信じきったためにハジメの落ちた原因なんてもう頭に入っていないのだろう。

 

若干、微妙な空気が漂う中、クラス一の元気っ子が飛び込んできた。

 

「カッオリ~ン!」

 

そんな奇怪な呼び声とともに鈴が香織にヒシッと抱きつく。

 

「ふわっ!?」

 

「えへへ、カオリン超愛してるよ~! カオリンが援護してくれなかったらペッシャンコになってるところだよ~」

 

「も、もう、鈴ちゃんったら。ってどこ触ってるの!」

 

「げへへ、ここがええのんか? ここがええんやっへぶぅ!?」

 

どこかの子狸魔法少女的なことをしている鈴に雫の手刀が炸裂する。

 

「いい加減にしなさい。誰が鈴のものなのよ……香織は私のよ?」

 

「雫ちゃん!?私はハジメくんのものだよ!」

 

「ふっ、そうはさせないよ~、カオリンと○○○で○○なことするのは鈴なんだよ!」

 

「鈴ちゃん!? 一体何する気なの!?」

 

雫と鈴の香織を挟んでのジャレ合いに、香織が忙しそうにツッコミを入れる。いつしか微妙な空気は払拭されていた。

 

これより先は完全に未知の領域。光輝達は過去の悪夢を振り払い先へと進むのだった。

 




雷って光魔法に入りますよね?香織が全属性適正持ってたら氷魔法も使わせられたんですけどね〜。

今DxDじゃなくて他の中古本を買おうか迷っているところです。

これからもよろしくお願いします。
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