ハジメは、体全体が何か温かで柔らかな物に包まれているのを感じた。随分と久しぶりな感触だ。ベッドの感触である。頭と背中を優しく受け止めるクッションと、体を包む羽毛の柔らかさを感じ、ハジメのまどろむ意識は混乱する。
「(いやー気持ちいいですねー本当に……研究室にはベッドなんて高尚なものはないから本当に久しぶりで……ん?)」
ハジメはその研究室にないベッドに違和感を抱いてゆっくりと起きると、ハジメは全てが純白なベッドの上で寝ていることが分かった。しかも神々しいまでの神殿のような出で立ちのテラスに置かれたベッドの上で。
「あ〜そうでしたそうでした……闇の魔法を完成させて無事ヒュドラを倒したんでした……」
「……んぁ……ハジメ……ぁう……」
「!?」
ハジメが今まで起きたことを思い出しているとその思考の途中で艶めかしい声が聞こえ、その思考を中断してハジメは布団を捲ると、そこにはカッターシャツ1枚で寝ているユエがいた。
「……私は……はい、服着てますよね……バリアジャケットで服には汚れ1つ着きませんし、その後闇の魔法で無双したから服に傷もない……良かった……」
「……んぅ~……んっ……」
さらに艶めかしい声を聞こえる。
「……落ち着いてください、私……私には香織さんという素敵な女性が彼女としているんです…………どうやって起こそう?」
どうやって起こすかで数十分、その後その方法を実行するのにさらに数十分かけて起こしたのだった。
「な、なぜにそんなカッコで寝てるんですか……」
どうやって起こしたのかは秘密だが、いつものハジメらしくない暴力的起こし方でユエの目を覚ます。
「うにゅ……ハジメ?」
「ええ、ハジメさんですよー起きまウゴォ!?」
「ハジメ!ハジメ!」
目を覚ましたユエは茫洋とした目でハジメを見ると、次の瞬間にはカッと目を見開きハジメに飛びついた。もちろん素っ裸で。動揺するハジメ。カッターシャツなんて勢いで吹っ飛んだ。
しかし、ユエがハジメの首筋に顔を埋めながら、ぐすっと鼻を鳴らしていることに気が付くと、仕方ないなと苦笑いして頭を撫でた。
「ごめんなさい、今度からはこんなことないようにしますから……」
「んっ……心配した……」
しばらくしがみついたまま離れそうになかったし、倒れた後面倒を見てくれたのはユエなので気が済むまでこうしていようと、ハジメは優しくユエの頭を撫で続けた。
それからしばらくして、ようやくユエが落ち着いたので、ハジメは事情を尋ねた。ユエにもう一度吹っ飛んだカッターシャツを着せて。
「それで、あれから何があったんです?それにここは?」
「……あの後……」
ユエ曰く、ハジメの魔力がリンカーコアとトータスの魔力どちらも枯渇し動けなくなったが、ユエはハジメに神水を飲まされていたので魔力と傷どちらも再生し終えていた。
とりあえず魔力を回復させるために神水を口移しで飲ませながらハジメを引きずって歩いていると、迷宮の一番奥にあった扉を確認無しで通って行ったらしい。
そして、踏み込んだ扉の奥は、
「……反逆者の住処」
中は広大な空間に住み心地の良さそうな住居があったというのだ。そのあと、危険がないことを確認して、ベッドルームを確認したユエは、ハジメを背負ってベッドに寝かせ看病していたのだという。神結晶から最近めっきり量が少なくなった神水をさらに抽出し、ハジメが目を早く覚ますように飲ませ続けた。
だがそのまま飲ませていると疲れてしまったのか糸が切れたように寝てしまったらしい。
「なるほど、ありがとうございます」
「んっ!」
ハジメが感謝の言葉を伝えると、ユエは心底嬉しそうに瞳を輝かせる。無表情ではあるが、その分瞳は雄弁だ。
ハジメはユエを連れてベッドルームから出て行く。すると、見たことも無い周囲の光景に圧倒され呆然とした。
まず、目に入ったのは太陽だ。もちろんここは地下迷宮であり本物ではない。頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いていたのである。僅かに温かみを感じる上、蛍光灯のような無機質さを感じないため、思わず『太陽』と称したのである。
「……夜になると月みたいになる」
「え、ホントですか?」
ハジメ的には驚きである。
他にも天井近くの滝から流れる水によって生まれた川、そして畑に動物の小屋があった。どう考えても誰かが住むために作ったものにしか見えない。
「サーチャーに反応無し」
「開かない部屋も多い……」
サーチャーを飛ばして何かないか調べたり、扉を開けようとするが異常もなく、そして開かないために警戒するハジメとユエ。だがギアスにも反応はない。
どうやら三階建てらしく、上まで吹き抜けになっていた。全体的に白く石灰のような手触りだ。全体的に清潔感があり、エントランスには、温かみのある光球が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。
内装は1階に台所やらリビングなどがあり、奥に進むとそこには大きな円状の穴があり、その淵にはライオンぽい動物の彫刻が口を開いた状態で鎮座している。彫刻の隣には魔法陣が刻まれている。試しに魔力を注いでみると、ライオンモドキの口から勢いよく温水が飛び出した。
「お風呂かぁ〜久しぶりに入りたいですねぇ〜」
久しぶりのお風呂を見て目を輝かせるハジメ。ハジメの研究室もお風呂があるほど快適では無いため嬉しい気持ちが溢れ出る。
そんなハジメを見てユエが一言、
「……入る? 一緒に……」
「……一人でのんびりさせてください(私には香織さんが……)」
「むぅ……」
素足でパシャパシャと温水を蹴るユエの姿を見て、一緒に入ったらくつろぎ、そして貞操が危ういと原作知識で断るハジメ。ユエは唇が尖らせて不満顔だ。
それから、二階で書斎や工房らしき部屋を発見した。しかし、書棚も工房の中の扉も封印がされているらしく開けることはできなかった。
二人は三階の奥の部屋に向かった。三階は一部屋しかないようだ。奥の扉を開けると、そこには直径七、八メートルの今まで見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。
しかし、それよりも注目すべきなのは、その魔法陣の向こう側、豪奢な椅子に座った人影である。人影は骸だった。既に白骨化しており黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織っている。ちなみに汚れはない。
「……怪しい……どうする?」
ユエもこの骸に疑問を抱いたようだ。おそらく反逆者と言われる者達の一人なのだろうが、苦しんだ様子もなく座ったまま果てたその姿は、まるで誰かを待っているようである。
「……錬成しても開かない扉の数々……これですよね鍵って……!」
ハジメは魔法陣に向かって足を踏み出す。すると、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。
転移した時のことを思い出しているとやがて光が収まり、目を開けたハジメの目の前には、黒衣の青年が立っていた。
「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」
オスカー・オルクスの登場にハジメは驚かず、サーチャーに録画させる。
「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」
そうして始まったオスカーの話は、ハジメが聖教教会で教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話とは大きく異なった驚愕すべきものだった。
「(ワーオドロキ、ビックリダナー)」
原作知識のあるハジメの目の前には無力だったが。
長いので簡略化すると、神によって争われていた世界、それを止めるべく勇者のごとく現れた者たちこそ、『解放者』。
解放者は神々直系の子孫で、神々の真意を知ってしまう。解放者のリーダーはそれに耐えかねて志を同じくするものを集めて『神域』と呼ばれるところに突入、そして神々に戦いを挑む。
だが神々は人々の認識を操作、そして解放者を助けるべき人に襲わせてそのまま自滅、神に恩恵を与えられているのに神に仇なした『反逆者』のレッテルを貼られて、そのままほぼ全滅した。
最後まで残ったのは中心の七人だけだった。世界を敵に回し、彼等は、もはや自分達では神を討つことはできないと判断した。そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。
長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。
「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」
そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。同時に、ハジメの脳裏に何かが侵入してくる。ズキズキと痛むが、それがとある魔法を刷り込んでいたためと知っているために大人しく耐えた。
やがて、痛みも収まり魔法陣の光も収まる。ハジメはゆっくり息を吐いた。
「ハジメ……大丈夫?」
「大丈夫、さて……変な話を聞きましたね……」
「……ん……どうするの?」
ユエがオスカーの話を聞いてどうするのかと尋ねる。
「関係ないです。神殺しなんてどこぞのカンピオーネでもないんですからやりませんし、私はさっさと元の世界に帰ってゲーム制作に勤しみたいんでね…それに香織さんも迎えにいかないといけませんし」
「(カオリ……誰?)」
「あぁ、あと神代魔法っていうのを覚えました。生成魔法……錬成師専用かもしれませんが覚えておいて損は無いですよ」
「………………んっ!」
少し動揺していたのか気づくのに少し遅れたユエは魔法陣に触り、またあの長い話を聞く。
そして生成魔法を習得後、2人はオスカー・オルクスの白骨を見る。
「あれ、どうする?」
「……骨ですよね〜使い道なさそうです」
「……畑の肥料」
「……弔いましょうか、なんか祟られたら怖いです」
オスカー・オルクスの服や指からロックのかかった扉の鍵と思われる指輪や装飾品を取り出して身につける。
そして錬成で棺を作り出してオスカー・オルクスの遺体を入れて魔法で1階の地面に穴を開けてそこにオスカー・オルクスの遺体を投げ入れ、そのまま埋める。
ついでにオスカーオルクスが眠っていることを示す墓石も立てておく。
埋葬が終わると、書斎に向かって本棚にかけられたロックを解除していく。めぼしいものを見ていくとこの住居の設計書を見つけて色々と見ていく。
「なるほど、ここはこうなってるんですね……」
「面白い……!」
良くも悪くも魔法馬鹿な2人、住居に付けられている魔法に夢中になりながら清潔に保たれている原因や色々なことを理解していく。
設計書には先ほどの三階にある魔法陣がそのまま地上に施した魔法陣と繋がっているらしい。オルクスの指輪を持っていないと起動しないようだ。出口が見つかって嬉しがるハジメとユエ。
他にもアーティファクトや色々なものを書いた本を見ていると、ユエがハジメに一冊の本を渡す、そこにはどこに解放者のアジト兼迷宮があるのか、そして解放者の日常について書かれてあった。
「……帰る方法見つかるかも」
そこにあるであろう神代魔法を使えば帰れる。それでハジメたちの方針は決まった。
ハジメは他にも色々なところを見てひとつの決心を固める。
「少しの間、ここで暮らそう!」
「ん、わかった」
ここで実力を高めてから脱出することにして、ハジメとユエははここで可能な限りの鍛錬と装備の充実を図ることになった。
その日の晩、天井の太陽が月に変わり淡い光を放つ様を、ハジメは風呂に浸かりながら全身を弛緩させてぼんやりと眺めていた。
「あ〜心が、この身が暖まるー!さて〜明日から何作りますかねー」
ハジメからは考えられないほど気の抜けた声が風呂場に響く。全身をだらんとさせたままボーとしていると、突如、ヒタヒタと足音が聞こえ始めた。完全に油断していたハジメの目が赤く光り、ギアスが発動する。
「また貞操の危機か!だが甘い……マッ缶より甘いぞ、ユエ!私はこういう時に備えてこんな魔法を作っておいたのだ!」
ハジメはユエが近づいてくるのを感じながら透明になる。
しばらくするとユエが入ってきた。ハジメはユエの方を見ないように目を逸らす。
「……ハジメがいない……どういう……!」
ユエはなにかに気づいたのかタオルを浴槽の横に置くとハジメの膝の上に座って自分の身体をハジメに押し付ける。見えていないのに、だ。
「(何故だ……場所はバレてないはず……!)」
「……透明魔法の発想には驚いた、けど、ハジメのいるところに穴が空いてたからすぐにわかった」
「あ、やべ」
ハジメはユエの指摘につい声を出してしまい、そのまま魔法を解除してしまう。するとユエは身体を反転させて、ハジメをジーッと見つめる。
「ハジメ、カオリって誰?」
「香織さん!?なぜユエが香織さんのことを……!」
「ハジメが言ってた、それにたまに上の空になるから」
「……私の恋人です」
ハジメはジト目のユエに耐えきれなくなり白状する。するとユエはハジメにさらに近づいて行き、ハジメの身体とユエの身体は密着し、ユエの顔はハジメの耳の隣になる。
そしてハジメの耳元で喋り始める。
「私は2番目でもいい」
「いや、でもそれは……」
「ハジメ、私はハジメの力になりたい。ハジメのモノになりたい……それを拒絶しないで」
「でも手を出したらかおムグッ!?」
ユエの唇がハジメの口を閉ざさせる。舌を入れてハジメを喋らせないようにする。
そして口を離すとハジメは逃げる気力を失っていた。
「ハジメが拒否するなら拒否できないようにするだけ……!」
「ちょ、ちょっと待って……」
「待たない!」
この後、何があったか、それはご想像にお任せします……。
「……ハジメくんが…(_ ..)_ バタリ」
「香織、ちょ香織!何がどうなって……!」
何かを受信して倒れる治癒術師が1人……。
ハジメくん、またも逆レ〇プされる。今度はロリ系吸血姫に……次は餅つき兎かな?
R18投稿しました!……更新に時間かかりますが(大体3ヶ月……)更新はしていきますので……よろしくお願いします。
https://syosetu.org/novel/280826/
では、これからもよろしくお願いします!