ハジメがユエに香織とは違う大人の貫禄──見た目幼女だが──を見せられてから少し経ち、ハジメは新たな力を身につけていた。
灰色が混じった緑色のイナゴをモチーフとした仮面ライダー、『仮面ライダーアバドン』100体を相手にハジメは幾何学な模様が描かれた赤、青、緑、黄色の魔法陣を向けていた。
そこから炎、氷、風、土砂が現れ、アバドンを燃やし、凍らせ、吹き飛ばしていく。
「どうです?『戦姫絶唱シンフォギア』の魔法のような……確か異端技術……いや錬金術でしたか……」
「……早すぎる、まだ大迷宮攻略からまだそんな経ってないのに……!」
誇らしげにアバドンを粉砕していくハジメを見て、ユエは悔しさから蹲る。短期間で新たな力を身につけたハジメに嫉妬して。
「『ソードブレイカー』!!」
スラッシュアバドライザーで斬りかかってくるアバドンの攻撃を西洋剣で受け止める。
「哲学兵装……やれば出来るもんですね、『埒外物理学』は無理でしたが、これなら出来ましたよ」
ソードブレイカー、それは剣と相手が思うもの、そして剣と定義するもの全てを破壊する『哲学兵装』と呼ばれる、錬金術によって作られる武装だ。
「……そろそろ終わらせましょうか」
ハジメの使う錬金術、それは使う時、何か代償を払わなければならない。ハジメは自らの魔力と血を代償に使っている。
思い出を使うほど長く生きていないため、そうするしか無かったのだ。それに、ハジメはコードによって簡単に血を回復できたのだ。
ハジメは氷の錬金術でアバドン達を氷漬けにし、オスカーが保有していたアーティファクト、『宝物庫』から高圧縮カーボンロッドを取り出し、風の錬金術で勢いよく発射する。
宝物庫とは、ハジメがオスカー・オルクスの遺体から手に入れた四次元ポケットのアーティファクト版の物である。
「行きます!」
アバドン達はカーボンロッドによって貫かれ、それでも五体満足に残っているアバドンは、ハジメの持つソードブレイカーに切り裂かれる。
「終わりですね」
ハジメは空中に手を伸ばして魔力を伝わせる。すると機械のリングがハジメの元にやってきてハジメの手に収まる。
そのリングの名前は『シンクネット』、ナノマシンを散布しており、そこから仮面ライダーアバドンを生成し、倒されてもすぐさまリスポーンするエリアに変えることができるアーティファクトだ。
強さはハジメとユエからすれば大したことないが、光輝3人を1人で倒すことができるくらいには強い。
他にもアーティファクトはある。錬金術を使うのにもアーティファクトを使っている。『Alchemy Organ』、それは体内に埋め込むことで魔力と血を代償に戦姫絶唱シンフォギアの錬金術を擬似的に使わせることが出来るものだ。
ユエは落胆していたが、ハジメは技術で手に入れた能力のため、努力はほぼしていないため実際は落胆しなくてもいい。英語名なのはカッコイイかららしい。
ハジメは一度『ワールドトリガー』のトリオン器官を作って使ってみようかと思ったが、錬金術の方が使いたかったのでこちらを選んだようだ。
「次は私…ハジメやろ?」
「ええ、喜んで」
ユエはハジメとの契約によって得た『思考停止のギアス』を展開する。ユエの片目がさらに赤く発光し、不死鳥のマークが浮き出る。
ユエのギアス能力は対象の思考を数秒停止させるギアスで、無機物には効かない。
ハジメとの初セックスの後、ギアスの詳細を聞いたあとでハジメと契約した。
「私のギアスとの差よ…いやまぁ仕方ないんですけどね…」
コードとの同時獲得のための弱体化であるため、仕方ないと割り切るハジメ。だがどう見てもユエとのギアスの差を割り切れているようには見えなかった。
ユエの思考停止のギアスは万能である。有機物…生物であればなんでも思考を停止させることが出来るのだ。ヒュドラ戦でこれがあればと嘆いていてもいた。
「ハジメ、戦うなら私は容赦しない」
「それはこちらのセリフでもあるね」
お互い不老不死であるがために、模擬戦であろうとも容赦はしない2人。ヒュドラ戦で使われた階層で模擬戦しているが、その階層はあちこちがヒビ割れ、破壊されている。
ハジメとユエの何回にも渡る戦闘が行われていたという証拠だ。
「
「|千年氷華《アントス・パゲトゥー・キリオーン・エトーン》」
街を氷漬けにする氷の魔法を球体に押し込め、手でそれを持つ。ユエが闇の魔法を阻止すべく攻撃を放ってくるが、詠唱の必要ない錬金術が紡ぐエーテルのバリアがそれを防いでいる。
「
氷の球体を手で砕き、それをゆっくりと自らの胸の中へと押し込もうとする。
「術式装填『千年氷華』」
魔力を身体に流して千年氷華を身体から逃がさないようにし、自らの身体を雪のように白くさせ、背中から無数の氷が生える。
ハジメはついに、闇の魔法を安定して使用できるようになったのだ。だが成功したという達成感から束の間、ユエがハジメの防御を破ってハジメの懐に潜り込み、ユエがギアスをハジメに掛ける。
ハジメの思考が数秒止まり、ユエは魔法を大量にハジメの周囲に放つ。だがユエの攻撃を予測していたのか、インテリジェントデバイスであるブラックブラスターがハジメの周りに黒い魔力弾を並べる。
《Dark Shooter!》
魔法と魔法、同時に当たることでそれらは爆発し、とんでもない衝撃を生み出して2人をはじき飛ばす。いち早く復帰したユエはハジメが思考停止を解く前に倒そうと魔法を放つ。
だがその攻撃はハジメが展開した氷の盾に防がれた。
「…思考停止は本当に辛いですが、停止中の攻撃を防げればわけないんですよね…」
ハジメはAI搭載の武装を何個か持っている。ハジメのデバイス然り、シンクネットも搭載されている。ユエの攻撃を防ぐだけならできるのだ。
「氷刀輪舞!」
ハジメの魔力にものを言わせた大量の氷の刀がユエを襲う。それをユエは緋槍で燃やし尽くしていくが、何個かはユエの攻撃を通り抜けてユエを攻撃していく。
「『蒼天』」
炎の最上級魔法がハジメの操る氷の刀を襲い、全てを燃やしてさらにハジメを攻撃しようとする、だがその攻撃はハジメには届かない。
「
氷の盾がハジメの前に現れてその攻撃を防いだ。そしてハジメはこの闇の魔法、氷の女王の真の力を使いだした。
ヒュドラの階層が氷で覆われ、氷の魔法の射手が無限に現れ、ユエに向かって連射されていく。それはまさに台風の日の雨や風のように。
「魔法を放つ暇がッ!」
上、左、右からの魔法攻撃に魔法を放つ暇すらなく攻撃を食らっていく。
「まだまだっ!」
錬金術によって生み出された
ハジメの強みは色々ある。その類稀なる技術力、豊富な魔力にすぐに蘇り、どんな傷でも回復する不老不死……だが戦闘での1番の強みはそれら全て組み合わさってできる手数の多さとそれによって生まれる圧倒的な弾幕だ。
弾幕というか絨毯爆撃だけども。
3時間後、ユエは黒焦げになってハジメの膝の上で寝ていた。あの圧倒的な弾幕を見せつけられても屈することなく攻撃していたが、さらに密度を増した弾幕に耐えることが出来ず、あえなく轟沈したのだった。
「ハジメ……酷い」
「あはは……ごめんなさい」
模擬戦とはいえ、女の子に向かって放つ量の弾幕では無い。ユエが圧倒的な強者であろうと無かろうと、あんな弾幕を放つバカはそうは居ない。
ユエはハジメにぷりぷりと怒りながらも、ハジメの膝を堪能したのだった。
「……香織さんにも1回だけやったことあったな……やられたことは何回もあったけど……」
「ッ!」
ユエは少し香織に嫉妬した。
シンクネットは兵力が必要な時に登場します。次の話も奈落の日常生活ですかね。
これからもよろしくお願いします。