爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常 作:九十九一
「い、いやぁ、儂がモデルとか……ないない。儂よりも良い者とか絶対おるって」
「いや、君がいい! この中で一番この子だ! って来たのは君だからね! 俺の直感は絶対の自信を持ってるんだ!」
え、えぇ……。
なんじゃろうか、この男。すんごい儂を推してくるんじゃけど。
し、しかし、周囲からの視線も痛い……。
何故こうも注目されねばならんと言うのか。
「け、健吾に優弥よ、儂、どうすればよいと思う?」
「そこ、俺らに振る?」
「まあ……受けた方がいいんじゃないですか? どうも、困っているみたいですし」
「そう、そうなんだよ! 君、いいこと言うね! と言うわけなんだ、ね? ね? 頼むよ~」
いや、そんなに拝み倒されてものう……。
……んー……。
「とりあえず、事情を聞かせてくれんか?」
「もちろんだとも! じゃあ、立ち話もなんだから、こっちへ来てくれ! あ、友達の君たちも一緒にどうぞ」
「まぁ、まひろだけってのも可哀そうだし、行くか、優弥」
「そうですね。では、僕たちも」
「助かるわい、二人とも……後で、何か買ってやるでな」
二人の申し出はありがたかったので、後で何かを買ってやることにした。
儂らはカメラを持った男に連れられ、仮設テントらしき場所へ連れてこられ、適当な椅子に座らされると、目の前にペットボトルのお茶が出された。
ちょうど喉が渇いとったのでラッキーじゃった。
「さて、まずは自己紹介と行こうか。俺はカメラマンをしている、鈴木葵だ。よろしく。君たちの名前も聞かせてくれないか?」
「儂は、桜花まひろじゃ」
「俺は笹西健吾です」
「三島裕也と申します」
まずはとばかりに、お互いに自己紹介をさっさと済ませる。
と言うか儂だけ敬語じゃないのう。
まあ、相手も気にしとらんし良いか。
「ふんふん、なるほどなるほど……。君たちは学生さんかい?」
「うむ。儂ら全員、高校二年生じゃが」
「そうかそうか。なら、もっとよかったよ」
「ふむ、それで一体なぜ、儂にモデルを? 何かあったのか?」
話はそこそこに、なぜ唐突にあんなことを言って来たのかの経緯を尋ねると、鈴木さんが苦い顔をして話し出す。
「あー、実は今日、ここでファッション誌の撮影があったんだけど、メインを飾る予定だった人が体調を崩したとかで来られなくなっちゃってね」
「あぁ、そう言えばそんなようなことが聞こえてたな」
「あー、聞こえちゃってたか。恥ずかしい限りだよ」
あはは、と苦笑する鈴木さんじゃったが、すぐに話を戻す。
「さすがに、俺の方も予定があるし、今日中にしないとまずくってね。それで、妥協案として、あの場にいた中からよさげな人物を見繕って撮影を、と思っていたところに君――桜花ちゃんがいたじゃないか!」
「なるほど、そう言う理由か……」
なんともまぁ、間が悪いと言うかなんと言うか……。
たまたま見に行った場所で、モデルをやらないかと言われるとか、マジでどういう不運じゃい……。
「だから、どうかな? バイト代、は難しくても、相応のお礼もするからさ? ね? 頼めないかな?」
「うむぅ……儂、モデルなんぞやったことないし、自身なんざないぞ? それに、めんどくさそうじゃし」
「まあ、まひろはそう言うわなぁ」
「ですが、かなり逼迫しているんですよね?」
「そうだねぇ……スケジュール的に、今日撮影を済ませないと、発売日に間に合わないんだ。だから、是非頼む! このとおーり!」
まるで神に拝むかのような姿で儂に頼み込む鈴木さん。
たしかに、話を聞く限りでは、かなり可哀そうじゃのう……それに、大切な仕事なんじゃろうなぁ。
そう言う熱意をなんとなく感じる。
……しかし、
「何故儂なのじゃ? あの場にはもっとこう、人がいた気がするんじゃが」
あの場には儂以外にも大勢人がおった。
それこそ、女性もな。
容姿が整った者もそれなりにおったし、別に儂でなくても、との考えからそう話す。
「たしかにそうだね。だが! 君はあの場の誰よりも魅力的だった! もしかすると、最高の一枚が撮れるのでは!? と、そう思うほどに!」
「お、おう……」
「このままで雑誌の出版すらできない……今日のために頑張ったデザイナーだっているし、何より熱意をもって仕事をしている人ばかりなんだ。そんな人たちを助けると思って、ね?」
「……なぁ、まひろ。これ多分、お前が承諾しない限り、逃げられないんじゃね?」
「そうですね。それに、面白い経験になるのでは? モデルなんて、滅多にできない経験ですし」
「うーむ、そうじゃのう……」
腕を組んで天を見上げる。
ちらり、と鈴木さんを見れば、期待の籠った眼差しで儂を見つめる姿が。
なんじゃろう、こう、断りにくい……。
うーむ……しかし、優弥の言葉にも一理ある。
滅多にできない経験と言うのは、今後の人生において何らかの経験値となるのは間違いないじゃろう。
いやまぁ、モデルの経験がどのようなことに繋がるのかはわからんが……。
しかし、ふぅむ……。
「……あいわかった」
結局儂はモデルの件を引き受けることにした。
「! それじゃあ!」
「うむ、その話、引き受けよう」
「本当かい!? いやぁ、ほんっとに助かるよ! もちろん、こちらでも全力でサポートするから安心してほしい! それから、君のことが掲載される雑誌もいの一番に届けよう!」
儂が承諾するやいなやそれはもう嬉しそうにする鈴木さん。
まるで、好きな物を買ってもらう子供のような喜びようじゃ。
「お、おう、わかった。……ではまぁ、よろしく頼む」
「こちらこそ! あ、君たちもぜひ見学して行ってくれ」
「お、いいんすか?」
「もちろんだとも! 君らはこの子の友人だろう? だったら当然さ。それに、今回はこっちの無理なお願いに答えてもらうわけなんだ。これくらいは当然さ」
「それじゃあ、是非見学させてもらいます」
「あぁ! というわけで、桜花ちゃん早速着替えよう!」
もう着替えるのか、いやまぁ、時間が押しとるのかもしれんしな。
うむ、まあ、よいか。
「お、おう。では、行くか。……では二人とも、また後でな」
「あぁ、頑張れよー」
「頑張ってくださいね」
「うむぅ」
さてはて、どうなるかのう……。
というわけで、早速鈴木さんから渡された、今日着ることになる所謂仕事服に着替える。
なんと言うか、ちと大人っぽい感じかのう?
「いいねいいねぇ! いいよぉ、桜花ちゃん! その調子その調子!」
そして、儂は鈴木さんに促されるまま、ポーズを取ったり、笑顔を浮かべたり、かと思えば少しアンニュイな表情をというリクエストをされ、それに応えたり……などなど、なかなかの難しさに頭の中がそれにこたえるために、それで手一杯になる。
「うーん、もう少しこう、小悪魔っぽい笑顔とか作れる?」
「こ、小悪魔とな?」
「そうそう! まあ、できたらでいいから!」
「う、うむ、ちと試してみるが……」
しかし、小悪魔、小悪魔かぁ……うむぅ、イメージ的には……うむ、そうじゃな、ましろんを思い浮かべればよいな!
あの者、そう言う場面の場合、マジでこう、妖しい色気とでも言うべき笑みを浮かべるからのう、あれにはドギマギさせられるわい。
たしか、ましろんのあの笑顔はこんな感じで……
「――ッ! それそれそれぇ! それだよ桜花ちゃん! いいねいいね! 魅力的だよぉ!」
どうやら当たりだったらしく、興奮しながらパシャパシャ! とひたすらシャッター音が鳴りまくる。
周囲を見れば、なぜか頬を染める者たちが多数。
男女関係なくおるような……どういうことじゃ?
「あいつ、なんかこう、色々経験したからなんだろうなぁ、変な色気がねぇ?」
「……よほど、刷り込まれたと言うべきか、叩き込まれた、と言うべきか……きっと、凄まじい生活なんでしょうね」
む? 後ろで健吾たちが話しとるような……しかし、目の前に集中しとるせいで、良く聞こえん。
「じゃあ次は……そうだなぁ、可愛らしい笑顔とかできる? こう、少し幼げな印象のある笑顔とか」
「うむ、それは得意じゃ」
もとより、儂の体は女児故。
小学三年生程度の体が基本形態であるため、表情もそれにちなんだものになりやすいため、幼げな笑顔と言うのは言わば十八番と言えよう!
刮目せよ! 儂の幼い少女の笑顔を!
「――えへ☆」
わかりやすく、言葉にも出してみた。
ふっ、どうじゃ、儂の笑顔は!
『『『――ぐはっ!』』』
『『『キャーーーー!』』』
「え、何!? なんじゃ!?」
と思いきや、なんか周囲の様子が一変し、思わず儂も何事かと少し混乱し、モデルのことを忘れて辺りを見回してしまう。
男たちはなぜか胸を押さえ、女性の方はなぜか黄色い声を上げた。
何事!?
「お、桜花ちゃん!」
「はっ! す、すまぬ! つい……」
そして、鈴木さんからも呼ばれ、儂は注意かと思って慌てて謝るが、その考えは外れる。
「もう一度! もう一度今の笑顔を頼む!」
どうやら、注意をするためなどではなく、今の笑顔をもう一度浮かべてほしい、と言うものであった。
「え、あ、う、うむ。了解じゃ。では……えへ☆」
「よおおおおおおおおおし! 素晴らしいィィィィッッ!! 素晴らしいよ桜花ちゃんッッッ!」
なんか、すっごい受けとる……?
「いいねいいね、その笑顔! 大人っぽい女性が時折ふと見せる、まるで陽だまりのような温かな笑顔! これはイイッ! いいよぉおおおおおお!」
お、おう、鈴木さんの謎の熱意に儂は内心気圧されるが、とりあえず、写真が捗っとるということでええじゃろ、うむ。
「――いやぁ、まさかこんなにも素晴らしい笑顔が撮れるとは……うんうん、やはり俺の目に狂いはなかった!」
大満足! と言わんばかりの笑顔でそう言い放つ鈴木殿。
なんというか、眩しい笑顔じゃのう。
「では、もう終わりかの?」
「いやいや! まだまださ!」
「なぬ!?」
まだあると言うのか!? この服に着替えてから、かれこれ一時間はやっとるが気がするが……モデルとは、かなり大変なんじゃのう……。
いやしかし、これも仕事! 儂とて、アルバイトで仕事への責任感と言うものは養われておる! 引き受けた以上、最後までやり遂げるぞ!
「というわけで、次の服に着替えてね!」
「うむ、了解じゃ」
そう言えば、了解、という言葉はあまり仕事の場などでは使わない方がいいとされる言葉じゃが……まあよいか! 相手が気にしなければOK!
などと思いつつ、次の衣装に着替える。
今度は大人っぽい物ではなく、可愛らしいタイプ。たしか……ガーリッシュ、じゃったか? ファッションには疎いが、うちには生粋の女子が五名ほどおるんで、たまに耳にするんじゃよなぁ、あと、儂に着せようとてくるのもセットで。
しかし、随分とこう、可愛らしい服じゃのう。
白を基調としたところどころフリルがあしらわれ、ところどころに花がプリントされたデザインじゃな。
「うんうん、その服装もいいね! 今度は可愛らしさがさっき以上に前面に出てるよ!」
鈴木さんの様子も相変わらずであり、それはもう生き生きとした姿を見せながらシャッターを切り続ける。
時々ポーズを変えたり、表情を作ったりと、先ほどと大して変わらぬが、少しずつ注文が細かくなっていき、それに応じて難易度が上がっていくが……なかなかに楽しい。
慣れて来ると、こう、謎の楽しさがあるのう、これは。
この仕事に対する感情が少しずつ変わってきたところで、どんどんと衣服を着替えて撮影が進んでいく。
途中、所謂再び大人っぽい服装になったかと思えば、カジュアルっぽい物になったり、はたまた可愛い系になったりと、儂が着た衣装は様々であった。
そうして、夕方に差し掛かる時間帯になり……
「……うん、バッチリだね!」
やり遂げた、という思いが滲み出る笑顔と共に、そう告げる。
「では」
「あぁ、これにて終了! いやぁ、本当に助かったし、素晴らしい画をありがとう!」
「いやいや、こちらこそ、貴重な体験をさせてもらったわい」
ようやく、モデルの仕事が終わった。
儂らはお互いに握手をした。
「そう言ってもらえると助かるよ。友人の君らも、手伝ってもらって悪かったね」
「いいっすよ。なかなか面白かったんで」
「貴重な体験でした」
「そうかそうか! 君たちはいい子だねぇ!」
実は儂の撮影中、健吾と優弥は手持ち無沙汰ということで、仕事の手伝いをしておった。
そのおかげもあってか、かなりスムーズに仕事が進んだとかなんとか。
健吾は主に肉体労働を行い、優弥は細かな作業を中心に手伝っておったが、二人とも最後の方になるとかなり手慣れた肝心になっとったのが面白かった。
「それで、君たちへの報酬なんだけど……桜花ちゃんには、今日着た衣装を上げるよ」
「む、良いのか?」
「もちろん! 本当なら金銭の方がいいんだけど……契約を結んでるわけじゃないからねぇ。ごめんね?」
「いやいや、構わん。別に、金銭には困ってはおらんからのう」
「そっかそっか。ならよかったよ。あ、二人にはこれ」
「ん? なんすかこれ?」
「チケットのようですが……」
「そうそう。ここら辺に美味しい和食を出す店があってね。そこで使えるチケットさ。しかも、それを使えばタダ!」
「「マジで!?」」
「もちろん! あ、桜花ちゃんにもあるから、三人で行くといいよ」
「おぉ! それは嬉しいのう!」
「いやまぁ、かなり無理を言ったからね。これくらいは当然当然!」
そう話す鈴木さんの表情は、どこか申し訳なさそうであった。
いきなり見ず知らずの者相手にモデルをやってくれ! じゃからなぁ、そりゃそうじゃろう。
しかし、儂としても面白い経験だったのは間違いないのでな、うむ。
「あ、ところで桜花ちゃんは、名義とかどうする?」
「名義?」
「そうそう、雑誌内に掲載する名義だよ。たしか、高校生ってことらしいし、さすがに本名は困るんじゃないか、と思ってね」
「なるほど、確かにそうじゃのう……ならば、少し考えるので、ちと待ってもらえるかのう?」
「もちろんだとも!」
ふぅむ、名前、名前かぁ……さすがに、桜花まひろ、などと堂々と掲載させるのはいかがなものかと思うし、何より恥ずかしいからのう……。
そもそも、この撮影がどこのファッション誌かは不明じゃが、不特定多数に見られると考えると、ちとのう……。
特に、儂らの通う、水無月学園の者にバレたら、どうなるかわかったもんではない……だからこそ、名前を考えるわけじゃが……うぅむ、何が良いかのう?
んー……そう言えば、父上の旧姓は小鳥遊であったか? ならば、苗字は小鳥遊にして……名前は…………まぁ、適当にゲームのヒロインから持ってくればよいか! そうしよう!
「では、
「お、いいね! ビジュアルに良く合ってると思うし! じゃあ、その名前で掲載しておくね。あと、桜花ちゃんの住所を教えてもらえるかい? 後日完成した雑誌を郵送するから」
「了解じゃ。住所は――」
さすがに、現在の住所じゃと問題があると思った儂は、実家の方を答える。
どうせ、簡単に寄れるし、たまに行くこともあるからの。
問題なし。
「うん、じゃあそこに後日郵送するね。それから……」
と、何かを期待するような眼差しを向けて来る鈴木さん。
一体何じゃろうか? と思っとったら、
「どうかな? うちと契約して、本当にモデルとしてデビューしてみない?」
という本格的にモデルにならないか、というものであった。
あー、そう来たかぁ。
健吾と優弥の顔を見やれば、だろうなぁ、みたいな考えがありありと見える苦笑を浮かべとった。
「いや、申し出は光栄なんじゃが……儂、基本的にぐーたらするのが好きでのう。それに、今はまだ学生故じゃからな」
「そうかい? 桜花ちゃんなら、上を目指せると思うんだけどなぁ」
「ははは、そう言われても、儂はそう言うものに興味はないからのう。もとより、ファッション誌など読んだこともない」
「そうなのかい? 一度も?」
「うむ、一度も。女子向けの雑誌ならともかく、男子向けも読んだことないのう」
「そうなんだね。年頃なのに随分と珍しい。……でも、男子向け?」
おっと、失言じゃった。
さすがに、儂が発症者だとバレればちとめんどくさそうじゃな。
「そう言えば、随分と自然で綺麗な桜髪だけど……桜花ちゃんって、もしかして……」
「おっと、そこから先は言わないで置いてほしい。さすがに、こうも衆目に晒されとる状態では、ちと、な?」
「これは失礼。桜花ちゃんの言う通りだ。……にしても、へぇ~」
儂が発症者であると察したらしい鈴木さんじゃったが、儂が言葉を遮ると儂の気持ちを理解してくれたようで、ふっと小さく笑ってその先は言わんかった。
その代わり、興味深そうにまじまじと見つめて来る。
「この業界に身を置いてると、実際に君と同じタイプの人を見かけることがあるけど、誰もかれも容姿が整ってるものだよ。そして、高確率で売れっ子になる」
「ほう、そうなのか」
「やっぱ、いるんすか? モデル業界にも?」
「まあね。むしろ、その容姿を武器にして、芸能界に入る人は少なくないさ。まぁ、全員がそうとは限らないし、桜花ちゃんみたいな子も多いだろうしね」
「いや、こいつは割と特殊っすよ」
「そうなのかい?」
「はい。まひろさんは、色々と前途多難な人生ですから」
「いやまぁ、否定はせんけど……」
「ははっ、そうかそうか。たしかに、あの人たちは割と大変! とは聞くしねぇ。そういうことなら、勧誘は今のところは止めておこうかな」
「ふっ、今のところは、なんじゃな?」
「当然。そこに逸材がいるんだから、そうそう諦めるのももったいないでしょ」
なるほど、鈴木さんはかなり強かなようじゃな。
うむうむ、そう言う部分は好感が持てるのう。
「というわけだから、これ、名刺ね。気が向いたらいつでも連絡してくれていいから!」
「はは、うむ、貰っておくわい」
「いつでも! いいからね!」
絶対諦めねぇからな! という強い意志を感じるのう……とはいえ、熱意をもって仕事に打ち込める者と言うのは、総じてカッコいいからの。良いと思う。
「うむ、気が向いたら、な」
「気が向くのを祈ってるよ。……さて、そろそろ俺は撤収作業もしなきゃだし、何よりデータを取り込まなきゃだから、ここいらで失礼するよ。今日は本当に助かったよ、ありがとう!」
「うむ、こちらこそじゃ」
「「ありがとうございました」」
「うんうん。じゃ、またどこかで会うことがあったらまた会おう! じゃあね!」
最後にニヒルな笑みと共にそう言い残して、鈴木さんは撤収作業へ向かっていった。
「……さて! 儂らもそろそろ行くか! 儂、トレードーに行きたいし」
「お前、忘れてなかったんか」
「当然! むしろ、それがメインとも言えよう!」
「まひろさんらしいですね。では、そちらでの用事を済ませ次第、貰ったチケットで夕食と行きましょうか」
「じゃな! よーし、ゲームを買うぞー!」
モデルの仕事を終えた儂らは、その足で次なる目的地へと足を向けた。
――で、儂はゲームを買いに来たわけじゃが……
「だからお前、やめとけって言ったのによぉ……」
「まあ、今のまひろさんが来たらそうなりますよね」
「いやー……なんか、マジで申し訳ない」
儂が目的の階に足を踏み入れるなり、そこにいた客たちが騒然とし、そしてそれはもう顔を真っ赤にし、恥ずかしそうに店を出て行ってしまった。
「ったく……普通、その姿でエロゲを買いに来たらああなるわ」
そして、そんな光景を見て、頭が痛そうに顔を顰めながら、呆れた様な口調で言葉を零す健吾。
「そうかの? 別に、女でもエロゲをやっとる者は普通におるじゃろ」
「いやそう言う問題じゃねーからな!? ってかお前みたいな美少女が、堂々とエロゲフロアに来たら、男たちは恥ずかしがるよ!? どんな拷問だよマジで!」
「はっはっは! いや儂、中身男故、そのことがすっかり頭に入っとらんかったわい!」
「まひろさん、色々とアウトですよ」
「そうか? まあよい。客がいないのならば、儂としては楽に目的を果たせると言うもの! さっさと、目的の物を買って帰るぞ!」
「「えええぇぇぇぇ……」」
儂は生き生きとしとる反面、二人はそれはもう気まずそうにするのじゃった。
尚、儂が商品をレジに持っていくと、店員もそれはもうぷるぷるとしとったが……問題は無し、と言うことで。
あと、年齢確認はされなかった。
東京、やはり緩い……!
そんなこんなで、目的も全て達成し、美味しい夕食を食べ、電車に乗って帰宅。
今日の儂の両手には、それはもう大荷物が。
大量に獲りまくったクレーンゲームの景品が入ったでかい景品袋に、モデルの仕事で報酬としてもらった衣類の入った紙袋に、トレードーで購入したゲームが入った紙袋などなど、本当に荷物が多い。
子供状態では間違いなく持って帰れなかったのう。
あと、秋葉から乗った電車内でのことなんじゃが……やけにちらちらと見られ取ったんじゃよなぁ。
特に、女性から。
しかも、こっちを見てキャーキャー言っとるみたいじゃった。
なんかと言うか、こう……有名人だ! すごいすごい! みたいな感じ、とでも言えばよいのかのう?
あのモデルが原因か? しかし、果たしてそれだけでそうなるのかどうか……んー、まあ、良いか。うむ。
そうして、電車に乗り込むこと一時間弱で翁里市に到着した。
外は既に真っ暗であり、時刻は夜の九時であった。
そこから、儂らは他愛のない話をしながら途中で別れ、それぞれの家路に就いた。
儂も自宅である屋敷に到着し、玄関を開けると、
「お帰りなさいませ、まひろお嬢様」
柊さんと数名のメイドが出迎えてくれた。
「うむ、ただいまじゃ。ふいー、ようやっと家じゃ……」
「お荷物、お運びいたします」
「おぉ、助かる。この紙袋だけは儂が持っていくんで、それ以外を頼む」
「かしこまりました」
エロゲが入った袋以外を頼むと、儂は自室へ向かう。
「ふぅ……今日は疲れたのう……」
自室へ入るなり、儂は椅子に座って一息。
エロゲは上手い具合に隠す。
いやまぁ、別にバレたところで大した問題はないしのう……実際、そういうことを現実でしてしまっとる以上、恥ずかしがる必要など皆無じゃし、何より普通のラブコメ系しかないし。
儂、基本的にラブコメや恋愛物しかやらんのでな。
しかも、そういうシーンはスキップ。どうでもよし。
ならばコンシューマー版を買えばよい、とか言う奴もおるかもしれんが……売られとらんゲームをどう買えと! ならば本家を買うしかないじゃろうが!
「とりあえず、これは後日ゆっくりプレイするとして……あー、そう言えば、明日は神と出かける日じゃったのう。さっさと風呂に入って、ゆっくり休むとしよう」
明日のことを思い出し、儂は疲労感が半端ない体に鞭打って、浴場へ向かい、一風呂浴びてからすぐに就寝となった。
尚、風呂に入っとる途中で美穂たちが入ってきたが、特に何もない平穏な入浴じゃった。
……その光景に、一抹の不安を覚えながら。
どうも、九十九一です。
遂に……というほどではないですが、100話に到達しました! とは言っても、実際はこの話、101話目みたいなもんですが、一話だけ、裏、と言う形で投稿されてるからですね。本当は、あの後も裏、とうタイトルで投稿する、みたいな構想があったんですが、なんかなくなりました。めんどくさかったんや……。
というわけで、前にちらっと行った、各キャラの紹介用の回を投稿しようかなと思っております。割と簡単に書ける……と思うので、明日、もしくは早ければ今日中には出せるかな? と思ってます。
本編も、明日も投稿できたらする予定ですので、少々お待ちください。
では。