爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常 作:九十九一
「ん? 随分と騒がしい場所があるが……あれはなんだい?」
二人手を繋いで歩いておると、神が前方にとあるものを見つけ、首を傾げながら疑問を口にする。
その先にはあるのは……あぁ、なるほど。
「あれはゲームセンターじゃな」
「ゲームセンター……ふむ、あれが……話には聞いていたけど、随分と騒がしい場所らしい」
興味深い、と感想零す神。
こやつ、どんだけ娯楽に触れてこんかったんじゃ……普通、現代に生きる者であれば、ゲームセンターへは一度や二度くらいは行くと思うんじゃがのう……。
しかし、それほどまでの人生だった、ということでもあるか。
ほんとに寂しいのう……。
「で、行ってみるか?」
「そうだね。せっかくだ、今日は私の知らないものを知る日としよう」
「ん? 儂とのデートではないのか?」
ニッ、とからかうように笑いかけながら言えば、神は一瞬面食らった顔をするが、すぐにふっと笑う。
「……そうだったね。なら、それも込みで、楽しむとしようか」
「うむうむ、その調子じゃ。というか、もうちょい欲張ってもいいと思うぞ」
「そうかい?」
「うむ」
「欲張る、か……ふふ、そうだね。うん。じゃ、色々と教えてくれるかい?」
今までは何というか、やや硬めの印象を受ける笑みだったが、今し方神が浮かべた表情は柔らかい女性らしいものであった。
うむ、いい笑顔になったのう。
「当然。それが今日の儂の役目じゃ。おぬしがしたいこと、なんだってしてやろう。それが約束じゃろ?」
「ははっ、君、素でそう言う事を言えるのはすごいね」
「普通じゃろ」
爺ちゃん曰く、相手の欲しい言葉を察してこそ、だそうじゃが、儂的には直感的になんとなくで話とるからのう……そう考えれば爺ちゃんはなかなかにすごいことをしておったんじゃな。さすが爺ちゃん……!
「……あー、なるほどね、今までにそう言う情報があった理由に納得。たしかにこれは、危険だねぇ……」
「んん?」
小声で何かを言っておったが、上手く聞き取ることが出来なかったが、なぜか神の頬は少し赤かった。
どうしたんじゃろうか?
「まあよいか。では、何からやる?」
「ここにはどんなものがあるんだい?」
「そうじゃのう……数の多さで言えばクレーンゲームじゃな。他で言えば音ゲー、カードゲーム、レースゲーム、メダルゲーム……あとは、プリクラかのう? あ、元がスマホゲームのゲーセン版もあるな。どうじゃ? どれか気になる物はあるか?」
「ふむ、そうだね……個人的には、レースゲームが気にはなるかな?」
「あいわかった。では、まずはそこへ行くとしよう」
神が気になったのレースゲームということで、メジャーなレースゲーム筐体へ連れて行くと、丁度プレイしとる者はおらず、すぐに遊べる状態であった。
「車の運転の仕方はわかるか?」
「もちろん。これでも、一般的に取得可能な免許は全て取得済みだよ。ちなみに、普通車、バイク、大型二輪、トラックにバス、工事車両……ま、取得可能な物は取得した、と言う感じかな」
車の運転が可能か不可能かで尋ねたら、まさかの回答が返って来た。
特殊車両も運転可能とか、マジどうなっとんじゃ、こやつ……。
「なんじゃその無駄なスペック。というか、何に使うんじゃ」
「私は基本、取得できる物は取得する質でね。どうだい? 今度一緒にバイクにでも乗るかい?」
「お、いいのか? 是非頼む」
「冗談のつもりだったんだけど……ふふ、そうやって即答されると言うのは嬉しいものだね。なら、その時は連絡するよ」
「うむ! 楽しみにしとるわい」
バイクは昔、爺ちゃんに乗せてもらっておったが、それ以来乗れとらんからのう……。
そう言えば、大型二輪を除けば、バイクの免許は十六から取れたのう……ふむ、どうせじゃ、バイクの免許取得でも頑張ってみようかのう、夏休みなどに。
しかし、誰かの後ろに乗ると言うのも素晴らしい物である故、是非とも乗りたいものじゃ。
「さて……おお? まひろ君、これはどれを選択すればいいのかな?」
「とりあえずはストーリーでええじゃろ。慣れて来たらオンライン対戦すればよい」
「なるほど。ならまずは軽く走ってみるよ」
「うむ、頑張れ」
というわけで、神のプレイが始まったわけじゃが……。
「なぬっ!? お、おぬしそのドリフトどうなっとんの!?」
「ちょっ、なんじゃそのハンドル操作!?」
「えぇ、おかしくね……?」
思わず儂が声に出して驚くくらい、神の運転技術が凄まじかった。
明らかに一台分の隙間があるかどうかの場所を謎すぎるドリフトで抜けて行ったと思えば、ものすごい速度が出ておるはずじゃと言うのに、巧みなハンドリングで障害物や他の車両を避けまくり、最終的にはコンピューター相手にかなりの大差をつけてゴール。
「ふむ、こんなものか? よし、次はオンライン対戦とやらをしてみよう」
いや、こんなものて……ま、まあ、さすがにパーツ的なあれこれでさすがに……。
そう思っておった儂じゃったが。
「お、勝ってしまった。ふぅむ、いささか拍子抜けか?」
神は勝ってしまった。
しかも相手、かなり強そうなパーツを積んどった気がするんじゃが……え、何この、怖。
「ん、それなりに楽しめたし、次に行こうか」
満足したのか、神はプレイを止めて立ち上がり、荷物を持った。
「もうよいのか?」
「まあね。なかなか面白かった。さ、次だ」
「うむ。で、次はどうする?」
「そうだね……クレーンゲームがいいかな」
「ほう! いい目の付け所じゃな!」
「おや、君は好きなのかい?」
「まあのう! 昨日も、秋葉で乱獲してきたところじゃ」
「あぁ、確かの昨日は友人と一緒に遊びに行っていたらしいね」
「うむ。……まあ、その過程で色々あったが」
ほんのさっきまで、どや顔且つ笑顔で話す儂じゃったが、すぐにその後のことを思い出して笑顔が苦笑いに変わる。
そんな儂の表情を見てか、神は面白そうという思考が透けて見える笑顔で儂を見詰める。
「……ま、安心するといいよ。君のように、その場でスカウトされてモデルに! なーんてことになった人は少なくない」
「マジか」
「マジだ。養子が優れている、というのはそれだけで大きなアドバンテージさ。正直、顔が良ければ大抵は人気が出るだろう?」
「否定したいが否定できんのう……」
実際、どんなに性格が悪かろうが、結局顔が良ければ売れる、みたいな例は少なくない。
当然、人気はガタ落ちする場合もあるが、んなもんを気にしとるほどそう言った輩のメンタルは妙に強いし、面の皮も厚い。
酷いもんじゃなが、ある意味心理じゃな。
「ま、君は容姿も性格も、個性もいいし、さぞかし人気が出るだろうね? 小鳥遊恋羽ちゃん?」
「ちょっ、今はその名を出すでない!」
「まあまあいいじゃないか。どうせ、この名前を知るのは君と君の友人二人、それから雑誌を発刊している事務所だけさ」
「じゃあなぜ知っとるの!?」
「私だからね」
「くっ、謎の返しであるはずなのに、普通に納得できるのが腹立たしい!」
「ははは! 私にかかればどんなプロテクトも突き破るのだよ、まひろくぅん」
「それ、犯罪じゃね!?」
「大丈夫さ。発症者の情報を調べるのであれば、私の権限でどうとでもなるのでね」
「くっ、おのれマッドサイエンティストめぇ……!」
こやつめ、もしやハッキング技術を持っているのではあるまいな……?
……いや、絶対持っとるなぁこれ、断言できる。
現に、今も考えがいまいち読み取れん笑顔しとるし。
「ほら、私を楽しませてくれるんだろう? 早く、クレーンゲームとやらをやりに行こう」
「……はぁ、仕方ないのう」
やれやれ、と肩を竦めながら先へ進んでいく神の後を追う。
かなり楽しんどるらしい。
「ふむ…………お? これは?」
「ん、それが欲しいのか?」
神が見ていたのは、デフォルメされた可愛らしい少女たちがわちゃわちゃと、何か祭りのようなことをしている光景がプリントされたクッションであった。
「欲しいか欲しくないか、という天秤が存在するのならば、欲しいに傾くだろうね」
「ははっ、回りくどい言い方じゃのう。では、試してみればよい」
「そうだね。何事も経験経験」
儂の言葉に賛同した神は、すぐに財布から百円玉を取り出すと、一枚投入口へ入れた。
「やり方は……このボタンを押せばいいのかな?」
「そうじゃな」
「では…………ん? んん? んんん?」
カチ、と一番のボタンをほんの少しだけ押し、クレーンが止まり、カチ、カチ、カチ、と神が一番のボタンを何度も押し始める。
その顔は、不思議そうにしており、徐々に首を傾げていく。
……くっ、こ、こやつっ、ま、まじかっ……!
「ぷっ、くくっ……」
まさかの行動に、儂は笑いを堪えるが……
「変だね? 基盤か配線の故障かな?」
「ぶふっ!」
その直後、儂は思いっきり吹き出す。
すると、神が突然笑い出した儂を不思議そうに見つめつつ、大丈夫かこいつ、みたいな心配する表情を浮かべると言う、器用なことをしてのけた。
い、いやこれ、笑わんほうが無理じゃろ……!
「まひろ君、突然笑い出してどうしたんだい? 頭がおかしくなったかい?」
「ん、んなわけなかろうっ、ふふっ、ははははは!」
さすがに堪えきれなくなった儂は、声を上げて笑う。
だ、だって、だってぇっ……!
「お、おぬしっ、各ボタンは一度しか押せんのじゃぞっ……? な、なのに、お、おぬしっ、こ、故障て、基盤っ、配線って……ふふっ、くくくくっ……!」
堪え切れない笑いを漏らしながらも、儂はボタンが一回ずつしか押せないことを告げると、神は、あぁ、とようやく得心したようじゃが、すぐにむっとした顔を浮かべ、
「……あぁ、なるほど、そう言う仕組みだったのか。取扱説明書がないとは、なんとも不親切な設計だろうか」
「と、取扱説明書っ……!」
取扱説明書と言いだした。
「あっはははははは! ひひっ、ふぅ……はぁっ……んふっ」
取扱説明書発言にはさすがに堪えきれず、声を上げ、腹を抱えて笑う。
どうやったらそんな考えに行きつくんじゃっ?
や、やばい、笑い過ぎて腹が痛い!
「そんなに面白いかい?」
「い、いやだって、ぷくくっ、と、取扱説明書て……! 故障って……! あははははっ! お、おぬし、ほんっとに面白いのうっ……!」
これが小さな子供ならいざ知らず、大の大人がこの反応はさすがに笑うなと言う方が無理じゃわい!
「……君に面白い、と言われるのは妙に嬉しく思うが、そこまで大笑いされると、それはそれでイラっとする物だね」
「そ、そうは言うてもっ……んふっ、くふふふふっ……」
「君それ、呼吸出来てるかい?」
「む、むりっ……ひぃっ、ひぃっ……!」
や、やばい、い、息がっ、息が出来ぬっ……!
ひたすら笑う儂を、神はジト目且つむすっとした表情で儂を見る。
神、そのような表情が出来たんじゃなぁ……。
新鮮じゃのう。
「はぁ、ふぅ……いやー、笑った笑った」
「……君、そんなに笑うんだね」
「儂とて笑うさ。まあ、ここまでの呵呵大笑はなかなかないがな」
「へぇ、そうなのか。まあたしかに、君の今までの過去のデータから、笑いのツボが浅いかどうかと言われれば、浅くはないだろうね」
「おぬし、しれっと儂のパーソナルデータ、すっぱ抜いとらんか?」
「必要だからね☆」
「うわぁ、なんといういい笑顔」
殴りたいこの笑顔、とでも言うべき屈託のない綺麗な笑顔じゃなぁ……。
「で? 続きはせんのか?」
「おっと、そうだった。やり方も分かったことだし、早速……」
気を取り直して、再チャレンジ。
今度は失敗しないぞと意気込み、しっかりとボタンを長押しする。
さすがにミスらんか。
神が操作するクレーンは、かなりいい位置に移動し、クレーンが降下。
今回プレイしとるのは二本アームで、どんどん右に持っていき、最終的に棒から落とすタイプじゃな。
まあ、慣れれば大した難しさは無いが、一発取りは基本的には不可能なタイプではあるが……。
「……ん、少しずつではあるが動くのか」
「うむ、片方のアームを上手く使い、徐々にずらして落としていくタイプじゃな。慣れれば大した難しさはないぞ」
「そのようだ。今ので大体把握できたしね」
「ほう! では、お手並み拝見じゃな!」
「まぁ、任せたまえ」
自信満々にそう話す神は……
「お、本当に獲れた」
僅か数手で景品を手に入れておった。
「おぬしそこは普通、失敗する流れじゃろうが」
「どうしてだい? 私にかかれば、この程度造作もないこただ」
やはりハイスペックすぎんかのうこやつ。
もしこの世界がゲームの中や物語の中であるのならば、こやつナーフした方がよくね? ってくらいなんじゃが? おっそろしいのう……。
「まったく、天才肌め」
「そこは否定しないが……私にもできないことの一つや二つはあるぞ?」
「ほう、全く想像できんが……それは一体何じゃ?」
「休むことと恋愛。あと、家事」
「……お、おう」
なんとも悲しくなる三つじゃのう……。
「しかし、家事が出来んのか?」
「悲しいことに、これがからっきしでね。とはいえ、あまり家に帰らないからか、家があれることはないんだけどね」
「いやそれ、埃が酷くなっとるじゃろ」
「ははっ、正解」
「やはり……今度手伝うから、掃除した方がええぞ」
「おや、手伝ってくれるのかい?」
「ま、その程度はな。いくらなんでも、家が汚い状況と言うのは体に悪影響を及ぼすからのう。特に睡眠の質が下がる。故にこそ、手伝うと言うわけじゃな」
「……なるほど。しかし、私の体調が崩れようと、君には関係ないのでは?」
「なーにを言うとんのじゃ」
「あたっ」
ふざけたことをぬかす神の脳天にチョップをお見舞いした。
そこそこの力で打ったことにより、神は頭部を押さえてなんで殴ったの? という目を儂に向けて来る。
「おぬしは日本における責任者じゃろ? ならばこそ、おぬしは体調を万全にせねばならん。しかも、家に帰宅しないそうじゃな」
「ま、まぁ、研究所にも仮眠室はあるし……」
「それはあくまでも、仮眠を取るための場所であって、ちゃんとした寝床ではない。人間、しっかりとまとまった睡眠を取らねばならぬし、健康にはならんぞ」
「……たしかに」
「それに、おぬしが倒れでもすれば心配になるわい」
「そうなのかい?」
「当然じゃろ? おぬしがおらねば儂の能力の調査は誰がするんじゃ? 説明は? 研究は? 他にも色々理由はあるが……まぁ、一番でかい理由で言えば、やはり儂がおぬしを気に入っとる事じゃろうな」
「……っ」
「マッドサイエンティストな部分はあるし、何よりとんでもないタイミングでとんでもない爆弾な情報を投下していくが、それでも助かったことは事実……いや、助かったか?」
「そこは普通断言するところじゃないかい?」
ジトーっとした目で抗議された。
いやだって、おぬしのせいで儂、とんでもねぇことになったからな?
主に、夜のあれこれで。
……いやでも、実際にしたのは夜ではなかったし、昼間であったから……うむ、まぁ、別に良いか、夜のあれこれ、と言う風に表現しても。
「ごほんっ。まあ、ともかく、じゃ。おぬしにはなんだかんだ助けられた……うむ、まぁ、助けられたな。実際、おぬしが開発した開示薬のおかげで能力の詳細も知れた。おぬしのおかげで儂の能力の詳細を知れた。この時点で十分助けられていると言えよう」
「いやしかし、それは君だけではないが」
「うむ、そうじゃな。つまり、じゃ。おぬしが倒れようものなら、儂らにも被害が来る。もちろんそれはおぬしに頼りきりになっとることでもあるわけじゃ。故に、おぬしはしっかりと休息を取らねばそれはもう大変なことになるじゃろう」
「……」
「ま、そんなことを抜きにしてもおぬしは面白いからのう。接した時間は少ないが、それでも、いや、だからこそ気に入っとるわけじゃが」
人間、接した時間が短くともわかることはある。
そやつがどんな人間かどうか。
もちろん、ひたすら自信を隠すような演技力がある可能性もあるにはあるが……それでも、気に入るか気に入らないかは判断可能と言うわけじゃな。
儂的には、色々と教えてもらって助かっとる。
それに、なんだかんだちょこちょこ連絡したりするしのう。
「……ははっ、そう真正面から言われると、思わず面食らうし、何より気恥ずかしいね」
顔を赤くしながらぱたぱたと顔の熱を下げるためか、手で顔を扇ぐ。
んむ? そこまで顔を赤くするようなこと言うたかのう?
「ともかく、じゃ。その内儂はおぬしの家に行き、掃除をしよう。よいか?」
「……まぁ、その申し出はありがたいので、普通にお願いするよ」
「うむ! その時は任せよ!」
よーし、これで睡眠の質を向上させられるのう!
どうも、九十九一です。
ささっとデート話は終わらせようと思っているのになかなか終わらぬ。あと一、二話はかかりそうだなぁ……。
次回も、一応明日投稿したく思いますが、いつも通り期待しない程度でお待ちください。
では。