爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常 作:九十九一
クレーンゲームを終え、儂らはなんとなく騒がしくも、高揚感を与える場所を見て歩くと、
「そう言えば、プリクラというのはどのような物なんだい?」
「簡単に言えば、写真を撮る機械、じゃろうか? なんじゃ、気になるか?」
儂的には、昨日やったばかりじゃが。
ってか、よくよく考えたら昨日とやっとること、同じじゃね?
ゲーセン行って、クレーンゲームして、プリクラて。
なんじゃ、今日は昨日の焼き増しか?
「写真……それは、楽しいのかい?」
「んー、楽しいかどうかで言えば……まあ、楽しいぞ? 昨日初めて親友共とやってみたが、落書きもできるしのう。もとより、女性の友人同士か、カップルでやることが多い筐体じゃな」
「ふむ、思い出作りに近いのかな?」
「そうじゃな。儂も……ほれ、昨日の写真はこうしてスマホのケースに貼っとるわい」
証拠とばりに、儂はポケットからスマホを取り出し、その裏側に貼ってある昨日のプリクラを見せる。
「ぶふっ、女好きのめんどくさがりっ……」
「あー、そういや健吾の奴がミスったと言っておったのう……」
「ち、ちなみにこれっ、なんて書こうとしたんだいっ?」
ふふふ、と笑いながら元の文章を訊かれたので、儂は素直に答える。
「女好き、ではなく、嫁好き、と書こうとしたらしい。ま、間違いではないが……実はそれ、あ奴らに見られた時『旦那好きではないのですか?』と詰め寄られたのう……とはいえ、好きであることに間違いではない故、問題にされんかったがな」
「そ、そうかっ……ふふっ、そうかそうか……君はしっかり惚れているんだね」
「そりゃあのう。瑞姫はまあ……あれじゃが、他の面子に関してはそれなりの関係を築いとったからのう。ま、瑞姫もあれはあれで悪い奴では……いや、悪い奴ではない、か? いい奴、と訊かれればいい奴と答えられるが……んー、まぁ、暴走したら問題なだけでそれ以外は普通……うむ、まあ、問題なしじゃな。うむ」
「君それ、自分に言い聞かせてはいないかい?」
「……そうでもせんと、あの変態とは付き合えんよ」
これでも嫌いではないし、割と行きつくところまで行ったような関係になっとるからのう……ま、責任、と言う奴じゃな。
……いやでも、責任を取るのは向こう側で、儂違くね? 処女じゃないし。
あ、いやでも、体を戻した関係で戻っとるし……なんか、めんどくさいな、儂の体。
逆に、あやつらって普通に処女じゃよな? あれ、普通逆じゃね? これ、普通に考えれば儂がもらう側のような……何故、数度貰われとるんじゃろうか。
……ま、まあよいか。うむ、儂自身もまぁ納得しとるわけじゃから……うん、大丈夫……ちょっと、アレな感じだったけど、問題は無し……うむ。
「どうしてそんなに遠い目をしているんだい?」
「……ちと、色々思い出してのう……なんと言うか、儂って結構異常な生活なんじゃなぁ、と」
「本当に君、どんな生活を送っているんだい?」
「んー、元男なのに、下手な女性よりも女性的なあーれーをされとる感じ?」
「わかるようなわからないような……しかしそう言うと言うことはもしや、例の薬、使ったのかい?」
「……どう見える?」
「あぁ、察したよ。なるほど、そうか……。しかし、感想は?」
「ノーコメントじゃが……これだけは言える」
「ふむ?」
「とりあえず、死ねる」
儂は真顔で言い放った。
「本当に君、どんな生活をしているんだい?」
神が同情的な視線と言葉を儂に向けてきた。
割と面白そうとか言う神が、じゃ。
そもそもこやつ、割と下ネタとかも平気と言うか、自身のスリーサイズなんかも平気で言おうとするわ、アレなことも平気で言ってくるなと、普通に適応力高い。多分、儂以上。
じゃと言うに、この反応。
こやつにも、そういう気持ちはあったのか。
「……ま、まあ、儂の生活の話はいいとして」
「君の場合、生活の生の字が性別の性になっていそうだけどね」
「そういうこと言わんでくれる!?」
「はっはっは! まあまあいいじゃないか。とはいえ、こちらや国としてはありがたいがね、君はまだまだ高校生という青春真っただ中であり、同時に一番楽しい時期であるとも言える。少なくとも――できちゃった婚ならぬ、できちゃっ退学だけはしないようにね?」
「途中までは良かったのに、最後で台無しなんじゃが!?」
「本当のことだろう?」
「ぐぬぬ……」
確かに一切の比定が出来ぬ……儂としては全くそんなつもりはないし、その辺りの信念としては優弥がそうじゃな。
あやつもあやつで、過去に色々あったらしいし、彼女と別れる理由がそこにあるらしいしのう。
つーか、それは置いておくとしても、地味に『できちゃっ退学』が上手いのがムカつく!
「ともあれ、だ。折角だし、一緒にどうだい?」
「そうじゃな。ま、おぬしの初の有給であり、デートの記念に良いのではないか?」
「ははっ、そうだね。うん、是非とも記念を残しておこうか」
「うむ」
と言うわけで、昨日とは別の人間とプリクラを撮ることになった。
しかし、本当に昨日とやっとることが同じじゃのう……。
そうと決まれば早速、と言うのが研究者の性なのじゃろうか、儂の手を引いてさっさと筐体の中へ入って行く。
「へぇ、中はかなり狭いんだね。それに……ふふ、こうしてくっつかないと、二人収まるのは難しいかな?」
いたずらっぽく笑いながら、神は儂に自身の体を押し付けてきた。
手を繋いでいたはずじゃが、気が付けば腕に抱き着く形となり、何気に神の立派な胸が押し付けられ、正直少しドキドキする。
瑞姫たちではあまりせんのじゃが……あまり会わず、そして触れ合うことのない人物だからじゃろうか? とはいえ、これはこれで良いのう。
なんか、青春って感じがする。
まあ、相手ゴリゴリの大人じゃけど。
いやでも、その理屈で行けば結衣姉も大人か。
……じゃあ青春で!
「そうじゃな」
「おや、君は照れないのかい?」
「ははっ、これしきのこと、この三ヶ月の間に経験してきたことに比べれば……ふっ」
「オーケー、私が悪かった」
「まあ、そんなことはさておき。このまま撮るか? それとも、もう少しポーズを取るか?」
「ふむ、そうだね……折角だ、デートっぽくするかい?」
「ほう、それはどういうポーズじゃ?」
「そうだね、では……こういうのはどうかな?」
「――っ!」
次の瞬間、神の表情がものすごく色っぽい物に変わったかと思えば、儂の腰に手を回して思いっきり抱き寄せてきた。
まさかの表情と行動に、儂は思わず不意打ちでドキッとさせられた。
……なんか儂、女子にイケメン的行動を取られるとすっごいドキッとする性格に変わっとる気がするんじゃが……。
美穂や瑞姫、アリア、ましろん、結衣姉と、なぜかこういうシチュには弱い。
くっ、顔が熱い……!
「おやおやぁ? 随分と顔が真っ赤だが、どうしたんだい? ん? お姉さんに言ってみな?」
「は、辱めるでないわいっ! だ、第一、お、おぬしこそは、はは、恥ずかしいのではなにゃいか!?」
くそう、噛んだ!
そんな儂をニマニマとした意地の悪い笑みで見つめて来るのがなんかイラっとするぅ!
「ははっ、君、腕を組むのはセーフで、こういうのはダメなんだね?」
「し、仕方ないじゃろっ? な、なんかドキッとするんじゃもん……」
「おやおや、随分とまぁ乙女なんだね? ふふ、可愛いじゃないか」
「ぐぬぬぬぬ……」
節操がない儂の心めっ!
なぜじゃ、既にもう旦那が五人もおると言うのに、何故こやつにもドキッとさせられとんのじゃ儂ぃ!
あれか!? 儂はこういう者が好みで、惚れっぽいというのかっ!
くそぅ、このままではまずい……り、理性を……理性を120%で総動員させ、なんとしてでも本能と言う牙城を崩されぬようにせねばぁ!
「なるほど、ギャップ萌えというものでもあったか。君は本当に面白いね。データで見るよりもずっと」
「……まるで、儂の性癖を知っとるような口ぶりじゃのう」
「そりゃあね? というか、知ってるかい? 発症者たちと言うのは、もしも結婚しない、なんてことになれば、国からのお見合い婚があるんだよ?」
「え、マジで!?」
『はい、チーズ!』
カシャッ! と儂があまりにも衝撃的すぎる情報と言う名の爆弾を投下され、バッ! と横を向いた瞬間にシャッター音が鳴り、フラッシュが焚かれた。
し、しまった! 変なタイミングの写真が!
「おや、随分と間抜け面になってしまったね。撮り直すかい?」
「……おう」
「そうだね。私もちゃんとした写真が撮りたい。じゃあ、やり直しで」
気を取り直して写真撮影。
「のう、この体勢はやめんの?」
「? 何を当たり前のことを?」
「そ、そうか……」
離れるつもりはないようで、神はきょとんとしながらも、綺麗な笑顔を正面に向け、いざ撮影、となった瞬間、
「不意打ち」
「へ? ――ひゃぁ!?」
神が儂の頬にキスをしてきた。
ぼんっ! と顔が真っ赤になり、同時にシャッターが焚かれた。
「はっはっは! いやぁ、うん、やはり抵抗がないらしい。ふふ、まあ、口元は今回はしなかったけどね?」
「い、いやおぬし何しとんの!? 急に、き、キスとか!」
「いやいや、君は五人も旦那がいるだろう? キス程度、それはもう濃い~~~のを経験済みなのでは?」
「いやそうじゃけど! なんかこう、普段されとらん者にされるとドキッとするじゃろ!?」
あと、地味に口じゃないのがポイント高い!
儂なんて、いきなり直じゃったから、こう、ほっぺちゅーはすんごい気恥ずかしくなる!
あと、よく見れば神の顔あっか! 耳もあっか!
恥ずかしいのならばするでないわい!
……と、本気で言えたらいいんじゃが、なんか言えんかった。
ぐぬぬぬ。
「ドキッとした、か。ふふ、この私にドキッとさせられるとは、君と言う人物はどうやら、『ざ~こ♥』と言わざるを得ないね」
「なんでメスガキ風!?」
ちくしょーめ、なんかちょっとドキッとした!
おのれぇ、こんな体にした儂の旦那共め!
「はははっ、君がそうやって顔を赤く染めてわたわたするのは何と可愛らしく、なんてゾクゾクさせてくれるんだ」
そう言う神の顔が少し恍惚とした物へ変わり、なぜか自分の体をかき抱く。
「なんか変態っぽい言い回しやめてくんね?」
「いやいや、この程度はどうってことないさ。しかし……ふふ、聞いていた通り、Mなんだね?」
「ち、ちちちちがわい!?」
突然Mと言われ、儂はきょどりながら否定する。
いやもう、なんか最近、否定できないんじゃね? とは思っとるけど! それでも、認めたら負けじゃろこれ!
「隠さなくてもいいさ。色々聞いてるから」
にんまり、とSっぽい笑みを深めながら神がスマホをちらつかせた。
それを見て儂は誰が情報を漏らしたのか気付いた。
「あやつらじゃな!? あやつらに言われたんじゃな!? 吐け!」
「下着は穿いてないよ?」
「いやそう言う意味での『はけ』では……って、んんん!? おぬし今なんつった!?」
「いやだから、私、下着穿いてないよ?」
今日一番の爆弾が投下された。
「なんで今そのカミングアウト!? ねぇ、おかしくない!? 明らかに今するようなものじゃないよな!? え、儂どう反応すりゃええの!?」
なんかもう、ツッコミどころが多すぎるぅ!
儂一人でツッコミきれんのじゃけどぉ! ねぇ、こやつなんなんマジで!?
「んー、ツッコめばいいんじゃないか?」
「もう既にツッコんどるわい!」
「ははっ、君は突っ込まれる側だろうに」
とんでもねぇ発言に儂は吹き出す。
「ぶはっ! マジでどうした!? なぜに突然下の話に転換しとるの!?」
「おや、私としては『君はボケ側なんだから、ツッコまれる側だろう?』と言う意味で言ったんだが……おやおやおやぁ? 君は一体、どういう想像をしたんだい? ん? 恥ずかしがらずにお姉さんに言ってみな?」
「ちくしょーめ! この研究者、すんごい腹立つぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
殴りたいこの笑顔を浮かべながら、そして儂が一体何を考えて先ほどのツッコミを入れたのかを察した顔でほらほらぁ、と煽って来て、儂はプリクラの中で叫ぶのじゃった。