爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

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日常104 ド変態の策略。やっぱあいつおかしいだろ

「いやぁ、面白かった」

「あぁそうかい。そいつはよかったのう」

「悪かったよ、君の反応が面白くて可愛くてつい、ね?」

「むぅ~……」

 

 くそぅ、可愛いと言われて少し嬉しいと思ってる自分がおるのが憎い……。

 

 プリクラの落書きを終え、出来上がったものを回収してから、儂らはゲーセンを後にする。

 

「とはいえ、なかなかいい写真だね。君は素直だし、私もかなり楽しそうだ」

「……まぁ、今日のおぬしは随分と生き生きしとったからのう。先ほどのプリクラでの一件もそうじゃ。というかあれ、半分素じゃろうが、もう半分は無理しとらんかったか?」

「おや、気付いていたのかい?」

「そりゃぁな。特にキスなんかそうじゃろ。おぬしが恋愛は苦手、と言っていたからな。自分からするとか……ははっ」

「……なぜ鼻で笑ったんだい?」

「仕返し」

「ただではやられない、ということか。……ふふっ、面白い」

 

 とはいえ、否定しないところを鑑みるに、儂の推測は正解じゃな。

 

 もとより、こやつは産まれてこの方休日をこんな風に満喫したことはなく、ずっと研究をしていたと言っておった。

 

 恋愛も誘われはするものの、それを受けることはなく、ただただ断り研究に没頭。

 

 そのような者が自分からキスとか……無理じゃろうな、ほぼ確実に。

 

 なので、ギリギリできそうな頬にした、と言ったところか。

 

 という推測を神に話すと、神はバレてたか、とペロッと舌を出して苦笑い。

 

「……ま、君の言う通りさ。半分は本気だけど、半分は作っていたよ。だって、そうだろう? 私のような研究バカとも言える人間が、もしもそのようなシチュエーションにぶち当たった場合、自分から行けると思うかい? 答えはNO。そもそも、相手に好意があるかさえ不明瞭なんだ。作りでもしなければ無理と言うものだろう?」

「の割にはキスされたが? ほっぺに」

「抵抗がない、というのは本当さ。本当に、君相手には抵抗がなかった」

「あまり会ったことがないのにか?」

「うん。そうだね……なんと言えばいいか、私は君の雰囲気が理由なんだと思うよ」

「雰囲気とな」

 

 儂が聞き返すと、神はうんと肯定する。

 

 そして、その細かい理由を口にする。

 

「人と言うのは、ある種直感めいたものが働くことがあるだろう? 例えば、テレビで初めて見た有名人に対して、『なんとなく好き』『なんとなく嫌い』みたいな」

「ふむ、確かにそれはあるのう」

 

 そして、その結果割とずっとそうなる場合もある。

 

 言動はかなり真っ当なのに、どこか信用しきれんというか、それとも黒い何かを感じ取っておるのか、そんな感じ。

 

「私もね、君の雰囲気はなんとなく好きでね。なんと言うべきか……そう、私らしくいても受け止めてくれる、そう思えるんだよ」

「まあ、儂は別段他人の個性や考えを否定する気など到底するつもりはないしな」

「そうそこ。君は誰かを否定はしないだろう? その信念に近い物が雰囲気となって出ているのさ。だからだろうね、落ち着くんだよ」

「ふぅむ、なるほどのう……」

 

 そう言えば、美穂たちにも言われたことがあったな。

 

 たしか美穂は、

 

『なんとなく好きなのよねー、あんたの近く』

 

 と言っており、瑞姫は、

 

『まひろちゃんの雰囲気っていいですよね。暖かくなります』

 

 と言っており、アリアは、

 

『まひろ君って温かいよね。体じゃなくて、んと、雰囲気かな?』

 

 と言っており、ましろんは、

 

『……まひろんは陽だまりみたい』

 

 と言っており、結衣姉は、

 

『ひろ君は春風のような雰囲気があるわよね~』

 

 と言っておった。

 

 たしかに、全員が雰囲気が好き、と言っておった気がするのう。

 

 健吾や優弥も似たようなことを言っておったし。

 

「それで? 作った甲斐はあったか?」

「まあね。なんとか、答えが出せそうだよ」

「ならば良い」

 

 神のその表情に噓偽りはなく、どこか嬉しそうなぎこちない笑みであった。

 

「それにしても、君は随分と人を見るのが上手いね」

「む、そうか?」

 

 神にそう指摘され、こてんと首を傾げる。

 

 儂では特に思ったことはないが。

 

「あぁ。私としては、上手く隠せたと思ったんだがね」

「ははっ、相手をよく見ることは、良き人間関係を築くための大前提、じゃからな」

「それは、一体誰の言葉だい?」

「儂の爺ちゃん」

 

 いやもう、爺ちゃんという存在は今の儂と言う人間を作る重要なファクターじゃからのう。

 

 爺ちゃんが絶対の憶えろと言った言葉は憶えておるとも。

 

「あぁ、源十郎さんか。なるほど、あの人らしい。……そうか、君はあの人の性格や考えを色濃く受け継いだらしい」

「ほう! そう言ってもらえるとなんだか嬉しいのう! 儂、爺ちゃん大好きじゃったからのう!」

「ははっ、本当に好きだったんだね」

「うむ! 儂を育ててくれた優しい爺ちゃんじゃったからな。もし、爺ちゃんがおらんかったら、今の儂はないな。この病に罹ったとして、今以上に面倒な人生になっとったろうなぁ」

 

 そう、なんとなく思う。

 

 儂の両親はなかなか家に帰ってこず、爺ちゃんがおらんかったら、儂は一人寂しく家で過ごす悲しい生活になっておったことは間違いないし、何よりこの口調ではなくなっとったろうな。

 

「多分、爺ちゃんがおらんかったら、儂は――俺は、こんな風な口調だったんじゃないかね」

 

 ごくごく普通の口調でそう言えば、神はふふっと笑う。

 

「なんともまぁ、テンプレ主人公みたいな特徴のない話し方だね」

「じゃろ? 儂でもそう思う」

 

 それに、バリバリ違和感がある。

 

 やはり儂と言えば、この爺のような口調じゃな。

 

「しかし、あれが実際に作っておったとなると……あれか、下着を穿いていないも嘘じゃったと言う事じゃな。安心あんし――」

「それは本当だが?」

「え?」

「え?」

「「……」」

 

 空気が凍った。

 

 ……こやつ、マジで?

 

「……マジ?」

「マジだけど?」

「なぜ?」

「んー、理由は色々あるけど……ま、気にしないでくれたまえ」

「いやいやいやいやいや!? え、何!? おぬしそう言う趣味でもあんの!?」

「ははっ、まあ、趣味と言えば趣味かな?」

「えぇぇぇ……」

 

 てっきり嘘だと思っとったのに、まさかのマジ話とは……こやつのメンタルは無敵か?

 

 なんかもう、呆れるわい。

 

「ま、まあ、その話は今は置いとくとして……そろそろ飯時じゃが、どうする? フードコートにでも行くか?」

「それはいいね。ハンバーガーなる物が食べてみたい」

「お、いいのう。日常的に食べると体にはあまり良くないが、無性に食べたくなるんじゃよな、あれ」

「へぇ、そうなのか。なら、行こう」

「うむ!」

 

 目的地が決まったところで、儂らは再び手を繋いだまま歩き出した。

 

 

 飯を食い、その後も適当にぶらつき、なんとなくで映画を見たり、服を見たりなどなど色々として過ごし、そうしている内に気が付けば夕暮れ時になっておった。

 

 とりあえずショッピングモールを出た儂らは、一息つくべく、儂がお気に入りの公園にやって来て、ベンチに座る。

 

「んんっ~~~~~! はぁ……いやいや、遊んだ遊んだ。ここまで楽しんだのは初めてかな」

「楽しめたようで何よりじゃ。ほれ、アイス」

 

 儂は公園内にやってくるキッチンカータイプのアイス屋で適当にアイスを見繕って購入し、一つを神に手渡す。

 

「ありがとう。……ん、これ美味しいね」

「じゃろ? 実はたまーにこの公園にやってくるアイス屋でのう。見かければ食べるくらいには、儂も好んどる」

 

 家の近所……と言うにはいささか遠くはあるが、かなりの広さを持ち、家族連れやカップルでもよく利用する者がいるほどの公園で、稀にこうしてアイス屋がやって来ることがある。

 

 昔、爺ちゃんに食べさせてもらって以来のファンで、来ておれば毎回購入する程度には好きじゃ。

 

「君は色々知ってるね」

「ま、地元じゃからな」

 

 十年以上も住んでおれば、知らない場所の方が少なくなると言うもの。

 

 とはいえ、儂は基本的にめんどくさがりである故、遊びに行く時と買い物に行く時くらいしか外には出んがな。

 

 もちろん、平日は別じゃが。

 

「まさか、休日がこんなにも楽しいものだったとは思わなかったよ。本当に、ありがとう、まひろ君。君に頼んで正解だったよ」

「うむ、そう言われると付き合った儂も嬉しいと言うものよ。で、どうじゃ? 100点満点中、何点じゃ?」

「んー、そうだね……八十点」

 

 少し悩んでから告げた神の点数は八十点となんとも言えぬ点数じゃった。

 

「なんじゃ、何か不満だったのか?」

「そうだね……まず、今日はとても楽しかった。そこは認めよう。研究のことを考える暇がないくらいにね」

「では、100点で良いではないか?」

「うん、まあ、そうなんだろうけど…………この八十点は君と言う存在のことなんだ」

「ふむ? では、残る二十点は……」

「私さ」

「自分に点数つけてどうすんじゃい」

 

 いやまぁ、そもそも楽しかったかどうかを点数で聞くのもどうかとは思うが、それでも自分を含めた点数とか予想できんじゃろ、いやマジで。

 

 そんなことを思う儂を見透かしてか、神は言葉を続ける。

 

「それに、今日と言うデートはまだ終わっていないからね」

「なぬ?」

「元々、君に不満なんてないし、今日と言う日はとても楽しく、私の現在進行形で進んでいる人生の中で最も心から笑えた日と言える。でもね、まだなんだ。色々と自覚、理解してしまった以上、まだまだ終わらない。そうだろう?」

「おぬしが何を自覚したのかわからんが……一体何じゃ?」

 

 ただ、本当に今日が楽しかった、ということは理解できるし、何よりその言葉と表情に噓偽りはなかった。

 

 しかし、自覚し、理解した、と言う部分がいまいちわからず、儂は聞き返す。

 

 すると、神はあー、と何かを迷う声を出し、同時に視線をあっちへ行ったりこっちへ行ったりさせ、表情も似たような動きをする。

 

 顔はどこかほんのりと赤く、耳を見れば真っ赤になっておった。

 

 うむぅ?

 

 そんな状態がしばし続いたところで、意を決した顔つきになり、口を開いた。

 

「……さて、私は研究者だ。研究者たるもの、回り道をしてしまうことも多々ある。結論だって遠回りして得た物でもあるからね。そんな私が、その……なんだ、ド直球に言う事にはなるが……真っ直ぐ、受け止めてくれるかい?」

「そこまで覚悟が決まった顔をしとる人間の言葉を受け止められんような人間に見えるか?」

「……ははっ、見えないね。うん、じゃあ、言うけど……」

「うむ」

「私は……どうやら、君を存外好いてしまっているらしい」

「うむ…………んぇ?」

 

 思わずノリに近い形で頷いてしまったが、その言葉がしっかりと頭の中に浮かぶと、儂の口から変な声が出て、表情が固まる。

 

 しかし、そんな儂の気持ちや様子などガン無視と言わんばかりに、神は赤くい顔で続ける。

 

「私は元々、恋愛は多少の興味程度しかなかった。そうだね……何でもない一般人が、なんとなく六法全書に興味を抱く程度の」

「それ皆無に等しくね?」

「そうだね。けど、その程度の興味でも、一体どこで興味が大きくなるかわからない。渡しは君の話がきっかけだね」

「儂?」

「そうだ。だって、そうだろう? 君は僅か半月程度で二人の女性と結婚し、その後すぐに三人の女性とも結婚した。元々君が女性になる前からの関係性の女性ばかりではある。だけど……普通は、君たちのようにすぐには仲良くできないものさ」

「そう、なのか? ……いや、そうなのやもしれぬな」

 

 考えてみれば、儂らは何と言うか……瑞姫が上手い具合にしている感じがある。

 

 あやつはド変態で、どうしようもないロリコンではある。

 

 しかし、あやつはおそらく、負けヒロイン、と言うものが嫌いな傾向があるように思う。

 

 アリアとましろん、結衣姉辺りがいい例じゃな。

 

 美穂に関しては、瑞姫と同じタイミングでゴールインしたので少々具体例としては挙げにくい。

 

 しかし、あの三人は言わば後から参戦した者。

 

 好きになったタイミングで言えば、結衣姉が最も早いが、それでも、結婚したタイミングは一番遅い。

 

 本来ならば、あの三人は儂が結婚したと言う時点で身を引き、失恋する結果になったことじゃろう。

 

 第一、今でこそ発症者に限り、日本人でも多重婚が可能になるよう法が改正されとしても、今までの法で生きてきた者たちにとっては、まだまだ意識が変化しきっとらんし、何よりその法改正があったのは、八年前。

 

 当然、今までの日本ではどんな事情があろうと多重婚は認められず、一夫一妻制。

 

 それが八年前まで続く現代の日本の常識であり、現代における大半の国民の常識でもある。

 

 では、仮に一人の発症者に何人かの女性、もしくは男性が好意を持ったら?

 

 いくら多重婚という合法且つ全員が幸せになれる可能性のある道があったとして……果たして、全員が其れを納得するか? と訊かれればそれは否じゃろう。

 

 何せ、合法的に二股、三股が許されるわけじゃぞ?

 

 普通に考えれば、付き合ってる側は何とも複雑な気持ちになるのは間違いない。

 

 特に、恋愛と性行為は限りなくイコールじゃ。

 

 これが儂のように、男から女になったとして……もともとが、ヤリまくっとるような輩であれば気にせんじゃろうが、ではそやつと付き合う者はどうか? と訊かれれば……まぁ、快く思うような可能性は低いじゃろうなぁ。

 

 言い方は悪いが、気持ち悪い、と思ってしまっても不思議ではない。

 

 だって、そうじゃろ? 特に、そう言う趣味がない者であれば、

 

『こいつ、別の男も受け入れてるんだよなぁ……』

 

 みたいなことや、

 

『この人、別の人ともやってるんだよね……』

 

 みたいなことを考えるわけで。

 

 であれば発症者側は良いかもしれんが、そうでないもの、非発症者からすれば受け入れがたい物じゃろう。

 

 故に、多重婚をしてもギスギスする可能性は高く、本来であれば儂らのような関係を築くことはまず難しいじゃろうな。

 

 というか、本当に儂らがおかしいだけじゃろ、これ。

 

 普通、結婚したその日に、二人で協力して儂を襲うか? 怖くね? しかもその後、別の二人も追加されるし、どうなっとんのじゃ、マジで。

 

 ……と、まあ、これらが通常の考えじゃろう。

 

 儂らは、ある意味儂が元々あまり気にしない質であったこと、そして他の五人も結婚できるならなんでもOK! みたいな考えであったことも功を奏した。

 

 そして、それをサポートしに行く瑞姫と言う存在もな。

 

 なるほど、そう考えれば神の言う事もものすごい理解できようと言うもの。

 

「そうだろう? だって、君たちは旦那同士の仲がとてもいい。当然、君とも。普通はそんなことはできないよ。受け入れる側の人間の懐が深く、そして誰かを大事に思える人間でなければね」

「そ、そうかのう?」

「君は、そうだと思うよ」

「そ、そうか」

 

 そう言われると、なんともむずむずするが……なるほど、そう言う見方もあるということか。

 

「そんな君だから、私は少しは恋愛に興味を持ったし、君という一個人に興味を持った。正直、今日という日はある意味君と一緒に過ごして、私の気持ちを確認する日でもあったわけだ」

「そうじゃったのか」

「そして、私は君の今日の言動や行動の数々で、少しずつ君に惹かれていく自分がいた。最初の内は気のせいかな? 程度だったけど……いやー、プリクラのあとのあれはずるかったね。まさか、私の気持ちを見抜くとか……君、女たらしとか言われない? もしくは人たらし」

「人たらしはないが……なんか、女たらしとはよく言われる。不本意じゃが」

「五人も旦那さんを作っているのに不本意は無理がないかい?」

「……い、言い返せねぇ」

 

 たしかに、それはそうじゃなぁ……。

 

 なんか、五人曰く、普通に女たらしとか言われとるし。

 

「さて、話を戻して……つまり、だね。私は君のその考えや言葉を気に入り、そしてこの短い間で恋愛感情を植え付けられるに至ったらしい」

「お、おう、そうか……」

 

 改めて言われるとマジで恥ずかしいな……というか、アイス溶けそう。

 

 あむ……うむ、美味い。

 

「いやはや、わからないものだね。一回り近く年齢が下の、それも学生相手に好意を抱くとか……昔の私が知ったらどう思うだろうね?」

「そんなもん、おぬしのことじゃ。どうせどんな気持ちなのか、どんな相手なのか、どんな生活になっておるのか、そう気にして、同じ道を辿ろうとするじゃろうな」

「……ふふ、そうか。君が言うのならば、そうなんだろうね。と言うか君、下手したら私以上に私を理解していないかい? 知り合った期間は浅いのに」

「ま、なんとなく、じゃな。あれか、親戚だからなんとなくわかるのではないか?」

「ふむ……なるほど、それはありそうだ」

 

 小さく笑って、儂の言葉に同意を示す。

 

 ま、なんとなく、であることに変わりはないがな。

 

「さて、いい加減結論を出した方がいいか。まひろ君」

 

 佇まいを正すと、真っ直ぐ、真剣な表情で儂を見詰める神に感化され、儂もつい、背筋をピンと伸ばして言葉を待つ。

 

「……なんじゃ?」

 

 そして、真っ赤な顔で……

 

「私の……お嫁さんになってくれないかい?」

 

 それはもう、びっくりするくらい綺麗な笑顔でプロポーズしてきた。

 

 ただし、儂に嫁になってほしいという文言で。

 

「普通逆じゃね?」

 

 はいかいいえかで応えるはずじゃと言うに、儂は思わずツッコミを入れておった。

 

「おや、瑞姫君からは『プロポーズする時は、お嫁さんになってほしい、というセリフが有効ですよ!』と助言されたんだがね」

 

 変だな、という気持ちが見て取れる表情でカミングアウトされた。

 

「あやつ何言ってくれとんの!?」

 

 くそぅ、どうあがいても儂は嫁と言う事かっ……!

 

「それで、返事は? というか、君の返答次第で私の点数が二十点増えるか増えないか変わって来る」

「なぜに!?」

「ははっ」

「なんじゃその乾いた笑い!?」

 

 一体何を企んでおると言うのか……!

 

「それで? 返答は?」

「……そう、じゃな。ちと、頭を整理させてくれ」

「二分で頼むよ」

「短くね!? っていか、制限時間付き!?」

「それはそうだろう。こっちはドキドキしすぎて、心臓が爆発しそうなんだ」

「ぐっ……わ、わかった。頑張って考えてみる」

 

 というわけで、考えてみる。

 

 まず、人柄……別に嫌いではない。

 

 なんか、マッドでサイエンティストな部分があることは否めんが、別に性格が悪いわけでは無く、むしろ面白いまである。

 

 気が合うか合わないかで言えば、合う方じゃろうな、間違いなく。

 

 容姿……いやまぁ、元々容姿を気にする方ではないが、まあ、好きじゃな。結衣姉とは違ったタイプのお姉さんと言えるし。

 

 では、最後に問題の恋愛感情の有無。

 

 ………………ど、どっちじゃこれ?

 

 いや、果たして好きかどうか。

 

 そもそも、恋愛感情とはなんじゃ? という気持ちがなくはない。

 

 特に、結衣姉を相手にした時のあれと似とる。

 

 は、果たして好きなのか……間違いなく嫌いではないが……。

 

「……ちなみに、まひろ君は私が嫌いかい?」

 

 少し声が震えながら神がそう訊いて来たが、

 

「んなわけあるまい。どちらかといえば好きな方ではあるな」

 

 儂はそう即答しておった。

 

 ……いやもう、今のが答えじゃね?

 

 すんなりと口から出た時点で、間違いなくそうだよね? ね?

 

 それに……瑞姫がプロポーズの仕方をレクチャーしとる時点で、間違いなくOKがで撮るのと同義じゃよな?

 

 え、じゃあもしや、あの時の電話って…………あー、なるほど、つまり、じゃ。我が旦那その二の特殊能力、『旦那さんセンサー』なるものに引っかかった、というわけか……。

 

 なるほどのう、それにあやつ、どうも何らかの基準があるっぽいんじゃよなぁ……。

 

 実は、儂がたまーに告白されることがあるんじゃが、大抵は瑞姫を筆頭にダメ、と言って来るみたいなんじゃが、どういうわけか、現在の旦那共にはOKサインを出しとるわけで。

 

 その基準とは、儂のことが好きな度合いと儂の相手への好きの度合いで判断しとるのではなかろうか。

 

 しかし、もしそうならば神の説明が付かんが……その辺りは瑞姫に訊けばよいか。

 

 その前に答えを出さねばならぬ。

 

 ちらり、と神の顔を見る。

 

 そこには、いつものなんてことありませんよ? みたいな冷静な顔でこちらをじっと見つめる姿があった。

 

 ………………まぁ、そうじゃよなぁっ……。

 

「…………はぁ、負けじゃ負け。儂の負けじゃな、これは」

 

 ふっと諦めたような笑みと共に儂がそう言えば、神の表情がパァッ! と花開くような笑顔へと変わる。

 

「! それじゃあ!」

「いやまぁ、おぬしが良いのならば、儂は構わん。第一、そこまで真っすぐに言われると、儂としても、断れんわい」

「そ、そうか! ははっ、なんて心臓に悪いんだろうね、告白と言うものは。二度としたくはないかな」

 

 そう言いながら、神は自身の胸に手を当てて心底安心したような表情を浮かべる。

 

 今の告白ではなくプロポーズだと思うんじゃが……ま、まあよいか。

 

「というわけで、あー、なんじゃ。今後とも、よろしく頼む」

「――っ! あぁ、こちらこそ、不束な研究者だがよろしく頼むよ」

 

 お互いに照れくさそうに笑いながら、改めてと挨拶を交わした。

 

「ははっ! そうか。研究者として、か。そこは普通、女とかではないのか?」

「いやいや、君との関係性の場合、男とか女とかは関係ないと思ってね。だったら、研究者の方がいいだろう?」

「それもそうじゃ」

 

 はははは! と二人揃って笑い合う。

 

 なんと言うか、楽しくはあるのう。

 

「さて! 君が私を受け入れてくれたことだし、残る二十点を取りに行こうか!」

 

 後顧の憂い無い! いざ出陣! みたいな謎に残り二十点を取りに行こうと意気揚々と立ち上がる神に、私は純粋な疑問をぶつけてみる。意味は何? と。

 

「あ、そう言えばそんなことを言っておったのう……して、それはなんじゃ?」

「ははっ、決まっているだろう? ……そう言う事さ」

「……儂、帰っていい?」

 

 神のその言葉で全てを悟った儂は、言外に帰らせてくれと言ってみたが、

 

「ははは! それはダメだね。私は知っている。君が結婚した日に初夜を迎えていると」

 

 却下された上に、とんでもねぇことを言われた。

 

「誰情報!? いや、言わんでよい。どうせどっかのド変態ロリコンじゃろうからな!」

「よくわかったね?」

「やっぱりな!」

 

 あやつ以外ありえん!

 

 おのれぇ、どこまでも儂を阻みおってからに……!

 

「というわけだから、行こうか。なに、悪いようにはしないさ」

「何を言っとんの!? いやマジで! というか、え、本気!? 本気なのか!?」

「もちろんだとも。あぁ、それと、その姿は維持ね。さすがに、小さい状態はまずいから。まあ、本番では戻ってもらうけど」

「目が本気ぃ! 目がマジ本気ぃ!」

「さぁ行こうか! いやー、私も気になっていたんだよね。例の薬」

「はっ? 例の薬? いや、そんなもん儂はカバンには……って、入っとる!? なんで!?」

「瑞姫君があらかじめ入れておくと言っていたよ?」

「なんじゃと!? ま、まさかあやつ、こうなることを見越して!?」

 

 だとしたらマジで怖いんじゃけど!

 

 え、なんなんあのド変態!

 

 なんでこうなることを察しておったかのような行動を先んじで行っとるんじゃい!

 

 くそぅっ! なんという状況……!

 

「さ、行こうか! どうせ、許可は出ているんだ。安心するといい。知識や発症者たちの経験談をこれでもかと訊いているから!」

「それ笑顔で言う事じゃな――ひにゃあああああああああ! 連れてかれるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!」

 

 ずるずると引きずられて行く儂の叫びは、暗くなった公園の中に消えて行った。

 

 ……ちなみに、人生で初めて、自宅の建物でしました。神はすっごい……強かったです。まる。

 

 おのれぇ、瑞姫ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! あ、ちょっ、神やめっ―――。




 どうも、九十九一です。
 はい、この落ちです。別のエリアでのこの作品のことを知ってる人ならわかるな? そう言う事です。わからない人は気にしないでください。
 次回ですが……この回の影響で、書かなきゃいけないことが増えたんで、少し遅れる可能性がありますが、正直あくまでもメインはこっちで、あっちはサブみてぇなもんなので、こっちを優先的に書きます。まあ、期待しない程度にお待ちください。
 では。
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