爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常 作:九十九一
雑談をしながらの移動はあっという間で、ほどなくして屋敷に到着。
玄関から屋敷の中に入るなり、例によってメイドたちが出迎えたが、今回は祥子姉がいたためか、一瞬だけ表情を変えたが、すぐに何かを察したようで儂と共に美穂たちがいる場所へ案内される。
案内されたのは喫茶室で、二人揃って中に入ると、そこには茶をしばきつつ、軽食を食べる五人の姿が。
「あ、おかえりまひろ。それから……一応初めまして、祥子さん。音田美穂です」
「改めまして、羽衣梓瑞姫です」
「時乃=C=アリスティアです! よろしくお願いします!」
「……氷鷹真白。よろしく、しょうみゃん」
「桜小路結衣です~、大人同士、仲良くしてくださいね~」
「あぁ、これはご丁寧にどうも。神祥子だ。なんかすでにあだ名で呼んでいる人もいるが、どう読んでくれて構わないし、敬語も不要だ。よろしく頼むよ」
旦那同士の挨拶終了。
なかなかに和やかじゃし、意外にもこれと言った不和もなさそうで安心。
聞けば、ビデオ通話をしておったと聞くし、その時点で色々察しておったんじゃろうな。
「まひろ君は朝ご飯食べたの?」
「いや、まだじゃな。遅刻する! と思って、そこを失念しておったわい」
「そうだね。あのホテルは朝食のサービスもあったんだけど……ま、構わないさ。何か、摘まめるものはあるかい? 私も、体力を使って空腹でね」
「それなら、ちょうどサンドイッチがありますよ~。ひろ君もどうぞ~」
「おぉ、それは助かる。いやもう、ほんと腹ペコでのう」
軽食がありこれ幸いと儂と祥子姉は、適当に椅子に座ろ――うとしたところで、儂は結衣姉の膝に乗せられた。
デスヨネー。
とはいえ、腹ペコなのでツッコミは入れずに、空腹を満たすためにサンドイッチを頂く。
「おや、随分と美味しいね、これ。素材がいいのかな?」
サンドイッチを一口齧るなり、祥子姉がその美味しさに少し驚いた表情を浮かべ、ふふと瑞姫が微笑みながら答える。
「そうですね。我が家では、専属の料理人がおりまして、素材もこだわっています。……とはいえ、まひろちゃんが『高い食材はマジ勘弁……』とのことでしたので、最近は商店街の食材のみを使用していますけど」
ああ、それなぁ……弁当の中身がやたらと高級食材だったもんで、さすがに儂もこれはなぁ……とか思ったため、瑞姫に頼んでせめて商店街で手に入るようなものにしてほしいと頼んだ。
それらは問題なく受け入れられ、今ではごくごく普通の食材を用いた料理が食卓に並ぶ。
なのに、え、これ本当に高級食材じゃないの? とか思うくらいには味がいいんじゃが。
やはり、料理人の腕か……。
「へぇ、ってことはいい素材が多いと言う事か……ふむふむ、これはありがたいね。今後は、私も食べられる、ということだろう?」
ひょい、と口に手に持った残りのサンドイッチを放り込み、期待と嬉しさが籠った表情でそう言葉を零す。
「それはそうよ。祥子さんもまひろの旦那になったんだから、当然。あ、引っ越しの手配は瑞姫が既にしてるわ」
「ほほう、さすがだね。とは言っても、私は持ってくるべき荷物は全て研究所なので、家にはないんだがね」
「もぐもぐ……ごくん。ん、そうなのか?」
てっきり、何か家から持ってくるものがあるのかと思っとったんじゃが……。
「君には話したと思うけど、私はほとんど家に帰らず、研究所住みみたいなものだからね、必要な物は全部研究所に置いてあるのさ。だから君と私の立場を利用して、職員に梱包を頼み、引越し業者に引き渡してあるのさ。しかもそれ、昨日の夜の話なんだけどね。放置の時の」
「えぇ……そこまでしとったの? あの時」
「まあね」
思い出すのが、恐ろしくもドキドキするあれこれの間に、こやつ色々しとったんじゃなぁ……。
それはそれとして、せめて儂が普通の状態でしてほしかった。
「むぐむぐ……んで、今日は結婚式のあれやこれやで今日は欠席と訊いたが、マジなのか? まあ、おぬしらがこうして呑気に茶を飲んどる時点で、マジじゃろうが」
「マジですよ。お父様が言うには、着々と準備は進んでいるようですので」
「そうか。しかし、急遽一人追加となったが、問題はないのか?」
「ないですよ。今更一人増えても、大した問題ではないみたいですよ?」
「さすが羽衣梓グループじゃのう」
一人増えても問題ない、か。
うぅむ、しかし……
「やはり、儂だけウェディングドレスだけというのも……不思議なもんじゃなぁ。まさか、ウェディングドレスを着る羽目になるとは予想しとらんかったし」
「そりゃそうでしょうね。あんた、三ヶ月前までは男だったし」
「あはは、それを言うなら、あたしたちなんてタキシードだもんね。ウェディングドレスにも憧れはあったけど、まひろ君と結婚するなら、やっぱりタキシードの方がいいからね!」
「どういう理屈じゃい」
「……ん、ましろんはお嫁さんで、私たちが旦那さんだから」
「当然よね~?」
「ははっ、君の場合、尻に敷かれているようだね」
「普通、嫁側の儂が敷く側だと思うんじゃがのう……」
それすらないとはこれ如何に。
いやまぁ、儂としては別に尻に敷くつもりもないが……あれか? 子供を産んだら色々と変わるのかのう……。
んむぅ、そう考えると、少々興味は沸くのう。
……もっとも、今のままの状態を続ければ、間違いなく……儂が母親になりそうではあるんじゃがなぁっ……!
しかし、こやつらも女であるわけで……そう言う事に興味はないのじゃろうか? それとも、あるけどそれ以上に儂にするのが好きとか?
どちらにせよ、儂の負担が多いことに変わりはないか……。
んー……一応、訊くだけ訊いてみるか?
「のう、おぬしら、一つ訊いてよいか?」
「どうしたの? まひろ」
「今回、儂らは結婚するわけじゃろ? いやまぁ、法律上では祥子姉を除きしてはいるが」
「……ん、そうだけど」
「あー、以前、祥子姉以外とは話したが、儂らって、仮に子供を作ろう! となった場合、誰が産むん?」
「「「「「「……あー」」」」」」
儂の疑問に、六人は確かに、という感情が伴った声を零した。
そして、全員が腕を組んでうんうんと唸りながら悩むこと数分……結論は、
「「「「「「まあ……どっちでもいい(わね)(ですね)(かな)(わ~)(ね)」」」」」」
どちらでも構わないという、少し意外な回答であった。
「……む? ということはつまり、儂でなくともよいと?」
「そうなるわね」
「むしろ、その辺りは特に気にしなくともよいかと」
「そうかの? 割と重要なことだと思うんじゃが」
だって、子供ぞ?
これがごくごく一般的な恋人や夫婦の間であれば、こんな頭のおかしい話題は出ることはないんじゃが、儂らのような発症者を中心とした結婚では、正直色々と考えなければならん話題じゃろ。
特に、儂らのように肉体的同性であるのならば、猶更。
「まー、それはそうだし、私たち的にはまひろが産もうが、私らが産もうが結局私たちの子供であることに変わりはないし、別にいいかなと」
「美穂……」
「それはそれとして、普通にまひろを襲うけどね!」
「美穂ォォッ!」
くっ、少し感動してしまった儂がバカじゃった……。
よく見れば、他の面子も似たような表情じゃし!
あ、でも祥子姉だけはははは、と研究者の如き鋭い目つきで笑っとるが。
……ある意味、一番ヤバそう。
「でもでも、祥子さんはまひろ君の方がいい! って言うかなーって思ったんだけど、違うの?」
「ん? あぁ、まあね。個人的な興味としては、まひろ君が産んでもらった方が面白――ごほんっ!」
「おぬし今、面白そうとか言いかけんかったか?」
「研究が捗るけど、それはあくまでも研究者としての話で、個人的には別にどちらでも構わないさ! だって、ねぇ?」
「無視かい。……しかしまぁ、たしかに、おぬしはそう言うかもしれんな」
こやつ的にはあれじゃ、能力的なあれこれでどっちでもいいとか言っとるな。
おそらく、発症者、非発症者どちらが子供を産んでも、何らかの能力は持っとる可能性があるからな。
うぅむ、地味に外道。
「ひろ君、それってどういうこと~?」
「ん? あぁ、そうか。んー……祥子姉、こやつらには言うべきか?」
「そうだね。結婚する以上は大きく関係するし、知らないままその状況にぶつかった場合、どうなるかわからないから」
「了解じゃ。では、まあ、簡単に説明するが――」
というわけで、つい先ほど祥子姉から聞かされた話を五人に話す。
当然、このことは全く知らんかったので、五人は大層驚き、ものすごい反応に困っていた。
「――というわけじゃな。一応、このことは他言無用な? 家族に教えるのも、今は控えてほしい」
「……はぁ、まさかそんな爆弾情報があったとか……あんたと結婚して一番驚いたかもしれないわー」
「あ、あはは、そう、ですね……さすがのわたしも、そのお話には驚きます」
「じゃあじゃあ、あたしたちの子供はすごい人になるのかな?」
「……多分? でも、持つ能力による」
「もしそうなら、身を守れるものだといいわね~」
「そうだね。あくどいことを考える人たちが現れないとも限らないし、結衣君の願いには同意するね。まあ、私としては私のように研究者になってほしいと思っているので、その方面で有用な物を所持してくれたら嬉しいが」
「おぬし、まだ生まれるかわからん子供にマッドサイエンティストを継がせる気か?」
「当然だろう?」
なんという曇りなき眼じゃろうか。
それ以外ある? みたいな顔しとるのう……。
「しかし、子供が生まれた場合、儂としては自分の人生を自由に選んでほしいがな。親が決めるのは違うじゃろう」
「そうね~。私の家も、ひろ君に励まされてなかったらそういう人生になっていかもしれないし、そこは賛成するわ~」
儂の発言に、自身の家のことを思い出してか、結衣姉が感情が強く籠った声で同意する。
いやまぁ、結衣姉は過去に政略結婚をさせられそうになっておったと聞くしのう……ただ、冬治さんたちは結衣姉の気持ちを重視しておったので、結衣姉が気持ちを打ち明けた途端に白紙になったみたいじゃからな。
しかし、今思えばあれは色々とまずいことをしておったのでは? と思わんでもないが……まあ過ぎたことじゃし、いいんじゃろう。
多分。
「たしかに。というか、今そう言うことを話しても仕方ないんじゃない? まだ子供はできてないわけだし」
「そうですね。そもそもまひろちゃん、未だ生理が一度も来ていない以上、間違いなく妊娠しないと思いますし」
「あー、そういやそうじゃのう……まあ、そのうち来るのではないか?」
一瞬、祥子姉がちらりと儂を見てきたが、お互いに軽く頷き合う。
儂の体、間違いなく小学三年生とかその程度であるため、まだそういう段階ではないんじゃろうな。
……おかげで、色々酷いが。
ちなみに、儂の能力が時間を戻す、進めることであることは話してはおらん。
どこから情報が漏れるかわからん以上、下手に話すのもあれじゃし、それに……『成長退行』で押し通しても大して困らんしな。
実際、時間関係を所望する者とか、瑞姫くらいじゃろ、マジで。
ま、今のままでおれば、少なくとも妊娠する! などということはないじゃろ。
「……でも、まだ来ない方がいいと思う。辛い人は辛いから」
「あー、わかる。私も正直しんどいし」
「わたしはそうでもないですけど……やっぱり、気持ち悪くなったりしますね」
「あたしは寝込んじゃうなぁ」
「私は腹痛が酷いわ~」
「ははっ、どうやらみんな困っているらしい」
「……しょうみゃんはしんどくないの?」
「私は研究者だよ? それも、発症者に関する。であれば当然、人体についても精通していると言うもの。男性にも、女性にも」
「「「「「――ッ!!」」」」」
祥子姉のにやりとした笑みを見た瞬間、まさか! と旦那たちの顔がまるで救世主が現れたが如き期待の眼差しを祥子姉に向ける。
その視線を一心に受けた祥子姉と言えば、ふふんと自慢げな表情をしたかと思えば、どこからともなくカプセル状の何かが入った小瓶を取り出し、テーブルの上に置いた。
「これは、所謂抑制剤と言うものでね。人体になんら害を及ぼさないけど、痛みや吐き気などを大きく軽減してくれる薬さ。私と薬士創一君との合作でね、それはもう効果はすさまじいよ?」
「「「「「ま、マジですか?」」」」」
「マジマジ。私もこれには助けられていてね。本来ならば、ひたすら不機嫌になる私だけど、これさえ服用すれば苦しまない。まだまだ量産体制が整っていないから主に発症者や、その発症者と深い関係の人たちにしか配られていないんだけど……当然、これは君たちも得る権利はある。というわけで、五人には一瓶ずつ上げよう」
「「「「「ありがとうございます!!!」」」」」
話の途中ですらきらっきらとした表情だった五人は、祥子姉がさらに取り出した小瓶たちを見て、そして貰えるとわかるなり心の底からの感謝の言葉を祥子姉に放っておった。
なんか、話が微妙に生々しいが……うむ、まあ、あれじゃな。儂もいずれこのような会話に混ざると思うと、なんとも言えん。
しかしまあ、ここまで喜びようから察するに、よっぽど酷いんじゃろうなぁ。
思い返してみれば、美穂とアリア、ましろんの三名は妙に体調が悪そうな時が定期的に存在しておったしな。
うぅむ、儂、マジで高校在学中はずっとこの姿でいようかのう……。
「さてと、そろそろいい時間ではないかい? 瑞姫君」
「あ、はい、そうですね。では、そろそろ移動しましょうか」
「移動と言うことは……本社か?」
「正解です。お父様は基本的に、本社の私室で過ごしていますので。今から行けば……そうですね、大きなお仕事に一区切りつく頃かと。ですので、移動しましょうか」
「うむ、了解じゃ」
ちょうどよい時間になったということで、儂ら一行は瑞姫の父、繁晴さんが待つ羽衣梓グループ本社へ向かった。
そして――
「君たちの結婚式は、今週末に開くこととなった」
とんでもねぇ日程を告げられることとなった。
「「「「「「「――はいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!!???」」」」」」」
そして、儂ら全員が、驚愕の声を響かせることになったとも言っておこう。
……日程、頭おかしいじゃろ。
どうも、九十九一です。
ようやく、結婚式の話をやります。その話題が出てから数年経ってますが……いやもう、ほんと申し訳ない。最近は何かと調子がいいので許してください。
明日も投稿しようかと思ってますが以下略。
では。