爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常 作:九十九一
「うぅぅぅ……殺せぇ……儂を殺してくれぇ……」
「まひろが羞恥心で身悶えてるわ。大丈夫?」
「……大丈夫なように見えるか?」
「見えない」
「……じゃろ?」
ナンパ男たちを撃退しアドバイスした結果と言うべきか、気が付けばなんか瞬く間に儂がバズったらしい。
のじゃロリ幼女師匠という名前で。
……というか、ロリと幼女ってついてる時点で頭悪すぎじゃろ。のじゃ幼女幼女師匠という状況なんじゃがそれ。
クソだせぇ……。
「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
「あ、まひろ君がクソデカ溜息吐いてる」
「むしろ、クソデカ溜息が出ても仕方なくね? あれ……」
「……まひろんが考えなしにキレた結果。仕方ない。でも、カッコよかったから大丈夫」
「何が!?」
全然大丈夫じゃない気がするんじゃが!
さっきから儂のスマホ、クッソ鳴っとるからな!?
発症させたばかりの頃、健吾たちと春休みに遊んだ際、ノリと勢いとアホな発想でこの姿の自撮り(にこっ! と可愛らしい笑顔の写真)をアイコンにしたSNSを作ったんじゃが、さっきから通知がすごいから!
ぐぬぬ、こんなことならば、作るのではなかった……。
通常は、ブー、みたいな感じの短めなバイブレーションなのじゃが、今なんてヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ――と、ひたすら鳴り続けるなんかもう、スマホではない何かになりつつあったので、電源を落とした。うるさいし……。
「情報社会というのはすごいね。たった数分程度の出来事をネットに上げただけであそこまで爆発的に広がるんだから。それとも、SNSに齧りつく人が多い、と言うべきかな?」
「ほんとにな」
それは儂も思うわい……。
今って普通に平日、しかも月曜日じゃろ? なのに、あんなにバズるとか、マジでどうなっとんの?
うぅむ、怖い。
「うふふ、でも、ひろ君は遠くない内に有名人になっていたと思うし、それが想定よりも早くなったと思えばいいと思うわ~」
「有名になる気はないが!?」
そもそも儂、基本的に目立たない方が性にあっとるし!
……そう言えば、ほんの二日前、健吾たちと遊びに行った際にモデルをしたが……あれもあれで儂、有名人になっとるような……?
なんか、学園に行くのが怖くなってきたっ……!
小鳥遊恋羽としてなのか、のじゃロリ幼女師匠としてなのかはあれじゃが、どちらにせよ儂が変に有名になってしまったからのう……。
はぁ……。
「とはいえ、わたしたちとしましても、少々思うところはありますけどね」
「そうなのか?」
「もちろんです。だって……だって! まひろちゃんの可愛さが広まってしまうではないですか!」
「いやそっち!?」
相変わらずの視点に、憂鬱な気分なんざ一瞬で吹き飛び、即座にツッコミを入れた。
「あー、それはたしかに。正直、これでまひろがナンパされる率が高くなるんじゃないかしら? 実際、あの光景を動画にして投稿した物の中身を見れば、そこには能力を使用したまひろの姿があるし」
「た、たしかに!」
よくよく考えれば、あの時変身したのは色々とまずかったのでは?
一応、正当防衛に収まる範囲であれば、能力の使用に制限はないが……正体的な部分で色々と変なことになる可能性もあったか。
くぅっ、失敗じゃぁ……。
「……そうなると、まひろんが外見通りの幼女ではなく、発症させた人だと気づくはず。あと、あれのインパクトはすさまじかったから余計かも?」
「ぐぬぅっ……」
儂が考えておったことと同様のことをましろんが言って来て、儂は何も言い返せず詰まった声しか出ない。
「ま、このことはさっさと忘れましょ。別に、悪いこと、と言うわけじゃないんだし」
「……うむぅ、そうじゃのう……」
これに関してはマジで美穂の言う通りなので、広まってしまったものは仕方ないと諦めて、今はデートを楽しむことにする。
「して、まずはどこへ行く? この辺りは知らんからのう」
「そうですね……多少遠くても、問題なく迎えの車が来ますから、どこでも大丈夫ですよ。それに、危なくなっても、裏でボディーガードの皆さんが控えてますから!」
「……それはそれで、怖くね?」
だって、儂ら周辺を、まるで周囲の人ごみに紛れるようにして見守っとる、ということじゃろ? それ。
どこにいるのかわからず、普通に怖いな……。
しかし、デートはデート。
滅多にできない、学校と仕事をさぼってのデートに、儂らの足取りや会話が非常に良く弾む。
非日常と言うのは、それだけ面白いと言う事じゃろう。
「お、このアクセサリーとか、おぬしらに似合いそうじゃな」
ふとなんとなく立ち寄ったアクセサリーショップに入店するなり、適当にアクセサリーを見ておった儂は、数種類あるネックレスを見つけ、似合いそうじゃと口にする。
「そうかな?」
「うむ。例えば、美穂にはこの桜の花びらを象った飾りが似合いそうじゃな。瑞姫は白百合がモチーフの物じゃな。アリアは太陽がモチーフの可愛らしいアクセサリー。ましろんは、氷の結晶が似合いそうじゃな。結衣姉は、三日月モチーフが良いな。祥子姉は……うむ、この十字架が良さそうじゃな、シンプルなのが好きそうじゃし」
などなど、六人にそれぞれ合ったアクセサリーを選ぶ。
うむ、よし、これ買うか。
「と言うわけじゃから、ちっと買って来るわい」
儂は祥子姉の抱っこから一度解放されると、今し方選んだアクセサリーを手に取り、レジへ持っていく。
「これ全部、包んでくれんか? プレゼントでな」
『かしこまりました。個別でよろしいでしょうか? それとも、まとめてがよろしいでしょうか?』
「面倒かもしれんが、個別で頼む」
『かしこまりました。お会計、12480円になります』
「うむ、これで頼む」
『13000円お預かりいたします。お釣り、520円とレシートになります。すぐに梱包いたしますので、少々お待ちください』
「うむ」
しばし待つこと一分。
なかなかの手際の良さで梱包が終わる。
『こちら、お品物になります。ありがとうございました』
「ありがとうのう」
にこり、と微笑みと共に礼を告げるなり、店員の女性はぽっ、と頬を染めた。
うーむ、やはりこの容姿での笑顔はかなり魅力的なようじゃなぁ。
ま、別にいいわい。
「ほれ、儂からのプレゼントじゃ……って、どうしたのじゃ? おぬしら。固まって?」
会計をさっさと済ませて美穂たちの元へ戻ると、そこにはぽかーんとしたままの六名が。
ただ、祥子姉は少し笑っていたが。
昨日も渡したしな。
「い、いや、まさかいきなりプレゼントを渡されると思わなかったからつい……」
「まひろちゃんがプレゼントだなんて……! わたし、一生の家宝にしますね!」
「ありがとう、まひろ君!」
「……ん、すごく嬉しい。大事にする」
「すぐにプレゼントを渡せる子に成長するなんて~……お姉ちゃん、とても嬉しいわ~。さすが、ひろ君ね~」
「昨日に引き続き、プレゼントとはね。ふふ、何度貰っても嬉しい物だね」
などなど、プレゼントの中身と言うより、儂からプレゼントを貰った方が嬉しいらしく、全員が頬を染めながら礼や大事にするなどのことを言って来る。
うぅむ、なんだか渡した身としても嬉しいもんじゃな。
「でも、まひろ君から貰うだけなのもちょっと申し訳ないから……あたしたちもまひろ君にプレゼントしよっ!」
「「「「「賛成!」」」」」
アリアの儂に何かプレゼントするという提案に、五人が賛同。
「別にそこまでしなくともよいぞ?」
「ううん! 貰ってばかりじゃだめだもん! だから、ちょっと待っててね!」
別になくともよいと言ったのじゃが、アリアがバッサリと切り捨てると、六人は固まって行動を始めた。
ふふ、と儂も苦笑し、店内にある簡易ソファーにて座って待つことにした。
それからそう時間もかからずに六人がやって来る。
小さな紙袋が各々の手にあり、どうやらまとめてではなく、個別で買ったらしい。
「はい、これ。一応、ローテーションで使えるように買って来たわ」
「ローテーションとな? となると……髪留めか?」
「正解よ~」
「ほう、髪留めか。地味にありがたいのう」
男の時分ならば、さすがにごく普通のヘアゴムで済ませておったが、今の姿は幼女。
であれば、おしゃれにも多少の興味が湧くと言うもの。
どうせ、あまり髪はいじらんからなぁ、強いて言えばバイト時にポニテにしたくらいか?
さてさて、どういった物が入っとるか……と。
「むむ? ほほう! これはなかなか……」
受け取った紙袋を開けると、その中には様々な意匠の髪留めが。
主にヘアゴム系じゃな。
朝露と葉がモチーフのゴムもあれば、紅葉がモチーフのゴムに、他にもシンプルな緑色のリボンに、サクランボがモチーフのゴムやら、簪っぽいデザインの髪留め、星がモチーフのゴムなんかがあった。
うむうむ、どれもこれも良いデザインじゃな。
単純に好きな者からのプレゼント、というのが一番嬉しいのう……。
なんじゃろうか、この温かな気分は。
胸がぽかぽかするわい。
「ありがとうな、おぬしら。大事に使わせてもらおう」
頬を熱くさせ、はにかんだ笑みで礼を告げた。
「「「「「「――っ!」」」」」」
すると、六人はなぜかばっ! と顔を逸らした。
え、何故?
「お、おーい? どうした? なんでそっぽを向くんじゃ?」
「……あんた、今日はなんかずるくない……?」
顔を片手で覆いながら呟いた美穂のその言葉に、他の面々もうんうん、となぜか頷くのじゃった。
マジでどうしたんじゃ?
アクセサリーショップを出て、儂らは再び散歩を開始。
見知らぬ土地を好きな者と歩くと言うシチュエーションは、なんとも嬉しくなる物じゃなぁ。
あと、歩く度に儂の後頭部にぽよんぽよんと、祥子姉の胸が当たりまくる。
正直気持ちいい。
ただ、なぜかドキドキと、心臓の鼓動が早い気がするが。
「そろそろお昼だけど~……どうするの~?」
「そうじゃなぁ……よし、飯のことならばましろんに任せるのが適任じゃろう。ましろん、おぬしの嗅覚で探しておしまい!」
「……まひろんのテンションが微妙に変だけど……ん、了解。姫、お任せを!」
ノリいいのう、ましろん。
ただ、姫はやめてほしい。
「へぇ、話には聞いていたが、真白君はいいお店を見つけるのが得意なんだね」
「そうだよ! 真白さん、すっごく感が良くて、前も美味しい湯豆腐のお店を見つけてたから!」
「あぁ、あのお店ね。あそこは美味しかったわよねぇ……」
「また行きたいですね」
「じゃな。儂も行きたい」
ゴールデンウイークに入った、潰れかけだったあの店。
あそこの料理はどれも素晴らしかった……今では、羽衣梓グループの支援を受けて、大盛況らしいがな。
いつかまた行きたい。
というわけで、ましろんの気の赴くままに歩くと、ふとましろんがキュピーン! という効果音が見えそうな表情で、とある看板を見つめだした。
そこには、
『桜木キャンプ場 日帰りでバーベキューもできます!』
という看板。
「ほう、バーベキューとな。ましろん、あれが気になるのか?」
「……すごく」
「器材の貸し出しはしているみたいですが……どうやら、材料はわたしたちの方で用意する形みたいですね」
「……むしろ、そこが狙い」
「へぇ、どんな狙いがあるのかしら?」
「……ん、おそらくあのキャンプ場には、調理場もあるはず。つまり……」
「「「「ハッ!」」」」
ましろんの言葉に続くように、祥子姉を除いた四名が一斉にこちらを見てきた。
天啓を得たり! とでも言わんばかりじゃ。
あー、なるほど、そういうことか。
「おや? まひろ君を見てどうしたんだい?」
どういうことか理解できていない祥子姉は、疑問を零す。
「まひろ君! あたし、カレーが食べたいです!」
はいはい! と手を上げて、元気いっぱいにリクエストしてくるアリアに、儂は苦笑する。
「あいわかった。では、まずは予約をするべきじゃろう。瑞姫」
「お任せください! すぐに連絡しますね!」
儂の頼みを即座に聞き入れ、瑞姫はスマホを取り出すなりキャンプ場に連絡を入れ始めた。
「うむ、頼んだ。そのまま、儂らは材料を購入しに行くとするか」
目的地が決まり、次に取るべき行動は材料の購入。
そのまま移動を開始、しようとしたところで、
「……まひろん、このキャンプ場、一応材料の注文もできるみたい。いいお肉もある」
「ほう、そうなのか。ならば、バーベキューの材料自体は少なめで良さそうじゃな。とりあえず、カレーの材料は買わねばな」
「……ん! 楽しみ!」
「うむ、楽しみにしておれ! 美味しいカレーを振舞おうではないか!」
「私も君の手料理は初だし、楽しみだね」
「ひろ君のお料理は美味しいから、期待していいわよ~、祥子さん~」
「ふふっ、それは君たちの様子から察せるさ。楽しみにするよ」
「うむ! 任せるのじゃ!」
「まひろちゃん、予約取れました!」
「おぉ、早かったな。では、早速材料の買い出しへ行くぞ!」
「「「「「「おー!」」」」」」
なんじゃろうか、この一体感。
すんごい楽しい。
ともあれ、次なる目的地へ儂らは向かった。
どうも、九十九一です。
楽しくデートしていますが、こいつら学校と仕事さぼってんだよなぁ……と思うと、なんかちょっとアレだなぁ。まあ、まひろたちだし、いっか。創作の世界だからね。
次回も以下略
では。