爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

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日常113 襲撃。予想外の人物

「――ハッ!」

 

 目が覚めると、そこは見知らぬ天井……などではなく、普段からよく目にする天井であった。

 

 いつの間にかパジャマに着替えさせられており、布団がかけられておった。

 

 うむぅ、やはりここの布団は最高じゃなぁ……いつまでも眠って痛くなる魔性の魅力がある。

 

「……しかし、いつの間に儂、帰って来たんじゃ?」

 

 確か昨日は、学園をさぼって散歩デートをして、アクセサリーを買ったり買ってもらったりし、バーベキューして……そこから先の記憶がないな。

 

「……とりあえず、おっぱいがこの世において最強、ということだけは理解したが……」

 

 自分でも何言ってんだこのバカ、と思わんでもないが、あれは凄まじかった……。

 

 結衣姉に関してはまぁ……そういう場面で普通に抱き着かれたり、後ろから抱きしめられたりして理解してはおったが、さすがに二人がかりによるサンドイッチはさすがにやべぇ……普通に窒息死する。

 

 嫌じゃよ? 儂。死因がおっぱいサンドイッチとか。

 

 ある意味幸せな死に方なのかもしれんがな……普通に呼吸が出来ないから苦しいからな? 死ねるからな? むしろ、それが本望! とか、言う奴がおるのかもしれぬが……儂、まだ結婚したばかりじゃし、何よりあやつらを先に遺して逝くとか……絶対に嫌じゃからな。

 

 どうせなら、儂が最後に残る側でありたい、と言う気持ちはある。

 

「さて、今の時間は……む、もう朝の六時?」

 

 ……儂、どんだけ寝ておったんじゃい。

 

 たしか、バーベキューは……昼の二時頃じゃったな。

 

 で、気絶したのがその三十~四十分ほどと仮定し……え、軽く十五時間以上寝とるんじゃけど、怖っ!

 

 もうそれ、睡眠とかのレベルじゃなくて、ただ単に意識不明になっただけでは……?

 

 ま、まあ、アレは忘れよう。うむ。忘れよう。

 

 それに、気持ちよかったこと自体は事実。

 

 ある種、男の夢とも言えようシチュエーションじゃったからのう……エロゲをやる際には、割とよく見る光景じゃったからな。特に、ハーレム物とか。

 

 儂とて年頃の男故、多少の興味があったが……正直、あれは一度だけの経験で良いな。死ぬ。普通に死んでしまう。勘弁。

 

「ま、早く起きてしまったし、今のうちに着替えるか……」

 

 かなりどうでもよい情報をば。

 

 我が家――家と言うか屋敷じゃが――には、ご存知の通り、百名のメイドが存在する。

 

 そのメイドたちは、本来の主人であるはずの瑞姫よりも、なぜか儂に対する忠誠心が高く(儂に着せ替えやら何やらをする際は、瑞姫たち旦那の方が高いが)、何でもかんでも世話を焼こうとしてくる……儂とましろんにだけ。

 

 この時点で、マジであやつらがロリコンであることは疑いようのない事実ではあるが、さすがに儂らとしてはあまり好ましいとは思えなくてのう……。

 

 別段、それが嫌だ、というわけではなく、単純に気恥ずかしいだけなんじゃがな。

 

 最初の頃とか、服を脱ぐのも着るのもあやつらがやっておった故……いやもう、ほんとヤバかった。

 

 なんとか説得し、(その代償として、今後メイドたち手製のパジャマを着ることになったが)そういった世話から解放された。

 

 今までは普通の生活ではあったが、それでも慣れと言うものは恐ろしく、今ではこの屋敷で暮らすことに何一つ違和感を抱いてはおらん。

 

 とはいえ、それでも元の家に帰りたくなるのもまた事実。

 

 その内、帰らねばなぁ。

 

 などと、儂が考えている時じゃった。

 

 ビー! ビー! ビー!

 

「な、なんじゃぁ!?」

 

 突然、屋敷内にこの屋敷に設置されておる、侵入者警戒アラートが鳴り響く。

 

 つまり、この屋敷に儂らやメイドたち、それから儂らの親族以外の者が入ったと言うことになる。

 

「まひろちゃん!」

 

 アラートが鳴り響き始めてから少しして、瑞姫が慌てた様子で儂の部屋に駆け込んでくる。

 

「おぉ! 瑞姫! これは一体何事じゃ!?」

「よかったです、起きていたのですね……昨日はあわや天国へ旅立ちそうになっておりましたが、安心しました」

「うむ、して……って、え、儂マジで死にかけてたの!?」

 

 長そうとしたけど、明らかに早々流せないものじゃよね、今の!

 

「いえ、そこは今はどうでもいいのですが」

「よくないが!?」

「それよりも、侵入者です!」

 

 儂の命よりも侵入者なのか……。

 

 いやまぁ、結局生きとるわけじゃから、別に構わんけど。

 

「して、その侵入者とはなんなんじゃ? この屋敷、警備が厳重過ぎて、下手な一国の軍隊すらも侵入不可とか言う、頭のおかしい場所じゃよな? それを破った者がおると言うのか?」

「は、はい、その通りでして……どうやら、かなり怒り狂っている様子なのです」

「怒り狂う? なんじゃ、暴動でも起こっとるのか?」

 

 もしそうならば、かなりまずい気がするんじゃが……この屋敷にいる警備員は、それはもう強い。

 

 なんせ、銃火器の使用に長けているどころか、肉弾戦も強力で、下手なプロの格闘家よりも強い者が多数おり、メイドたちもそういった人種である。

 

 他にも、セキュリティーシステムが仕込まれておるようで、なんかガトリングガンやら、火炎放射器、他にも様々な自動迎撃システムがあるとか……いやもう、ほんとどうなっとんの? この屋敷。

 

 にもかかわらず、この慌てよう……。

 

「暴動、と言いますか……よくわからないことを叫びながらセキュリティーシステムを相手取り、破壊しているのです。メイドたちも、半数やられました」

「マジで!?」

「マジです」

「あ、相手は?」

「それが、たった一人でして……」

「なぬ!? たった一人の人間相手に、あのバカみたいなメイドたちが半数もやられたのか!?」

 

 まさかすぎる情報に、儂は驚愕する。

 

 だって、この屋敷のメイドたちと言えば、お前ら忍者だろ!? とか感想を抱くくらいには強い。

 

 屋根から屋根へ飛び移り、暗器も巧みに操り、一人一人が百人を同時に相手取っても負けるはずのないほどの強者。

 

 お前らどこのバトルマンガ? とドン引きしたあのメイト達が半数も!? しかも、たった一人を相手にやられておるじゃと!?

 

「どこのばけもんじゃそれは!?」

「わ、わかりません……ただ、『愛しの孫はどこだァァァァァァァッッッ!』と叫んでおり……」

「孫!? え、その者の孫がこの屋敷におるの!?」

「それは不明ですが、現在、柊さんがタイマンで戦っております」

「なんじゃその状況!? ってか、孫とか言っとる時点で、相手かなり年上じゃよな!? そんなにヤバいのか!?」

「ヤバイ、ですね……わたしも、監視カメラで見ましたが、人間の動きではありませんでした。まさに、鬼神の如き強さで……」

「ま、マジかー……」

 

 一体いつからこの世界はバトルファンタジー的な物になったんじゃ……?

 

 たしか、柊さんは二十代じゃったよな?

 

 その相手が、かなりの年上相手に戦う……え、何それ超怖い!

 

「と、とりあえず、退避しなければなりません。まひろちゃん、急ぎましょ――」

 

 ドガンッ! ガガッ! ズドン!

 

「……瑞姫、なんか、廊下の方からとんでもない音が聞こえるんじゃが?」

「奇遇ですね、わたしもです」

「……そう言えば、美穂たちはどうした?」

「美穂さんたちなら、隠し通路から退避中です」

「逃げたの!? 儂を置いて!?」

「いえ、わたしたちの場合、ジャンケンで誰がまひろちゃんをお迎えに行くかで決めました。敗者ですね、美穂さんたちは」

「ジャンケンで決めるでないわ!」

 

 嫌じゃよ儂、ジャンケンで儂の生命を脅かす物から護る物を決められるとか!

 

「と、とにかく、儂らも逃げるぞ!」

「はい!」

 

 と、儂らが退避しようとした瞬間じゃった。

 

 ドガァァァァンッ!

 

「「きゃぁ!?」」

 

 突如としてけたたましい音が鳴り響くと同時に、部屋の扉が内側に吹っ飛んだ。

 

 煙が舞い、その中から着地する人影がある。

 

「くっ、お嬢様方、申し訳ございません! 侵入を許してしまいました!」

 

 その人影は、我が家のメイド長、柊さんであった。

 

「ちょっ、柊さん大丈夫なのか!? なんか、ボロボロじゃけど!?」

「ご心配いただき、ありがとうございます! ですが、この程度何の問題もありません!」

 

 と言っておるが、どう見てもヤバそうであるのは明白。

 

 突如として現れた柊さんは、頭や顔だけでなく、体中の至る所から血を流し、ところどころ痣がある。

 

 しかも、メイド服も破け、その白い肌が痛々しくさらされており……。

 

 どう見ても問題じゃろ、それ。

 

 なんか、不敵な笑みを浮かべとるが、結構不味くない? 骨とか、折れてそうじゃよ? 大丈夫?

 

「チィッ、確実に仕留めたと思ったんだけどねェ……どうやら、浅かったらしいね」

 

 ふと、扉が吹っ飛び、廊下側から怒気溢れる声と共に、一つの人影がゆらりとこちらへ歩み寄って来る。

 

 ……ん? 今なんか、聞き覚えのある声がしたような……。

 

「おやおや、こいつァ驚いたねェ……我が愛しき孫を誑かしたお嬢ちゃんがいるじゃないか」

 

 そして、煙が晴れて行き、向こうもこちらを視認したのじゃろう、儂を抱きしめて守ろうとする瑞姫を見て、猛獣すら一睨みされたら逃げ出してしまいそうな迫力のある鋭い眼光を瑞姫に向ける老人の姿があった。

 

 グラサンを頭にかけ、革ジャンを着こみ、ジーパンを穿き、煙草を咥えたなかなかにファンキーな老人は……って、あれ? あの人…………え!? ま、マジでぇ!?

 

「ば、ばばば……婆ちゃん!?」

 

 儂らの前に立つその人物が良く知る人物……というか、実の祖母であることに気付き、びっくり仰天、素っ頓狂な声を上げた。

 

「「――エッ!?」」

 

 儂が婆ちゃんと言った直後、瑞姫と柊さんの両名がバッ! とこちらを振り返った。

 

「……ンン? 婆ちゃんだァ? おいおい、ちっこいお嬢さん、このワシの孫は桜花まひろと言ってなァ、それはもうめんこい男の娘さね。お嬢さんのようなめんこい子は、孫には――」

 

 そして、婆ちゃんと呼ばれた方の老人と言えば、婆ちゃんと呼んだ儂に対して、探し求めている者ではないとばっさり切り捨てようとするが、慌てて儂は弁明を始める。

 

「いやいや、婆ちゃん儂じゃよ儂! 桜花まひろじゃよ!」

「……何?」

 

 ぴくり、と目端が動く。

 

 畳みかけるぞ!

 

小夜子(さよこ)婆ちゃんじゃろ!? いつ帰って来たんじゃ!? ってか、これはどういうこと!?」

「なっ――お、お嬢さん、まさか……まひろなのかい!?」

「そうじゃよ、婆ちゃん! 儂じゃよ儂!」

「……ほ、本当かい?」

「うむ! 実は、今年の三月下旬ごろに、『TSF症候群』という病に罹ってのう、それ以来こんな姿でな……」

「……ま、まさか、いや、しかしだね……」

「気になるのならば……ほれ、婆ちゃんからの手紙じゃ! 婆ちゃんから届く手紙はこれこの通り! しっかり大事に保管してあるぞ!」

 

 信じていいものかと悩む婆ちゃんに、儂は家から持ってきておった、婆ちゃんからの今までの手紙の束を引っ張り出してきて婆ちゃんに見せた。

 

「確かにそいつァ、ワシが送った手紙……それに、その話し方はまさに、あいつのよう……まひろ、なんだね?」

「うむ! 久しぶりじゃな、婆ちゃん!」

 

 にっこりと微笑みながら、久々に対面する婆ちゃんに挨拶すると、婆ちゃんの張り詰めた様な強張った顔から怒気などが消え、年相応の皺くちゃな笑顔へと変わる。

 

「あぁ、久しぶりさね、まひろ」

 

 そして、婆ちゃんも柔らかい声音でそう返すのじゃった。

 

 

 とりあえず、一旦儂と婆ちゃんの二人で話すことになり、掃除やらなんやらはメイドたち(その際に婆ちゃんが謝罪済み)に任せて、儂と婆ちゃんは喫茶室へ。

 

 そこで仲良く緑茶(今日は玉露)を啜りながらこれまでのことを婆ちゃんに伝える。

 

「――というわけでな、別に拉致されたとか、脅迫されてここにおる、なんてことはないから、安心するといいぞ!」

「……そうかい。悪かったねェ、ワシャァてっきりまひろが拉致されたのかとばっかり……」

「ははっ! 大丈夫じゃよ! あやつらはなんだかんだ優しいからのう! それに、今は毎日が楽しいわい」

「そうかい、そうかい。それなら、安心さね。……ワシも含めて、まひろには苦労をかけたからねェ。あいつだけがお前にとっての親同然だったと言うに……まったく、ワシより先におっちんじまいやがって……」

 

 悪態をつく婆ちゃんじゃが、その表情には申し訳なさが際立つ。

 

「大丈夫じゃ。なんだかんだ、慣れたからのう。それに、健吾もおったし、優弥もいた。今なんて儂、旦那が六人じゃぞ、六人。今後、儂が家族と言うもので困ることはあるまいよ」

「……そうかい。そいつが聞けただけで満足さね」

 

 満足げにそう零す婆ちゃんの声音や声は、安心や優しさが混ざった、なんとも言えぬものであった。

 

「しっかし、まひろはあいつの血を色濃く受け継いじまったんねェ……まさか、あいつでもしなかった、多くの女性と同時に関係持つたァねェ」

「それは儂も思うが……やはり、爺ちゃんも凄まじかったのか?」

「そうさね。あいつは自然体で人を助けちまうような奴だった。千尋からまひろのあれこれを一応は耳にしてはいたんだけどねェ……まさか、そこまであいつ――源十郎に似るとは思わんかったよ、ワシャァ」

「そ、そうか、儂、そんなに爺ちゃんに似とるのか……」

「そっくりそっくり。それ以前に、まひろの幼少の頃やら、中坊の時なんかもそっくりだったさね。それはもう、色々と」

「ほ、ほう……」

 

 それはつまり、爺ちゃんも女顔じゃった、と。

 

 ……おおぅ。

 

「ま、まひろなら大丈夫だろうね。さっきのお嬢さんも、まひろを守ろうとしてたからねェ。はっはっは!」

 

 豪快に笑う婆ちゃん。

 

 これが、儂の祖母、桜花小夜子。

 

 我が家において、物理的にも精神的にも、権力的にも最強の存在であり、爺ちゃんも婆ちゃんには敵わん、といつもぼやいておった。

 

 婆ちゃんは世界中を股にかける人物であり、基本的には旅をしておる。

 

 たまに手紙と共に各国の特産品やら何やらが送られてきており、実は儂の家にはそう言った物が多数存在。

 

 中には、明らかにやばくね? みたいな代物もあったりするが……まあ、そこは割愛。

 

 あと、婆ちゃん曰く、

 

『旅ってェのは、大概拳で何とかなる』

 

 らしく、仮に猛獣に遭遇しても己の拳でどうにかできる、とのこと。

 

 うぅむ、カッコいい……。

 

 正直、儂は爺ちゃんと同じくらいに婆ちゃんを尊敬しておる。

 

 なんせ、己の身一つで生き抜く、ヤベー人じゃからな。

 

 爺ちゃんとは、爺ちゃんが日本中を旅してまわっている時に出会ったそうで、最初は殴り合いをしたらしいが、そこで意気投合。気が付けば結婚し、子供を二人儲けておったそうな。

 

 強い。

 

 子供ができ、その二人が大人になると同時に、婆ちゃんは、

 

『旅に出る。とりあえず、孫が生まれたら呼んでくれ』

 

 と言い残して日本ではなく海外へ放浪の旅へ出た。

 

 その後、儂や儂の従妹が生まれると帰国し、しばらく日本に滞在し、桜花一家や、もう一つの桜花家の方を行ったり来たりしながら、日々を穏やかに、時に血みどろなことをしながら過ごす。

 

 そんなある時、海外の知人がピンチになっているとの連絡を受け、即座に海外へ飛んだ。

 

 それからは、定期的に手紙が送られて来たんじゃが……ある時、爺ちゃんが亡くなり、儂らが連絡するよりも先に、婆ちゃんが帰国した。

 

 どうやら、爺ちゃんの死が近いことを悟り、大急ぎで帰国したらしい。

 

 一人だけ、住む世界を間違ってね? とか思わんでもないが……。

 

 ともあれ、爺ちゃんが亡くなったことは、当然婆ちゃんもショックを受けた。

 

 一度も泣いたことがないと言われていた婆ちゃんが、初めて爺ちゃんの葬式の時に泣いた。

 

 人によっては、なぜ一緒にいなかったんだ、と婆ちゃんを責めることじゃろう。

 

 しかし、爺ちゃんはそういった自由な所に惚れた、と生前からずっと言っておった。

 

 自由に旅をし、自由に帰って来て、そしてまた自由に家を出る。

 

 そんな生き方が、爺ちゃんは大好きだった、と。

 

 もちろん、儂もそんな婆ちゃんの生き方はカッコいいと思う。

 

 別に、恨むなどと言うこともないしな。

 

 死後、再び婆ちゃんは旅に出る。

 

 儂を慮って、一時は残ろうとしたが、それは儂が止めた。

 

 儂とて、爺ちゃんのように自由人な婆ちゃんが好きじゃったからな。

 

 そう告げた時の婆ちゃんの笑みは一生忘れん。

 

 で、婆ちゃんは再び旅に出て、今まで帰ってこなかったんじゃが……。

 

「まさか、帰って来ておったとはのう……」

「久しぶりに孫に会おうと思ってねェ」

「そうか。……ちなみに、月奈姉は?」

「あいつかい? あー……ま、相変わらずさね」

「そ、そうか……」

「まひろは会ってないのかい?」

「……今の姿であやつに会うのは危険じゃろ?」

「ははっ、言えてるね」

 

 我がカッコいい婆ちゃんは、年寄りだからと言って若者の間で流行っている物がわからない、などと言うことはない。

 

 世界中を旅するには、情報も大事だから、とのことらしく、世界中て起こっていることはある程度把握しとるそうじゃ。

 

 さすがじゃ……。

 

 そして、それはつまるところ、ロリコンという言葉も知っていると言う事。

 

 我が変態な従姉である、月奈姉は、それはもう大層なロリコンであるため、婆ちゃんもそこそこ困っておるそうじゃが、そこは孫であるため、気にしないようにしておる。

 

 しかし、今の儂の体がこれであるため、会わない方がいいという儂の言葉に同意を示す。

 

「ところで、まひろの嫁――あー、いや、旦那だったかい? 旦那ってなァ、どんな娘がいるんだい? ワシとしても、その娘らは孫のようなものになるわけだからね」

「あー、うむ。そうじゃなぁ……まず、一般人枠の美穂に、変態ロリコンお嬢の瑞姫、帰国子女で天真爛漫なアリア、合法ロリで年上で生徒会長のましろんに、小学生の頃に結婚の約束をして今は教師の結衣姉に、うちの分家で研究者の祥子姉じゃな」

「はー、我が孫ながら、随分とまぁ、個性的な女子に好かれたもんだねェ」

 

 感心したような、呆れた様な、なんとも言えない表情でそう答える婆ちゃんは、けれどどこか嬉しそうに笑った。

 

「言うな、儂も思う」

「しっかし、祥子とも結婚したんかい」

「うむ。とはいえ、付き合い始めたのは一昨日じゃが」

「へぇ、なら新婚ほやほやってわけかい。ほんと、まひろには女子が寄っていくねェ。ワシとしちゃァ、誠実に付き合うようにすれば、何も言う事はないさね。今更、家を空けまくっていたババアがとやかく言う資格はないしねェ」

「いやいや、婆ちゃんは好きなことしとっただけじゃからな。儂も別に止めんかった故、気にする必要はないじゃろ?」

「まひろ…………あんたはそうやって数多の女を落としてきたってことかい……あいつのように」

「あれ!? なんか思ってたと違う言葉が帰って来たんじゃが!?」

 

 なんで少し憐れむような目を向けて来るのじゃ!? なんで!?

 

「あいつも似たような感じだからねェ」

「マジか……」

 

 爺ちゃん、生前一体何をしておったんじゃ?

 

 すっごい気になる……。

 

「あぁ、そういえばあいつは日記をつけてたっけねェ。おそらく、あいつの部屋か物置部屋になってるあの部屋に行けば、あいつの生前の私物が見つかるよ」

「本当か!?」

「あぁ、本当さ」

「ありがとうじゃ! 婆ちゃん!」

「――っ! なるほど、これはたしかに、なかなかくるね……」

「む? 婆ちゃん?」

「あぁ、いや、なんでもない。……まさか、我が孫がこうも可愛らしい童女になるたァねェ……そう言えば、なんでも発症者には能力があるそうじゃないか。どんなものがあんだい?」

 

 直前まで顔を少し赤くする婆ちゃんじゃったが、すぐに能力の話に話題を切り替える。

 

 その表情は、子供のようにわくわくとした気持ちに満ち溢れ、教えて教えて! と言っているような雰囲気であった。

 

 大好きな婆ちゃんに尋ねられれば、孫的にはやはりするっと言ってしまうものじゃ。

 

「うむ! 儂はあれじゃ、体を成長させたり、逆に退行させたりする能力と、動物の力が発言する能力に、色を変える能力があるぞ!」

「へぇ、随分とまァ、面妖なもんを身に付けたんだねェ」

「まあの! あ、婆ちゃんを若返らせられるぞ!」

「そいつァ本当かい?」

 

 少し驚いたような顔で聞き返す婆ちゃんに、儂は頷く。

 

「うむ! ……あ、ただこのことは誰にも言ってはならんぞ? 儂のこの能力は狙われやすいらしくてのう……」

「ふむ……なるほどねェ。おおよそ、時間を弄れる、といったところかい?」

「な、なぜわかったのじゃ!?」

 

 え、エスパーか!?

 

「おや、本当にそうなのかい? なんとなくかまをかけたんだが……そうかい、我が孫は、とんでもないもんを持っちまったんだね」

「うむぅ……」

 

 はっはっは! と笑う婆ちゃんの言葉に、儂は少し困ったような笑みで肯定する。

 

 なんというか、本当に婆ちゃんには敵わんわい……。

 

「ふぅむ、しかし若返り、か……まひろ、一つ頼みがあるんだが、いいかい?」

「うむ! 婆ちゃんの頼みならなんでも聞くぞ!」

「ははっ、そいつァ嬉しいもんだね。つってもま、大したこたァない。三年ほど、ワシの体を若返らせてくれるかい?」

「む? 三年でよいのか?」

「構わん。ちィっと体が衰えてきていてねェ。まだまだ旅がしたいってもんで、どうしようかと思ってたのさ」

「なるほど。うむ! 了解じゃ!」

「助かるよ。少し、足腰にダメージが来てたからねェ。これで、まだまだ戦える」

 

 戦う、の部分はちとおかしい気がするが……まあ、婆ちゃんじゃからな!

 

 というわけで、婆ちゃんの体を三年ほど若返らせる。

 

 結果は成功。

 

 無事に三年前の体へと戻る。

 

「ふむ……たしかに、こいつァ三年前のワシの体さね。ありがとうよ、まひろ。おかげで、体が軽い」

「しかし、婆ちゃんも年老いて来たからのう、あまり無理はするでないぞ! もし死ぬのであれば、どこかの国ではなく、儂の近くがいいからのう!」

「はははっ! そいつァそうだな。ワシとしても、死ぬならあの家って決めてんだ。安心しな、まひろ」

「うむ!」

 

 できることならば、婆ちゃんを看取ってあげられると尚よいな。

 

「おっと、そう言えばまひろはこれから学校じゃなかったかい?」

「おぉ! そうであった! すまんな婆ちゃんや。話の続きは学園から帰ってからでよいかのう?」

「もちろんさね。どうせ、しばらくは日本にいるんだ。あの家で待ってるよ」

「うむ! 儂も学園が終わり次第、すぐ行くぞ!」

「そいつァ嬉しいねェ。ま、適当に待ってるさ。あぁ、どうせならまひろの旦那たちも呼ぶと言い。ワシが特上寿司でも食わせてやるよ」

「ほんとか!? じゃあ、そうするぞ! では、そろそろ行くからな! またあとでな!」

「あぁ、気を付けて行っといで」

「うむ!」

 

 とまぁ、そんなこんなで久々の婆ちゃんとの再会は、案外和やかに終わった。

 

 やはり、カッコいいのう……。




 どうも、九十九一です。
 作中最強かもしれない人物が登場しましたが、まあ、強いです。婆ちゃん。なんででしょうね。
 次回は以下略です。いつも通り。
 では。
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