爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

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日常120 別れ。からの地獄

 二人での話を終え、婆ちゃんが戻って来る。

 

「――へェ、お盆に戻ってくんのかい。しかも、肉体を持って」

『うむ。閻魔大王様の計らいでな』

「そうか、ま、楽しみにしとくよ」

 

 どこかぶっきらぼうに言う婆ちゃんじゃが、その表情は喜びを隠しきれないようで、自然と笑みが零れておった。

 

 何のかんの、爺ちゃんと婆ちゃんはすごくいい夫婦じゃからのう。

 

 儂もいつか、この二人のような関係性になりたいもんじゃ。

 

 ……複数人おるけど、旦那。

 

『あぁ、わしもおぬしらに会うのを楽しみにしとるわい。……じゃがまぁ、殴られそうな気がするがな、小夜子から』

「ははっ! そんなことはしないさ。……多分」

『相変わらず安心できんのう! はっはっは!』

 

 あー、そうそう、爺ちゃんと婆ちゃんの会話ってこんな感じじゃったのう……。

 

 軽口を叩き合い、いつも楽しそうに話すんじゃよなぁ。

 

『さて、わしはそろそろ戻るとするわい』

「もう行ってしまうのか……?」

 

 爺ちゃんが戻ると言い、儂はついつい寂し気な声を零してしまう。

 

 それを見た爺ちゃんは、一瞬面食らったような顔をするが、ふふ、と柔らかい笑みを浮かべて話す。

 

『安心せい、まひろ。この鏡を通せば、いつでも話はできる。あの世とこの世を繋ぐ鏡じゃからな、それは』

「……うむ、そうじゃな! これからはいつでも爺ちゃんと話せるもんな! うむ! ならば安心じゃ!」

『ははは! そうじゃそうじゃ、やはりまひろはそうやって笑うのが一番じゃ』

「そうさね。孫は笑顔で育ってほしい。まひろはきっと、そういう人生を送るさ」

『……あぁ、そうじゃな。ま、今は小夜子がおるようじゃし、そこは安心しとるよ』

「任せな。あんたがすぐに死んじまった以上、ワシがあんたの代わりにまひろを護るからね」

『……うむ、すまんな』

「いいってことさね。ワシにとっても、大事な孫だ。あんたはそっちで平穏に暮らしな。生前が修羅場ばかりだったんだ。ようやく休めるってもんだろう?」

『……まあ、そうじゃな。それはそう』

 

 婆ちゃんの言葉に、爺ちゃんは苦笑しながらそれに同意する。

 

 先ほど爺ちゃんの過去をある程度聞きはしたが、もしかすると、母上や叔父上が生まれた後、そして儂や月奈姉が生まれた後にも何かあったのやもしれぬ。

 

 というか、爺ちゃんじゃから、そうなっても不思議じゃない気がする……。

 

「……しかし、この鏡は一体誰が作ったんじゃろうなぁ」

 

 ふと、死者と話すことのできる鏡である、目の前のこれが、一体誰が作ったのかと気になり、ぽつりと疑問を零す。

 

 だって、そうじゃろ?

 

 婆ちゃんが言うには、この鏡は、爺ちゃんと一緒に日本全国を旅して回った途中で買った、と言っておった。

 

 つまり、現代のように『TSF症候群』などという、トンチキファンタジーがない時代だったとも言えるわけで……そんな時代に、なぜこのような物があるのか、不思議でならんわい。

 

『うむ、それには色々と理由があるらしいが……わしには、小難しくてわからんかったわい』

「む、そうなのか?」

『あぁ。かなり複雑な事象が混ざり合ったことで発生した物が封じ込められた、とでも言うべきか……正直、わしにはよくわからん! はっはっは!』

「へェ、そんなに複雑な代物なのかい、こいつァ」

『らしいのう。実際、理解できた者はわしら世代にはおらん。まひろたちのような若いせい世代ならば、理解できそうじゃが……如何せん、現代っ子たちというのは、すぐに異世界への転生、もしくは理想的な容姿での人生を望むからのう。故に、だーれも理解できん、というわけじゃ』

「なるほどのう……」

 

 ということは、マジもんのファンタジーな代物なんじゃな、これ。

 

 十中八九、先ほど爺ちゃんが触れた、異世界なる物と関係しているのかもしれんなぁ。

 

 ……しかし、異世界か。

 

 いつかは見てみたいもんじゃな、是非とも。

 

『さて、あまり長居しても仕方あるまい。そろそろ戻るわい』

「うむ。またな、爺ちゃん」

「元気でやんなよ」

『いやわし、死んどるから。……ともあれ、まひろよ。いつでも儂を呼ぶがよい。おぬしがその鏡を大事にする限り、そして、わしを想っている限り、わしはおぬしの前に現れよう。そして、お盆の時には必ず、おぬしに会いに来る、ともな』

「……うむっ! もちろんじゃ! この鏡は大事にするし、わしは爺ちゃんをずっと想っておる! お盆も毎年楽しみにするからな! そして、いつの日か……わしらの子供を見せてやるのじゃ!」

『……ほっほ! そうかそうか、ひ孫かぁ……うむうむ。それは是非とも、成し遂げてほしいのう』

「ワシも、まひろたちの子供が出来るまでは死ねないね」

『……とか言って、小夜子はひ孫どころか、玄孫まで行きそうじゃがな』

「ま、否定はしないね。ワシは、『氣』を操れる影響で、肉体の老化がある程度遅くなってるんでね。この命が続き、動ける限りは、ワシはまひろの家族たちを見守るつもりさね。どこへいようと、危機を感じ取れば即座に飛んでくるさ」

「安心感が凄まじいのう……」

 

 というか、実際に飛んできそうじゃな、婆ちゃん。物理的に。

 

 一人だけ、この世界をブラ〇ロと例えると、婆ちゃんだけドラゴン〇ールじゃからな……今更、舞空術が使える、と言われても、儂は驚かんよ、もう。

 

 むしろ、儂の中の婆ちゃん大好きメーターが天井をぶち抜いて、天元突破すると思う。

 

『そうじゃなぁ。……さて、では、お暇しよう。また会おう、二人とも』

「うむ! またな、爺ちゃん!」

「元気でやるんだよ」

『じゃからわし死んどるって!』

 

 最後に爺ちゃんは婆ちゃんの言葉にツッコミを入れて、鏡の中から消えた。

 

 爺ちゃんの姿が消えると、そこには儂と婆ちゃんの姿とリビング内が映し出された。

 

 途端に静かになった気がするが……ふふ、また会える、か。

 

 なんとも素晴らしい鏡があったものか。

 

 儂はもう、ひたすら嬉しいし、今ならばこの嬉しさで何でもできる気がする。

 

「……さてと。もういい時間だ。まひろたちは風呂に入って寝た方がいいんじゃないかい? あぁいや、それともあの屋敷に帰るのかい?」

「いや、今日はここに泊まっていく予定じゃ。久々の婆ちゃんじゃ! 儂は絶対に帰らんぞ! というか、儂にとっての実家じゃからな、ここ!」

「そうかいそうかい。そう言われると、ババア冥利に尽きるってもんさね」

「うむ! ……あ、どうせなら一緒に寝るか? 婆ちゃん」

「ほう、そいつァ嬉しいねェ。今のまひろはちっこいし、昔を思い出せそうだ」

「うむ! では、儂は風呂に入って来る!」

「あぁ、行っといで」

「では、また後でな!」

 

 そう言い残し、儂はリビングを出て、着替えを取りに行くべく、自室へ向かった……。

 

 

 そして、儂は自室へ入った瞬間、儂は死にたくなるほどの光景を目にする羽目になった。

 

「よーし、風呂じゃ風呂――…………!?」

「「「「「「あ」」」」」」

 

 うっきうきで着替えを取りに自室へ戻ると、そこには儂のPCでエロゲをプレイする旦那たちの姿が……ってぇ!

 

「お、おおおおおおぬしら!? な、なななっ、なーーーーーにしとるんじゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!?」

 

 それはもう、慌てふためいた。

 

 そして、夜遅くじゃと言うのに、儂は叫んだ。

 

 というかそれ……儂の密かなお気に入りのうちの一つのエロゲぇぇぇ!

 

「い、いやー、そう言えばまひろの部屋って、アレした時しか入ったことなかったなー、と思って……」

「どういう物があるのか気になってしまったと言いますか……」

「色々と漁――こほんっ。何かないかなーって探してたら、ね?」

「……ん、叡智なゲームがあったから」

「プレイして、ひろ君の好みや性癖を理解しよう~、って話になって~」

「こうなった。悪いとは思っているが、謝罪はしない」

「普通に謝罪して!? というか、儂の趣味を堂々と見透かそうとするでないわい! あ、ちょっ、しかもよりにもよってそのルート!? そのルートを攻略しとるの!?」

 

 モニターから聞こえる音声と、画面に映るヒロインの姿を見て、儂はぎょっとなった。

 

 現在、儂の旦那共がプレイするのは、儂が所持するエロゲの一つ、基本的にはよくある現代が時代設定なんじゃが、そこに魔法やらダンジョンやらといった、定番なファンタジー要素がぶち込まれた作品じゃ。

 

 その主人公は、ぶっきらぼうじゃが超が付くほどのお人好しで、それ故に様々なヒロインを助けて、モテモテに! みたいな、まあベッタベタな作品なんじゃが……その中に、とあるキャラがおってなぁ……れっきとした攻略ヒロインではあるものの、そのルートの内容にユーザーは度肝を抜かれる羽目になる。

 

 ……そのヒロイン、まあ、百合趣味、だったんじゃ。

 

 キャラデザで言えば……儂の大人状態が近い、か?

 

 ……今にして思えば、儂の姿ってもしかして、このゲームのこのヒロインなのでは……?

 

 ……い、いや、ない、よな? うむ、ない。たまたま! 桜髪のキャラがドンピシャだっただけ! 決して! エロゲのヒロインが理想とかない……無いよね?

 

 ま、まあ、それは一旦横に置き、問題のヒロイン。

 

 そやつは、元々百合趣味で尚且つ幼女好き、みたいな設定があってなぁ……そこまでは、まあさして珍しい設定ではない。

 

 しかし、問題はその性癖が筋金入りだったこと。

 

 主人公に好意は抱いたが、主人公が男であるという理由で、決して恋人にはなろうとしなかった。

 

 じゃが、それでも好きな物は好き。じゃあどうするか、となった時……このヒロインは何をトチ狂ったのか、このヒロイン、よりにもよって女体化魔法とかいう、頭のおかしい魔法を創り出してしまう。

 

 そこからは……まあ想像通りの結果じゃ。

 

 が、そこはお人好しの主人公。最終的に、その体を受け入れ、ヒロインの歪んだ愛を受け入れることにして、このヒロインと付き合い、ハッピーエンド、という、まあ主人公の懐深ぇ、という感想が出て来るオチとなったし、話だけ訊けばそうなることじゃろう。

 

 まあ、実際その通りなんじゃが…………では、何が問題かと聞かれれば、その十八禁のシーンに問題があると言える。

 

 ……簡潔に言えば、儂と、旦那共の関係、と言えよう。

 

 そして、そのシーンが目の前に……!

 

「いやぁ、どこなくまひろ君と似ていたものでね。気になって、つい」

「やめて!? というか、儂のエロゲを勝手にプレイしないでくれるぅ!?」

「まひろちゃん、もう既に様々なゲームをやらせていただいたのですが」

「マジで!? ……あ! よく見たら、ベッドの上に儂のエロゲたちが置かれとる!?」

 

 しかも軒並み儂が気に入っとった物ばかり!?

 

 くっ、この部屋に来るのが健吾や優弥だけじゃったから、自分でも取りやすい位置に置いておいたのが仇となったかっ!

 

 そもそも、旦那ができるとか想像できんて!

 

「私はこの作品が好みだったわ」

「わたしはこれですね」

「あたしはこれ!」

「……これ、面白かった」

「私はこれね~」

「私はこれだね」

 

 などなど、旦那共はどれか一つ気に入った作品があったようで、それぞれがパッケージを持って気に入ったと言って来る。

 

 やめてっ! これただの拷問じゃろ! マジで!

 

 ちなみに、美穂が気に入ったのは、純愛系の作品で、甘酸っぱい青春が題材の物。しかも、田舎系。

 

 瑞姫は百合系の作品。尚、主人公が基本受け身である。

 

 アリアはひと夏の思い出を題材とした作品で、基本的にドタバタとした日常がメインの作品、じゃがその中にもちゃんとした青春が、みたいなやつ。

 

 ましろんは生徒会を題材とした作品で、面白いのが学園内に生徒会が二つあり、その二つが政策を巡って対決する、みたいな作品で、主人公は転入生である。続編も出るくらいの作品で、かなりお気に入り。

 

 結衣姉は国が恋愛を推奨するとかいう頭のおかしい政策を打ち出し、恋愛が義務である学園に通うことになった主人公(恋愛したくない派)の話じゃな。多分、その中に幼馴染の教師がヒロインにおったのが理由じゃろう。

 

 祥子姉は特殊な力を扱えるカードが普及されたとある学院に転入してきた主人公が、メインヒロインのポジションにいるヒロインに部活動の勧誘をされ、学園一の称号を手に入れるために奮闘すると言う、作品。おそらく、特殊な力を扱うのに科学(作中内限定の特殊な物じゃが)に使用されとるから、気に入ったんじゃろう。

 

 と、好みが大きく分かれる結果となっとるわけじゃが……なんか、普通にそういう行為をするよりも恥ずかしい気がする、これ……。

 

「ぬおおぉぉぉぉ~~~~~っ」

 

 そんな儂の性癖暴露大会、みたいな状況になったため、儂は頭を抱えて唸り声を上げる。

 

 何の拷問じゃこれ……。

 

「……そう言えば、まひろんの所持するゲームの六割が、受け身っぽい主人公だった。やはり、潜在的だった?」

「ち、違うからな!? な、なんとなくあらすじを見て面白そうと思って買ったからな!?」

「あー、そう言えばなーんか、私たちに似たデザインのキャラも多かったわよね」

「わかります。巨乳でお嬢様、というキャラクターでもありましたし……」

「ハーフの女の子もいたよね!」

「……ん、合法ロリな生徒会長もいた」

「年の離れた幼馴染もいたわね~」

「大人の研究者もいたな」

「た、たまたま! たまたまじゃからぁ!」

 

 いやまあ、確かにキャラデザが好みなキャラではあったけども!

 

 もしや、儂のキャラデザ好みって…………い、いや、深くは考えまい。儂も好きだから結婚した。うむ、そうじゃそう。決して、顔が好みだけで決めたわけではない。

 

 性格も、なんだかんだで好んでおるしな!

 

 ……儂は一体誰に言い訳をしとるんじゃろうか。

 

「そういえば、まひろ君ってえっちな本はないんだね? てっきり、あるのかなーって思ってたんだけど……」

「いや儂、別にそう言うのに興味はないし……」

「「「「「「エロゲは買ってるのに?」」」」」」

「別にエロ目的で買っとらんからな!?」

 

 儂は基本的に、ストーリー部分が見たいだけで、決してエロが見たくて買っているわけではない! ということを、旦那共に懇切丁寧に説明すると、

 

「うんうん、わかってるわよ、まひろ」

「ならその生暖かい目はやめてくれんか?」

 

 全員が生暖かい目を儂に向けて来た。

 

 ちくしょーめ! これ絶対言い訳と思っとるじゃろ!?

 

 本当なのに!

 

「まあまあ、でも絶対に見ない、というわけではないのよね~?」

「……そりゃまぁ、儂とて男じゃから……なんとなく気になったら見る、程度ではあるが……」

「そう言えば~……いくつかのゲームに明らかに場面転換じゃない部分でセーブされていた部分があったわね~。そのどれもが、ちょっぴりアレな感じだったのだけど~」

「やめてぇ!? それ以上言うのはやめてぇ!? 儂、羞恥心で死んじゃうからぁ!」

 

 ちくしょーめ! どうあがいてもドSな旦那共よ!

 

 儂が羞恥で顔を真っ赤にして必死にやめるのを懇願するのを見て、面白がっておるな!?

 

 くそぅ……何故このようなことに……。

 

「あ、そうだ、まひろ。まひろの好きなアレなシーンって何?」

「じゃからそれ訊くのマジでやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 美穂のいたずらっぽい笑みと共にそんなことを訊かれたが、儂はそれはもうでかい声で止めてほしいと懇願するのじゃった……。

 

 ちなみに、気に入ってしまったのか、後日屋敷でみんなでプレイしよう! ということになってしまい、儂のHPはさらに減少するのであった……。

 

 次は絶対に見つからんところに隠してやるぅ!




 どうも、九十九一です。
 こういう、性癖バレってある種定番ですよね。エロ本とか同人誌とか、特に。まひろの場合はエロゲでしたが……。
 ちなみに、美穂たちが気に入った作品の中のいくつかは、マジで存在するエロゲです。
 次回も以下略です。
 では。
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