爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常 作:九十九一
「……ん、ぅ……はれぇ……」
「お、起きたかい? 体調はどうかな?」
まひろ君に手を握られたままで動けなくなっていた私は、小夜子さんに持って来たもらった朝食を食べた後、メイドに頼んで本を持ってきてもらい、起きるまでの間、本を読んで過ごす。
まひろ君が眠ってから、時間が正午を回った頃にまひろ君が目を覚まし、それに気付いた私は一度本を読むことをやめ、体調について尋ねる。
「…………んぅ……あたま、いたい……けほっ、けほっ……」
私の質問に、まひろ君は未だ精神面が幼くなってはいたものの、頭が痛いと答え、その直後に咳き込む。
「ふむ、熱は……あまり変わっていなさそうだ。氷枕は変えるかい?」
「……ぅん」
「了解した。あらかじめ予備を持って来てあるから、少し失礼するよ」
まひろ君の上体を軽く起こして、ぬるくなってしまった氷枕を取ってから、そこに新しい氷枕を置く。
うわ、結構ぬるくなってしまっているな……これでは、意味がないだろう。
「……つめ、たくて……きもちぃ……」
新しい氷枕に変えると、まひろ君は気持ちよさそうな表情を浮かべる。
「そうか、それはよかったよ。それと、起きて早々申し訳ないが、私もトイレに行きたくてね。少し、手を離してもらってもいいかい?」
「…………もどってくる?」
一度手を離してほしいと告げた途端、まひろ君は悲しそうな表情を浮かべながら、そう訊いてきた。
そのあまりにも庇護欲をそそる表情と声に、私はは思わずきゅんとしたが、頭を振って気を持ち直す。
「あぁ、もちろんだとも。だから、少し待っていてくれないかい? それと、何か欲しいものがあれば持ってくるが、何かあるかい?」
「……しょうこ、ねぇ……」
「わ、私かい?」
予想外の物が飛び出たな……。
「……みほ、たちにも、あいたぃ……」
そう話すまひろ君の表情は、とても寂しそうにする子供のようであった。
「……ふむ、どうしてかな?」
あまりにも普段のまひろ君とは似ても似つかない姿に、私は試しにとばかりに、その理由を訊いてみることにした。
興味本位ではあるが、気になる事ではあったためだ。
人間、弱った時に案外本音が出るものだからでもあるからね。
「……じぃじが、いなくなって…………ひとりは、やで…………おねつを、だしたときが、つらくて……ひとりは……さみしいの……」
そう話すまひろ君の顔は、今までに見たことがない、とても寂しそうな表情だった。
これはまた……。
「……君の両親は?」
「……おねつ、だしたときは……かえって、きて、くれた……けど……なか、なか……かえってこない……から……さみし、かった……」
「……そうか」
そう言えば、まひろ君の両親は会社経営をしていたか……?
生まれてからある程度の年齢まで育つまでの間は家にいたようだが、一定の年齢を超えてからは、源十郎さんと祥子さんの二人に育てられた、だったか?
そう考えると、まひろ君の家庭もなかなかにアレだが……そうか。
まひろ君は基本的にめんどくさがりで、楽観的ではあるためか、両親が家に無いことは大して深く考えておらず、どうでもいいと言う感情に近いのかと思ったが、どうやらそうじゃないらしい。
無意識下に当時のことが刻み込まれていたようだ。
「ならば、急いで戻ってこよう。安心するといい。私たちはみんな、まひろ君が大好きだからね。君を一人にすることはないよ」
だから、私は安心させるように、そう告げた。
「……ほんと?」
「あぁ、本当だとも」
「……じゃあ、まってる……」
寂しそうにしながらも、どこか安心した様子のまひろ君は、私の手を離した。
その姿がなんとも可愛すぎて、私は思わず吐血しそうになるが、急いでトイレへ向かう。
待たせるわけにはいかない、という気持ちから、かなりの速度が出た。
それから、ものの二分程度で部屋に戻って来ることに成功した。
「戻って来たよ」
「……うぅ」
私が戻ってきたことをまひろ君に言うと、まひろ君はうるうると瞳を潤ませながら、なんとも可愛らしい唸り声のようなものを発した。
「どうしたんだい?」
「……さみし、くて……」
「二分で戻って来たが……」
「……ぐすっ」
なぜか、まひろ君が泣き始めてしまった。
「あぁ、なんで泣くんだい!? 君、本当にどうした!?」
「……あんし、ん、した、から……こほっ……」
あ、別に私が何かをしたとかではなかったのか……安心した。
「あぁ、ほら、咳が出てるんだから、大人しく寝ているように。私はここにいるから」
「……ぅん」
私は近くの椅子に腰を下ろすと、まひろ君は安心したらしいが、もぞもぞと手を動かすと、私の手をぎゅっと握った。
「……えへへぇ……」
そして、とろんとした顔で、にへらと笑った。
「ごふっ……」
その破壊力に、遂に私は吐血した。
「……だい、じょーぶ……?」
「あぁ、気にしないでくれたまえ」
いきなり吐血した私に、まひろ君は自身が辛いにもかかわらず、心配する声をかけてくれた。
しかし、私は努めてまるで何もなかったかのような、普段の冷静な表情に戻す。
「よか、った…………すぅ……すぅ……」
「おや、また眠ってしまったか。……しかし、随分と精神面が幼くなっているな……ふぅむ、これはどういうことだろうか?」
再び眠ったことを確認すると、私は口元に手を当てて考えこむ。
私の頭には、日本の発症者全ての情報が入っている。
他国の情報もあるにはあるが……正直、自身は無いね。自国の発症者ではないから。
もちろん、情報としては私の方にも流れて来る。
その情報の中には、変化前と変化後のことも入っている。
元は背が低い男性が、長身でスレンダー美女になった人もいれば、元はモデルのようにキリッとした女性が、可愛らしい少年、所謂ショタという存在になった人もいる。
その変化は、あくまでも本人の理想が起因しており、そこに例外はない。
精神面も変化する、ということもなくはないが……それはあくまでも、新しい性別の体に、精神が引っ張られた結果と言える。
一例を挙げるとすれば、男性から女性へと変化した人ならば、男性時代は荒事も特に抵抗がなく、グロい物やエロに対することへの嫌悪感や、忌避感と行ったものはなかったが、女性化すると、徐々に女らしくなり、『きゃっ』という悲鳴を上げたり、カッコいい行動にきゅんとしたり、その他にも今まで好きだったエロとかグロい系の物に大して、良い感情を持たなくなったりと、様々だ。
反対に、女性から男性へ変わった人ならば、虫も殺さないようなおしとやかな性格な人が、気が付けばバイオレンスなことが好きになったり、他にもエロいことに対する興味が倍以上になるなどがある。
……とはいえ、エロ系に関しては、あまり男女の差はなく、どちらかと言えば、女性の方が生々しいことが多いが。
実際、下トークなど、男性は露骨でバカバカしくなるような、所謂欲望に忠実とでも言うべきもので、一種のコミュニケーションツールと言える物だが、反対に女性というのは……なぜか、生々しい。え、それここで話すの? みたいなことも、普通に話す。
男性の想像を軽々とぶち壊す、それが女性だ。
と、色々話が逸れたが……精神面というのは、そう言った肉体面が原因によるものが大きい。
しかし、目の前のまひろ君のように精神面が幼児化する、と行ったようなことはないはずなんだが……。
「やはり、能力が原因? それとも、単純にまひろ君が幼児化するだけ……? もし、前者であれば、能力についての研究に時間割くべきだろうが……」
まったく、面白いと思ってしまう辺り、私も色々と問題だが……調べたいところだ。
「……とはいえ、今は治療に専念しないとだな」
目の前のまひろ君を見て、ふふっ、と笑みを零しながら、私は再び本を読み始めた。
時間を遡り、朝。
「というわけで、まひろ君が風邪を引いちゃった」
学園へ向かって歩く途中、あたしはみんなにまひろ君が風邪を引いちゃったことを伝えていた。
「……どうりでメイドさんたちがバタバタしてたわけだし、祥子さんも来ないように言ったわけね。それで、まひろは大丈夫なの?」
「今は、祥子さんが看病してくれてるよー。なんでも、医師免許を持ってるんだって」
「あの人も大概だと思います、わたし」
「そうね~。でも、医師免許も持っていたことは予想外ね~」
「……ん、今後病院に行く必要、ないのでは?」
「まあ、あの屋敷には最低限度の医療道具や機械等がありますからね」
「「「「あるの!?」」」」
「はい。もし、あの屋敷で立て籠もる場合を想定しての準備ですね」
「それはおかしいと思うわ、私」
あのお屋敷、そんな場所もあるんだねぇ……。
でも、本当に医師免許を持ってるのってすごいなぁ、祥子さん。
たしか、運転免許もたくさん持ってたっけ?
すごいなぁ。
「それで、どの程度なのですか?」
「んーと、38度9分の熱があって、頭痛、咳、喉の痛み、かな」
「大人でもキツイ熱なのに、あの体だとかなりキツそうね~……」
「うん、すごく辛そうだった。それにまひろ君、熱があるのに学園に行こうとしてたんだよ?」
「……呆れる」
「でしょでしょ? あたしも、顔を真っ赤にして食堂へ向かうまひろ君を見て、慌てて部屋に抱っこして連れてったよ」
「ファインプレーです、アリスティアさん」
あたしもあれを見た時はすっごく慌てたよねぇ……。
だってまひろ君、すっごく顔が赤くて、ふらふらしてるのに学園に行こうとするんだもん。制服にも着替えてたし。
去年のアルバイトも似たようなことがあったしね。
辛そうなのに、いつものように笑いながらアルバイトに来るんだもん。
さすがに、店長がストップをかけて家に送っていったけど。
「でも、大丈夫なのかしら、まひろ」
「うーん、どうかなぁ。すっごく辛そうだったけど……祥子さんやメイドさんに任せれば大丈夫じゃないかな?」
「そうですね。祥子さんのように医師免許がなくとも、柊さんたちにはある程度の知識がありますからね。おそらく大丈夫かと」
「……ん、なら安心」
「でも、今日はすぐに帰らないとね~」
「だね。でも、結衣さんはすぐに帰れるの?」
「大丈夫よ~。お嫁さんが風邪を引いてしまったからすぐに帰ります、って言えばすぐに帰れるもの~。理事長も知っているからね~」
「ホワイトね、うちの学園」
「ホワイトよ~」
柔軟に対応してくれるなんて、すごいなぁ。
あれかな、やっぱり私立の学校だから、っていうのもあるのかな?
それに、瑞姫ちゃんのお母さんが理事長だからかも。
うーん、コネ?
「まひろ君、どうしてるかなぁ……」
「ま、ゆっくり寝てればいいけどね」
そんなこんなで、あたしたちは学園へ向かって歩きました。
「あー、今日は桜花が風邪で欠席だ」
『『『えーー』』』
「はいはい、桜花がいなくて残念なのはわかるが、授業は真面目になー」
朝のHRが始まり、四方木先生がまひろ君が欠席だと告げると、クラスのみんなががっかりしたような声を零した。
そこからの連絡事項は、みんなあまり身が入らないような感じでした。
そうして、HRが終わり、四方木先生が出て行ったあと、クラスのみんながあたしたちの所へやってきた。
『ねえねえ、まひろちゃんどうしたの!?』
『風邪、酷いの?』
『無事!?』
どうやらみんな、まひろ君のことが心配みたい。
うーん、愛されてるねぇ、まひろ君。
「あはは、大丈夫だよ、ただの風邪だって」
『そっかー、安心』
『でも、誰が看病してるの?』
『そう言えば、すっごい美人さんが結婚式の時にいたよね。あの人ってそう言えばどういう人なの?』
「あの人は何と言うか……TSF症候群を研究してる人よ。アリスが言うには、どうも医師免許も持ってるみたいよ」
『そうなの!? まひろちゃん、すっごいなぁ……そんな人とも結婚したんだぁ』
「人たらしですからね、まひろちゃん」
『『『たしかに』』』
まひろ君、クラスのみんなから人たらしって思われてるんだ。
絶対に認めなさそうだけどね、まひろ君。
『くそぉ、桜花という癒しがいないとはなぁ……』
『今日は何を癒しにすれば……!』
『まー、羽衣梓さんとかを癒しにすると、なんか怖いしなぁ……』
『わかる。なんか、桜花だから許されてる感はある』
『『『それな』』』
あと、男の子の方はまひろ君が癒しになってたみたいです。
でも、わかる……わかるよ! まひろ君って、見ててすっごく癒されるよね!
ちっちゃいのに、その外見とは全く違う話し方をするし、時折見せる可愛らしい仕草とかすっごくいいんだよね!
「なんだ、まひろの奴風邪か」
「心配ですね」
「三島君に笹西。ま、聞いての通りよ。朝から熱とか頭痛があるみたい」
「へぇ。ってことは……あいつ今……いや、あれは昔だしな……今は違うか?」
「笹西君、今何を言おうとしたのですか?」
気になることを呟いた笹西君に、瑞姫ちゃんが反応して、
「あー……いやまぁ、小学生の頃の話なんだけどよ……あいつ、一定の熱を超えるとなんつーか……甘えん坊になるっつーか……」
「「「――!」」」
ま、まひろ君、そんなことになるの!?
あ、でも、そう言えばあたしが部屋を出る前、ちょこっとその気があったような?
「でもあれ、中学頃にはなくなってんだよなぁ。だけどよ、今ってあいつ、体が小さいだろ? だからもしかしたら、って思っちまってなぁ」
「……笹西、それ詳しく」
「は? いや、小学生の頃って――」
「いいから、言え」
「お、おう……あー、とりあえずだな。さっき言った通りなんだが……あいつさ、小学生の頃はひたっすら甘えるんだよ。親があんましいないからだろうなぁ。めちゃくちゃ甘えてな、俺も俺でそういうことがあったしよ」
「へぇ、まひろさんの小学生の頃はそうなってるんですか」
「おう。ヤバかったぜ。今あれやられたら、破壊力ヤバそうだがな! だってあいつ、飯食う時『ふーふー、して』とか言うし、寂しいのか近くに家族がいると、手を握って来るんだよ」
『『『あざと!』』』
たしかにあざとい……!
「いや、今はわからんぞ? あれでも、中身は男子高校生だからな。さすがにそんなことにはならんだろ」
「いや、今のまひろはたまに……幼児退行する!」
「お前は何を言ってんだ、音田」
「もしそうであれば……柊さんたち、大丈夫でしょうか?」
「「あー、死んでそう」」
柊さんたち、まひろ君大好きだもんね……大丈夫かな?
祥子さんなら大丈夫そうだけど。
「音田たちの家のメイド、大丈夫かよ……」
「同感です……」
メイドさんたちのことを心配する笹西君に、三島君も同意していました。
この後、最初の授業の先生が来て、お話は中断となりました。
……もしもまひろ君が幼児化してたらどうしよう?
すっごく見たいかな!
心配だけど!
どうも、九十九一です。
これ、三話で収まるんか? と思いながら書いております。次で終わらせられたらいいなぁ……。
次回も以下略です。
では。