爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

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日常136 体調不良。退行するまひろ 下

 再び、桜花邸。

 

「んぅ……あつ、ぃ……」

 

 もぞもぞ、しばらく眠っていたまひろ君は、再び目を覚ますなり、暑かったようで布団をどけてしまう。

 

「こらこら、布団はちゃんとかけておくように。じゃないと、風邪は治らないよ?」

「……や」

 

 布団をどかしてしまったまひろ君に、私はしっかり布団をかけておくように注意するが、まひろ君はぷいっ、とそっぽを向いてしまった。

 

 どうやら、まだ子供になってしまっているらしい。

 

「や、じゃなくてだね? いいかい? 熱い、ということは君の体が発熱を起こし、そうして風邪のウイルスをやっつけているところなんだよ?」

「……うぅ」

「治らないと、美穂君たちと一緒に学校にも行けないし、何より遊ぶことが出来ない」

「……あそべない、の?」

「あぁ、そうとも。風邪を引いている状態で遊ぶことをすれば、美穂君たちにうつしてしまうことだろう。そもそも、その状態で遊べないだろう?」

「……ぅぅ、あそべないの……や……こほっ、こほっ……」

 

 布団をどかしてから少しして、すぐに咳き込みだすまひろ君。

 

「ほら、また咳き込んだ。いいかい? しっかり布団をかけて眠らないと、風邪は治らない。まずは、寒くなくならないとだ。まだ寒いんだろう?」

「……さむぃ」

「だろう? だから、しっかりと布団をかけないと。……喉は乾いていないかい?」

「……かわいた」

「そうか。では、これを飲むといい」

 

 高熱時は、水分補給を怠ってはいけない。

 

 発熱により大量に汗をかいてしまうからね。

 

 積極的に飲ませないと。

 

 私はコップにスポーツドリンクを注ぎ、それをまひろ君に手渡す。

 

 まだ表情はぼーっとしており、顔は赤い。

 

 手渡されたスポーツドリンクをこくこくと喉を鳴らしながら飲んでいく。

 

「……ぷはぁ……うぅ、あせ、きもちわるぃ……」

 

 飲み終えたまひろ君は、嫌そうな顔をしながら、ぽつりとそう呟いた。

 

 よく見てみると、流した汗によって髪の毛は張り付いており、つー、と汗が流れる。

 

 というか、ぼーっとした表情で汗を流す姿が、なんとも妖艶と言うべきか……これも、色々経験しているからだろうか?

 

「あぁ、そうか。ずっと寝ていたからね……どれ、体を冷やしてしまうだろう。拭いてあげようか」

「……ん、ぬがして……」

 

 拭いてあげようと言うと、まひろ君は、私の方を見ながら両手を広げる。

 

「わかったよ。今の君は、甘えん坊だからね。……あー、柊さん、いるかい?」

「こちらに」

 

 試しに呼んでみたんだが、まさか本当にいるとは……とはいえ、タイミングはばっちりだ。

 

「まひろ君の着替えを一式と、あと濡れタオル……できれば、桶にお湯を入れて持ってきてくれ」

「かしこまりました」

「……まだ?」

「まださ。柊さんが戻ってこないと――」

「お持ちしました」

「早くないかい!?」

 

 今、一瞬で来た気がするのだが!

 

「小夜子様のおかげでございます」

「……もしや、氣を?」

「はい。まだまだ基礎の段階ではありますが、ある程度の扱いが可能です。それにより、できることの幅が広がりました」

「そ、そうか……」

 

 小夜子さん、一人だけ別世界の住人だと思うんだが……しかも、その技術をここのメイドたちに教え込んでいる辺り、本気だな……。

 

 そもそも、どうやって習得したのか気になるところだ。

 

 いつか、氣というものを感知する何かを作りたいところだ。

 

「よし、まひろ君体を拭くから少しだけ、こちらへ来られるかい?」

「……やって?」

 

 うるうる、と瞳を潤ませながらのそのお願いの仕方はずるいだろう……。

 

 いやもう、君のそのスタイルは無敵すぎるな……。

 

 破壊力が凄まじく、この私ですら理性という理性が蒸発し、悟りを開きそうになる。

 

 瑞姫君なら、即死間違いなし。

 

「仕方ないね」

 

 私は小さく笑みを浮かべながら、まるで抱っこをねだる子供のように両手を広げるまひろ君の来ているYシャツのボタンを外していく。

 

 ぷち、ぷち、と外していくにつれ、まひろ君の真っ白な肌が見えて来る。

 

 全てのボタンを外し終えたところで、まひろ君のYシャツをするりと脱がす。

 

 そうすると、まひろ君はパンツ一枚の姿に。

 

 発熱の影響で、体が火照っており、体表に流れる汗が艶めかしい。

 

 思わず興奮するが、相手はかぜっぴきだ。そんなことをすればとんでもないことになることはわかり切っているのでね、絶対にしないとも。そもそも、常識的に考えてもアウトだし。

 

「まひろ君、パンツも変えたいから、少しだけ足を持ち上げるよ」

「……ぅん」

「よし、偉い」

 

 さすがに、蒸れた状態というのは気持ち悪いだろうしね。

 

 私はまひろ君の足を軽く持ち上げ、するりとパンツを脱がし、まひろ君を全裸にした。

 

 ふぅむ、こうして見ると……本当に完璧と言うほかないスタイルをしているな……さすが、TSF症候群と言うべきか。

 

 って、じっくり観察している場合じゃないな。

 

 さっさと拭いてあげよう。

 

 私はお湯にタオルを浸けて良く絞り、その濡れタオルでまひろ君の体を拭いていく。

 

「どうだい? 気持ちいいかい?」

「……んぅ、きもちぃ……」

「それはよかった。あぁ、痒い場所があれば言ってくれ。拭くからね」

「ぅん……」

 

 どうやら、あまり聞いていないらしく、気持ちよさそうな声だけが返ってきた。

 

 うぅむ、こうして独り占めというのも、美穂君質に申し訳なくなってくるね……とはいえ、これはこれで役得かな。

 

「……よし、これで拭けたね。どうだい? 気持ち悪さはないかい?」

「……だいじょーぶ」

「ならよかった。さて、そろそろ服を――」

 

 と、私がまひろ君に新しい服を着せようとした時だった。

 

 不意に、部屋の外がドタバタと騒がしくなる。

 

 まるで、何かの足音のよう……いや、これ足音ではないか?

 

 ふむ……数は五。この感じからして間違いなく――

 

「「「「「ただいま!!!」」」」」

 

 まぁ、美穂君たちだろうね。

 

「って、あぁぁ! 祥子さん何してんですか!?」

「見ての通りだが?」

「ま、まままっ、まさかっ、か、風邪を引いて動けないまひろちゃんに、あ、あんなことや、こ、こんなことを!?」

「ははっ、私がそんなことをするわけがないだろう。ほら、これだよ、これ」

 

 慌てたような瑞姫君の発言に、私は軽く笑いながら近くに置いたタオルを見せる。

 

「……体拭いてた?」

「そうだよ。というか、この状況でするわけがないだろう?」

「あ、そ、そうです、よね! し、しませんよね!」

 

 私の発言に、瑞姫君はどこか慌てたような様子を見せた。

 

(何かしそうね、瑞姫だし)

 

(何かしそうだなぁ、瑞姫ちゃんだし)

 

(……何かしそう、みーちゃんだし)

 

(何かしそうね~、瑞姫ちゃんだし~)

 

(何かしていただろうね、瑞姫君だし)

 

「あ、あら? どうしてみなさん、生暖かい目を? あの、本当にしませんよ?」

「「「「「わかってるわかってる」」」」」

「絶対にわかっていませんよね!? あの、さすがのわたしでもしませんよ!?」

 

 まあ、それはそうだろうね。

 

 いくら瑞姫君がまひろ君スキーだとしても、さすがに風邪を引いた状態で何かをするわけがないとは思う……思うんだが、瑞姫君だからね……完璧に否定する、ということが出来ない。

 

 ま、日ごろの行い、という奴だね。

 

「まったくもう……それで、まひろちゃんは……」

「……んぅ……みずき……?」

「あぁ、これはまたかなり熱がありそうですね……可愛らしいお顔が真っ赤です」

「……みず、き……」

「あ、はい、瑞姫ですよー。どうしまし――」

「……ぎゅぅ~っ」

「たぁぁぁぁぁ!?」

 

 ふらふらと、頭を揺らしていたまひろ君は、いきなり立ち上がり、おぼつかない足取りで瑞姫君の前に行くと、突然抱き着いた。

 

 それにより、瑞姫君が素っ頓狂な声を上げるという、少々面白いことになる。

 

「ま、まままっ、まひろちゃん!? ど、どうしたのですか!?」

「……みずきぃ…………しゅきぃ……」

「はわわわわわわっ!」

「……さみしかった、から……うれしぃ、の……」

「ふぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉっっっ!」

 

 突然瑞姫君に甘えだしたまひろ君に、瑞姫君は普段の喋り方はいずこへ? と言わんばかりの奇声を上げる。

 

 君、一応お嬢様なんだよね?

 

「……我が生涯に一片の悔いなし……」

 

 そう言って、瑞姫君は仰向けに倒れた。

 

 その表情は、なんとも安らかなものだったが。

 

「あんた、いつもそれ言ってるわね……」

 

 まあ、幸せならいいんじゃないかな。

 

「……ぁ、みんなも、いるぅ…………まひろね、さみしかったの…………しょうこねぇ、がいた、から……がまん、できた、けど……みんながいた、ほうが……うれしい、の……」

「「「「はぅっ!」」」」

「まひろ、あんしん、だよ……?」

 

 儚いような笑みを浮かべるまひろ君のその表情は、破壊力が凄まじかった。

 

 というか、話し方が本当に子供になっているな……。

 

「ちょ、ちょっと待って!? ねえこれ本当にまひろ!? 明らかに可愛すぎない!? というか、幼すぎない!?」

「あ、あたし、鼻血出そう……あ、ちょっと出た」

「……は、破壊力、抜群っ……! おそるべし、まひろん!」

「あらあら~、ひろ君がかなり甘えん坊になってるわ~」

 

 などなど、美穂君たちは目の前の幼子と化したまひろ君にたじたじである。

 

 まあ、私も今日はずっとあんな感じだったから、理解できるがね。

 

「と、まあ、今のまひろ君は風邪による影響か、どうも甘えん坊になっているようでね。一日ずっとこんな感じだ。寝る時は私の手をずっと握っていてね。あとは、おじやを食べる時はふーふーして、と言って来る」

「「「「か、可愛い……!」」」」

 

 それはそう。

 

「ん、ぅぅ……こほっ、けほけほっ……」

「あぁ、まだ起きちゃダメだって。ほら、布団で寝ているように」

「……でも」

「大丈夫。私たちはいなくならないって言っただろう?」

「……ほんと? まひろと、いっしょに……いて、くれる……?」

「当然じゃない」

「うん、まひろ君が嫌じゃなければいるよ!」

「……ん、断る理由無し」

「もちろんよ~。ひろ君が心配だもの~」

「……ぁり、がとぅ…………ぁ……」

 

 私たちがいなくならないと言ったから安心したのだろう、まひろ君は糸が切れたように倒れそうになり、近くにいた私が倒れ込まないように上手くキャッチした。

 

「起きては眠ってを繰り返している辺り、かなり消耗しているんだろうけど……よっぽど嬉しいんだろうね」

 

 そう言いながら、私は再びまひろ君をベッドに寝かせ、布団をかぶせた。

 

「今日一日、まひろってどんな感じだったの?」

「朝方はいつも通りと言えばいつも通りだね。体調が悪そうにしてはいたが、話し方も普段通り。ただ、昼頃に一度起きた時には、さっきのような話し方だったよ」

「なるほど~。あ、そう言えば、まひろ君のお友達の笹西君が、まひろ君は小学生の時、熱を出すと甘えん坊になるって言ってたよ?」

「そうなのかい? ふむ……では、本当に幼児退行を? しかし、なぜ?」

 

 まひろ君のこの行動が、過去に実際に会ったものであるとするならば、なぜこのタイミングで出て来たのか。

 

「ちなみにそれは、小学生の頃だけなのかい?」

「みたいよ。笹西が言うには、中学生になる頃には無くなったって」

「なるほど……」

 

 となると、肉体が小学三年生程度になっていることが原因、という風に考えるのが自然か。

 

 ……しかし、それだけじゃない気がするのも事実。

 

 やはり『成長退行』も関わっている?

 

 しかし、あれはまひろ君曰く、精神面には影響していない、ということだったしな……。

 

 あとで、発症者が病気になった際の状況を調べてもらうとするか。

 

「ま、その辺りは調べておきたいね。……さて、見ての通りまひろ君は単なる風邪だ。しっかりと栄養を摂り、しっかり睡眠を取れば問題なく治るよ。見た所、顔色も良くなってきているしね。おそらく、明日か明後日辺りには完治だろう。ま、後で食事を摂らせないと、だけどね」

「「「「じゃあ、私|(わたし)(あたし)が! むっ!」」」」

 

 おそらく、ふーふーして、食べさせる、という役目を貰いたいんだろうね。

 

 まあ、あれは実際にかなり役得なものだ。その気持ちはよくわかるし、何より美穂君たちはまひろ君が大好きだから、当然だ。

 

 とはいえ、ここで争ってはまひろ君に悪い。

 

「ま、交代ですればいいと思うよ。おそらく、まひろ君本人もその方が嬉しいと思うしね」

「なるほど、たしかにそうね。瑞姫は……」

「ま、そのうち起きると思うよ」

「……みーちゃん、間が悪い」

「あ、あはは、自分の気持ちが枷になっちゃってるよね」

「難儀よね~」

 

 苦笑しながら、床に倒れている瑞姫君を見ながら各々呟く。

 

 たしかに、彼女はかなり残念な性格をしていると思うよ。

 

 

 一度着替えるということで、美穂君たちは部屋を退出し、着替えてから再び戻って来る。

 

 尚、食事はまだだ。

 

 先にまひろ君に食べさせなければ、ということだからね。

 

 そして、今は……

 

「はい、まひろ、あーん」

「あーん……あむ……んむんむ……こくん」

「美味しい?」

「……ぉいしい、よ」

「そう、よかった」

 

 見ての通り、まひろ君におじやを食べさせている所だった。

 

 ちなみに、裏で瑞姫君たちも控えている。

 

 あぁ、瑞姫君はあの後、あーんができるというあれによって起きた。

 

「じゃあ、次はわたしですね! ……ふー、ふー……はい、まひろちゃん、あーんです」

「ぁむ…………ん。おいしぃ……」

「よかったです」

 

 ……ふむ、これ、すっごい不思議な光景だな……。

 

 交代で一人に対してあーんをし続けるとか、どう考えても非効率極まりない。

 

 しかし、まひろ君やそれをしている美穂君たちはかなり幸せそうだし、やはり幸せなどには効率などという要素は不要なんだろうね。

 

 あぁ、ちなみに私は遠慮させてもらっている。

 

 私は既に、独り占めしたからね。

 

 さて、そんな奇妙とも言える食事を終えると、まひろ君は再び眠りについた。

 

 起きる度に顔色がよくなっている辺り、かなり良くなっているんだろう。

 

 実際、朝の状態と比べると、随分と辛そうな様子が消え、今はとても落ち着いた、安らかな表情となり、規則正しい寝息を立てている。

 

 あとは、眠るだけで問題ないだろうね。

 

「ふわぁ~~……あー、眠くなってきてしまったな……」

「あら~、大丈夫~?」

「問題ない……と、言いたいところだが、実は昨日は徹夜していてね。慣れているから問題はなかったんだが……まひろ君がこの通りだから、気を張っていてね。落ち着いた様子を見たら、緊張の糸が切れたらしい。今すぐにでも、眠りたい気分だ」

「では、もうお休みになった方がいいのでは?」

「んー……ま、それもそうだね。私がすることはもうなさそうだし、私はそろそろ眠るとするよ。空腹感もあるが……今は食欲よりも、睡眠欲の方が強い。では、私はこれで……っと、君たち、一応寝る前はしっかりと手洗いうがいをするように。風邪がうつるかもしれないからね。では」

 

 そう言い残して、私はまひろ君の部屋を後にした。

 

 

 あとから聞いた話ではあるが、あの後、全員交代でまひろ君を見ることになり、問題ないと判断した後は、全員が私の言いつけ通りに手洗いうがいを行い、食事を摂って、入浴してから就寝となったそうだ。

 

 私も、朝まで熟睡だった。

 

 そして翌日……

 

「「「「「「くしゅんっ……!」」」」」」

 

 私たちはみんな仲良く揃って、風邪を引いた。

 

 ちなみに、まひろ君の方は、

 

「完全復活! ……ふぅ、祥子姉に診察を受けた後の記憶がものすごく曖昧じゃが…………なんじゃろうか、ものすっごい恥ずかしいことをしておったような気が……って、なんでおぬしら風邪を引いとんのじゃあぁぁぁぁ!?」

 

 いつも通りの様子を見せ、仲良く風邪を引いた私たちを見て、驚きの声を挙げるのだった。




 どうも、九十九一です。
 お知らせと言うか、なんというか……既に知っている方は知っているかもしれませんが、昨日からじじのじゃのIFの投稿を始めました。とは言っても、最初はほとんど本編と変わらないんですがね。一部変更が入ってますが。
 今日も二話目が上がってますので、もし興味があればどうぞ。
 次回も以下略です。
 では。
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