爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

144 / 157
日常140 イベント開始。チートなまひろ

『それでは、ただいまより、水無月学園夏の鬼ごっこ大会を開始いたします。各生徒準備はいいですね? それでは……スタートです!』

 

 北エリアのどこかに適当な場所に待機し、開始時間を待っておると、開始のアナウンスが流れた。

 

「よし、では行くか」

 

 早速仕事とばかりに、儂はてくてくと逃げ側の生徒がいないかを見て回る。

 

 今回、服装がばらばらであることと、参加者が学園生ほぼ全員ということもあり、鬼側には黒色の、逃げ側には赤色の腕章がそれぞれ支給されており、それで判別を付けるようになっておる。ちなみに、逃げ側は腕章をひっくり返すと黒色になり、捕まったらひっくり返すことになっておる。

 

 実は儂、今日の鬼ごっこ大会のために……というわけではないが、祥子姉が屋敷に引っ越してきてから、能力の扱い方を二人で研究しておった。

 

 その結果、儂は色々な反則技を身に付けたのである。

 

 正直、これを発見した時、え、マジで? これ許されんの? みたいな、感想を抱いた物じゃ……。

 

 今回、能力が全面的に使用可能と言う事で、儂はかなり有利な動きが出来ることじゃろう。

 

 さて、どのような物かは……見てもらえればわかる。

 

 とりあえず、逃げる側の生徒を見つける所から始めねばならんので、儂は徒歩で辺りを散策する。

 

 うぅむ、夏休みや開校記念日等の理由以外で、日中の街中を歩くというのは、なんとも言えぬ背徳感のようなものを感じるのう……。

 

 なんかワクワクする。

 

「さてさて、逃げ側はどこかー……っと?」

 

 きょろきょろと周囲を見回しながら歩くと、大体五十メートルほど先に、五名ほどで固まって歩く生徒たちを発見。

 

 腕章を確認すると、色は赤色。

 

 つまり、逃げ側じゃな。

 

「ふふふ……どうやら、まだ儂のことに気づいてはおらんようじゃな」

 

 さて、このまま走って捕まえてもいいが……ここは早速、能力を使用するとしよう!

 

 刮目せよ! 儂と祥子姉の研究成果を!

 

 まず、獣化の能力で兎に変化。

 

 そのまま、近くの家の屋根に跳び乗り、兎の脚力を活かして屋根から屋根へと移動し、補足した生徒たちのすぐ傍の家の屋根にて待機。

 

 ちらり、と下を覗く。

 

『いやぁ、まさか入学した最初の年に、こんな面白いイベントがあるとは思わなかったぜ』

『わかるわー。俺、マジでこの学園入ってよかった』

『なんか、可愛い子は多いし、イベントごとはどれも大規模みたいだし、学食は美味いし。ほんと、いいことづくめだよな』

『それに、なんと言っても、桜花先輩いいよな!』

 

 む、儂の話題?

 

 というか、この者共話の内容から察するに、一年生か。

 

 ふむ、もうちっと様子を見るか。

 

 移動する一年生共をこそこそ追いかけつつ、強化された聴力で会話の内容を盗み聞きする。

 

『俺、初めて発症者の人とか見たけど、あんな可愛くなるとは思わなかった』

『いやいや、可愛すぎじゃね? しかも何がすごいって、あの人複数の美少女や美女と結婚してるって話じゃん?』

『あー、あったあった。その上、爺口調とかすんげぇギャップもあるし』

『旦那さんたちとの絡みはマジで尊いよな』

『わかる。なんか、旦那さんたちに突撃かました人もいたらしいけど、後々粛清されたみたいだし、やっぱすげぇよなぁ』

 

 粛清て……いや、それよりも、儂の旦那共に突撃をかました者がおるじゃとぅ!?

 

 そ、それはつまり、儂の旦那の内誰かに告白をしたバカ者がおるということなわけで……ぬ、ぬぬぬぬぅ! ゆ、許さんっ! それは許さんぞ!

 

 あの旦那共は、儂の大好きな者たちじゃ。

 

 そ、そりゃぁ、モテるのは嫁として嬉しくはあるが……告白されるとなると、すんごい複雑な気分……。

 

 ……って! いかんいかん! いつから儂はここまで嫉妬深くなったというのか!

 

 やはり、精神面の女性化が進みまくっとるのう……。

 

『そういや桜花先輩って、なんかドMって噂流れてるよな』

「!?」

 

 なんか今、とんでもない話題が出たぞ!?

 

 というか、やっぱり広まっとるのか!?

 

『いやぁ、あんななりしてドMとか……正直、興奮する』

『『『『わかる』』』』

「……よし、捕まえよう」

 

 元男として、身近な人物をそう言う目で見る、というのはわからんでもないが……いざ女になってしかも自分自身がそう言う目で見られておることを知ると、普通に嫌な気分じゃな……好きな者ならば問題ないが。

 

 というわけで、儂は音を消して談笑している一年生共の背後に降り立つ。

 

「――ほーれ、桜花先輩じゃぞー」

『『『『『へ!?』』』』』

「ほいタッチ」

 

 噂の人物がいきなり現れたからじゃろう、一年生共は間の抜けた声を出した直後、儂にタッチされた。

 

 ふふふ、この姿の俊敏性を舐めるなよ!

 

『うっそ、もう捕まっちまったんだけど!』

『もっと警戒してりゃよかったぜ……』

「うむ、いくらエリアが広いとはいえ、しっかり確認せねばな。では、ここからは鬼の仕事を頑張るのじゃぞ!」

 

 儂はそう言い残すと、ぴょーん! と跳躍して、再び屋根へ上り、軽快に跳び去って行った。

 

 

『桜花先輩、暗殺者か何か……?』

『音もなく捕まったわ……』

『あぁ。だけど……』

『『『『『めっちゃ可愛かったから、むしろ捕まって幸せじゃね?』』』』』

 

 

 一年生共を捕まえた後、儂はひたすら屋根の上を飛び移りまくる。

 

 そんな状態を、かれこれ一時間ほど続ける。

 

 さて、ここで儂の『獣化』の能力のデメリットを思い出してほしい。

 

 儂の獣化の能力は、一度変身しその状態を一時間以上維持した場合、その動物の姿になってしまうというデメリットが存在する。

 

 そう、一時間以上、じゃ。

 

 で、更に思い出してほしい。

 

 儂の『成長退行』は体の成長と退行をするための能力などではなく、時間を進める、戻すという能力であることを。

 

 つまりどういうことか。

 

「この体を一時間先に進めてしまえば、デメリットなど無いに等しい!」

 

 こういうことじゃな。

 

 どうやら、時間がデメリットや再使用の条件になっとる能力は、『成長退行』の力を使えば、そのデメリットを相殺できることが最近判明した。

 

 尚、これを思いついたのは儂ではなく、祥子姉じゃな。

 

 あの調査の日から、色々と思考に思考を重ね、様々な仮説を立てておったようで、屋敷に引っ越してきてから、ちょこちょこクソほど広い屋敷の庭(庭と言うか、草原じゃが……)にて、色々と実験しておった。

 

 その果てに見つけた裏技がこれ。

 

 つまり、今後儂は『獣化』と『変色』の能力のデメリットが無くなるという事じゃ!

 

 ふふふ……いやこれ、ほんとチートじゃな……。

 

 しかも、体の時間を戻せば、疲労感もなくなるという仕様。

 

 ……あ、これは余談なんじゃが、儂はこの体に変化して間もない頃、体を戻すことをしても疲労感が消えない、などという状況だったんじゃが、今はそうではなくなっておる。

 

 儂もそのことを忘れておったようで、体育祭の時に疲労感が消えることに違和感をなんら感じなかったが、よくよく思い返してみたらそうだということに気付いた。

 

 で、祥子姉に尋ねたところ、

 

『おそらく、能力が体に定着しきっていなかったんだよ』

 

 とのことだそうじゃ。

 

 どうやら、発症してから一ヶ月ほどは不完全な状態であるためか、能力を100%の効力で使用することが出来ないらしい。

 

 儂の場合、本来消えるはずの疲労感が消えない、という形で現れたようじゃな。

 

 と、そんな話は置いておくとして。

 

 つまり、じゃ。

 

 今の儂って……いつでも変身する動物を切り替えられるし、疲れないし、やろうと思えばずっと動物の姿を維持できる、などというとんでもない状況じゃな。

 

 疲れ知らず、ということになる。

 

 こういう、鬼ごっこという場面においては無類の強さを発揮するわけじゃな。

 

 さらに言えば、祥子姉はあの調査の日から例の催眠術の能力を持った発症者の者と更なる研究を裏で行っておったらしい。

 

 ビデオ通話や、メールのやり取り等で。

 

 あとは、今の職に就く前の自由時間はそれに充てておったそうじゃ。

 

 なんというか……やっぱおかしいじゃろ、祥子姉。

 

 で、以前は催眠術をかけるには、例のヘッドセットが必要だったわけじゃが……今はその必要はないらしい。

 

 なんでも、プログラム関係の能力を得た者と、催眠術の能力を得た者との合作で、スマホアプリとして落とし込むことに成功したらしいからな。

 

 ……一応、例の調査から一ヶ月程度経過しとるが、この短期間に何しとんの?

 

 やはり、発症者の能力は異常じゃなぁ……。

 

 ……で、話を戻して、じゃ。

 

 そのアプリが今、儂のスマホに入っとるわけで……つまり、儂は日中にころころと『獣化』の変身先を変えることが出来るわけじゃな。

 

 もちろん、動画を視聴しなければならないため、その分の時間はかかるがな。

 

 うぅむ、やはりチート……。

 

「とはいえ、本気でやってこそ、じゃな!」

 

 そう、こういうイベントごととは、常に本気でやってこそ。

 

 こんなお遊びにマジになってどうすんの? と嘲るように言う奴もいるかもしれんが、んなもん知ったこっちゃない。というかそれ、負け犬の遠吠えじゃろ、と儂は言いたい。

 

『やべっ! 見つかった! おい、向こうにいるから逃げた方がいいぞ!』

『マジか! サンキュ、助かったわ!』

 おっと、逃げ側がおるぞ。

 

 相変わらず屋根から屋根へと跳ねまくる儂は、時たま体の時間を戻したり、逃げ側の生徒を見つけては追い回したりしておった。

 

 その途中、どうやら逃走中の者がおったらしく、地上ではひたすら走る生徒が二名。

 

 その後ろからは鬼が二名ほど。

 

『よし、俺はあっちから行くから、お前はあっちから頼む』

『了解!』

「お、挟み撃ちじゃな? うむうむ、チーム戦とはよい物よなぁ。どれ、儂も手伝うとするか」

 

 追い回す鬼側の手助けをすることに決めると、儂は少しだけ移動する速度を上げ、挟み撃ちが上手く成功するようにと先回りを行う。

 

『よしっ、一人撒いた!』

『このまま行けば逃げ切れる!』

「――と、思うじゃろ?」

『何ィ!? 先回りだとぉ!? というか、え、桜花!? ってか、今どっから来た!?』

「上じゃ上。屋根の上」

『え、それずるくね!?』

 

 全力で走る二名の生徒の前に、儂はすたっ! と降り立つ。

 

 あ、よく見たらこやつら、儂のクラスメートじゃな。

 

「ふははは! 儂は能力の使用が許可されておるからのう! それに、普段の姿では無理があるからな! ふふ、観念するのじゃ!」

『くっ、捕まってたまるか!』

 

 捕まるまいと儂の横を通り過ぎようとするクラスメートじゃが……

 

「甘いわっ! 兎の脚力、舐めるでない!」

『何ィ!? ぐあああ!』

 

 瞬発力と動体視力、それから反射神経により、速攻で確保した。

 

『遠藤―――! くっ、お前の死は無駄にはしな――』

『ほい、確保』

『ちっくしょーーーーー!』

 

 そして、一人が捕まった隙に、もう一人が逃げようとしたが、いつの間にか合流しておった鬼が確保し、心底悔しそうに叫んだ。

 

 ふふふ、この叫びが気持ちいいのう!

 

『いやぁ、助かったぜ桜花』

「いいってことよ」

『にしても、兎たぁなぁ……やっぱそれ、強くなんのな』

「まあの。今は兎の能力を活用できる。脚力が上がっておる故、今は身軽じゃぞ! あと、スタミナも上がるしな」

『へぇ、そいつは心強ぇや。んじゃ、この後も頑張ろうぜ』

「うむ! では、儂は行くわい」

 

 そう言って、儂は再びぴょー! と屋根の上へ跳び上がり、跳び去った。

 

 

『なぁ、あいつスパッツ穿いてるとはいえさ……』

『言うな。あいつは元男だ。多分、あれはあれで普通にエロいと思われてるってことに気づいてないんだろうから』

『……眼福でした』

 

 

 ――ところ変わり、美穂視点。

 

「はぁ、はぁ……いやー、夏場に走るのはキツイものがあるわー」

「だねー」

 

 鬼ごっこ大会が開始されてから既に一時間ちょっと。

 

 現在私は、アリスと一緒に東エリア内でひたすら鬼から逃げ回っていた。

 

 今は薄暗い路地裏に身を潜めているところ。

 

「トレーニング用の運動着にしてよかったわ。これ、通気性もバッチリだし、動きやすいし」

「うんうん、すごくいいよね、これ」

 

 今回の鬼ごっこ大会に参加するに辺り、私、瑞姫、アリス、真白さんの四名は、トレーニングルームで着るためのトレーニングウェアを着ていた。

 

 これは瑞姫が……というより、羽衣梓グループが用意してくれた物で、夏場でも通気性抜群、なのにかなり動きやすいという、かなりいいもの。

 

 おかげで、かなり楽に走り回れてるわ。

 

「にしても、かなり大掛かりなイベントよね、びっくりだわ。無線機も支給されるし」

「あたしもびっくりしたよ。でもでも、始まったばかりだけど、すっごく楽しいよね!」

「そうね。去年はたしか……あー、かくれんぼだったかしら? さすがに、今年みたいに市内全体は使わなかったけど」

「へぇ~、そんなこともしてたんだぁ……いいなぁ、あたしも参加してみたかったなぁ」

「ふふ、でも今年は一緒に参加してるんだから、別にいいじゃない。それに去年は……まあ、うん……色々酷かったから……」

「わー、すっごい遠い目だねぇ」

 

 正直、思い出したくない。

 

 なんて、私が去年のことを思い出していた時。

 

 ザザザ―――

 

 不意に、無線機が鳴り出した。

 

 この感じからして、通信ね。

 

 一体何が?

 

『――この無線を聞いてる奴ら、心して聞いてくれ! はぁ、はぁ……今北エリアにはとんでもない鬼がいやがる! そいつは、地上を走るんじゃなくて、屋根の上を飛び跳ねるんだ! おかげで、開始数分で捕まっちまった奴もいるらしい! くっ、はぁっ……』

 

 走った後なのか、隠れているのか、どんな状況なのかはわからないけど、どうやら無線機で話している人は、北エリアがヤバイ、という情報を伝えるために無線機を使用しているみたい。

 

 北エリアか……一応、隣のエリアだけど……。

 

 というか、屋根の上を走るって……どこの忍者よ、それ。

 

 忍者なんて実際いるわけ……って、そう言えばゴールデンウイークの旅行の時に、ガチ忍者がいたわね……ということは、鬼側に忍者がいるの?

 

 うっそだぁ……。

 

『だ、だから、北エリアにいる奴は、すぐに西か東エリアに逃げた方が――『ふははは! 見つけたぞ! 儂の目から逃れようなどとは思わないことじゃなァッ!』畜生! もう来やがった! いいかっ、絶対に来る――』

 

 ガガガガガッッ――

 

 そこで通信は途切れ、私たちの間に何とも言えない微妙な空気が流れ……

 

「「……まひろ(君)じゃん……」」

 

 ないわー、みたいな声を二人揃って漏らした。

 

「屋根の上に飛び跳ねてるの、まひろ、よね……」

「う、うん、まひろ君の声が聞こえたし、それに……あんなに特徴的な喋り方はまひろ君だけだよ」

「そうよねぇ……ってことは、能力をフル活用してるってことよね……うわぁ、普通に強敵じゃない……」

「ケモロリっ娘になったまひろ君、すごいもんね」

 

 実際、まひろの能力である『獣化』はバカにできない力を持ってるからね。

 

 あれって、動物としての力を人間の体で行使できるわけでしょ? 普通に考えてヤバいわよね?

 

 まひろだから比較的マシなわけで、例えば何らかの種目のアスリートなんかが『獣化』を用いた場合、凄まじいことになりそうだし。

 

 ちなみに、まひろ曰だけど、

 

『熊のような力が強い動物に大人状態で変身すると、普通にコンクリートをぶち抜けるぞ』

 

 って言ってたけど、あれマジっぽいのよね。

 

 ただ、すごい痛いらしいけど。

 

「えぇ……とりあえず、南エリアにでも行く?」

「うーん……そうだね! たしか、瑞姫ちゃんと真白さんは西エリアにいたと思うし、もしかすると合流できるかもだしね!」

『あ、こんな所にいた! おーい、ここにいるぞー!』

「見つかったわ! とりあえず、南エリアを目指すわよ!」

「おー!」

 

 今回のまひろには絶対に気を付けよう、そう思った私とアリスだった。




 どうも、九十九一です。
 まひろはどこへ向かっているんだろうか、というか、この作品はどこへ向かってるんだろうか、などと考えながら書いております。
 次回も以下略です。
 では。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。