爺口調な男子高校生が、のじゃろりになってTSライフを送るだけの日常   作:九十九一

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日常147 お開き。色々と決める二人

「しっかし、凪兄ぃも大変だったんじゃなぁ」

「大学では、武人君に助けられたかなぁ……」

 

 ド天然の疑いが出て来たことはともかくとして、儂は一ヶ月も経過していない凪兄ぃのことを考えて、苦笑しながら大変だったんじゃな、と言葉を零す。

 

 それに対して、凪兄ぃも苦笑しながらそう返す。

 

 ふむ、どうやら本当に手助けをしておるらしい。

 

 アドバイスのおかげ、などとおこがましいことは言わんが、さすがじゃなぁ、葛井先輩は。

 

 やはり、親友とはよい物じゃ。

 

「やはり、ナンパ的な?」

「そうだねぇ……大学内でも、夏休み前だからか、かなりあったかな。特に、海とかプールに誘う人が多かったかも」

 

 あはは、とさらに苦笑いを深める凪兄ぃ。

 

「なるほどのう。儂は既婚者故、そう言った誘いはなかったが……のう、翔に未久斗。もしや、おぬしらも夏辺りはそうなるのか?」

 

 儂自身、かなり特殊すぎる日常を送っておったと言うことや、そもそも経験が薄いということから、先輩発症者である翔と未久斗の両名に実際にあるのかどうか、疑問をぶつけてみる。

 

「あー、そりゃ高校生や大学生じゃあるあるネタだな」

「そうだね。私もあるよ。海というより、プール系の施設が多いかな。というより、必然的に露出度が上がるような場所に誘われやすい、と言った感じかな」

「だな。別に普段から仲良くしてた奴らならいいんだけどさぁ、知り合い程度から、『友人で集まってプール行くんだけど、一緒に行こうぜ!』って言われても、下心が丸見えなせいで、行く気が無くなるんだこれが」

「わかるわかる。私も、女子のクラスメートからよく言われたよ。正直、少女マンガのヒーローたちのような気持ちが理解できたわ。あれは無理」

「だなぁ。俺も、ラブコメのモテるヒロインもこんな気持ちなのかって思ったわ」

 

 などなど、二人は思うところがかなりあるようで、お互いにラブコメや少女マンガで例えておった。

 

 たしかに、あれらはかなりモテるからのう……現実になると、厄介なことこの上ないじゃろうな。

 

「で、四月朔日さんはどんな感じ?」

「僕も似たようなものかなぁ……あ、この姿になってからサークル勧誘とか増えたかも。僕、アルバイトをしているからやる気ないし……」

「そう言えば、バーでバイトをしとるんじゃったか?」

「うん。僕の叔父さんがマスターでね。一人暮らしの条件で働くことになっているの」

「ほほう。いい店なのかの?」

「すごくいいよ。隠れ家がコンセプトで、日常に疲れた人がやって来て、そこで好きなようにお酒を飲むの。時間があれば、店員と話しをしたりとかね」

「へぇ、それはいいのう。今度、結衣姉や祥子姉辺りに勧めてみるわい。あの二人、割と酒が好きじゃからな」

 

 あ、婆ちゃんもかなりの酒豪じゃったのう……ならば、婆ちゃんにも勧めるとしよう。

 

「ありがとう、きっと叔父さんも喜ぶよ」

「いやいや、いいってことよ。それに、うちの店にも来てくれておったんじゃろ? ならば、反対も然り、じゃ」

「僕はまひろ君とは会ったことがないんだけどね」

「それ、葛井先輩から聞いたわい。なんでも、儂が休職中の時期なんじゃろ?」

「うん。ただ、一応男性の頃のまひろ君には会っているみたいだけど」

「あぁ、そう言えばそれも葛井先輩が言っておったのう……」

 

 まあ、憶えてないんじゃがな。

 

「お? なんだなんだ、二人は住みが一緒なのか?」

 

 と、儂らの会話を聞いて、同じ地区に住んでいるのかと、未久斗が少し驚いたように尋ねて来た。

 

「ううん、一緒じゃなくて、お隣同士なんだよ、街が」

「へぇ、そりゃまた珍しいなぁ」

「そうだね。私や未久斗もそうだけど、かなりバラつくんだけどね、発症者って。隣街で、歳も近いとか珍しい限り」

「ちなみに、儂の一つ上の旦那の志望校は、凪兄ぃが通う大学じゃな」

「あ、そうなんだ? それじゃあ、入学出来たら来年は後輩さんかな?」

「うむ。ま、あやつのことじゃ。下手すりゃ主席合格もありえるな」

「なに、そんなに頭がいいのか? その人」

「うむ。生徒会長をしておってな。なんか、要領がいいんじゃよ。羽衣梓グループの令嬢曰く、応用を教えれば、即会社経営できそうな逸材だそうじゃ」

「「えぇぇぇぇ」」

 

 瑞姫がましろん相手に言ったを話すと、翔と未久斗の二人はドン引きしたような、困惑したような、そんな声を漏らした。

 

 わかる。

 

 儂も思うけど、ましろん絶対頭おかしいと思う。

 

「ま、かなり信頼できる相手じゃ。あと、友人が少ないのでな、できれば来年、凪兄ぃに気にかけてもらいたいところじゃが……どうかの?」

「うん、もちろんいいよ! まひろ君のお嫁さんなら大歓迎。それに、既婚者だから問題も起こらないと思うしね」

「問題?」

「うん。なんと言いますか、僕の半同棲相手の二人って、その……嫉妬深くて、僕が他の女性と話しているとちょっと怖いと言うか……まあ、そこも可愛らしいんだけどね? だから、危険が減るなぁ、って」

「……え、それもしかして、俗にいうヤンデレ……」

「みたいだね。あまり気にしていないけど」

「「「強い……」」」

 

 ヤンデレと付き合っとると言うのか、凪兄ぃ……。

 

 しかも、そこを可愛らしいと言い切った挙句、気にしていないときた。

 

 うぅむ、すごい感性じゃのう……いやまぁ、ヤンデレが可愛いのはわかるが。

 

「それに、まひろ君なら許されそうだしね。同じ元男同士だから」

「それ、俺も許される?」

「うーん、未久斗君は……ギリギリ許されない感じ?」

「なんで!?」

「結婚していないから安全と言い切れなくて……実は今日の交流会だって、かなり渋々だったから」

「愛されとるのう……まあ、儂も一部渋々OKした者がおったがな……」

「じゃあ、その人はヤンデレさんなのかな?」

「いや、ヤンデレじゃなくて、ただの変態じゃ」

「そっか、変態さんなんだ」

「変態さんなんじゃ……」

 

 うちの旦那共の中で、一番の変態じゃろうな、間違いなく。

 

 とはいえ、最近はそれを面白いと思っとるし、変態じゃない瑞姫は変態じゃないとさえ思っとるがな。

 

「あ、そうじゃ。凪兄ぃよ。もし、うちの旦那に会った際は、お嫁さんではなく、旦那、と呼んでやってくれ」

「あれ? まひろ君が旦那さんじゃないの?」

 

 純粋な眼差しと心が混ざった言葉が儂の心に突き刺さった。

 

 ……いや、うん、そうじゃよなぁ……。

 

「……儂が嫁なんじゃよ」

「それじゃあ、旦那さんが六人?」

「……そう言う事になる」

「ちなみに、女の子になっちゃった人たちって、結婚するとどっちがお嫁さんで、どっちが旦那さんになるの? 一般的に」

「「なっちゃった方」」

「ぐふっ……」

 

 一般的というある種常識に限りなく近い情報が、儂の脆い心に鋭利な刃物が突き刺さり、儂は吐血しかけた。

 

「だ、大丈夫?」

「や、やはり、発症した方が、旦那なのか……儂って一体……」

「まあまあ、それはそれでいいじゃんか。ってか、まひろだけじゃなくて、伊夜辺りも結婚したら間違いなく、嫁側だろうぜ?」

「……ま、マジで?」

「マジマジ。あいつ、乙女っぽい所があってさ、しかも生まれた時から女子してる奴らよりも、恥じらいが凄まじいんだー、これが」

「あれは元女の私としても、負けた気分になったものよ」

「なんと……ならば儂、あやつが嫁になるよう祈っとくわい」

「それはそれでひでぇな」

「仲間、欲しいんじゃよ」

「すっごい切実な言葉だね……」

 

 なんとでも言えい。

 

 儂は、是が非でも嫁仲間を増やすからな!

 

「ちなみにじゃが、凪兄ぃ的には、その二人と結婚した場合、どっちが旦那で、どっちが嫁がいい、とかというのはあるのか?」

「僕? うーん、そうだなぁ……家だと、僕が家事をやっているし、お料理をして、その喜ぶを顔を見るのも大好きだから……うーん、そこを切り取ると、お嫁さん側なのかなぁ。違和感もないし」

 

 少しだけ考える素振りを見せた後、凪兄ぃはあはは、と笑いながらそう答えた。

 

「マジか!」

「でも、どちらかというと旦那さんの方が、七割くらい傾いているかな」

「ちくしょーめ!」

 

 上げて落とされた気分なんじゃが!

 

 やりおる、凪兄ぃ……!

 

「まあでも、好きな人と一緒になれるのなら、お嫁さんでも、旦那さんでも、きっと幸せになれるんだろうな、っていうのが本音かな」

 

 えへへ、と照れたようにはにかむ凪兄ぃ。

 

「「「……」」」

「あれ? どうしたの?」

「……い、いや、すっごい良いセリフが飛び出してきたもんじゃから……いやぁ、今のは名言じゃなぁ……」

「だなー。そうだよな、元の性別とか関係ないよな。いやぁ、さすが大学生」

「私も気にしないようにしよう」

「うーん?」

 

 何故尊敬の眼差しを向けられておるのかわからない凪兄ぃは、こてんと可愛らしく首を傾げるのじゃった。

 

 ……仕草もいちいち可愛いのう。

 

 

 そんなこんなで、そろそろ交流会の時間もそろそろお開きに。

 

 ずっと水中にいると言う不思議状況じゃが、慣れると快適なもので、動きやすいし、なにより立ったままということがないのが素晴らしい。

 

 つまり、寝ころんだまま移動ができるようなものじゃな。

 

 おかげで、かなり楽じゃったわい。

 

 さて、そんな儂と言えば……

 

「凪兄ぃ、この後ホテルの方で一緒に話さんか? せっかく、友人になったしのう」

「うん、もちろん!」

 

 二人で話すことにした。

 

 地元が近いし、何より歳が近いと言うこともあり、儂らは意気投合した。

 

 そして、お互いにホテルに泊まっていくとのこともあって、このまま二次会的なノリでホテルで話そうと言うことになった。

 

 場所は儂の部屋である。

 

「しかし、お互いに共通の知人がおるとは、驚きじゃのう」

「そうだね。僕も驚いたかな。それに、武人君の言う通り、まひろ君はいい人だったしね?」

「ははは、それを言うなら儂もじゃ。葛井先輩からは、気が合うだろうとは言われておったが、まさにその通りであったわ」

「うんうん。僕としては、多重婚の先輩がいたのは心強かったよ。少しだけ、気にしているところもあったから」

「そりゃそうじゃろ。日本では、多重婚は原則認められとらんからな。そんな特例、儂ら発症者のみじゃからな。あ、そうじゃ。凪兄ぃは知っとるか?」

「何がかな?」

「儂ら発症者はどうも、最低でも二人と結婚せんと、強制的にお見合いをさせられるらしいぞ」

「あ、うん、神さんから聞いたよ。最初に聞いた時はびっくりしたよー」

 

 そう答える凪兄ぃは困ったような笑みを浮かべておった。

 

 どうやら、祥子姉から伝えられておったらしい。

 

 凪兄ぃは割と天然っぽいんじゃが、そんな凪兄ぃですら困るようなものなんじゃなぁ、あれ。

 

「儂もじゃ。とはいえ、儂は六人と結婚したし、おぬしはおぬしで二人と結婚する予定なんじゃろ? ならば、問題はなさそうじゃよな」

「そうだね。それに僕、二人以外とは多分付き合わないと思うから、安心だよ」

 

 と、二人だけで良い発言をする凪兄ぃに、儂の頬が引き攣った。

 

「……凪兄ぃ、そのセリフは儂に効く……」

「うーん?」

 

 が、儂の言葉の意味がよくわからないようで、凪兄ぃは腕を組みながらこてんと首を傾げた。

 

 やはり、仕草が可愛い……。

 

「まあ、それはよいとして……まあ、あれじゃ。もし何かあれば、遠慮なく相談してよいからな。これでも、たった数ヵ月とは言え、先輩みたいなもんじゃ。……あてにはならんかもしれんが」

「ううん、そう言ってもらえるだけでもありがたいよ。まだまだよくわからないこともあるから」

「うむうむ! ……そう言えば、凪兄ぃは普段の服装とかどうしとるんじゃ? ほれ、前は男じゃったから、当然女性ものの服などないじゃろ? 買いに行く時とか、どうしとったんじゃ?」

「あ、それについてはお姉さんの方が色々選んでくれたよ。モデルさんだからね」

「おぉ、そう言えばそうじゃったな。うぅむ、そういうことに詳しいと言うのは、こちら側としても助かるんじゃろうなぁ。儂も一応、女友達……というか、儂の旦那の一人が下着選びとか手伝ってくれたが、結果的に変態の旦那とそこで出くわし、着せ替え人形の如き仕打ちを受けてな……おかげで、まともな服選びにならんかったんじゃよ……」

「あらら……それは何と言うか……ドンマイ?」

「まあ、今は感謝しとるけど……」

 

 当時と言えば、出会ったばかりの者と、仲が良かった女子から着せ替え人形にされまくったことは、マジでめんどくさく、そしてしんどいものじゃったと記憶しておる。

 

 ……なんか、このことが随分と遠い昔に思えてならんな……。

 

「そっか、やっぱり色々あるんだね。僕も変化してから色々あったし、これも宿命なのかな?」

「じゃろうな。TSF症候群を発症させると言うことは、素晴らしいほどに整った容姿を持ち、ちやほやされることを代償に、様々なトラブルに巻き込まれる、そういうことじゃろうからな」

「僕は、できれば平穏に、それでいて好きな人と幸せに暮らせればいいかなぁ、って思うけれど……まひろ君のお話を聞いていると、なんだか難しい気がしてきちゃったよ」

 

 苦笑交じりに話す凪兄ぃに、儂も釣られて苦笑する。

 

 たしかに、たった四ヶ月程度の儂でこの様なんじゃ、そんなことをして来たと知れば、凪兄ぃのような反応になるわなぁ……。

 

「ま、儂らは住みも近いんじゃ。今後は機会があったらこうして会わんか? お互いの旦那や恋人とも会わせてみたいしな」

「あ、うん、それはいいね! 二人もきっと、色々なお話が聞けて喜ぶと思う! 先駆者だもん!」

「うむうむ! では、そういうことで! あ、もしその時はうちに来ると良いぞ。美味い茶や菓子でも出すわい。それに、色々と設備も整っておるしな」

「いいの?」

「もちろんじゃ! 夏休みのどこかで一度来るか?」

「そうだね。夏休み中なら自由も聞くと思うし、是非是非!」

「じゃあ、決まりじゃ! 旦那共に話しをするんで、LINNで細かい日程を決めよう。それでよいかの?」

「もちろん! じゃあこれ、僕のID」

「助かる」

 

 儂らはお互いのLINNを交換する。

 

 うむうむ、こうして連絡先が増えると言うのは、嬉しいもんじゃのう……。

 

「僕の方も、二人に伝えておくから、楽しみにしているね!」

「儂もじゃ!」

 

 と、まあ、そんなこんなで、ノリとその場の勢いで両者パートナーとセットで会うことが決まった。

 

 楽しみじゃな!

 

 この後は他愛ない話をして、就寝となった。

 

 ちなみに、帰宅は家の方向が同じということもあり、途中まで共に帰宅した。




 どうも、九十九一です。
 出番は少ないと言いつつ、また出ることが決まった凪。お前、今別の方で主人公の話書いてるんだけどなぁ……と思いつつ、まあ、この作品の派生みたいなもんだから、仕方ないと割り切ろう。向こうでは、凪視点で書くことになりそうだけど……。
 次回も以下略です。
 では。
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